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三日振りにBB級パーティークエストから、王都バランタイン南区ギルドへと戻って来たブレイブのメンバー。
「依頼は失敗だ!くそったれが!」
受付へと来たマリオが違約金の入った皮袋をカウンターに叩き付けた。
皮袋を受け取り中身を確認した受付嬢のケイトは、現在のブレイブの状況を伝える。
「ブレイブの皆さん、BB級クエストの達成率がそろそろ五割を割り込みそうです。次にもしBB級クエストを失敗した場合にはCC級となりますのでご注意下さい」
ブレイブを結成して三月程が経過するが、未だに連携が取れずにBB級クエストのおよそ半分を失敗に終えている。
この失敗が続くのはディーノがいたオリオンと同じく、ジェラルドとマリオが前に出ずソーニャ一人に前衛を押し付けているのが最大の原因だろう。
レナータがどれだけサポートしたとしても、モンスター相手に弓矢では大きなダメージを与える事はできない。
ソーニャが命がけでモンスターに少しずつ傷をつけていく間、レナータは矢が無くなるまで援護し続け、ジェラルドとマリオはソーニャが倒れるかモンスターの体力が尽きるまで待機している。
ソーニャが倒れて初めてジェラルドは巨盾で体当たりをし、マリオは隙を見て攻撃を加えるのだが、倒せる確率は低い。
レナータが二人を説得してソーニャの負担を減らそうとするも、これが自分達の連携だと言い張りこれまで改善される事はなかった。
また、この命がけの戦いによりソーニャも多くの経験を積み、少しずつステータスが上昇していっているものの、まだBB級モンスターとソロで戦う程の強さまでは至っていない。
これがせめてCC級モンスターであれば失敗する事はほとんどないのだが、マリオとジェラルドはBB級クエストしか選ぶ事はない。
実はソーニャのこの戦いは、オリオンにディーノかいた時よりも厳しいもので、実力が全く伴わないモンスターを相手に毎度ソーニャはソロで挑まされているのだ。
ディーノの場合はBB級モンスターに挑めるだけの実力を得てオリオンの評価がBB級に昇格していた為、次第に厳しい戦いになってはいくものの、マリオやジェラルドの助けがなくとも戦う事ができていた。
それでもソーニャはレナータの援護を信じてモンスターに挑み続け、毎度死を覚悟する程のダメージを受けても傷が癒えれば立ち上がる。
このパーティーメンバーと共に戦い続け、今は商業都市ラフロイグでソロのS級冒険者として活躍するディーノの影を追って。
「んな事ぁ言われなくてもわかってんだよ!この女がもっとしっかり働きゃぁ俺達が失敗なんざするわけねぇだろ!ったくよぉ、シーフとして役に立たねぇわ女としても役に立たねぇわ最悪だぜ!」
声を荒げてソーニャを侮辱するマリオに怒りを覚えたケイト。
「マリオさん。パーティーでの戦い方はそれぞれあると思いますが、ソーニャさん個人を責めるのはいかがなものかと思います。私から見る限りいつも血や汚れを付けているのはソーニャさんだけ。マリオさん。貴方はクエストに見学にでも行ってるんですか?」
マリオが怒鳴りつける際、ソーニャはレナータに掴まって震えており、この事からソーニャはレナータには信頼を置いている事が伺える。
ジェラルドが口を開く事はないが、立ち位置からこのガーディアンもマリオ側かとケイトは判断する。
周囲からはマリオの発言に「最低」「クズね」「落ちたSS級」「口だけの雑魚」などと嘲笑が聞こえて来る。
「なんだと、この女……」とマリオが剣に手を掛けると、周囲にいた冒険者達が立ち上がる。
誰もが受付嬢であるケイトには世話になっているのだ。
元SS級パーティーのメンバーが相手だとしても黙っているわけにはいかないだろう。
「ディーノさんが心配してましたよ。新しいパーティーメンバーは大丈夫なのかと」
「……ディーノと会ったのかよ。あいつ今どこにいるんだ」
マリオとしてはディーノがバランタインにいるのであれば呼び戻してやってもいいと考えている。
役に立たないソーニャよりはディーノの方が使えると。
「あと数日王都に……あ、今来たと思います」
