追放シーフの成り上がり

白銀六花

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100 今後の予定とウルの処遇

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 ゼイラムの戦いを知り、ディーノは今後まだ強くなる必要があると考えつつも、ルーヴェべデルとの戦争が怒るとすれば面倒な事になるだけでなく、戦力を落とした状態では多くの者達が死んでいく、またはバランタイン王国が滅ぶ事にもなり兼ねないと思考を巡らせる。
 ルーヴェべデルのテイムや、ウルのパラサイトスキルであれば竜種を相手にも捕獲する事も利用する事もできるのではないか。
 もしテイムできなくともある程度の混乱状態に陥らせるのではないかとも考えられる。
 もしそうだとするならば今敵国として戦争するのではなく、手を組んで竜害に備えた方が両国共に自国の為にもなるだろう。
 しかしこの場で発言していいのかと顔をあげて戸惑っていると。

「ディーノよ。先に渡した竜殺しの勲章は国王としての私の信頼の証でもある。好きに発言する事を許す」

「ではルーヴェべデルとの戦いはどうするつもりなのでしょう。私は敵国の者とは知りながらも0級冒険者であるウルを友人であると思っておりますが」

 竜害に備える為にもルーヴェべデルとの戦争を避けるべきと考えるディーノは、危険と知りつつもウルを友であると告げる事で、敵国とするべきではないと暗に伝えようとする。

「ふむ。ウル=シュミットから私も直接話を聞いておる。其方が自分を庇おうとしても罪に問わないで欲しいともな。異国の者であろうとも友と語るのであれば信のおける者であろう。あの者は戦争よりも平和を願うとも申しておってな。優しき男と私も思う。が、ウルの名を出したという事は何か考えがあるのであろう。申してみよ」

 国王はディーノの問いには答えなかったものの、その思いを汲んでくれたのかルーヴェべデルとの戦争を仄めかすような言葉を使わない。

「今後バランタイン聖王国の意思を伝える為にもルーヴェべデルには使者が送られる事と思われますが、そこにウルと私を派遣して頂きたく、お願いできないでしょうか」

 ディーノは自身の考えを語りつつ、ウルの重要性としてルーヴェべデル獣王国の特殊スキル発現者かもしれないと説明した。
 付き合いこそそれほど長くはないものの、暇があるたびに何度もウルのもとを訪れたディーノはその都度酒を飲み交わしながらルーヴェべデルの話を聞いていた。
 最初こそ隠しはしていたものの、ルーヴェべデルの上位者は六神獣と呼ばれる最強の戦士達であり、フュージョンという人とモンスターを融合するスキルにより、人間の意思を持ったモンスターの姿をした戦士が六神獣との事。
 自分の意思では融合を解除する事はできず、モンスターの体が死ぬまで融合し続ける事からその融和性は高く、ウルのパラサイトよりも優れた能力として格上の能力とされていたそうだ。
 しかしルーヴェべデルにおいてもモンスターに寄生できるパラサイトスキルを持ったウルはやはり異例であり、六神獣と同格のモンスターに寄生できる事から0級冒険者として国に雇われていたと聞いている。
 小国にも特殊スキルが発現しているかもしれないとすれば、ウルのパラサイトはその条件に当てはまる事になるだろう。
 平和を望むウルであれば国益よりも人民の命を重視するだろうと、竜害に備える戦士として獣王国に戻るべきであるとも語った。

 また、ディーノ達が倒した黄竜を捉える方法として、ティアマトとクランプス、貴族の男が使役していた巨獣とで制圧し、弱ったところをテイムスキル持ち全員で操作する事でルーヴェべデルへと連れ帰る予定だったとの事。
 まだ数人いるフュージョンスキル持ちに上位竜を与える為の遠征だったと報告した。

「ふむ。ルーヴェべデルは建国から二百年程の歴史の浅い国であるしな。パラサイトの過去の発現など知る由もなかろう。ルーヴェべデルとの戦争を避ける為にも使者は送るつもりであるが、ディーノ、其方は我が国で最も重要なスキルを持つ事になる。竜害を前に危険に晒すわけにはいかぬ」

「それは理解しておりますが、国王様の話から私の実力ではゼイラムに遠く及ばないように思えます。このままでは竜害に耐えられないかと」

 国王の話からゼイラムは大地を埋め尽くすほどの下位竜、上位竜の半数を倒した後にもかかわらず、黄竜クラスの色相竜を十体以上を相手に一人で戦える実力を持つとされているのだ。
 今のディーノの実力では遠く及ばないと思うのは当然だろう。

「確かにな。其方には今以上に強くなってもらう必要はあるのだがルーヴェべデルに派遣して無駄に危険に晒す必要もない。聖銀と共にその実力を高めてほしいと思っておる」

「お言葉ですが国王様。ギフトを持つ私と四聖戦士である聖銀はいるとしても、伝説の英雄ヘラクレスをどうなさるおつもりでしょう。いえ、それだけでは被害は抑えきれません。多くの戦士達、新たな戦士達に高い実力を身に付けさせなければ辺境の全てが滅んでしまう事にもなります」

 物語にはバランタイン王国の事しか書かれておらず、辺境の事などどこにも触れられてはいないのだが、もし世界規模での竜害が起こるとすれば辺境領地でも確実に竜種は現れる。
 その全てを守る事はできないとしても、少しでも被害を抑える為にも多くの戦士達が高い実力を身に付ける必要があるのは当然だろう。
 ディーノと聖銀だけでなく、この場にいる黒夜叉とアークトゥルス、ルビーグラスを始めとした全ての冒険者達、各地の衛兵達にも訓練を積ませるべきだ。

