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11 サボり続けた主人公
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オリオンを脱退してからおよそ一月。
商業都市ラフロイグのギルドにやって来たディーノは真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。
「すみませーん。ソロで再登録お願いしまーす」
元々はSS級パーティー【オリオン】のメンバーだったとしても、ソロで活動するのであれば再登録が必要だ。
首から下げてある冒険者登録証を外して受付嬢へと渡した。
「王都オリオンのディーノさん!お待ちしてましたよ!オリオンから除籍となってラフロイグに留まっていると聞いていましたからね!あ、すみません。わたし受付を担当している【エルヴェーラ】です。ディーノさんが除籍と聞いて不思議に思って調べさせて頂いたんですが……」
「あぁ、別に構わないけど……なんなの?その目は」
「いえ、新人登録した際のステータスが面白くてですね!今どれだけ強くなっているのかと楽しみにしてました!」
まぁ確かにおかしなステータスだったなと思い返すディーノだが、シーフとしての評価値はそう高くなかったはずだ。
「是非とも新人登録時と今のステータスを見比べてみましょう!」
興奮気味のエルヴェーラは「ああ、今日シフト入れてて良かった~」などと嬉しそうだ。
まぁ何が彼女をそこまで興奮させるのかはわからないが、ソロ登録にはステータス測定がある為見比べても構わない。
ラフロイグのギルドでは別室に案内され、そこでステータス測定が行われる。
王都の測定器に比べるとかなり大きく、持ち運びできそうにない。
「では石板の上に乗ってくださいね!」
エルヴェーラに促されて石板に乗り、読み取られたステータスを紙に書き込んでいく。
そこから計算まで済ませて嬉しそうに新旧ステータスを書いた紙を渡して来た。
ーーオリオン結成時ーー
名前:ディーノ=エイシス
攻撃:567
防御:498
俊敏:1351
器用:1118
魔力:1004
法力:543
評価値:25(B級シーフ)
ーーソロ登録時ーー
名前:ディーノ=エイシス
攻撃:1834
防御:1781
俊敏:2246
器用:1718
魔力:1572
法力:1416
評価値:81(S級シーフ)
「どうです!?面白いステータスでしょう?S級シーフの評価値が81ポイントなんて霞んで……しま、う、ま?……嘘、でしょ?自分で書いたのに信じられません……」
エルヴェーラの言うように面白いステータスではある。
各種ジョブに応じた装備を想定してのステータスであるのにも関わらず、全ステータスが軒並み高い。
「なんでこんなステータスなんだろ……」
思わず口から溢れてしまうほどにおかしなステータスだ。
オリオン結成時には攻撃や防御、法力などは低かったが、今では全てが上昇している。
「おそらく、ですが、ディーノさんのスキル【ギフト】が影響してるのではありませんか?ギフト持ちは全ステータスが伸びやすいとかそんな……わけないですよね……」
可能性としては無くもないが、調べようがないのでわからない。
「これ、ジョブを変更して測定した場合……物理系であればどの職業でもS級になれそうですね……」
驚きの事実だ。
ファイターやガーディアン、セイバーにアーチャーなど、武器を変えれば様々なジョブに変更できるようだ。
「まぁジョブはなんでもいいし、とりあえずシーフのままでいいや。ソロで登録よろしく」
「あー、はい……はい!かしこまりました!」
面白がってたわりに少し呆けた感じのエルヴェーラは我に返り、ディーノのソロ冒険者としての申請書を書き込む。
王都では自分で書くのが普通だが、ラフロイグでは受付の方で書いてくれるらしい。
待つ事数分後。
冒険者登録証を受け取り、何か良さそうなクエストを紹介してもらう。
「こちらのCC級クエスト【アーマーウルフ】討伐などいかがですか?固い表皮に素早い動き。ディーノさんならソロでも対応できると思いますが」
アーマーウルフは毛皮の下に鎧のような硬質な肌を持つモンスターで、本来であれば複数名で取り囲み、罠を仕掛けて討伐する。
半年程前にも討伐した事があるモンスターで、その際には大きな怪我もなく討伐する事ができた。
ディーノにとってそれ程大きな脅威にはならないだろう。
「じゃあそれお願いしようかな。この後買い物したら出掛けるよ」
このクエストからソロ冒険者としての第一歩となる。
これまでとは違い仲間の助けはないのだ。
上級回復薬や毒消しなどを充分に用意してから旅に出るようだ。
◇◇◇
雲一片ない青空が広がる中、ディーノはラフロイグから東へと足を向ける。
東に一日と掛からず進んだ先にある【モミュール】領付近に現れたアーマーウルフ。
隣の街【コラーダ】に繋がる街道で行商人や旅人、狩人なども襲われる事もあり、現在は街道を封鎖しているそうだ。
徒歩での旅は初めてではないが、これまでパーティーでの旅だった為、歩きながらでも退屈する事はなかった。
景色を楽しむ事はできるものの、少し寂しさを感じずにはいられない。
ラフロイグから歩き始めてしばらくした頃。
草むらの中からファングボアが飛び出して来た。
雑食のモンスターである為襲って来た場合には戦わなくてはならない。
餌を求めているのか興奮状態のボアはディーノに向かって駆け出そうと前足を持ち上げる。
同時にディーノはダガーを片手に距離を詰め、交差する瞬間にこめかみに突き立てた。
「あれ?」
思わず声をもらしてしまう程に手応えなく突き刺さったダガーに首を傾げるディーノ。
これまでとは手に残る感触が違う事に違和感を覚えたようだ。
しかしたまたま柔らかい部分に突き刺さっただけだろうと思い直し、再び先へと歩き始める。
まだ自身がソロになった変化に気付く事もなく……
途中で休んで昼食を摂っても夕方までには着ける距離なのだが、どうせ行くなら早めに着いて美味い料理屋の情報も聞いておきたい。
そして今日はゆっくりと休み、明日の朝から討伐に向かうのがいいだろう。
ただ黙々とモミュール領までの道のりを歩き進め、景色を眺めては少し寂しさを覚える。
(慣れないとな)と思いつつもやはりオリオンでの旅を思い出すのだった。
◇◇◇
昨夜はモミュール領の門番をしていた男からおすすめの食事処を教えてもらい、ディーノはご当地グルメに舌鼓を打つ。
柑橘の風味が食欲をそそる料理が並べられ、メインの肉料理もさっぱりとした味わいが特徴だ。
そして今、アーマーウルフを前にディーノはダガーを構えている。
久しぶりのクエストにソロで挑むのだ。
油断なく全力で挑むべきだろう。
スキル【ギフト】を発動して移動を開始。
アーマーウルフに向かって真っ直ぐに駆け出す。
向かって来るディーノを敵と判断したウルフは体を低くし、いつでも飛び掛かれる体勢で迎え討つ。
ディーノは下方にダガーを構え、ウルフと交錯する一瞬を突いて横薙ぎに振り抜くと同時に右前方へと跳躍。
固い衝撃と肉を斬り裂く感触が手に残り、再び向かって来るであろうウルフへと向き直るが……
ウルフは地面を滑るように倒れ込み、ビクビクと痙攣すると次第に血溜まりを広げていった。
(あれ……なんでだ?昨日のボアといい今日のウルフといい、こんなに簡単に斬れるモンスターだったか?)
