92 / 257
92 黄竜戦決着
しおりを挟む
黄竜の雷属性スキルに持続性が無くなってきた頃。
ディーノは何度も受け止めながらカウンターとして黄竜の左右前足とブレスを吐き出すその顔に何度も爆破を叩き込み、ユニオンの新たな使用方法、自身のスキルとして魔法系スキルのカウンター技【リベンジブラスト】を作り上げていた。
敵の魔法スキルに使用される魔力と自身の使用できる魔力とで威力は左右されるものの、自身の使用する魔力の二倍の出力で発動できると考えれば、ディーノの不足していた攻撃力を補える事になるだろう。
しかし今は引き出している魔力を次々と使っている為、高い威力でのリベンジブラストを放つ事はできないのだが。
次第に黄竜の雷光が衰え始め、今ではブレスを吐き出す事もできずに胸元から稲光を発するのみ。
ディーノの位置を察知する能力は使用できるものと思われるが、今更隠れて戦う必要もなく左右前足の攻撃を回避しながらそろそろ仲間に任せようかと周囲へと視線を巡らせる。
街の外へと移動して戦いを見守っていた仲間達を発見し、スキル待機時間を終えたディーノは鼻先を爆破してから駆け出した。
ディーノを見守っていた冒険者達およそ五十名は、全員が遠見筒を持ってディーノの姿を追っており、側から見るとなかなかに異様な集団として映る。
その前方に降り立ったディーノは汗を拭いながらいい笑顔を見せて歩み寄る。
「いや~、いい戦いだった。久しぶりにオレより強いモンスターと戦えて最高の気分だ」
「ああ、なんだ……何と声を掛けていいのか悩むな。う~む、ひとまずは労いの言葉を掛けるべきか。よくぞ戦ってくれたなディーノよ……むぅ、これで合っておるのか?さすがに私も思考が停止してしまってな」
冒険者の戦いを見た事もなかったセヴェリンも、まさかこれ程まで大規模な戦いになるとは思っていなかったのか、普段厳格な表情を崩さないこの男もやや呆け気味のようだ。
「伯爵様はモンスターすら滅多に見る事はないでしょうからね。オレ達の戦いなんて大体こんなものですよ」
これに誰しもが「そんなわけあるか」とツッコみたくなるものの、すでに人間の枠を超えたディーノの存在にどう接していいかもわからない。
普段からディーノの戦いを見ているアリスはいつものようにうっとりとした表情でディーノを見つめ、同じパーティーメンバーとなったフィオレは「ディーノかっこいい」とアリスの横で飛び跳ねている。
何度かディーノの戦いを見たアークトゥルスは地面に座ったままで「ま、ディーノにしては苦戦したか」と驚く事はなくやや呆れ顔だ。
これから黄竜と戦う事になるというのにこの気の抜け方で大丈夫だろうかと思える程に脱力しているが。
同じくこの後黄竜と戦う事になるルビーグラスはディーノの尋常ならざる戦いに身震いし、向かい来る黄竜に士気を高めて武器を握りしめた。
「結構弱ってるとは思うけど怒り狂ってるから気をつけてな。さあ行ってこい!」
「応!」と返したルビーグラスは歩き出し、「やれやれ」とばかりに立ち上がったアークトゥルスはカルロの「行くぞ野郎共!」の掛け声に合わせて駆け出した。
「じゃあ私達も行きますかっ」
アリスはディーノに遠見筒を渡して拳を突き合わせ、右手に魔力を集中させながらここしばらく使っていない遠距離魔法を放とうと炎球を片手に走り出す。
「援護は任せて~」とフィオレもアリスの後を追い、最初の一撃で黄竜の出鼻を挫こうとインパクトに意識を集中しながら全速力で駆け出した。
ルビーグラスとアークトゥルス、黒夜叉が黄竜に向かった事でディーノも戦闘への警戒を緩め、「お疲れ様でした」とエンリコから渡された水を飲んで一息つく。
「さあ、皆さん!ここからは人間と竜種との戦いになりますからね!しっかりとその戦いを目に焼き付けましょう!」