「現代のヘラクレスとなれる者達は聖銀に探させておるがしかし、ディーノが言う事も最もである。多くの者を一流の戦士として育てあげ、竜種と戦う実力を身に付けてほしいところだが……其方のその目。何か考えがあるのだろう?」

 国王の問いに頷いたディーノは、この国を守る為にも少し危険な発言とは思いつつも考えている事を口にする。

「バランタイン聖王国の貴族階級の方々には魔法スキル持ちが多いと聞いております。その皆様に魔法戦士として戦って頂きたいと考えますがいかがでしょう」

「アリス=フレイリアのようにという事か?ドルドレイク伯からその戦いぶりを聞かせてもらったが、少し信じられん思いだ」

 アリスの戦いは魔法スキルは遠距離戦にこそ使用するものという常識を覆すものであり、エンベルトと同じように始めた近距離戦とはいえ異質な戦い方である。

「聖銀のエンベルトも近接戦を得意とするウィザードです。アリスにもエンベルトと同じように近接戦闘で訓練していったところ、竜種にも通用する程の実力を持つまでに至りました」

 実のところエンベルトの戦いは国の重鎮にさえも知られておらず、誰もが遠距離でも超威力の魔法を可能とした者という認識であり、ディーノの言葉に驚きの声があがる。

「エンベルトも近接戦を……ふぅむ。アリスよ。この場でその魔法を見せてはくれまいか」

「は、はいっ!」

 国王から突然話を振られたアリスは少し動揺しつつも立ち上がって一礼し、地面に置いた魔鉄槍バーンを持って頭上に向けて掲げる。
「いきます」と掛け声を出すと、ボッ!という射出音と共に炎槍が上空に向けて放出され、高い位置にある垂れ幕が大きく吹き上げられた。
 炎槍こそそれ程長い距離を放出する事はできないものの、その噴射の威力が垂れ幕を吹き上げるまでの威力を持つ事に誰もが驚く。

「今見たアリスの炎槍は黄竜の腹をも突き破る超威力を誇ります。これに至るまでには相当な死線を潜り抜ける必要がありますが、この魔鉄槍が完成してすぐにAA級モンスターをも討ち破る威力を持っていましたから貴族様方も戦いに使用すれば相当な威力となるでしょう」

 ディーノが説明するとアリスはまた一礼してまた同じように跪く。

「素晴らしい!すぐにでも魔法スキルを持つ者達に訓練をさせようではないか!」

「属性によっても違いはあると思いますが、魔法スキルを収束させると威力は上がるようです。私の場合は魔鋼武器からの全放出ですから威力はそれ程ではありません。スキルの放出を一点に集中させるのが高威力の鍵となるでしょう」

 ディーノの属性剣も性能が高いとはいえ威力としてはそれ程高くはない。
 敵の体内に直接魔法スキルを叩き込む事で超威力を可能としているが、基本的には高速移動をする為に使用している。

「それならば属性武器を見直さねばならんな。ふむ、有益な情報はありがたい。何か褒美を取らせたいが……何か欲しいものはあるか?」

 何か見返りを求めて進言したわけでもないのだが、褒美がもらえるというのであればディーノとしては欲しいものがある。

「それでしたら魔鋼素材が欲しいのですが」

「魔鋼か。希少素材の為そう多くはないが国庫に少しあったはずだ。それを褒美として贈ろう」

 もう一振りの魔鋼武器をファブリツィオに相談しようと思っていたディーノだが、素材集めに苦労するだろうとは思っていたものの、国王からの褒美として魔鋼を手に入れる事ができた。
 どれだけの量がもらえるかはわからないが、ディーノが持つ剣であればそれ程多くの魔鋼は必要ない為なんとかなるだろう。



 その後は国王と属性武器の相談を受けつつ文官達はその話の内容を記録していき、貴族用の属性武器として多くを注文する事になるのだろう。
 国王も実際に戦う事にはならないかもしれないが、自身を守る武器は必要だろうとバランタイン聖王国の聖剣を造るつもりのようだ。

 最初こそディーノをルーヴェべデルに行かせないつもりなのか話を逸らされていっていたものの、全ての領地にいる貴族や戦士達の実力を高める為にも戦力強化に力を入れていく事が決まり、ディーノはゼイラムに劣らない実力を身につける為にもパーティーで行動することを条件に、黒夜叉独自の方法で強化、ルーヴェべデルにも派遣されることが決まった。
 そしてパーティーにはディーノとアリス、フィオレに加え、ウルもパーティーメンバーとして同行する事も決定し、ウルはルーヴェべデル側の、ディーノはバランタイン側の親善大使として務めるよう指示された。
 バランタイン側の独断でウルが親善大使として決めてしまっているものの、食料難で困窮するルーヴェべデルであれば、竜害の可能性の報告と支援を約束すればこの条件を飲むものとして考えたようだ。
 そしてウルの能力はパラサイトという寄生能力である事から何か強力なモンスターが必要だろうと、以前からディーノが狙っていたSS級モンスターを捕獲すればいいだろうと、ディーノの今後の予定に組み込んでおく。
 ラフロイグ伯爵の護衛依頼が発注されている為、一度ラフロイグへと向かい、ファブリツィオに魔鋼武器を注文してからモンスター捕獲に向かうつもりのようだ。

 アークトゥルスとルビーグラスは今後セヴェリンと共にジャダルラック領へと帰る事になるが、セヴェリンはジャダルラック領復興に向けて多くの商人達と取引きをする必要があるとして、十日程の期間を滞在する事となっている。
 マリオ達ブレイブのメンバーがしばらく王都に滞在している事から、両パーティー共に観光を楽しむつもりでいるとの事。
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