ディーノはウルフの前方へと回り込んで死んでいるのを確認し、足を掴んで倒れている方向を変えてやる。
ダガーでの切り口を確認すると、鼻先から通った刃は鎧のような硬質な肌を切り広げ、刃先は首の動脈へと到達。
首の後方までバッサリと斬り裂いていた。
ディーノは過去のアーマーウルフとの戦いを思い返すが、以前はダガーが硬質な鎧肌を斬り裂く事はできず、鎧肌の隙間を狙ってダメージを蓄積させていった。
今回最初の一撃目は鼻先を切り付ける事によってウルフを怯ませるのが目的だったのだが、予想とは裏腹に一撃で命を刈り取る結果となってしまった。
(ここで以前と違うところといえば……ソロでの戦闘ってだけだよな。ギフトは発動してたし動きの速さはいつも通り。ウルフの鎧肌が斬りやすい個体なんて事はないだろうしなぁ……オレの攻撃力で斬れる……か)
「ん?」
ふと気付いたディーノ。
以前のステータスと今のステータス。
そしてパーティーとソロ。
さらにはギフト。
「もしかして……ギフトはバフだけじゃないのか?」
声に出している事さえ気付かずにディーノは考えをまとめていく。
「オレが知ってるギフトはパーティーメンバーの能力上昇……それも得意とする能力だけのはずだ……今のオレのステータスはシーフなのにも関わらず全ステータスが高い……以前の……パーティー結成時のメンバー……」
ファイターのマリオ。
ガーディアンのジェラルド。
クレリックのレナータ。
「そうだ。ファイターが攻撃、ガーディアンが防御、クレリックが法力。それ以外のステータスは高かった……って事は……嘘、だろ……オレのギフトは……ステータスを、分け与えてたのか?」
冒険者となって約四年。
ディーノは仲間のステータスを底上げするスキルとして、物語に描かれてあった情報以外にギフトについて調べる事はなかった。
ディーノの考えが正しければその四年もの間、ステータス低下状態で過ごしてきた事となる。
そんなはずはないと思いたくとも、今し方倒したアーマーウルフと以前の戦い、ステータスとパーティーメンバーの能力を照らし合わせると、仮説が正しい事を裏付けしていく。
(けどギフトを発動した場合は……)
ディーノの体感できる能力となれば素早さと器用さの二つだろう。
素早さは実際に普段の倍とまではならないものの、相当なスピードで動き回る事が可能だ。
自分よりも大きなモンスターを相手にも立ち回れる程に速度は上昇する。
器用さははっきりとはわからないが、素早さが上がったのにも関わらず、敵の急所や隙間に狙い通りにダガーを突き立てられる。
そしてディーノの能力をギフトとして分け与えられていたと考えられるマリオやジェラルドは、スキルを発動するとある程度の能力上昇を感じられると言っていた。
レナータの場合にもヒールの回復能力が上昇し、傷付いたディーノの回復にも目に見えて効果があるとも聞いている。
「そうか。オレのギフトは……」
パーティーではディーノのステータスの半分程を個々の能力に見合った能力が贈られ、そしてスキルを発動した場合にはそれとはまた別にステータス値が上昇する。
そしてソロであった場合。
普段のディーノのステータスはそのままに、スキルを発動した際にのみステータス値が上昇する。
これによりディーノはパーティーを組む事で弱体化し、ソロで活動する事により最大限の能力を発揮できる事が判明した。
商業都市ラフロイグのギルドにやって来たディーノは真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。
「すみませーん。ソロで再登録お願いしまーす」
元々はSS級パーティー【オリオン】のメンバーだったとしても、ソロで活動するのであれば再登録が必要だ。
首から下げてある冒険者登録証を外して受付嬢へと渡した。
「王都オリオンのディーノさん!お待ちしてましたよ!オリオンから除籍となってラフロイグに留まっていると聞いていましたからね!あ、すみません。わたし受付を担当している【エルヴェーラ】です。ディーノさんが除籍と聞いて不思議に思って調べさせて頂いたんですが……」
「あぁ、別に構わないけど……なんなの?その目は」
「いえ、新人登録した際のステータスが面白くてですね!今どれだけ強くなっているのかと楽しみにしてました!」
まぁ確かにおかしなステータスだったなと思い返すディーノだが、シーフとしての評価値はそう高くなかったはずだ。
「是非とも新人登録時と今のステータスを見比べてみましょう!」
興奮気味のエルヴェーラは「ああ、今日シフト入れてて良かった~」などと嬉しそうだ。
まぁ何が彼女をそこまで興奮させるのかはわからないが、ソロ登録にはステータス測定がある為見比べても構わない。
ラフロイグのギルドでは別室に案内され、そこでステータス測定が行われる。
王都の測定器に比べるとかなり大きく、持ち運びできそうにない。
「では石板の上に乗ってくださいね!」
エルヴェーラに促されて石板に乗り、読み取られたステータスを紙に書き込んでいく。
そこから計算まで済ませて嬉しそうに新旧ステータスを書いた紙を渡して来た。
ーーオリオン結成時ーー
名前:ディーノ=エイシス
攻撃:567
防御:498
俊敏:1351
器用:1118
魔力:1004
法力:543
評価値:25(B級シーフ)
ーーソロ登録時ーー
名前:ディーノ=エイシス
攻撃:1834
防御:1781
俊敏:2246
器用:1718
魔力:1572
法力:1416
評価値:81(S級シーフ)
「どうです!?面白いステータスでしょう?S級シーフの評価値が81ポイントなんて霞んで……しま、う、ま?……嘘、でしょ?自分で書いたのに信じられません……」
エルヴェーラの言うように面白いステータスではある。
各種ジョブに応じた装備を想定してのステータスであるのにも関わらず、全ステータスが軒並み高い。
「なんでこんなステータスなんだろ……」
思わず口から溢れてしまうほどにおかしなステータスだ。
オリオン結成時には攻撃や防御、法力などは低かったが、今では全てが上昇している。
「おそらく、ですが、ディーノさんのスキル【ギフト】が影響してるのではありませんか?ギフト持ちは全ステータスが伸びやすいとかそんな……わけないですよね……」
可能性としては無くもないが、調べようがないのでわからない。
「これ、ジョブを変更して測定した場合……物理系であればどの職業でもS級になれそうですね……」
驚きの事実だ。
ファイターやガーディアン、セイバーにアーチャーなど、武器を変えれば様々なジョブに変更できるようだ。
「まぁジョブはなんでもいいし、とりあえずシーフのままでいいや。ソロで登録よろしく」
「あー、はい……はい!かしこまりました!」
面白がってたわりに少し呆けた感じのエルヴェーラは我に返り、ディーノのソロ冒険者としての申請書を書き込む。
王都では自分で書くのが普通だが、ラフロイグでは受付の方で書いてくれるらしい。
待つ事数分後。
冒険者登録証を受け取り、何か良さそうなクエストを紹介してもらう。
「こちらのCC級クエスト【アーマーウルフ】討伐などいかがですか?固い表皮に素早い動き。ディーノさんならソロでも対応できると思いますが」
アーマーウルフは毛皮の下に鎧のような硬質な肌を持つモンスターで、本来であれば複数名で取り囲み、罠を仕掛けて討伐する。
半年程前にも討伐した事があるモンスターで、その際には大きな怪我もなく討伐する事ができた。
ディーノにとってそれ程大きな脅威にはならないだろう。
「じゃあそれお願いしようかな。この後買い物したら出掛けるよ」
このクエストからソロ冒険者としての第一歩となる。
これまでとは違い仲間の助けはないのだ。
上級回復薬や毒消しなどを充分に用意してから旅に出るようだ。
◇◇◇
雲一片ない青空が広がる中、ディーノはラフロイグから東へと足を向ける。
東に一日と掛からず進んだ先にある【モミュール】領付近に現れたアーマーウルフ。
隣の街【コラーダ】に繋がる街道で行商人や旅人、狩人なども襲われる事もあり、現在は街道を封鎖しているそうだ。
徒歩での旅は初めてではないが、これまでパーティーでの旅だった為、歩きながらでも退屈する事はなかった。
景色を楽しむ事はできるものの、少し寂しさを感じずにはいられない。
ラフロイグから歩き始めてしばらくした頃。
草むらの中からファングボアが飛び出して来た。
雑食のモンスターである為襲って来た場合には戦わなくてはならない。
餌を求めているのか興奮状態のボアはディーノに向かって駆け出そうと前足を持ち上げる。
同時にディーノはダガーを片手に距離を詰め、交差する瞬間にこめかみに突き立てた。
「あれ?」
思わず声をもらしてしまう程に手応えなく突き刺さったダガーに首を傾げるディーノ。
これまでとは手に残る感触が違う事に違和感を覚えたようだ。
しかしたまたま柔らかい部分に突き刺さっただけだろうと思い直し、再び先へと歩き始める。
まだ自身がソロになった変化に気付く事もなく……
途中で休んで昼食を摂っても夕方までには着ける距離なのだが、どうせ行くなら早めに着いて美味い料理屋の情報も聞いておきたい。
そして今日はゆっくりと休み、明日の朝から討伐に向かうのがいいだろう。
ただ黙々とモミュール領までの道のりを歩き進め、景色を眺めては少し寂しさを覚える。
(慣れないとな)と思いつつもやはりオリオンでの旅を思い出すのだった。
◇◇◇
昨夜はモミュール領の門番をしていた男からおすすめの食事処を教えてもらい、ディーノはご当地グルメに舌鼓を打つ。
柑橘の風味が食欲をそそる料理が並べられ、メインの肉料理もさっぱりとした味わいが特徴だ。
そして今、アーマーウルフを前にディーノはダガーを構えている。
久しぶりのクエストにソロで挑むのだ。
油断なく全力で挑むべきだろう。
スキル【ギフト】を発動して移動を開始。
アーマーウルフに向かって真っ直ぐに駆け出す。
向かって来るディーノを敵と判断したウルフは体を低くし、いつでも飛び掛かれる体勢で迎え討つ。
ディーノは下方にダガーを構え、ウルフと交錯する一瞬を突いて横薙ぎに振り抜くと同時に右前方へと跳躍。
固い衝撃と肉を斬り裂く感触が手に残り、再び向かって来るであろうウルフへと向き直るが……
ウルフは地面を滑るように倒れ込み、ビクビクと痙攣すると次第に血溜まりを広げていった。
(あれ……なんでだ?昨日のボアといい今日のウルフといい、こんなに簡単に斬れるモンスターだったか?)
ディーノはウルフの前方へと回り込んで死んでいるのを確認し、足を掴んで倒れている方向を変えてやる。
ダガーでの切り口を確認すると、鼻先から通った刃は鎧のような硬質な肌を切り広げ、刃先は首の動脈へと到達。
首の後方までバッサリと斬り裂いていた。
ディーノは過去のアーマーウルフとの戦いを思い返すが、以前はダガーが硬質な鎧肌を斬り裂く事はできず、鎧肌の隙間を狙ってダメージを蓄積させていった。
今回最初の一撃目は鼻先を切り付ける事によってウルフを怯ませるのが目的だったのだが、予想とは裏腹に一撃で命を刈り取る結果となってしまった。
(ここで以前と違うところといえば……ソロでの戦闘ってだけだよな。ギフトは発動してたし動きの速さはいつも通り。ウルフの鎧肌が斬りやすい個体なんて事はないだろうしなぁ……オレの攻撃力で斬れる……か)
「ん?」
ふと気付いたディーノ。
以前のステータスと今のステータス。
そしてパーティーとソロ。
さらにはギフト。
「もしかして……ギフトはバフだけじゃないのか?」
声に出している事さえ気付かずにディーノは考えをまとめていく。
「オレが知ってるギフトはパーティーメンバーの能力上昇……それも得意とする能力だけのはずだ……今のオレのステータスはシーフなのにも関わらず全ステータスが高い……以前の……パーティー結成時のメンバー……」
ファイターのマリオ。
ガーディアンのジェラルド。
クレリックのレナータ。
「そうだ。ファイターが攻撃、ガーディアンが防御、クレリックが法力。それ以外のステータスは高かった……って事は……嘘、だろ……オレのギフトは……ステータスを、分け与えてたのか?」
冒険者となって約四年。
ディーノは仲間のステータスを底上げするスキルとして、物語に描かれてあった情報以外にギフトについて調べる事はなかった。
ディーノの考えが正しければその四年もの間、ステータス低下状態で過ごしてきた事となる。
そんなはずはないと思いたくとも、今し方倒したアーマーウルフと以前の戦い、ステータスとパーティーメンバーの能力を照らし合わせると、仮説が正しい事を裏付けしていく。
(けどギフトを発動した場合は……)
ディーノの体感できる能力となれば素早さと器用さの二つだろう。
素早さは実際に普段の倍とまではならないものの、相当なスピードで動き回る事が可能だ。
自分よりも大きなモンスターを相手にも立ち回れる程に速度は上昇する。
器用さははっきりとはわからないが、素早さが上がったのにも関わらず、敵の急所や隙間に狙い通りにダガーを突き立てられる。
そしてディーノの能力をギフトとして分け与えられていたと考えられるマリオやジェラルドは、スキルを発動するとある程度の能力上昇を感じられると言っていた。
レナータの場合にもヒールの回復能力が上昇し、傷付いたディーノの回復にも目に見えて効果があるとも聞いている。
「そうか。オレのギフトは……」
パーティーではディーノのステータスの半分程を個々の能力に見合った能力が贈られ、そしてスキルを発動した場合にはそれとはまた別にステータス値が上昇する。
そしてソロであった場合。
普段のディーノのステータスはそのままに、スキルを発動した際にのみステータス値が上昇する。
これによりディーノはパーティーを組む事で弱体化し、ソロで活動する事により最大限の能力を発揮できる事が判明した。
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