そう語るヴィタはディーノを人間とは思っていないのか、ディーノは遠見筒を覗き込みながら水を吹き出していた。
黄竜も弱っているとはいえ上位竜としての強さは人間の理解を遥かに上回り、傍目から見た動きは鈍ったとしても接近すれば異常な程の速度で動く巨体は衰えを全く感じさせない。
ナイトのカルロとランサーナイトのジョルジョを先頭に走り進んだ合同パーティーは、他に注意が向かないよう声を高めて黄竜を引き付ける。
そして黄竜との接敵を前に右頬に射ち込まれたインパクトが頭ごと左を向かせ、顔面目掛けた魔法スキルがアリスから放たれると目元で炎が燃え上がる。
その炎に気を取られている隙にウベルトが地属性スキルを発動して黄竜の足元の地面を崩す事で横倒しにし、近付く人間を薙ぎ払おうと右前足を横に薙いだところをカルロとジョルジョ二人掛かりで上方に払い除ける。
腕が砕ける程の衝撃にカルロはバッシュを、ジョルジョはパリィを発動する事でなんとか耐える。
その背後にいたロッコとドナートが回復し、次の攻撃に備えて盾を構えるカルロとジョルジョ。
そこへネストレが黄竜の頭に飛び乗り、鱗の剥がれた首元へとダガーを突き立てると、黄竜は絶叫しながら地面を転がる事でネストレを振り落とす。
さらにファイターであるコルラードとマンフレードが喉元へと斬り掛かり、大剣が深く食い込むとまともに発動できなくなった雷魔法で顎下から放電。
ファイター二人はすぐさま大剣を引き抜いて後方へと引き下がる。
一瞬の間が空いた事で素早く起き上がった黄竜は前足で地面を掴んで四足で這うと、尻尾を振り回す事で地面に立つパーティーを一気に薙ぎ払う。
それを跳躍して回避したネストレは尻尾から背後へと回り込み、鱗の剥がれた部分を目指して駆け上がる。
しかし察知能力の高い黄竜はネストレの位置も把握している為、体を起こす事で振り落とし、巨大な翼で叩き飛ばすと、空へ舞い上がろうと翼を広げて羽ばたくも飛膜が斬り裂かれている為飛翔する事ができない。
怒りの咆哮をあげて立ち上がったカルロへと右前足を叩き付け、受け流されたその前足へとドナートの斬撃が振り抜かれる。
クレリックセイバーとは思えない程の体躯を持つドナートの斬撃は黄竜の前足にも傷を残し、ジョルジョの槍が肘関節部へと突き刺さると突然の噛みつき攻撃がジョルジョを襲う。
しかしそこへ距離を詰めていたアリスの魔鉄槍バーンが黄竜の右目に突き刺さり、内部へと放出された炎槍が右目を貫き爆散させる。
絶叫と共に横向きに倒れ込んだ事で後方へと下がったカルロとジョルジョ、ロッコとドナート。
巨大な翼が覆い被さる事で周囲を確認する事ができなくなり、盾で押さえてこの状況に何とか耐える。
右前足で右目を押さえる黄竜は察知能力がある為警戒を緩める事はなく、近付こうとしたネストレに向けて左前足を振り下ろし、スキル待機時間であるアリスは後方に下がって隙を伺っている。
と、そこへ少し離れた位置にいたフィオレからのインパクトが翼の付け根部分へと穿たれ、弱点に強い衝撃を受けた黄竜は絶叫をあげて悶え苦しむ。
そして足側から回り込んでいたファイター二人は下腹部へと接近すると、スラッシュを発動して全力で斬り込んだ。
パワー型のコルラードの斬撃は深々と肉を斬り裂いて地面へと大剣を叩きつけ、リッパー型のマンフレードの刃はコルラード程深い傷とはならないものの、反動が少ない為返す刃で通常の斬撃も食らわせる。
互いに傷跡を確認してからすぐさま後方へと駆け出すも、黄竜の足元に近い事から倒れたまま暴れる後足に蹴り飛ばされて地面を転がった。
起き上がって回復薬を口に含み、互いの求める強さの違いはあれどファイターとしてのその実力を認め合い、獰猛な笑みを浮かべて再び黄竜へと駆け出す。
