『神々による異世界創造ゲーム』~三十路女が出会った狐耳メイドは女神さま!? 異世界転生したケモミミ少女はスローライフと冒険を楽しみたい~

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
上 下
127 / 162
第六章 未知の洞窟と新たなる冒険編

118.適材適所

しおりを挟む
 まったく、屈強な男性冒険者六人の胃袋を舐めていた。フルルの店以外ではこんなに沢山作ったことが無いってくらいの量を用意したつもりだったのに、すでに鍋はなめとられたかのようにピカピカである。まあそれは、最後にチカマが手で拭い取って食べつくしたせいではあるのだが……

「それにしてもあなた達ホント良く食べるわねえ。
 ま、おいしいから当然だろうし食べっぷりがそれを物語っているわね。
 この味なら街で散財するよりはるかに得だと言うのも頷けるでしょ?」

「確かにおおげさじゃなかったぜ。
 こんなうめえ料理は産まれて始めて食ったもんなあ。
 あのそっけない麦粥が乳と合うなんて驚きだぜ」

「トラックの言う通り白い麦粥には驚いたな。
 でも俺はハムと野菜の辛口の料理が気に入ったぜ」

「おうおう、あれもうまかったな。
 街へ引き上げたら二度と食えねえかもしれねえよ。
 だからお嬢さん方が帰るまで俺たちも粘ってみるのも悪くねえ」

「ちょっと随分図々しいじゃないのよ。
 誰も毎日作ってあげるなんて言ってないのにさ」

 確かにミーヤは明日以降も作るとは言ってないが、そもそもトラックたちと会話をしているのがレナージュなのだから当たり前のことだ。もちろん頼まれれば全員分作ることは構わないが、そうすると食材が早くなくなってしまいそうなので滞在期間が短くなってしまう。ミーヤは正直にそのことを伝えた。

「料理を気に入ってくれたのはとても嬉しいわ。
 王都でも受け入れられる十分な可能性があるってことだしね。
 でも残念ながら毎日六人分追加で作るほどの食材は持ってきてないのよ」

「可能性? そりゃなんの話だ?
 それより食材が足りないなら狩りに行ってくるぜ。
 猪か熊でも仕留めりゃ一週間は余裕で持つだろ」

「そうね、生肉があればハムで作るよりも辛し炒めがもっとおいしくなるわ。
 野菜がもっとあればシチューも毎日作れるんだけどさすがにそこまでは無理ね」

「ミーヤさま、村の外に畑あるよ。
 勝手にとってもへいき?」

「どうでしょうねえ、ここを管理している人に聞かないとまずいかもね。
 警備兵へ聞いてみたらわかるかもしれないから明日にでも相談してみましょうか」

「バタバ村は今王国管理のはずね。
 だから私が許可するわ、どうせ手入れしなければダメになってしまうのだし構わないでしょ」

「ちょっとヴィッキー、勝手にそんなことして叱られない?
 王様って怖い人じゃないみたいだけど、さすがにまずいんじゃないかしら」

「食材があればそれだけ長く調査できるのよ?
 つまり必要経費ってことじゃないの。
 絶対文句なんて言われないわ」

 結局ヴィッキーに押し切られる形で畑を利用することに決めてしまった。明日にでもチカマと見に行くとしよう。そんなことを話していたらトラックが恐る恐る口を開いた。

「もしかしてそこの赤毛のアンタはトコストの姫様なのか?
 なんで王族が直接調査に参加してるんだよ。
 やっぱりここにはなにかあるってことなんだな?」

「いいえ、別に理由なんてないわ。
 暇だったから面白そうな人たちについて来たのよ」

「なんだそんな理由じゃやっぱり期待できねえな。
 今日はひでえ目にあったし明日は休みにして狩りを頑張るぜ。
 むやみに潜るよりもうまいもん食えた方が嬉しいしな」

 トラックがそういうと六鋼のメンバーたちが全員頷いた。その中から例のドワーフが立ち上がりチカマへ歩み寄っていく。直してもらった剣の具合でも確認するのだろうか。

「魔人のお嬢ちゃん、明日は探索が休みになったからちゃんと打ち直してやろう。
 砥いだだけでも大分マシだとは思うが切れ味が良いに越したことはない」

「わーい、おひげのおじさんありがと。
 ボクも頑張って畑へ行って来るね」

「えっとドワーフのおじさま、チカマの剣を作ってくださるの?
 ありがとう、王都では丁度いいものが手に入らなかったので助かります。
 ねえレナージュ? 剣を作るのって高そうだし、これはご飯代もらえないわね」

「それはそれ、これはこれよ。
 でももちろんミーヤがいいようにしてくれていいわ。
 こんなところで儲けようなんて思ってないしね」

 ついさっきまでそろばんをはじいていたはずなのにこの言いよう。ホントにレナージュったら調子がいいんだから。それにしてもこんなに親切にされてしまうと明日からの調理にも気が抜けない。毎日同じものを作るわけにもいかないので何か考えておくことにしよう。

 明日は休みと決め込んだ六鋼の面々につられたのか、レナージュとヴィッキーも一緒になって飲んだくれている。ということはミーヤたちもきっと休みと言うことになりそうだ。

 ミーヤはレナージュへ声をかけてから、うとうとし始めているチカマとナウィンを連れて寝台馬車へと向かった。明日は二日酔いの二人をほっといて畑を見に行こう、そう考えながら床についた。


 翌朝起きてみるとレナージュとヴィッキーの姿が無い。ということはせっかくの寝台を使わずに表で酔いつぶれたに違いない。

「あの、えっと、あの……
 外に全員転がってます……
 起こしますか?」

「ほっといていいわよ。
 起こしたら頭が痛いって騒ぎ出して面倒だしね」

 そうはいいながらも何もしないのはかわいそうなので、レナージュの枕元へ酔い覚ましを置いておくことにした。こんな事もあろうかとちゃんと用意してきて良かった。さらに鍋を用意して水を貯めてすぐ飲めるように準備をしておく。

「さあこれでよしっと。
 それじゃ畑まで行ってみましょうか。
 チカマ、案内よろしくね」

「はーい、やっぱりミーヤさまはやさしいね。
 おひげのおじさんもやさしいしナウィンもやさしい。
 みんなやさしくてボク幸せ」

「あの、えっと、あの……
 みなさん本当にお優しいです。
 私なんかを一緒に連れて来てくれて感謝してます。
 お役に立てるよう頑張ります」

「二人ともホントいい子ね。
 チカマは強くて頼りになるし、ナウィンは器用で役立つものを作ってくれる。
 とても助かってるわ。
 それに何より酒癖が悪くないのもいいところね」

 それを聞いたチカマは胸を張り、ナウィンは照れている。こういう素直で子供らしいところもまた愛らしい。レナージュも素直で正直な性格なので付き合いやすいことを考えると、ミーヤはつくづく出会いに恵まれていると感じるのだった。

 雑談しながらトコトコと歩いて畑までやってくると、多少荒れているものの作付けされていた作物はまだ枯れていないようだ。あちらこちら掘ってみると芋やニンジン等の根菜類が、その先には葉物野菜も栽培されていた。それに少量だがトウモロコシもあった。

 畑は森に隣接するように開墾されており日当たりは良くなさそうである。それでもきちんと育っていたようでなかなか立派な野菜が収穫できた。畑を掘り起こしながらふと森のほうを見ると木々の間に何かいるような気配を感じる。

「チカマ! 森の中を探知してみて。
 なにかいるような気がするの」

 チカマが頷いて探索スキルを使い周囲の確認を始めた。するとキラキラと光るものが浮遊しているように見える。いったいあれはなんだろう。

「ミーヤさま、敵意は無いみたい。
 だけど動物じゃないよ? 魔獣なのかなあ」

「敵意の無い魔獣? そんなのいるのかしら。
 んもう! こういうときにレナージュがいたら教えてもらうのに。
 危なくなさそうなら見に行ってみようか」

「あの、えっと、あの……
 ミーヤさまは怖くないんですか?
 私は怖いです……」

「うーん、怖くはないわね。
 だって新しいこととか知らないことってワクワクするでしょ?
 それにいざとなったら仲間もいるし、今なら六鋼の人たちもいるわ」

「あの、えっと、あの……
 私はとてもそんな風に考えられません。
 やっぱり冒険者は無理そうです……」

「ナウィンにはナウィンにあった生き方があるんじゃない?
 だから無理して冒険者になる必要なんてないわよ。
 一緒に旅をしながらそれを見つけて行きましょ」

 いつも自信無さげでうつむいてばかりのナウィンだが細工の腕は確かなものだ。いつかその技術が役立つ場面が来るかもしれない。そのことをうまく伝えられない自分のことがもどかしかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

処理中です...