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第六章 未知の洞窟と新たなる冒険編
131.牛歩の帰還
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てれすこを三枚におろしてから香味野菜と一緒に叩く。さらにふかし芋を潰したものとよく混ぜ合わせ粘り気が出るまで練る。手ごろな大きさに丸めてから葉物野菜の上で蒸せばてれすこのしんじょ風の出来上がり! さらにもう一品、湯引きしたてれすこにマスタードソースを添えたものを作ってみた。
「なんだかふんわりして不思議な食感ね。
練り込んである香草がいい香りでおいしいわあ」
「私はこっちの湯引きが気に入ったわ。
辛いソースがお酒にもピッタリね」
「どんな料理なら名物になるか考えてるんだけど好評でよかったわ
それにしても明日の朝には出発するんだから飲みすぎないでちょうだいよ」
バタバ村最後の夜はちょっとした宴と共に過ぎて行った。明日は王都へ戻って村の建て直し計画をはじめよう。でもなんでミーヤがやるのだろうか。進んでやっている事ではあるのだが理由がまったく分からない。興味本位と言ってしまえばそれまでだし、商売になるようなことが好きになっているからなのかもしれない。でもこのままでは何のために旅に出たのかわからなくなりそうだ。
「ああマール、あなたのところへ帰りたい」
意識していなかった言葉が突然口から洩れて気が付いた。ミーヤの望みはマールとの幸せなのだ。そのために旅をしていることを忘れてはならない。そうだ、今回のバタバ村再興計画を手伝うのはカナイ村を豊かにするための試金石だ。そう考えて誠心誠意取り組んでみよう。そうすればこのもやもやした気持ちが晴れるかもしれない。
それにしても思い通りに暮らすと言うのは難しい。前世ではしばしば田舎暮らしやスローライフが流行ったりキャンプブームが来たりしていた。だが実際にこうしてやってみると思い通りに行かないことだらけだ。
「どうしたのミーヤ、ぶつぶつと呟いてるけど。
新しいレシピでも考えてるの?」
「なによヴィッキー、食べ足りないの?
肉でも焼こうか」
「いいわね、それとパンもあるかしら。
あとね――」
この調子だと明日の出発は昼過ぎになりそうだ。ミーヤはヴィッキーとレナージュの夜食を用意してから先に休むことにした。寝台馬車ではすでにチカマとナウィンがベッドを無視して大手を広げている。ミーヤは二人の頭をなでながら寝顔を見ていたがいつの間にか眠りについていた。
◇◇◇
「ミーヤ…… お願い…… 欲しいの……
どうしても今すぐ欲しいのよ……」
「だめよレナージュ…… 私が先よ……
もう我慢できないの…… お願いミーヤ……」
レナージュとヴィッキーが二人揃ってにじり寄ってくる。ミーヤはとうとう寝台の端まで追い込まれた。
「だからあれほど言っておいたのに仕方ないわねえ。
もうあんまりないんだから無茶しないでよ?」
予想通り二人ともひどい二日酔いである。マルバスから貰っておいた酔い覚ましを水に溶いて手渡すと二人とも一気に飲み干した。思っていた通りだったので諦めてはいたが、結局出発は昼過ぎどころか夕方になりそうだ。
出発前にチカマとナウィンを連れてもう一度水牛を狩りに行ったり、次回から拠点に使うための建物の片づけをしたりしながら二人の回復を待った。その後ようやくバタバ村を後にしたミーヤたちは王都トコストへの帰路についた。
◇◇◇
出発から四日目、『トコスト-バタバ村 3』の看板までやってきた。と言うことは王都まであと三日はかかると言うことだ。
「もう、だから早く出ようって言ってたのに。
予定よりまる一日遅れよ?」
「でもそのおかげで一儲けできそうじゃないの。
ヴィッキーだって消化不良気味みたいだしちょうどいいわ」
「レナージュったら随分ひどいこと言うわね。
私は別に消化不良なわけじゃないわ。
ちょっとだけ食い意地が張ってるだけよ」
「まあどっちでもいいわ。
二人いれば十分でしょうからミーヤたちは中で待っていてね」
「ボクも行きたい。
待ってるのつまらないよ」
「チカマが来たらまた一人で全部片付けちゃうからダメよ。
言ったでしょ? ヴィッキーが消化不良だって」
「ふふ、二日酔いじゃなくて?
油断せず注意していってらっしゃいね、レナージュ。
チカマは私たちとここで待ってましょ」
どうやら野営の前に掃除が必要になったらしい。留守番を言いつけられ不満そうなチカマを後に、レナージュとヴィッキーが馬車を降りて表に出て行った。
剣と剣がぶつかる音、たまに聞こえる爆発音は相手の魔術か何かだろうか。それにしても叫び声のような物がまったく聞こえないのはなぜだろう。てっきり野党の類が襲ってきているのだとばかり思っていたが実は違うのか!? だが獣や魔獣ならば鳴き声が聞こえるはずだしいったい何と戦っているのだろう。ミーヤは気になって外を覗いて絶句した。
「ちょっとチカマ、ナウィン、あれ見てみてよ……
二人だけで大丈夫なのかしら」
「あの、えっと、あの……
なんなんですか、あれ……」
「ボク見たことあるよ。
あれおばけだよね? ミーヤさま」
「そうよね、ローメンデル山で見たのと似てるもの。
それにしても数が多いわねえ」
なんでこんなところにアンデッドが大量に湧いてきているのか考えてみた。おそらく今まで盗賊が襲ってきた被害者がこの街道には大勢眠っていたのだろう。
「チカマ手伝ってきて。
これじゃいつまでたっても寝られやしないわ」
「はーい、行ってきまーす」
結局五十対近くのゴーストやゾンビを一掃して戦いは終わりを告げた。レナージュの思惑通り魔鉱はたっぷりと手に入りいい稼ぎにはなったかもしれないが、寝るのがすっかり遅くなってしまった。
こうしてちょっとした小遣い稼ぎと引き換えに、王都へ戻るのは一日余分にかかることになったのだった。
「なんだかふんわりして不思議な食感ね。
練り込んである香草がいい香りでおいしいわあ」
「私はこっちの湯引きが気に入ったわ。
辛いソースがお酒にもピッタリね」
「どんな料理なら名物になるか考えてるんだけど好評でよかったわ
それにしても明日の朝には出発するんだから飲みすぎないでちょうだいよ」
バタバ村最後の夜はちょっとした宴と共に過ぎて行った。明日は王都へ戻って村の建て直し計画をはじめよう。でもなんでミーヤがやるのだろうか。進んでやっている事ではあるのだが理由がまったく分からない。興味本位と言ってしまえばそれまでだし、商売になるようなことが好きになっているからなのかもしれない。でもこのままでは何のために旅に出たのかわからなくなりそうだ。
「ああマール、あなたのところへ帰りたい」
意識していなかった言葉が突然口から洩れて気が付いた。ミーヤの望みはマールとの幸せなのだ。そのために旅をしていることを忘れてはならない。そうだ、今回のバタバ村再興計画を手伝うのはカナイ村を豊かにするための試金石だ。そう考えて誠心誠意取り組んでみよう。そうすればこのもやもやした気持ちが晴れるかもしれない。
それにしても思い通りに暮らすと言うのは難しい。前世ではしばしば田舎暮らしやスローライフが流行ったりキャンプブームが来たりしていた。だが実際にこうしてやってみると思い通りに行かないことだらけだ。
「どうしたのミーヤ、ぶつぶつと呟いてるけど。
新しいレシピでも考えてるの?」
「なによヴィッキー、食べ足りないの?
肉でも焼こうか」
「いいわね、それとパンもあるかしら。
あとね――」
この調子だと明日の出発は昼過ぎになりそうだ。ミーヤはヴィッキーとレナージュの夜食を用意してから先に休むことにした。寝台馬車ではすでにチカマとナウィンがベッドを無視して大手を広げている。ミーヤは二人の頭をなでながら寝顔を見ていたがいつの間にか眠りについていた。
◇◇◇
「ミーヤ…… お願い…… 欲しいの……
どうしても今すぐ欲しいのよ……」
「だめよレナージュ…… 私が先よ……
もう我慢できないの…… お願いミーヤ……」
レナージュとヴィッキーが二人揃ってにじり寄ってくる。ミーヤはとうとう寝台の端まで追い込まれた。
「だからあれほど言っておいたのに仕方ないわねえ。
もうあんまりないんだから無茶しないでよ?」
予想通り二人ともひどい二日酔いである。マルバスから貰っておいた酔い覚ましを水に溶いて手渡すと二人とも一気に飲み干した。思っていた通りだったので諦めてはいたが、結局出発は昼過ぎどころか夕方になりそうだ。
出発前にチカマとナウィンを連れてもう一度水牛を狩りに行ったり、次回から拠点に使うための建物の片づけをしたりしながら二人の回復を待った。その後ようやくバタバ村を後にしたミーヤたちは王都トコストへの帰路についた。
◇◇◇
出発から四日目、『トコスト-バタバ村 3』の看板までやってきた。と言うことは王都まであと三日はかかると言うことだ。
「もう、だから早く出ようって言ってたのに。
予定よりまる一日遅れよ?」
「でもそのおかげで一儲けできそうじゃないの。
ヴィッキーだって消化不良気味みたいだしちょうどいいわ」
「レナージュったら随分ひどいこと言うわね。
私は別に消化不良なわけじゃないわ。
ちょっとだけ食い意地が張ってるだけよ」
「まあどっちでもいいわ。
二人いれば十分でしょうからミーヤたちは中で待っていてね」
「ボクも行きたい。
待ってるのつまらないよ」
「チカマが来たらまた一人で全部片付けちゃうからダメよ。
言ったでしょ? ヴィッキーが消化不良だって」
「ふふ、二日酔いじゃなくて?
油断せず注意していってらっしゃいね、レナージュ。
チカマは私たちとここで待ってましょ」
どうやら野営の前に掃除が必要になったらしい。留守番を言いつけられ不満そうなチカマを後に、レナージュとヴィッキーが馬車を降りて表に出て行った。
剣と剣がぶつかる音、たまに聞こえる爆発音は相手の魔術か何かだろうか。それにしても叫び声のような物がまったく聞こえないのはなぜだろう。てっきり野党の類が襲ってきているのだとばかり思っていたが実は違うのか!? だが獣や魔獣ならば鳴き声が聞こえるはずだしいったい何と戦っているのだろう。ミーヤは気になって外を覗いて絶句した。
「ちょっとチカマ、ナウィン、あれ見てみてよ……
二人だけで大丈夫なのかしら」
「あの、えっと、あの……
なんなんですか、あれ……」
「ボク見たことあるよ。
あれおばけだよね? ミーヤさま」
「そうよね、ローメンデル山で見たのと似てるもの。
それにしても数が多いわねえ」
なんでこんなところにアンデッドが大量に湧いてきているのか考えてみた。おそらく今まで盗賊が襲ってきた被害者がこの街道には大勢眠っていたのだろう。
「チカマ手伝ってきて。
これじゃいつまでたっても寝られやしないわ」
「はーい、行ってきまーす」
結局五十対近くのゴーストやゾンビを一掃して戦いは終わりを告げた。レナージュの思惑通り魔鉱はたっぷりと手に入りいい稼ぎにはなったかもしれないが、寝るのがすっかり遅くなってしまった。
こうしてちょっとした小遣い稼ぎと引き換えに、王都へ戻るのは一日余分にかかることになったのだった。
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