ネストレは黄竜に攻めきれずにいるものの、背中側からの攻撃を嫌う黄竜は実のところこの男を最も警戒している。
左前足による叩き付けをバックステップ一つで躱すと、前足を足場にして背後に回ろうと急加速する事から警戒を緩められずにいるのだ。
黄竜が再び起き上がった頃にはアリスのスキル待機時間を終え、フィオレもインパクトをいつでも射てるよう待機している。
そして黄竜が起き上がれば翼に覆われていた盾職二人と回復職二人が解放され、前面にネストレ、右に盾職と回復職、アリスと少し離れた位置にフィオレ、左にファイター二人と黄竜を囲み込む形になった。
陣形としては崩れてしまっているが、背面側に弱点がある黄竜が相手であれば仕方がない事だろう。
フィオレが背面側に回り込もうと駆け出すと、カルロとロッコも黄竜の右側をルビーグラスに任せてネストレの援護をしようと移動を開始。
黄竜もフィオレのインパクトを警戒してか向きを少し変え、目の前を横切ろうとするカルロとロッコを叩き潰そうと右前足を振り下ろす。
黄竜程巨大なモンスターの攻撃に耐えられるようなスキルではないとはいえ、長年の戦闘技術と高められたステータスでこの一撃を受け流し、ロッコは黄竜相手に牽制にもならないだろうとは思いつつも矢を放つ。
そして黄竜が動き出せば人間側も行動を開始しており、ネストレは注意がそれた瞬間に駆け出し、エアレイドによる超加速で左前足の肩に当たる部分まで跳躍。
鱗に掴まりながら背面目指して這い上がる。
同じように行動を開始したコルラードは尻尾へと向かって駆け出し、それほど硬くはないだろうと尻尾の先端をスラッシュで叩き斬る。
切り落とされた尻尾はビチビチとその場で跳ねているが、切られた黄竜は怒りの咆哮をあげてその場から跳躍して全員を視界に捉えられるように向きを変えた。
コルラードと同時に動き出していたマンフレードは踏み潰されそうになるものの、目の前に現れた後足にスラッシュで斬り付け、体重の乗った足に斬撃を受けた事で大きなダメージとなり黄竜も着地体勢を崩す事となった。
そこに駆け込むジョルジョとドナート、その背後からはアリスが続き、悲鳴をあげてバランスを崩した黄竜に接近、前屈みになったところを顎下から突き刺しと斬撃、そして懐に飛び込んだアリスの炎槍が腹部に突き刺さる。
その威力に口から血を吹き出し悲鳴をあげて右後方に倒れ込む黄竜。
やはり収束された炎槍は竜種にも通用する絶大な威力を持つようだ。
未だ鱗にしがみついていたネストレはそのまま背後へと回り込み、動きの鈍くなった黄竜の首筋へとダガーを突き刺した。
回り込もうと走っていたフィオレも黄竜の右前足から駆け上がり、翼の付け根部分へとインパクトを射ち込み、近距離から放たれたインパクトの威力に黄竜も跳ね上がるほどの衝撃を受け、口から流れ出る血の量がさらに増す。
黄竜ももう限界が近いのだろう、全員でトドメとばかりに次々に攻撃を浴びせていき、最後にアリスの炎槍が胸を貫いて黄竜討伐を終えた。
ディーノは何度も受け止めながらカウンターとして黄竜の左右前足とブレスを吐き出すその顔に何度も爆破を叩き込み、ユニオンの新たな使用方法、自身のスキルとして魔法系スキルのカウンター技【リベンジブラスト】を作り上げていた。
敵の魔法スキルに使用される魔力と自身の使用できる魔力とで威力は左右されるものの、自身の使用する魔力の二倍の出力で発動できると考えれば、ディーノの不足していた攻撃力を補える事になるだろう。
しかし今は引き出している魔力を次々と使っている為、高い威力でのリベンジブラストを放つ事はできないのだが。
