『神々による異世界創造ゲーム』~三十路女が出会った狐耳メイドは女神さま!? 異世界転生したケモミミ少女はスローライフと冒険を楽しみたい~

釈 余白(しやく)

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第六章 未知の洞窟と新たなる冒険編

116.親睦会

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 ミーヤたちが戻ってきたのが十五時前くらい。それからあれこれ話しているうちに日が沈み、辺りも暗くなっている。チカマとナウィンはついさっき戻ってきたのだが、その手には立派なドライヤーとシャワーが握られていた。

「あの、えっと、あの……
 これできました。
 材料もあったので使ってしまいましたけど大丈夫でしょうか」

「もちろん気にすることないわよ。
 どうせ金目のものは戦士団が持ち帰ってしまっているでしょ。
 残っているのは珍しくも貴重でもないものばかりのはずよ」

 ヴィッキーがそう言うなら問題ないのだろう。いざとなったら国王へ言い訳でもしてもらえばいい。そんなことはどうでも良いという表情をしたヴィッキーは、ナウィンに作ってもらったドライヤーとシャワーを興味深く観察していた。

「これ貰ってしまっていいの?
 真ん中に火を入れて使えばいいのよね?
 うちにも召喚術師は大勢いるから、城で使う時は誰かに頼んでみるわ」

「ええ、頭からお湯を浴びるのは気持ちいいわよ。
 汚れも良く落ちるから洗濯に使ってもいいわね」

「なるほどねえ、色々と使い道があるわけか。
 これ自体を販売したら結構売れるんじゃないかしら」

「そう言えばそんなことも考えてたわね。
 忙しすぎてすっかり忘れてたわよ」

 レナージュが思い出したように口を開いた。確かにそう考えていたこともあったが、フルルの店や酒場の手伝いで日々追われてそれどころではなかった。今頃どうしているだろうか。ハルとモウブはちゃんとやっているだろうか。

 だが下手に連絡をすると帰ってきて手伝ってほしいと言われそうな気がするので、こちらからメッセージは送らないようにしている。それにマールとは数日に一度くらいのペースでたわいもないやり取りをしていて気持ちが安らぐのだから、同じ時間を使うならどちらへ割くかは明らかであった。

「そう言えばトラックさんたちはまだ戻ってこないのかな。
 まさか中でキャンプしたりはしないよねえ」

「もう十九時過ぎたし、いくらなんでも戻ってくると思うけど何かあったのかしら。
 何もいないと思ってた場所だけど、実際私たちも魔獣に出くわしたわけだしね。
 真ん中の通路の奥に何かがあったとしてもおかしくないわ」

「でもかなりの手練れっぽかったし無事に帰ってくるわよ。
 私たちが心配することもないんじゃないかしら。
 まあ情報交換はしたかったけど別に今日じゃなくてもいいじゃない。
 それより私は夕飯が何かが気になるわ」

 ヴィッキーは食べることがかなり好きらしく甘いものも大好きだと言う。というよりここにいる全員が甘いものは大好きなのだけど、それは女子の本能なのだろうか。

「それじゃなにか用意をはじめましょうか。
 昨日チカマが獲ってきてくれた鳥をから揚げにして、なにかたれをかけようかしら。
 それとヴィッキーはチーズが好きだからもう一品ね」

 さっそくミーヤはかまどを用意して火を起こした。揚げ物は油の始末が大変なので、少し多めにする程度で揚げ焼きにするつもりだ。その前に塩胡椒で下味をつけて少し寝かせておく。その間に芋を千切りにしてスキレットへ敷き詰め、その上へたっぷりとチーズをのせて焼き始めた。

「ああ、焼けたチーズの香り、最高ね!
 これはピッツァとはまた違う料理なの?」

「ええ、別の料理よ。
 特に名前はないけど、千切り芋のチーズ焼きってところかしら。
 もう一品は油淋鶏というものにするわね」

 千切り芋のチーズ焼きは、昔母親がおやつに作ってくれていたもので、七海も大好きだったお手軽料理だ。今まで思い出さなかったのが不思議なくらいで、簡単に作れるのだからこの世界で出回っていてもおかしくはない。

 油淋鶏は材料が大分足りないので、何となく似たような感じに仕上げるつもりで合わせ調味料を作り始めた。そもそもネギっぽいものがなく、砂糖とニンニク、レモンっぽい果実を絞ってオリーブオイルを足す。それをジスコで作ってもらった泡だて器でよく混ぜたらそれっぽくなったので由としよう。

 とりあえずお腹を空かせたヴィッキーと、酒のつまみが欲しいレナージュには千切り芋のチーズ焼きを与えて黙らせる。続けてもう一つ作ってからチカマとナウィンへ出してあげた。

 鳥は多めの油でパリッとするまで揚げ焼きにして食べやすい大きさへ切りそろえ、作っておいた調味だれをかけたら出来上がりだ。酸味と甘みのバランスはいい感じで、自分でもいい出来だったと思う。ネギがあったらもっと良かっただろう。

 せっかくなので鳥を捌いた後のガラで出汁を取って野菜麦粥も作ってみた。これも大当たりで濃い味付けの油淋鶏ともよくあっている。なんだか街の中華屋さんで食べているような素朴な味にミーヤはとても満足していた。すると――

「ミーヤ? このチーズのやつおかわり作れる?
 凄くおいしくて、いくらでも入っちゃって食べるのが止まらないわ」

「気に入ってもらえたなら嬉しいわ。
 すぐ作るから少し待ってもらえる?」

 ミーヤはヴィッキーのリクエストに応えて追加を作り始めた。ミーヤにとって思い出の味を気に入ってもらえたのはとても嬉しいし、おかわりを作るのもなんてことないので構わないが、メインディッシュも食べてもらえるともっと嬉しい。もしかしたらヴィッキーは舌がお子ちゃまなのかもしれない。

「ミーヤミーヤ、私にはこのたれをもう少しもらえるかな。
 この脂っこさと酸味が蒸留酒によく合うわね」

「分かったわレナージュ、少し待ってね。
 チカマ、これ渡してあげて」

「はーい。
 ミーヤさま、この鳥のやつ外がカリカリでおいしいね」

「そう、えっと、あの……
 麦粥の風味が凄く豊かでおいしいです。
 こんなの初めて食べました」

 うんうん、ちびっこ組のほうがよほどミーヤの気持ちを汲んでくれている。まあでもどれも好評なのはやっぱり嬉しいし、人それぞれ好みがあるのだから評価が分かれるのも当然だ。

 でも作る側としては、手間のかかる順においしいと言ってもらいたいものなのかもしれない。手間をかけると言えば醤油が手に入るようになったんだから角煮や肉じゃがも作れそうだ。和食は得意だったので材料さえ手に入るならきっとおいしく作れるはず。すき焼きも好評だったし、似た系統の味は好まれるに違いない。

 ミーヤはなんだか楽しくなってきて一人でニコニコしていた。するとチカマが不思議そうに顔を覗き込むので、作ったものを喜んで食べてもらえるのが嬉しいのだと伝えた。それを聞いたチカマとナウィンはミーヤに負けないくらいの笑顔でおかわりをせがんだ。

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