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第六章 未知の洞窟と新たなる冒険編
128.大滝オオウナギ大トラブル
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翌日になって再び地下洞窟へと赴いた一行、今度は大量の矢を用意して万全の態勢で臨むことが出来る。しかし予想通りレナージュは腰痛で動けず留守番と言うことになり、用意していた矢を使うのは六鋼のルカのみである。
一度来た道なので今日は順調に進み目的地である滝のところまでやってきた。ちなみに今日はチカマがいるので地図を作製することが出来ているのも大きな収穫である。
「それじゃ手はず通り始めるとするか。
ルカはとにかく打ちまくってくれ。
俺と姫様が崖のところで挑発するからなるべく顔に当ててくれよ」
「チカマは飛びながら攻撃してくれたらいいのよね。
それで私はどうすればいいの?
炎精霊をぶつけるくらいしかできなそうだけど」
「万一のために魔人の嬢ちゃんに命綱をつけて持っててくれ。
あの子泳げないんだろ?」
そうだった。もし叩き落とされたり咥えられたりしてしまったら水に落ちてしまうかもしれない。その時に気を失っていたら致命傷だ。
「わかったわ、チカマは私が守るわね。
だから安心して戦っていいわよ」
「ボクがんばるね。
ミーヤさまと繋がってるなら安心だもの」
相変わらず嬉しいことを言ってくれるチカマを抱き寄せて頭を撫でる。絶対に危険な目にはあわせないようにと思ってはいたが、冒険者の真似事をやっている限り危険は付き物だ。それでも最小限に抑える努力は怠らないよう肝に銘じて置かなければならない。
「モビスとハルメラも配置についてくれ。
援護を頼むぞ」
六鋼の魔術師モビスと神術師ハルメラがいるのも心強い。そう言えば魔術師と組んで戦闘をするのは初めてジスコへ向かったときに盗賊と戦ったとき以来だ。厳密にはイライザも神術師だったが、彼女は前に出て戦う棒術がメインだった。
「今日も相変わらずてれすこが登っているのねえ。
こんなにいっぱいいるなら特産品にできるかもしれないわ。
昨晩ミーヤが作った料理はおいしかったもの」
「ヴィッキーったら食べることばかりね。
気に行ったなら今日も作ってあげるわよ」
「ムニエルって言ったかしら、香ばしさとふわふわ感が素晴らしかったわ。
旅先でもおいしいものが食べられるなんてとってもすばらしいことよ」
「そいつはワシも同感だな。
干し肉かじってばかりの旅には戻れそうにないわい」
本当にこの世界の人たちは食に飢えている。食べることが好きなら料理が発展してもおかしくないはずだが、今のところそう言った文化を見たとは言い難い。おそらくは料理スキルが無いと肉を焼くのもままならないことが要因だろう。なんといっても調理に失敗すると素材が消えてしまうのだからむやみに練習するのも難しい。
それだけに、すでに料理スキルを持って生まれた者が、持っていない者たちの腹を満たす役割を担うということになる。きっとその辺りにまだまだ楽しみがありそうだし、商機があるとも言えるだろう。つまりカナイ村だけにしかない料理を産み出せば村へ大きな利益をもたらしてくれることになる。そのためにも世界にどんな食材があるのかを勉強しなければならないし、こういった戦いもそのための一歩と言うことだ。
「ミーヤさまどうしたの? 考え事?
ボクはピカピカ焼きが食べたい」
「そうね、夕飯をどうするか考えておかないといけないわね。
チカマにはてれすこの照り焼きを作ってあげるわ。
もしナウィンが蒸し器を作ってくれていたら別の物も出来るかもしれないわよ」
「ホントに! ボク頼んでおくね。
ナウィンとはすごく仲良くなったの。
水牛の角で鞘を作ってくれたのもナウィンなんだよ」
「そうなの? てっきりダルボが作ってくれたのかと思ったわ。
おじさまは刀の部分を作ってくれたのね」
他にも固定具やベルトもナウィンの細工で作ったらしい。自分のことを役立たずだなんて卑下することの多い彼女だが、どうしてどうして十分役に立っている。
「それにしてもオオウナギが出てきませんね。
さすがに腹いっぱいで大人しくしているのでしょうか」
てれすこを大量に獲っていたルカが一息つきながら当然のように疑問の言葉を発した。確かに昨日あれほど捕食していたのだからお腹いっぱいになっていてもおかしくは無い。だが本当にウナギはどこにいるのだろうか。このまま現れないとなるとせっかくの準備が無駄になってしまいそうだ。
「ちょっとアンタ、下へ降りてみましょうよ。
もしかしたら滝の下にいて剣が届くかもしれないわよ?」
「それは俺も今考えていた。
念のためハルメラも一緒に来てくれ。
他はここで待機、滝を上ってきたら攻撃を開始して連絡をくれ」
どうにもじっとしていられない性格のトラックとヴィッキーは、崖伝いに降りていくと言ってダルボとハルメラを伴ってさっさと行ってしまった。道があるようには見えないがきっとまたダルボが楔などで足場を作るのだろう。
こちらもチカマが崖と滝の間で下を覗き監視することにした。オオウナギが滝を登ってくるのが先か、トラックたちが遭遇するのが先か。そもそも滝の下には滝壺があるとして、この水量を流すだけの水脈も流れているはずだ。もし下に降りた後流されるなんてことがあったらどうすればいいのだろうか。
そんなことを考えているうちに数十分が過ぎ、退屈したチカマが飛ぶのを止めてミーヤのところへ戻ってきた。その時――
「来たぞ! オオウナギだ!」
モビスが叫びながら上空を指さした。えっ!? 上から来るなんて想定外なんだけど!? と驚いている暇もなく、オオウナギは滝をまっさかさまに落ちて行った。すぐにヴィッキーへメッセージを送るがきっと間に合わない。どうか無事でいて!
だが心配は杞憂ですぐにビッキーから返事が来た。オオウナギはものすごいスピードで滝を下った、というか落ちて行ったらしい。四人はそのまま下ると言っている。
「ルカ、もしオオウナギが登ってきたらお願いね。
チカマは見張りをよろしく」
追加で光の精霊晶を飛ばし辺りを照らしながら待ち受けていると、だんだん滝の音が変わって行くのを感じる。これはオオウナギが滝をかき分けて登ってきている音かもしれない。
「ミーヤさま、来たよ!
でっかいのが登ってくる!」
「十分注意してね。
決して調子に乗ってはダメよ?」
チカマが頷いて剣を抜き、すごい勢いで滝を登ってくるオオウナギを待ち構える。崖の高さまで上がってきたらルカが弓で、モビスが魔法で攻撃する手はずだ。だがしかしその機会はやってこなかった。
「いくぞー! やああああ!!!」
雄叫びを上げながら上空から切りかかっていったチカマは、事もあろうにオオウナギの頭から尾に近いところまでを一気に切り裂いていった。その距離は少なく見ても五メーター以上はあるだろう。
オオウナギはたった一撃でげんこつより大きい魔鉱を残して塵のように消えた。まっさかさまに滑空しながら切り付けたチカマは空中で魔鉱をキャッチし満足そうな笑顔をしている。ミーヤはその姿を見ながらなんだか誇らしげな気持ちになっていた。
しかし問題がないわけじゃない。だってミーヤが手に持ったロープはチカマに引っ張られ、崖から落ちて空中に飛び出してしまっているのだから。
ピンと張ったロープが全体重をチカマに託していることを表している。それでも結構な速度で落下を続けるこの状況に絶望を感じながらミーヤは次の一手を考えていた。
一度来た道なので今日は順調に進み目的地である滝のところまでやってきた。ちなみに今日はチカマがいるので地図を作製することが出来ているのも大きな収穫である。
「それじゃ手はず通り始めるとするか。
ルカはとにかく打ちまくってくれ。
俺と姫様が崖のところで挑発するからなるべく顔に当ててくれよ」
「チカマは飛びながら攻撃してくれたらいいのよね。
それで私はどうすればいいの?
炎精霊をぶつけるくらいしかできなそうだけど」
「万一のために魔人の嬢ちゃんに命綱をつけて持っててくれ。
あの子泳げないんだろ?」
そうだった。もし叩き落とされたり咥えられたりしてしまったら水に落ちてしまうかもしれない。その時に気を失っていたら致命傷だ。
「わかったわ、チカマは私が守るわね。
だから安心して戦っていいわよ」
「ボクがんばるね。
ミーヤさまと繋がってるなら安心だもの」
相変わらず嬉しいことを言ってくれるチカマを抱き寄せて頭を撫でる。絶対に危険な目にはあわせないようにと思ってはいたが、冒険者の真似事をやっている限り危険は付き物だ。それでも最小限に抑える努力は怠らないよう肝に銘じて置かなければならない。
「モビスとハルメラも配置についてくれ。
援護を頼むぞ」
六鋼の魔術師モビスと神術師ハルメラがいるのも心強い。そう言えば魔術師と組んで戦闘をするのは初めてジスコへ向かったときに盗賊と戦ったとき以来だ。厳密にはイライザも神術師だったが、彼女は前に出て戦う棒術がメインだった。
「今日も相変わらずてれすこが登っているのねえ。
こんなにいっぱいいるなら特産品にできるかもしれないわ。
昨晩ミーヤが作った料理はおいしかったもの」
「ヴィッキーったら食べることばかりね。
気に行ったなら今日も作ってあげるわよ」
「ムニエルって言ったかしら、香ばしさとふわふわ感が素晴らしかったわ。
旅先でもおいしいものが食べられるなんてとってもすばらしいことよ」
「そいつはワシも同感だな。
干し肉かじってばかりの旅には戻れそうにないわい」
本当にこの世界の人たちは食に飢えている。食べることが好きなら料理が発展してもおかしくないはずだが、今のところそう言った文化を見たとは言い難い。おそらくは料理スキルが無いと肉を焼くのもままならないことが要因だろう。なんといっても調理に失敗すると素材が消えてしまうのだからむやみに練習するのも難しい。
それだけに、すでに料理スキルを持って生まれた者が、持っていない者たちの腹を満たす役割を担うということになる。きっとその辺りにまだまだ楽しみがありそうだし、商機があるとも言えるだろう。つまりカナイ村だけにしかない料理を産み出せば村へ大きな利益をもたらしてくれることになる。そのためにも世界にどんな食材があるのかを勉強しなければならないし、こういった戦いもそのための一歩と言うことだ。
「ミーヤさまどうしたの? 考え事?
ボクはピカピカ焼きが食べたい」
「そうね、夕飯をどうするか考えておかないといけないわね。
チカマにはてれすこの照り焼きを作ってあげるわ。
もしナウィンが蒸し器を作ってくれていたら別の物も出来るかもしれないわよ」
「ホントに! ボク頼んでおくね。
ナウィンとはすごく仲良くなったの。
水牛の角で鞘を作ってくれたのもナウィンなんだよ」
「そうなの? てっきりダルボが作ってくれたのかと思ったわ。
おじさまは刀の部分を作ってくれたのね」
他にも固定具やベルトもナウィンの細工で作ったらしい。自分のことを役立たずだなんて卑下することの多い彼女だが、どうしてどうして十分役に立っている。
「それにしてもオオウナギが出てきませんね。
さすがに腹いっぱいで大人しくしているのでしょうか」
てれすこを大量に獲っていたルカが一息つきながら当然のように疑問の言葉を発した。確かに昨日あれほど捕食していたのだからお腹いっぱいになっていてもおかしくは無い。だが本当にウナギはどこにいるのだろうか。このまま現れないとなるとせっかくの準備が無駄になってしまいそうだ。
「ちょっとアンタ、下へ降りてみましょうよ。
もしかしたら滝の下にいて剣が届くかもしれないわよ?」
「それは俺も今考えていた。
念のためハルメラも一緒に来てくれ。
他はここで待機、滝を上ってきたら攻撃を開始して連絡をくれ」
どうにもじっとしていられない性格のトラックとヴィッキーは、崖伝いに降りていくと言ってダルボとハルメラを伴ってさっさと行ってしまった。道があるようには見えないがきっとまたダルボが楔などで足場を作るのだろう。
こちらもチカマが崖と滝の間で下を覗き監視することにした。オオウナギが滝を登ってくるのが先か、トラックたちが遭遇するのが先か。そもそも滝の下には滝壺があるとして、この水量を流すだけの水脈も流れているはずだ。もし下に降りた後流されるなんてことがあったらどうすればいいのだろうか。
そんなことを考えているうちに数十分が過ぎ、退屈したチカマが飛ぶのを止めてミーヤのところへ戻ってきた。その時――
「来たぞ! オオウナギだ!」
モビスが叫びながら上空を指さした。えっ!? 上から来るなんて想定外なんだけど!? と驚いている暇もなく、オオウナギは滝をまっさかさまに落ちて行った。すぐにヴィッキーへメッセージを送るがきっと間に合わない。どうか無事でいて!
だが心配は杞憂ですぐにビッキーから返事が来た。オオウナギはものすごいスピードで滝を下った、というか落ちて行ったらしい。四人はそのまま下ると言っている。
「ルカ、もしオオウナギが登ってきたらお願いね。
チカマは見張りをよろしく」
追加で光の精霊晶を飛ばし辺りを照らしながら待ち受けていると、だんだん滝の音が変わって行くのを感じる。これはオオウナギが滝をかき分けて登ってきている音かもしれない。
「ミーヤさま、来たよ!
でっかいのが登ってくる!」
「十分注意してね。
決して調子に乗ってはダメよ?」
チカマが頷いて剣を抜き、すごい勢いで滝を登ってくるオオウナギを待ち構える。崖の高さまで上がってきたらルカが弓で、モビスが魔法で攻撃する手はずだ。だがしかしその機会はやってこなかった。
「いくぞー! やああああ!!!」
雄叫びを上げながら上空から切りかかっていったチカマは、事もあろうにオオウナギの頭から尾に近いところまでを一気に切り裂いていった。その距離は少なく見ても五メーター以上はあるだろう。
オオウナギはたった一撃でげんこつより大きい魔鉱を残して塵のように消えた。まっさかさまに滑空しながら切り付けたチカマは空中で魔鉱をキャッチし満足そうな笑顔をしている。ミーヤはその姿を見ながらなんだか誇らしげな気持ちになっていた。
しかし問題がないわけじゃない。だってミーヤが手に持ったロープはチカマに引っ張られ、崖から落ちて空中に飛び出してしまっているのだから。
ピンと張ったロープが全体重をチカマに託していることを表している。それでも結構な速度で落下を続けるこの状況に絶望を感じながらミーヤは次の一手を考えていた。
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