27 / 132
第1章
第27話、ハイゴブリン戦
しおりを挟む
◆
ルルカのダウジングに導かれ進む。
そして見つける、石壁の一つに僅かな亀裂が走っている箇所があるのを。
「ここを、通るようです」
近くで見ると、その亀裂はひと一人が横になって進めるぐらいの幅があった。
一旦ロッドをリュックサックにしまうと、俺がルルカのリュックサックを片腕に吊るして持ち、そのまま亀裂の中を進んでいく。
亀裂は途中で行き止まりになっていたが、手をかければ上に行けるようで、そこからはロッククライミングのようにして細い亀裂の中をよじ登っていく。
石と石の僅かな間を板挟みになりながら進むため、時には背中を壁に預け、ゴツゴツとした岩の傾斜に手足をかけていく。
「よっと」
一人先頭を進んでいた真琴が、光が差し込んでいる斜め上方である亀裂の終着点に辿り着いた。
周囲を警戒するようにその先を覗き込んでいた真琴が、こちらにジェスチャーでOKマークと手招きをする事により、そこが安全だということを伝えてくれる。
それから遅れること数分ちょっと、俺たちもそこへと到達。顔を覗かせると、亀裂の先は今までと同じようなフロアであった。
またどこから敵が来るかわからないので、とりあえず三人とも柱の陰に隠れる。
なんだろう、このフロア。
フロアの端には円柱が並んで立っているし、小鬼の砦と同じような造りなのだが、なにかが違う。
……そうだ、光の強さが違うのだ。
ダンジョンの入り口から亀裂に入るまでは地面は赤、天井は青にうっすら光を帯びていたのだけど、このフロアはその色合いが濃くなっていた。
そのためフロア全体が黒のレースを掛けられたかのように暗く感じる。
そして数珠つなぎになっているフロアも、隣り合うフロア同士で大人一人分ぐらいの落差があり、そのためフロア間の移動は小脇に設置された階段を使わないといけなさそうである。
そこで気配を感じる!
見れば隣のフロアから人型のモンスターが階段を下りてこのフロアに来ようとしていた。
柱に隠れながら俺が敵のソウルリストを確認しようとしていると、ルルカが『ハイゴブリンです』と小声で言った。
ゴブリンと言えばどちらかといえばお腹が出ている感じなのだが、そいつらはそれを縦に引き伸ばしたような存在であった。
お腹が多少細くなっており、異様に長い手足。そして身長は俺たちより高い180センチぐらいはありそうだ。
敵は例によって剣と盾、そして兜を装備しているのだけど、それらの大きさは体の大きさと比例して普通のゴブリンよりサイズが大きくなっている。
そしてその眼光は、獰猛なモンスターが持つイメージであるギラギラとしたものだけではなく、周囲をじっと伺い観察をする、一種のいやらしさが含まれていた。
また多少の背丈や太さ、肌の色の違いはあるものの、これらハイゴブリンが全部で三体いる。
と、そいつらの一体が鼻をくんかくんか鳴らし始めたかと思うと、別の一体が同じように鼻を鳴らし始め、もう一体が目を細め辺りに視線をばらまき始める。
そしてじっと警戒していた奴らが、不意に互いに顔を見合わせたかと思うと、鼻で笑った気がした。
そして余裕の笑みを浮かべると、横に広がりここから先は通さない、いやここから俺たちを逃さないぞといった感じでこちらへと向け歩みを進め出した。
こいつら、擬似的生命体なんだろうけど、個々に個性がちゃんと存在し、まるで本当の生物のような行動を取っている。
実際、生きるために必要なエネルギーが違い行動理念が違うだけで、このモンスターたちも紛れもない生命体なのかもしれない。
そこで真琴が動いた!