次第に黄竜の雷光が衰え始め、今ではブレスを吐き出す事もできずに胸元から稲光を発するのみ。
ディーノの位置を察知する能力は使用できるものと思われるが、今更隠れて戦う必要もなく左右前足の攻撃を回避しながらそろそろ仲間に任せようかと周囲へと視線を巡らせる。
街の外へと移動して戦いを見守っていた仲間達を発見し、スキル待機時間を終えたディーノは鼻先を爆破してから駆け出した。
ディーノを見守っていた冒険者達およそ五十名は、全員が遠見筒を持ってディーノの姿を追っており、側から見るとなかなかに異様な集団として映る。
その前方に降り立ったディーノは汗を拭いながらいい笑顔を見せて歩み寄る。
「いや~、いい戦いだった。久しぶりにオレより強いモンスターと戦えて最高の気分だ」
「ああ、なんだ……何と声を掛けていいのか悩むな。う~む、ひとまずは労いの言葉を掛けるべきか。よくぞ戦ってくれたなディーノよ……むぅ、これで合っておるのか?さすがに私も思考が停止してしまってな」
冒険者の戦いを見た事もなかったセヴェリンも、まさかこれ程まで大規模な戦いになるとは思っていなかったのか、普段厳格な表情を崩さないこの男もやや呆け気味のようだ。
「伯爵様はモンスターすら滅多に見る事はないでしょうからね。オレ達の戦いなんて大体こんなものですよ」
これに誰しもが「そんなわけあるか」とツッコみたくなるものの、すでに人間の枠を超えたディーノの存在にどう接していいかもわからない。
普段からディーノの戦いを見ているアリスはいつものようにうっとりとした表情でディーノを見つめ、同じパーティーメンバーとなったフィオレは「ディーノかっこいい」とアリスの横で飛び跳ねている。
何度かディーノの戦いを見たアークトゥルスは地面に座ったままで「ま、ディーノにしては苦戦したか」と驚く事はなくやや呆れ顔だ。
これから黄竜と戦う事になるというのにこの気の抜け方で大丈夫だろうかと思える程に脱力しているが。
同じくこの後黄竜と戦う事になるルビーグラスはディーノの尋常ならざる戦いに身震いし、向かい来る黄竜に士気を高めて武器を握りしめた。
「結構弱ってるとは思うけど怒り狂ってるから気をつけてな。さあ行ってこい!」
「応!」と返したルビーグラスは歩き出し、「やれやれ」とばかりに立ち上がったアークトゥルスはカルロの「行くぞ野郎共!」の掛け声に合わせて駆け出した。
「じゃあ私達も行きますかっ」
アリスはディーノに遠見筒を渡して拳を突き合わせ、右手に魔力を集中させながらここしばらく使っていない遠距離魔法を放とうと炎球を片手に走り出す。
「援護は任せて~」とフィオレもアリスの後を追い、最初の一撃で黄竜の出鼻を挫こうとインパクトに意識を集中しながら全速力で駆け出した。
ルビーグラスとアークトゥルス、黒夜叉が黄竜に向かった事でディーノも戦闘への警戒を緩め、「お疲れ様でした」とエンリコから渡された水を飲んで一息つく。
「さあ、皆さん!ここからは人間と竜種との戦いになりますからね!しっかりとその戦いを目に焼き付けましょう!」
そう語るヴィタはディーノを人間とは思っていないのか、ディーノは遠見筒を覗き込みながら水を吹き出していた。
黄竜も弱っているとはいえ上位竜としての強さは人間の理解を遥かに上回り、傍目から見た動きは鈍ったとしても接近すれば異常な程の速度で動く巨体は衰えを全く感じさせない。
ナイトのカルロとランサーナイトのジョルジョを先頭に走り進んだ合同パーティーは、他に注意が向かないよう声を高めて黄竜を引き付ける。
そして黄竜との接敵を前に右頬に射ち込まれたインパクトが頭ごと左を向かせ、顔面目掛けた魔法スキルがアリスから放たれると目元で炎が燃え上がる。
その炎に気を取られている隙にウベルトが地属性スキルを発動して黄竜の足元の地面を崩す事で横倒しにし、近付く人間を薙ぎ払おうと右前足を横に薙いだところをカルロとジョルジョ二人掛かりで上方に払い除ける。
腕が砕ける程の衝撃にカルロはバッシュを、ジョルジョはパリィを発動する事でなんとか耐える。
その背後にいたロッコとドナートが回復し、次の攻撃に備えて盾を構えるカルロとジョルジョ。
そこへネストレが黄竜の頭に飛び乗り、鱗の剥がれた首元へとダガーを突き立てると、黄竜は絶叫しながら地面を転がる事でネストレを振り落とす。
さらにファイターであるコルラードとマンフレードが喉元へと斬り掛かり、大剣が深く食い込むとまともに発動できなくなった雷魔法で顎下から放電。
ファイター二人はすぐさま大剣を引き抜いて後方へと引き下がる。
一瞬の間が空いた事で素早く起き上がった黄竜は前足で地面を掴んで四足で這うと、尻尾を振り回す事で地面に立つパーティーを一気に薙ぎ払う。
それを跳躍して回避したネストレは尻尾から背後へと回り込み、鱗の剥がれた部分を目指して駆け上がる。
しかし察知能力の高い黄竜はネストレの位置も把握している為、体を起こす事で振り落とし、巨大な翼で叩き飛ばすと、空へ舞い上がろうと翼を広げて羽ばたくも飛膜が斬り裂かれている為飛翔する事ができない。
怒りの咆哮をあげて立ち上がったカルロへと右前足を叩き付け、受け流されたその前足へとドナートの斬撃が振り抜かれる。
クレリックセイバーとは思えない程の体躯を持つドナートの斬撃は黄竜の前足にも傷を残し、ジョルジョの槍が肘関節部へと突き刺さると突然の噛みつき攻撃がジョルジョを襲う。
しかしそこへ距離を詰めていたアリスの魔鉄槍バーンが黄竜の右目に突き刺さり、内部へと放出された炎槍が右目を貫き爆散させる。
絶叫と共に横向きに倒れ込んだ事で後方へと下がったカルロとジョルジョ、ロッコとドナート。
巨大な翼が覆い被さる事で周囲を確認する事ができなくなり、盾で押さえてこの状況に何とか耐える。
右前足で右目を押さえる黄竜は察知能力がある為警戒を緩める事はなく、近付こうとしたネストレに向けて左前足を振り下ろし、スキル待機時間であるアリスは後方に下がって隙を伺っている。
と、そこへ少し離れた位置にいたフィオレからのインパクトが翼の付け根部分へと穿たれ、弱点に強い衝撃を受けた黄竜は絶叫をあげて悶え苦しむ。
そして足側から回り込んでいたファイター二人は下腹部へと接近すると、スラッシュを発動して全力で斬り込んだ。
パワー型のコルラードの斬撃は深々と肉を斬り裂いて地面へと大剣を叩きつけ、リッパー型のマンフレードの刃はコルラード程深い傷とはならないものの、反動が少ない為返す刃で通常の斬撃も食らわせる。
互いに傷跡を確認してからすぐさま後方へと駆け出すも、黄竜の足元に近い事から倒れたまま暴れる後足に蹴り飛ばされて地面を転がった。
起き上がって回復薬を口に含み、互いの求める強さの違いはあれどファイターとしてのその実力を認め合い、獰猛な笑みを浮かべて再び黄竜へと駆け出す。
ネストレは黄竜に攻めきれずにいるものの、背中側からの攻撃を嫌う黄竜は実のところこの男を最も警戒している。
左前足による叩き付けをバックステップ一つで躱すと、前足を足場にして背後に回ろうと急加速する事から警戒を緩められずにいるのだ。
黄竜が再び起き上がった頃にはアリスのスキル待機時間を終え、フィオレもインパクトをいつでも射てるよう待機している。
そして黄竜が起き上がれば翼に覆われていた盾職二人と回復職二人が解放され、前面にネストレ、右に盾職と回復職、アリスと少し離れた位置にフィオレ、左にファイター二人と黄竜を囲み込む形になった。
陣形としては崩れてしまっているが、背面側に弱点がある黄竜が相手であれば仕方がない事だろう。
フィオレが背面側に回り込もうと駆け出すと、カルロとロッコも黄竜の右側をルビーグラスに任せてネストレの援護をしようと移動を開始。
黄竜もフィオレのインパクトを警戒してか向きを少し変え、目の前を横切ろうとするカルロとロッコを叩き潰そうと右前足を振り下ろす。
黄竜程巨大なモンスターの攻撃に耐えられるようなスキルではないとはいえ、長年の戦闘技術と高められたステータスでこの一撃を受け流し、ロッコは黄竜相手に牽制にもならないだろうとは思いつつも矢を放つ。
そして黄竜が動き出せば人間側も行動を開始しており、ネストレは注意がそれた瞬間に駆け出し、エアレイドによる超加速で左前足の肩に当たる部分まで跳躍。
鱗に掴まりながら背面目指して這い上がる。
同じように行動を開始したコルラードは尻尾へと向かって駆け出し、それほど硬くはないだろうと尻尾の先端をスラッシュで叩き斬る。
切り落とされた尻尾はビチビチとその場で跳ねているが、切られた黄竜は怒りの咆哮をあげてその場から跳躍して全員を視界に捉えられるように向きを変えた。
コルラードと同時に動き出していたマンフレードは踏み潰されそうになるものの、目の前に現れた後足にスラッシュで斬り付け、体重の乗った足に斬撃を受けた事で大きなダメージとなり黄竜も着地体勢を崩す事となった。
そこに駆け込むジョルジョとドナート、その背後からはアリスが続き、悲鳴をあげてバランスを崩した黄竜に接近、前屈みになったところを顎下から突き刺しと斬撃、そして懐に飛び込んだアリスの炎槍が腹部に突き刺さる。
その威力に口から血を吹き出し悲鳴をあげて右後方に倒れ込む黄竜。
やはり収束された炎槍は竜種にも通用する絶大な威力を持つようだ。
未だ鱗にしがみついていたネストレはそのまま背後へと回り込み、動きの鈍くなった黄竜の首筋へとダガーを突き刺した。
回り込もうと走っていたフィオレも黄竜の右前足から駆け上がり、翼の付け根部分へとインパクトを射ち込み、近距離から放たれたインパクトの威力に黄竜も跳ね上がるほどの衝撃を受け、口から流れ出る血の量がさらに増す。
黄竜ももう限界が近いのだろう、全員でトドメとばかりに次々に攻撃を浴びせていき、最後にアリスの炎槍が胸を貫いて黄竜討伐を終えた。
10
お気に入りに追加
1,777
あなたにおすすめの小説
『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~
川嶋マサヒロ
ファンタジー
ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。
かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。
それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。
現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。
引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。
あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。
そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。
イラストは
ジュエルセイバーFREE 様です。
URL:http://www.jewel-s.jp/
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる