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72 ディーノの趣味?
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ディーノがいるであろうティアマトが倒れた場所までやって来たアリスとフィオレ、アークトゥルスのメンバー。
「なんだ、こいつら……まさか趣味でやってるんじゃねぇよな」
「殴られた後があるしディーノの仕業だろ。それにしてもディーノの奴こんな趣味が?」
ディーノが捕らえた十二人の男達は服こそ着ているものの、なかなかに際どい縛られ方をして吊るされていた。
蔦を使って器用に縛りあげられたその姿は亀の甲羅のような形を模しており、口の中には固い木の実が入れられた状態で塞がれているようだ。
気絶したままの者も何人かいるのだが、意識を取り戻した者は息を切らしながら苦悶の表情を浮かべている。
しかし中には興奮状態の者も何人かいるようで、口から涎を垂らしながら息を荒げ、恍惚とした表情のまま呻き声をあげている。
そしてアリス達の姿を確認するとさらに息づかいが荒くなり、興奮が高まり続けたかと思うと白目を剥いて痙攣し始めた。
アリスとフィオレも人間のこんな恐ろしい光景を目の当たりにした事はなかった為、二人は抱き合って震えながらルーヴェべデル兵を見上げる。
これが本当にディーノの仕業であるとすれば、彼らは相当にディーノの怒りを買ったのだろうと思いながらその姿を目に焼き付ける。
普段は強くて優しい頼り甲斐のあるディーノ=エイシス。
その逆鱗に触れる事の意味、それは今目の前にある光景が自分に降り掛かるという事であり、口を塞がれたうえ縛りあげて吊るされるという事だ。
「アリスも大変だな。もしディーノがこれを好のんでやってるとすりゃあ……想像する分にゃ悪くねぇ」
「やめてよ!こんな恐ろしい事をディーノが私にするわけないでしょ!?」
「ガハハッ。だがあいつはモテそうだからな。時にぁ男の趣味に合わせてやんねぇと他の女に取られちまうかもしれねぇぜ?」
ルーヴェべデル兵のあまりにも悲惨な光景に気が動転しているアリスはコルラードの揶揄いに気付く事ができないようだ。
「う、嘘……で、しょ……」
フィオレの肩に掴まる手からも力が抜けて膝から崩れ落ちてしまう。
「おいコラ。人を勝手に変態扱いするなよ」
そこへ丁度よく戻って来たディーノは捕まえた貴族男を地面に転がし、アリスを立たせてフィオレと引き剥がす。
「あれ……ディーノの趣味じゃないの?」
「んん、なんでそれを信じた。オレってそんな変態に見えんのか?」
ディーノの質問に対して首を横に振るアリス。
「あれは絶対に逃げられない吊し方だからって兄貴から習ったんだ。兄貴も知り合いの娼婦から習ったって言ってたけどな」
ザックの知り合いの娼婦はその系統の娼婦という事なのだろう。
その娼婦がザックに対してどのように教えたのか気にならなくもないのだが、今はディーノの趣味ではないという事がわかればそれだけでアリスは充分である。
ディーノの胸に顔を埋めて嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ディーノっディーノっ!僕も遠くからディーノの戦いを見てたんだ!あんなに大きなモンスターを相手に空を飛んでるみたいに戦って!すっごくかっこよかったよ!」
いつになくテンションの高いフィオレは少しだけ頬が赤く、興奮気味にディーノの腕を掴んでくる。
そんなフィオレは弓矢を使う遠距離戦を得意とする事から誰よりも遠目が効く為、ディーノとティアマトの戦いを遠く離れた位置からでもはっきりと見る事ができるのだ。
目で追えない程の速度で移動するディーノの姿も、距離がある事でフィオレは戦いの全てを見届けていた。
「お、フィオレもいい顔するようになったな。オレじゃ大した事は言ってやれないが……敵討ちを済ませたんだし仲間も満足してくれてると思うよ。仲間を失ったのは残念だがお前はこうして生き残ったんだ。命を大事に、仲間の為にも笑って生きろよ」
ディーノが頭を撫でてやると嬉しそうに笑顔を向けるフィオレ。
その手をとって自分の頬に当て、ディーノに上目遣いで懇願する。
「ディーノ。お願いがあるの。僕をディーノとアリスのパーティーに入れてくれない?」
ディーノとしても少し予想できた事ではあるが、今は恋人でもあるアリスの意見を尊重しようと考える。
「オレは構わないけどアリスはどうだ?」
「いいけど……ディーノは私のよ?絶対に変な気を起こしちゃダメだからね」
アリスの言葉に首を傾げながらも「わかった」と答えるフィオレは、アリスの言う言葉の意味を理解していないのかもしれない。
「よし、でもこれでやっとオレ達も正式にパーティーを組めるな。基本的にオレはソロに特化してるからパーティーって呼べるかは微妙なとこだけど、前衛のアリスと後衛のフィオレ、決まった配置は無しで遊撃のオレって事でなかなかいいパーティーにはなると思う。そんなわけでよろしくな、アリス、フィオレ」
拳を突き出したディーノに合わせるフィオレと、一度ディーノから離れて拳を合わせるアリス。
「よろしく」と笑顔を向け合い、ここにディーノの新たなパーティーが結成する事になった。
「アークトゥルスも友好パーティーって事でこれからもよろしく」
「そう言ってくれると嬉しいぜぇ」
「今後もよろしくな~」
「美男美女パーティーたぁ羨ましいぜ、なぁおい、ガハハッ」
「それならヴィタを僕に譲ってくれてもいいんじゃないかな」
「絶対にやらん」
「ディーノ……」
「ヴィタと一緒にご飯行きたいね」
各々自由な発言もありつつ、ディーノは貴族男も木に吊るしてティアマトの死体を全員で確認する事にした。
ルーヴェべデル兵に寄生されていたとはいえ生きていたモンスターであり、魔核を回収して持ち帰る事で今後は新種として図鑑に乗るかもしれない。
ディーノの爆破で破砕してしまった可能性はあるとしても、体を切り裂いて魔核を回収する事にした。
日が傾き、空が少し赤くなってきた頃には魔核の回収を済ませ、ルーヴェべデル兵を全員木から下ろして歩けるようにしてから危険領域を抜けようと歩き出す。
兵士とはいえ誰もがテイマーであり、全員蔦で繋いでいる為逃げる事もできないだろう。
後ろ手に縛ったまま危険領域を進んで元来た道を引き返していく。
空が白んできた頃には野営地を予定していた位置までたどり着き、馬の姿がなかった事から逃げ出したものと判断する。
もしかするとディーノとティアマトの戦いが原因で、危険領域から多くのモンスターが逃げ出した事で馬も逃げたのかもしれないが、これから野営の準備を始める必要もある為この日は馬の捜索は諦めた。
もし馬が見つからないようならルーヴェべデル兵を括り付けて馬車を引かせるだけである。
ディーノとアリスはいつものように馬車に幌を張ってテントを被せ、簡易ベッドにしてアリスの寝床にする。
アークトゥルスは晴れてる日にはテントを張らないとの事で雑魚寝をするそうだ。
ディーノとネストレで持ってきていた食材を使って調理を始め、ルーヴェべデル兵の見張りをフィオレとロッコが担当し、他の者は焚き木を集めに周囲を散策する。
調理が済めば全員で食事とし、量は少ないがルーヴェべデル兵にも四人ずつ拘束を解いて食事を与えた。
「なんだ、こいつら……まさか趣味でやってるんじゃねぇよな」
「殴られた後があるしディーノの仕業だろ。それにしてもディーノの奴こんな趣味が?」
ディーノが捕らえた十二人の男達は服こそ着ているものの、なかなかに際どい縛られ方をして吊るされていた。
蔦を使って器用に縛りあげられたその姿は亀の甲羅のような形を模しており、口の中には固い木の実が入れられた状態で塞がれているようだ。
気絶したままの者も何人かいるのだが、意識を取り戻した者は息を切らしながら苦悶の表情を浮かべている。
しかし中には興奮状態の者も何人かいるようで、口から涎を垂らしながら息を荒げ、恍惚とした表情のまま呻き声をあげている。
そしてアリス達の姿を確認するとさらに息づかいが荒くなり、興奮が高まり続けたかと思うと白目を剥いて痙攣し始めた。
アリスとフィオレも人間のこんな恐ろしい光景を目の当たりにした事はなかった為、二人は抱き合って震えながらルーヴェべデル兵を見上げる。
これが本当にディーノの仕業であるとすれば、彼らは相当にディーノの怒りを買ったのだろうと思いながらその姿を目に焼き付ける。
普段は強くて優しい頼り甲斐のあるディーノ=エイシス。
その逆鱗に触れる事の意味、それは今目の前にある光景が自分に降り掛かるという事であり、口を塞がれたうえ縛りあげて吊るされるという事だ。
「アリスも大変だな。もしディーノがこれを好のんでやってるとすりゃあ……想像する分にゃ悪くねぇ」
「やめてよ!こんな恐ろしい事をディーノが私にするわけないでしょ!?」
「ガハハッ。だがあいつはモテそうだからな。時にぁ男の趣味に合わせてやんねぇと他の女に取られちまうかもしれねぇぜ?」
ルーヴェべデル兵のあまりにも悲惨な光景に気が動転しているアリスはコルラードの揶揄いに気付く事ができないようだ。
「う、嘘……で、しょ……」
フィオレの肩に掴まる手からも力が抜けて膝から崩れ落ちてしまう。
「おいコラ。人を勝手に変態扱いするなよ」
そこへ丁度よく戻って来たディーノは捕まえた貴族男を地面に転がし、アリスを立たせてフィオレと引き剥がす。
「あれ……ディーノの趣味じゃないの?」
「んん、なんでそれを信じた。オレってそんな変態に見えんのか?」
ディーノの質問に対して首を横に振るアリス。
「あれは絶対に逃げられない吊し方だからって兄貴から習ったんだ。兄貴も知り合いの娼婦から習ったって言ってたけどな」
ザックの知り合いの娼婦はその系統の娼婦という事なのだろう。
その娼婦がザックに対してどのように教えたのか気にならなくもないのだが、今はディーノの趣味ではないという事がわかればそれだけでアリスは充分である。
ディーノの胸に顔を埋めて嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ディーノっディーノっ!僕も遠くからディーノの戦いを見てたんだ!あんなに大きなモンスターを相手に空を飛んでるみたいに戦って!すっごくかっこよかったよ!」
いつになくテンションの高いフィオレは少しだけ頬が赤く、興奮気味にディーノの腕を掴んでくる。
そんなフィオレは弓矢を使う遠距離戦を得意とする事から誰よりも遠目が効く為、ディーノとティアマトの戦いを遠く離れた位置からでもはっきりと見る事ができるのだ。
目で追えない程の速度で移動するディーノの姿も、距離がある事でフィオレは戦いの全てを見届けていた。
「お、フィオレもいい顔するようになったな。オレじゃ大した事は言ってやれないが……敵討ちを済ませたんだし仲間も満足してくれてると思うよ。仲間を失ったのは残念だがお前はこうして生き残ったんだ。命を大事に、仲間の為にも笑って生きろよ」
ディーノが頭を撫でてやると嬉しそうに笑顔を向けるフィオレ。
その手をとって自分の頬に当て、ディーノに上目遣いで懇願する。
「ディーノ。お願いがあるの。僕をディーノとアリスのパーティーに入れてくれない?」
ディーノとしても少し予想できた事ではあるが、今は恋人でもあるアリスの意見を尊重しようと考える。
「オレは構わないけどアリスはどうだ?」
「いいけど……ディーノは私のよ?絶対に変な気を起こしちゃダメだからね」
アリスの言葉に首を傾げながらも「わかった」と答えるフィオレは、アリスの言う言葉の意味を理解していないのかもしれない。
「よし、でもこれでやっとオレ達も正式にパーティーを組めるな。基本的にオレはソロに特化してるからパーティーって呼べるかは微妙なとこだけど、前衛のアリスと後衛のフィオレ、決まった配置は無しで遊撃のオレって事でなかなかいいパーティーにはなると思う。そんなわけでよろしくな、アリス、フィオレ」
拳を突き出したディーノに合わせるフィオレと、一度ディーノから離れて拳を合わせるアリス。
「よろしく」と笑顔を向け合い、ここにディーノの新たなパーティーが結成する事になった。
「アークトゥルスも友好パーティーって事でこれからもよろしく」
「そう言ってくれると嬉しいぜぇ」
「今後もよろしくな~」
「美男美女パーティーたぁ羨ましいぜ、なぁおい、ガハハッ」
「それならヴィタを僕に譲ってくれてもいいんじゃないかな」
「絶対にやらん」
「ディーノ……」
「ヴィタと一緒にご飯行きたいね」
各々自由な発言もありつつ、ディーノは貴族男も木に吊るしてティアマトの死体を全員で確認する事にした。
ルーヴェべデル兵に寄生されていたとはいえ生きていたモンスターであり、魔核を回収して持ち帰る事で今後は新種として図鑑に乗るかもしれない。
ディーノの爆破で破砕してしまった可能性はあるとしても、体を切り裂いて魔核を回収する事にした。
日が傾き、空が少し赤くなってきた頃には魔核の回収を済ませ、ルーヴェべデル兵を全員木から下ろして歩けるようにしてから危険領域を抜けようと歩き出す。
兵士とはいえ誰もがテイマーであり、全員蔦で繋いでいる為逃げる事もできないだろう。
後ろ手に縛ったまま危険領域を進んで元来た道を引き返していく。
空が白んできた頃には野営地を予定していた位置までたどり着き、馬の姿がなかった事から逃げ出したものと判断する。
もしかするとディーノとティアマトの戦いが原因で、危険領域から多くのモンスターが逃げ出した事で馬も逃げたのかもしれないが、これから野営の準備を始める必要もある為この日は馬の捜索は諦めた。
もし馬が見つからないようならルーヴェべデル兵を括り付けて馬車を引かせるだけである。
ディーノとアリスはいつものように馬車に幌を張ってテントを被せ、簡易ベッドにしてアリスの寝床にする。
アークトゥルスは晴れてる日にはテントを張らないとの事で雑魚寝をするそうだ。
ディーノとネストレで持ってきていた食材を使って調理を始め、ルーヴェべデル兵の見張りをフィオレとロッコが担当し、他の者は焚き木を集めに周囲を散策する。
調理が済めば全員で食事とし、量は少ないがルーヴェべデル兵にも四人ずつ拘束を解いて食事を与えた。
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