柱からステップで飛び出した真琴が、両足を地に付け弓を引き絞るようにして右手を引く。
そして女神を倒した時と同じようにして繰り出す掌底打ち。
先制攻撃であり、開戦の合図であり、一方的な攻撃の始まりである。
その右手の延長線上にいる右側のハイゴブリンの胸元に、大きな風穴が空く。
ハイゴブリンは自身の胸元を見て、自身に何が起こったのかを知り、真琴を睨みつけながら膝をついた後、力無く前方に倒れ込み霧散する。
そこで残されたハイゴブリンたちの顔つきが完全に変わる。
前傾姿勢になり踵を浮かすと唸り声を上げ始め、そして左右に散った。
意外に速い!
柱と柱の間を黒い影となったハイゴブリン達が駆けていく。
真琴が次の攻撃を行なう。
柱に身をひそめる右側のハイゴブリンに対し、横薙ぎに右腕を乱暴に振ったのだ。
柱ごとハイゴブリンを攻撃。
しかしその攻撃のあと、ハイゴブリンは何事も無かったかのように別の柱の陰へと移動を行なう。
攻撃が効かなかった?
しかしその事柄について原因がそうではない事を、顎に手を当て考え出していた真琴が教えてくれる。
「ふむふむ、ダンジョンもモンスターと同じ魔力で作られた物になるわけだから、飛び抜かしてその先の相手は攻撃出来ないわけか。
でもダンジョン自体を破壊出来る力は強すぎるからそこまでは出力を上げれないし——」
独り言を続ける真琴。
そして真琴が考えている間にすぐ側にまで来ていたハイゴブリンの一体が、勢いよく柱から飛び出した。
なっ、盾を前面に構えたままの突撃!?
「まっ、直接当てればいい話なんだけどね」
直立不動で俯き考えこみながら無造作に振った右手により、ハイゴブリンは盾ごと腹部から両断され霧散。
そしてその場面を見ていたのか、最後のハイゴブリンがそれからいっときの間、柱から出てこなくなった。
そこで真琴がこちらを見る。
「この後回復が必要になるかもしれないけど、いいかな? 」
「えっ、あっ、ああ! 」
「それじゃいっちょやりますか」
真琴の身体が、一瞬光に包まれたような気がした。
そして真琴がダンッと音を立て地面を蹴る。
すると真琴の身体が一瞬にして左側の天井近くの壁にまで移動しており、まるで重力を無視しているかのようにして側面に跪いていた。
「見つけたよ」
真琴が見上げるようにして斜め下方に位置する柱の陰に向かってそう呟くと、足元にきている壁を蹴りあげ最後の一体となったハイゴブリンがいるであろう柱の陰へと向け、突き刺さるような急降下をしながら飛び込んでいった。
そして柱の陰から何か黒い影が猛烈な勢いで飛び出した。
その飛び出した物は、石畳を傷つけながら何度かバウンドをし、またその度に回転をしながら直線上にあった別の柱に激突すると、深くめり込み動きを止める。
あれは真琴の蹴りで吹き飛ばされたハイゴブリン。
すでに息絶えているようで、それからすぐに霧散して空気へと消えた。
「やはり直接攻撃はかなりの威力になるわけか」
ふむふむ言っていた真琴だったが、突然足元をふらつかせる。
「わっとっと」
「真琴、大丈夫!? 」
先ほどの回復を頼むと言うセリフが気になっていた俺は、すぐさま真琴の元へ駆け寄ると回復魔法ベ・イヴベェを発動させる。
「どこが痛むの? 」
「ごめん、両脚を全体的に少し痛めたかも」
言われてまず、真琴にブーツを脱いで貰う。
しかし真琴の生脚をじっくり観察していくが、外傷らしきものは青あざ以外見当たらない。
やはり多くを痛めているのは魂の結びつきとか言うところなんだろうか。
続いて床の上にお尻を付けて座ってもらった。
そこで真琴の片脚を持ち上げるようにして足首を掴むと、宙に浮かした白濁液を手に取りそれを真琴の足首に塗る。
するとみるみるうちに肌へと吸収されてしまった。