ケイトがギルドの入り口に目を向けると、上機嫌なディーノが扉を開けて入って来た。
周囲の視線も気にせず受付へと向かい、ブレイブにも目をくれずにケイトに声をかける。
「ケイトおはよ。昨日はありがとな。ダリアン様も大喜びだったし、伯爵様が今度ケイトとも話がしたいって言ってたよ」
元オリオンメンバーに全く気付かないディーノは、ラフロイグでの勧誘地獄からスルースキルが高くなった事が原因だろう。
少し険しい顔をしていたケイトには笑顔が戻る。
「ディーノさんおはようございます。ラフロイグ伯爵様が私とお話しを?一介のギルド嬢が伯爵様とお話しできるなんて……」
ケイトは元は孤児であり、貴族の、それも商業都市ラフロイグの領主という大貴族と話をする事などそうある事ではない。
貴族からの依頼であれば使いの者からギルド長を通して行われる為、接点すら持つ事は少ない。
そしてケイトもブレイブを放ってディーノとの会話を楽しみだす。
受付嬢が冒険者を贔屓する事は良くないのだが、同じ孤児院育ちという事もあって以前から二人は仲がいい。
美人受付嬢と仲のいい、そしてどんどん結果を出していったオリオンのディーノ。
周囲の男達からは嫉妬の目を向けられる事も多かった。
「おい、ディーノ。ちょっと来いよ」
完全に無視をされていたマリオはディーノの肩を掴んで声を掛けた。
「ん?……なんだマリオか。ジェラルド、レナも久しぶりだな。あ~ケイト、なんかクエスト選んでおいてくれよ。遠くないやつ。それ終わったらまたご飯食いに行こうぜ」
ケイトに依頼選びを任せ、「よし、行こうか」と気負う事なく先行くディーノ。
マリオは余裕を見せるディーノに舌打ちして後を追う。
ギルド内でも酒や料理を提供しているが、妙な噂をされても困るだろうと近くの喫茶店に入る。
店内は普段着を着た客ばかりだが、ディーノが数日前に来た時も冒険者姿でも問題はなかった。
六人掛けの席へと案内され、今日のおすすめをと、お茶とスイーツを注文したディーノはとりあえず挨拶から始める。
「まずは久しぶり。元気そうでなによりだ。それと……やっぱりソーニャがパーティーに入ったか。こいつらバカだから大変だな」
「ディーノ……」と少し涙目なソーニャはこれまでのクエストを思い出して辛くなったのだろう。
「大変なのはこっちだっつの。おいディーノ。もうすぐパーティー結成の固定期間が解除されるからよぉ。お前、戻って来ていいぜ。ソーニャじゃBB級もまともに相手にできねぇからよ」
ディーノとしては(相変わらず何もしてないんだな)と思うしかない。
「言っとくがオレは戻る気はないし今はソロでいい。ま、ラフロイグで自由にやらせてもらってるしな。受付嬢が結構な無理難題も聞いてくれるしさ」
ソロでSS級モンスターも紹介してもらえる程だ。
無理難題どころか二人揃って怒られるのだが。
ディーノに断られた事で舌打ちするマリオ。
そこへ店員がケーキとお茶を運んできて全員の前に置いていく。
ソーニャは涙を拭ってフォークを刺し、口に含んで少し笑みが溢れる。
「店員さん、彼女が食べ終わったら追加で別のを」と追加注文をすると、ソーニャは嬉しそうにディーノに笑顔を向けた。
「お前、ランクはどうなってるんだよ。ソロじゃ大したもん受けれねぇだろ」
「一応はS級だ。クエストもBB級あたりを紹介してもらってる」
ガタリと立ち上がったマリオは、悔しそうな表情を残して何も言わずに店を出て行った。
ジェラルドも無言で後を追い、店内にはディーノとレナータとソーニャの三人だけが残る。
そしてマリオとジェラルドのケーキも。
ディーノの返答に二人は気付いてしまったのだ。
BB級クエストをソロで受けられる事、それはディーノの評価値が80を超えているという事に。
SS級パーティーとして活躍していた自分達の評価が30にも満たなかったにも関わらず、追放したディーノの評価値が80超え。
この事実に耐えられなかったのだろう。
そしてすぐに残った二人も気付く。
「ディーノはS級80以上なの……?」
「ソロ登録時は81だったな」
この言い方からさらに実力を身につけている事は確かだろう。
そしてディーノの武器は装飾の施され、宝玉の埋め込まれた属性剣に変わっている事。
シーフとしての能力にセイバーとしての攻撃力。
さらにはウィザードとしての魔法までもが使用可能というのであれば、ソロ冒険者として恐ろしい程の実力を身に付けている事は間違いない。
自分のケーキを食べ終えたディーノはマリオとジェラルドのケーキを引っ張り、一つをレナータに渡す。
「美味いよな~」と嬉しそうなディーノだが、レナータはケーキが喉を通らない思いだ。
「あいつらオレを呼び出しておいて速攻で帰るとか失礼すぎないか?あ、パーティーに戻って来いとか言ってたか。言いたい事言ったから用件は終わりって事かな?」
(違うだろうな)と思いつつお茶で喉を潤すレナータ。
「ねぇディーノ。私達クエストから昨日帰って来たんだけど明後日まで休みなのよね。そこでちょっとお願いがあるんだけど」
「まあ、レナの頼みなら断るつもりはないけど……あと四日もしたらラフロイグ戻るぞ?」
特に王都滞在期間をどうするかなどと決まりはないのだが、自分で十日程と考えていた為一応は言っておく。
「うん。あのね、ディーノのクエストにソーニャを同行させて欲しいの。パーティーとしてじゃなく、ただの見学でいいから」
「あの、お願い……できないかな」
もう三月程もの期間、死を覚悟しながらも戦ってきたソーニャだが、常に傷を負う自分の戦いに自信を持つ事ができない。
同じシーフとして戦ってきたディーノの戦いから、何か得られるものがあればとの思いからの相談だろう。
「んん……」とディーノも考える。
パーティーではなく同行者として共に行動した場合に、ギフトの贈り物としての能力がどう働くのかわからない。
オリオンを脱退した事で能力が解除した過去がある為、ここでもしギフトが贈り物として発動したとしても、ラフロイグに戻れば能力は解除されるはずだ。
ここは一度実験のつもりでいろいろと試してみるのもいいかもしれない。
「じゃあ見学ついでにオレの実験にも付き合ってくれるか?ソーニャの安全は約束するし、働きによっては報酬も支払う。どうだ?」
「うん!お願い!」
「ありがとディーノ」
ソーニャやレナータの望みとディーノのスキルについての実験。
お互いに利があれば断る理由もないだろう。
「依頼は失敗だ!くそったれが!」
受付へと来たマリオが違約金の入った皮袋をカウンターに叩き付けた。
皮袋を受け取り中身を確認した受付嬢のケイトは、現在のブレイブの状況を伝える。
「ブレイブの皆さん、BB級クエストの達成率がそろそろ五割を割り込みそうです。次にもしBB級クエストを失敗した場合にはCC級となりますのでご注意下さい」
ブレイブを結成して三月程が経過するが、未だに連携が取れずにBB級クエストのおよそ半分を失敗に終えている。
この失敗が続くのはディーノがいたオリオンと同じく、ジェラルドとマリオが前に出ずソーニャ一人に前衛を押し付けているのが最大の原因だろう。
レナータがどれだけサポートしたとしても、モンスター相手に弓矢では大きなダメージを与える事はできない。
ソーニャが命がけでモンスターに少しずつ傷をつけていく間、レナータは矢が無くなるまで援護し続け、ジェラルドとマリオはソーニャが倒れるかモンスターの体力が尽きるまで待機している。
ソーニャが倒れて初めてジェラルドは巨盾で体当たりをし、マリオは隙を見て攻撃を加えるのだが、倒せる確率は低い。
レナータが二人を説得してソーニャの負担を減らそうとするも、これが自分達の連携だと言い張りこれまで改善される事はなかった。
また、この命がけの戦いによりソーニャも多くの経験を積み、少しずつステータスが上昇していっているものの、まだBB級モンスターとソロで戦う程の強さまでは至っていない。
これがせめてCC級モンスターであれば失敗する事はほとんどないのだが、マリオとジェラルドはBB級クエストしか選ぶ事はない。
実はソーニャのこの戦いは、オリオンにディーノかいた時よりも厳しいもので、実力が全く伴わないモンスターを相手に毎度ソーニャはソロで挑まされているのだ。
ディーノの場合はBB級モンスターに挑めるだけの実力を得てオリオンの評価がBB級に昇格していた為、次第に厳しい戦いになってはいくものの、マリオやジェラルドの助けがなくとも戦う事ができていた。
それでもソーニャはレナータの援護を信じてモンスターに挑み続け、毎度死を覚悟する程のダメージを受けても傷が癒えれば立ち上がる。
このパーティーメンバーと共に戦い続け、今は商業都市ラフロイグでソロのS級冒険者として活躍するディーノの影を追って。
「んな事ぁ言われなくてもわかってんだよ!この女がもっとしっかり働きゃぁ俺達が失敗なんざするわけねぇだろ!ったくよぉ、シーフとして役に立たねぇわ女としても役に立たねぇわ最悪だぜ!」
声を荒げてソーニャを侮辱するマリオに怒りを覚えたケイト。
「マリオさん。パーティーでの戦い方はそれぞれあると思いますが、ソーニャさん個人を責めるのはいかがなものかと思います。私から見る限りいつも血や汚れを付けているのはソーニャさんだけ。マリオさん。貴方はクエストに見学にでも行ってるんですか?」
マリオが怒鳴りつける際、ソーニャはレナータに掴まって震えており、この事からソーニャはレナータには信頼を置いている事が伺える。
ジェラルドが口を開く事はないが、立ち位置からこのガーディアンもマリオ側かとケイトは判断する。
周囲からはマリオの発言に「最低」「クズね」「落ちたSS級」「口だけの雑魚」などと嘲笑が聞こえて来る。
「なんだと、この女……」とマリオが剣に手を掛けると、周囲にいた冒険者達が立ち上がる。
誰もが受付嬢であるケイトには世話になっているのだ。
元SS級パーティーのメンバーが相手だとしても黙っているわけにはいかないだろう。
「ディーノさんが心配してましたよ。新しいパーティーメンバーは大丈夫なのかと」
「……ディーノと会ったのかよ。あいつ今どこにいるんだ」
マリオとしてはディーノがバランタインにいるのであれば呼び戻してやってもいいと考えている。
役に立たないソーニャよりはディーノの方が使えると。
「あと数日王都に……あ、今来たと思います」
ケイトがギルドの入り口に目を向けると、上機嫌なディーノが扉を開けて入って来た。
周囲の視線も気にせず受付へと向かい、ブレイブにも目をくれずにケイトに声をかける。
「ケイトおはよ。昨日はありがとな。ダリアン様も大喜びだったし、伯爵様が今度ケイトとも話がしたいって言ってたよ」
元オリオンメンバーに全く気付かないディーノは、ラフロイグでの勧誘地獄からスルースキルが高くなった事が原因だろう。
少し険しい顔をしていたケイトには笑顔が戻る。
「ディーノさんおはようございます。ラフロイグ伯爵様が私とお話しを?一介のギルド嬢が伯爵様とお話しできるなんて……」
ケイトは元は孤児であり、貴族の、それも商業都市ラフロイグの領主という大貴族と話をする事などそうある事ではない。
貴族からの依頼であれば使いの者からギルド長を通して行われる為、接点すら持つ事は少ない。
そしてケイトもブレイブを放ってディーノとの会話を楽しみだす。
受付嬢が冒険者を贔屓する事は良くないのだが、同じ孤児院育ちという事もあって以前から二人は仲がいい。
美人受付嬢と仲のいい、そしてどんどん結果を出していったオリオンのディーノ。
周囲の男達からは嫉妬の目を向けられる事も多かった。
「おい、ディーノ。ちょっと来いよ」
完全に無視をされていたマリオはディーノの肩を掴んで声を掛けた。
「ん?……なんだマリオか。ジェラルド、レナも久しぶりだな。あ~ケイト、なんかクエスト選んでおいてくれよ。遠くないやつ。それ終わったらまたご飯食いに行こうぜ」
ケイトに依頼選びを任せ、「よし、行こうか」と気負う事なく先行くディーノ。
マリオは余裕を見せるディーノに舌打ちして後を追う。
ギルド内でも酒や料理を提供しているが、妙な噂をされても困るだろうと近くの喫茶店に入る。
店内は普段着を着た客ばかりだが、ディーノが数日前に来た時も冒険者姿でも問題はなかった。
六人掛けの席へと案内され、今日のおすすめをと、お茶とスイーツを注文したディーノはとりあえず挨拶から始める。
「まずは久しぶり。元気そうでなによりだ。それと……やっぱりソーニャがパーティーに入ったか。こいつらバカだから大変だな」
「ディーノ……」と少し涙目なソーニャはこれまでのクエストを思い出して辛くなったのだろう。
「大変なのはこっちだっつの。おいディーノ。もうすぐパーティー結成の固定期間が解除されるからよぉ。お前、戻って来ていいぜ。ソーニャじゃBB級もまともに相手にできねぇからよ」
ディーノとしては(相変わらず何もしてないんだな)と思うしかない。
「言っとくがオレは戻る気はないし今はソロでいい。ま、ラフロイグで自由にやらせてもらってるしな。受付嬢が結構な無理難題も聞いてくれるしさ」
ソロでSS級モンスターも紹介してもらえる程だ。
無理難題どころか二人揃って怒られるのだが。
ディーノに断られた事で舌打ちするマリオ。
そこへ店員がケーキとお茶を運んできて全員の前に置いていく。
ソーニャは涙を拭ってフォークを刺し、口に含んで少し笑みが溢れる。
「店員さん、彼女が食べ終わったら追加で別のを」と追加注文をすると、ソーニャは嬉しそうにディーノに笑顔を向けた。
「お前、ランクはどうなってるんだよ。ソロじゃ大したもん受けれねぇだろ」
「一応はS級だ。クエストもBB級あたりを紹介してもらってる」
ガタリと立ち上がったマリオは、悔しそうな表情を残して何も言わずに店を出て行った。
ジェラルドも無言で後を追い、店内にはディーノとレナータとソーニャの三人だけが残る。
そしてマリオとジェラルドのケーキも。
ディーノの返答に二人は気付いてしまったのだ。
BB級クエストをソロで受けられる事、それはディーノの評価値が80を超えているという事に。
SS級パーティーとして活躍していた自分達の評価が30にも満たなかったにも関わらず、追放したディーノの評価値が80超え。
この事実に耐えられなかったのだろう。
そしてすぐに残った二人も気付く。
「ディーノはS級80以上なの……?」
「ソロ登録時は81だったな」
この言い方からさらに実力を身につけている事は確かだろう。
そしてディーノの武器は装飾の施され、宝玉の埋め込まれた属性剣に変わっている事。
シーフとしての能力にセイバーとしての攻撃力。
さらにはウィザードとしての魔法までもが使用可能というのであれば、ソロ冒険者として恐ろしい程の実力を身に付けている事は間違いない。
自分のケーキを食べ終えたディーノはマリオとジェラルドのケーキを引っ張り、一つをレナータに渡す。
「美味いよな~」と嬉しそうなディーノだが、レナータはケーキが喉を通らない思いだ。
「あいつらオレを呼び出しておいて速攻で帰るとか失礼すぎないか?あ、パーティーに戻って来いとか言ってたか。言いたい事言ったから用件は終わりって事かな?」
(違うだろうな)と思いつつお茶で喉を潤すレナータ。
「ねぇディーノ。私達クエストから昨日帰って来たんだけど明後日まで休みなのよね。そこでちょっとお願いがあるんだけど」
「まあ、レナの頼みなら断るつもりはないけど……あと四日もしたらラフロイグ戻るぞ?」
特に王都滞在期間をどうするかなどと決まりはないのだが、自分で十日程と考えていた為一応は言っておく。
「うん。あのね、ディーノのクエストにソーニャを同行させて欲しいの。パーティーとしてじゃなく、ただの見学でいいから」
「あの、お願い……できないかな」
もう三月程もの期間、死を覚悟しながらも戦ってきたソーニャだが、常に傷を負う自分の戦いに自信を持つ事ができない。
同じシーフとして戦ってきたディーノの戦いから、何か得られるものがあればとの思いからの相談だろう。
「んん……」とディーノも考える。
パーティーではなく同行者として共に行動した場合に、ギフトの贈り物としての能力がどう働くのかわからない。
オリオンを脱退した事で能力が解除した過去がある為、ここでもしギフトが贈り物として発動したとしても、ラフロイグに戻れば能力は解除されるはずだ。
ここは一度実験のつもりでいろいろと試してみるのもいいかもしれない。
「じゃあ見学ついでにオレの実験にも付き合ってくれるか?ソーニャの安全は約束するし、働きによっては報酬も支払う。どうだ?」
「うん!お願い!」
「ありがとディーノ」
ソーニャやレナータの望みとディーノのスキルについての実験。
お互いに利があれば断る理由もないだろう。
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