「真琴、どう? 」
「少し良くなったみたいだけど、まだちょっと痛むかな」
「わかった」
今度は多めに白濁水を掬うと、俺は真琴の足首がぬちゃぬちゃになるまで塗り込んでいった。
ルルカのダウジングに導かれ進む。
そして見つける、石壁の一つに僅かな亀裂が走っている箇所があるのを。
「ここを、通るようです」
近くで見ると、その亀裂はひと一人が横になって進めるぐらいの幅があった。
一旦ロッドをリュックサックにしまうと、俺がルルカのリュックサックを片腕に吊るして持ち、そのまま亀裂の中を進んでいく。
亀裂は途中で行き止まりになっていたが、手をかければ上に行けるようで、そこからはロッククライミングのようにして細い亀裂の中をよじ登っていく。
石と石の僅かな間を板挟みになりながら進むため、時には背中を壁に預け、ゴツゴツとした岩の傾斜に手足をかけていく。
「よっと」
一人先頭を進んでいた真琴が、光が差し込んでいる斜め上方である亀裂の終着点に辿り着いた。
周囲を警戒するようにその先を覗き込んでいた真琴が、こちらにジェスチャーでOKマークと手招きをする事により、そこが安全だということを伝えてくれる。
それから遅れること数分ちょっと、俺たちもそこへと到達。顔を覗かせると、亀裂の先は今までと同じようなフロアであった。
またどこから敵が来るかわからないので、とりあえず三人とも柱の陰に隠れる。
なんだろう、このフロア。
フロアの端には円柱が並んで立っているし、小鬼の砦と同じような造りなのだが、なにかが違う。
……そうだ、光の強さが違うのだ。
ダンジョンの入り口から亀裂に入るまでは地面は赤、天井は青にうっすら光を帯びていたのだけど、このフロアはその色合いが濃くなっていた。
そのためフロア全体が黒のレースを掛けられたかのように暗く感じる。
そして数珠つなぎになっているフロアも、隣り合うフロア同士で大人一人分ぐらいの落差があり、そのためフロア間の移動は小脇に設置された階段を使わないといけなさそうである。
そこで気配を感じる!
見れば隣のフロアから人型のモンスターが階段を下りてこのフロアに来ようとしていた。
柱に隠れながら俺が敵のソウルリストを確認しようとしていると、ルルカが『ハイゴブリンです』と小声で言った。
ゴブリンと言えばどちらかといえばお腹が出ている感じなのだが、そいつらはそれを縦に引き伸ばしたような存在であった。
お腹が多少細くなっており、異様に長い手足。そして身長は俺たちより高い180センチぐらいはありそうだ。
敵は例によって剣と盾、そして兜を装備しているのだけど、それらの大きさは体の大きさと比例して普通のゴブリンよりサイズが大きくなっている。
そしてその眼光は、獰猛なモンスターが持つイメージであるギラギラとしたものだけではなく、周囲をじっと伺い観察をする、一種のいやらしさが含まれていた。
また多少の背丈や太さ、肌の色の違いはあるものの、これらハイゴブリンが全部で三体いる。
と、そいつらの一体が鼻をくんかくんか鳴らし始めたかと思うと、別の一体が同じように鼻を鳴らし始め、もう一体が目を細め辺りに視線をばらまき始める。
そしてじっと警戒していた奴らが、不意に互いに顔を見合わせたかと思うと、鼻で笑った気がした。
そして余裕の笑みを浮かべると、横に広がりここから先は通さない、いやここから俺たちを逃さないぞといった感じでこちらへと向け歩みを進め出した。
こいつら、擬似的生命体なんだろうけど、個々に個性がちゃんと存在し、まるで本当の生物のような行動を取っている。
実際、生きるために必要なエネルギーが違い行動理念が違うだけで、このモンスターたちも紛れもない生命体なのかもしれない。
そこで真琴が動いた!
柱からステップで飛び出した真琴が、両足を地に付け弓を引き絞るようにして右手を引く。
そして女神を倒した時と同じようにして繰り出す掌底打ち。
先制攻撃であり、開戦の合図であり、一方的な攻撃の始まりである。
その右手の延長線上にいる右側のハイゴブリンの胸元に、大きな風穴が空く。
ハイゴブリンは自身の胸元を見て、自身に何が起こったのかを知り、真琴を睨みつけながら膝をついた後、力無く前方に倒れ込み霧散する。
そこで残されたハイゴブリンたちの顔つきが完全に変わる。
前傾姿勢になり踵を浮かすと唸り声を上げ始め、そして左右に散った。
意外に速い!
柱と柱の間を黒い影となったハイゴブリン達が駆けていく。
真琴が次の攻撃を行なう。
柱に身をひそめる右側のハイゴブリンに対し、横薙ぎに右腕を乱暴に振ったのだ。
柱ごとハイゴブリンを攻撃。
しかしその攻撃のあと、ハイゴブリンは何事も無かったかのように別の柱の陰へと移動を行なう。
攻撃が効かなかった?
しかしその事柄について原因がそうではない事を、顎に手を当て考え出していた真琴が教えてくれる。
「ふむふむ、ダンジョンもモンスターと同じ魔力で作られた物になるわけだから、飛び抜かしてその先の相手は攻撃出来ないわけか。
でもダンジョン自体を破壊出来る力は強すぎるからそこまでは出力を上げれないし——」
独り言を続ける真琴。
そして真琴が考えている間にすぐ側にまで来ていたハイゴブリンの一体が、勢いよく柱から飛び出した。
なっ、盾を前面に構えたままの突撃!?
「まっ、直接当てればいい話なんだけどね」
直立不動で俯き考えこみながら無造作に振った右手により、ハイゴブリンは盾ごと腹部から両断され霧散。
そしてその場面を見ていたのか、最後のハイゴブリンがそれからいっときの間、柱から出てこなくなった。
そこで真琴がこちらを見る。
「この後回復が必要になるかもしれないけど、いいかな? 」
「えっ、あっ、ああ! 」
「それじゃいっちょやりますか」
真琴の身体が、一瞬光に包まれたような気がした。
そして真琴がダンッと音を立て地面を蹴る。
すると真琴の身体が一瞬にして左側の天井近くの壁にまで移動しており、まるで重力を無視しているかのようにして側面に跪いていた。
「見つけたよ」
真琴が見上げるようにして斜め下方に位置する柱の陰に向かってそう呟くと、足元にきている壁を蹴りあげ最後の一体となったハイゴブリンがいるであろう柱の陰へと向け、突き刺さるような急降下をしながら飛び込んでいった。
そして柱の陰から何か黒い影が猛烈な勢いで飛び出した。
その飛び出した物は、石畳を傷つけながら何度かバウンドをし、またその度に回転をしながら直線上にあった別の柱に激突すると、深くめり込み動きを止める。
あれは真琴の蹴りで吹き飛ばされたハイゴブリン。
すでに息絶えているようで、それからすぐに霧散して空気へと消えた。
「やはり直接攻撃はかなりの威力になるわけか」
ふむふむ言っていた真琴だったが、突然足元をふらつかせる。
「わっとっと」
「真琴、大丈夫!? 」
先ほどの回復を頼むと言うセリフが気になっていた俺は、すぐさま真琴の元へ駆け寄ると回復魔法ベ・イヴベェを発動させる。
「どこが痛むの? 」
「ごめん、両脚を全体的に少し痛めたかも」
言われてまず、真琴にブーツを脱いで貰う。
しかし真琴の生脚をじっくり観察していくが、外傷らしきものは青あざ以外見当たらない。
やはり多くを痛めているのは魂の結びつきとか言うところなんだろうか。
続いて床の上にお尻を付けて座ってもらった。
そこで真琴の片脚を持ち上げるようにして足首を掴むと、宙に浮かした白濁液を手に取りそれを真琴の足首に塗る。
するとみるみるうちに肌へと吸収されてしまった。
「真琴、どう? 」
「少し良くなったみたいだけど、まだちょっと痛むかな」
「わかった」
今度は多めに白濁水を掬うと、俺は真琴の足首がぬちゃぬちゃになるまで塗り込んでいった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
357
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる