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第五章 別れと出会い、旅再び編
100.再会直後の送別会
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全員がお腹いっぱいで、膨れたお腹の分だけ幸せを貯め込んだようなそんな夜。
チカマはデザートの水飴をこねはじめていたが、あの棒はいつから使っているものだろうか…… またどこかで手に入れて交換してあげないと、お腹を壊したり病気になったりしたら大変だ。ナウィンも欲しそうにしていたので、綺麗なスプーンを出してあげる。でもやっぱりコネコネしたいらしく物欲しそうにしているのでもう一本スプーンを渡した。
そう言えば、ミーヤも含めみんなフォークやスプーンでなんでも食べるのだが、箸は存在しないのだろうか。たとえ作っても誰も使えないかもしれない。それでもたまには箸を使って食べたくなることもある。この辺りも今後の調査課題としておこう。
「さてと、腹もいっぱいになったことだし、しっかりと飲むとするか。
ミーヤ、なにか摘まむものあるか?」
「そうね、そろそろ出来るかしら」
そう言ってフードドライヤーを取り出した。中にはトウモロコシを入れてある。それを取りだし種子を全部取ってから鍋に入れて油を少量注ぐ。その段階でチカマはすでに耳を塞いで構えている。
「あら、爆発トウモロコシね。
ジュクシンでも結構食べてたわよ」
「そうなの? この間作ったらレシピが降ってきたからすでにあるのはわかってるんだけどね。
まだ売ってたり人が作ったものは見たことはないのよ」
「それでも作れちゃうんだからさすがミーヤよね。
ホント神人様っておいしいもの一杯教えてくれる素敵な存在だわ」
「し、えっと、あの……
神人様!? ミーヤさまは神人様なのですか!?」
「ちょっとあなた今まで気が付いてなかったわけ?
そんなに鈍いと冒険者にはなればいわよ?」
「そんな、えっと、あの……
それって関係あるんですか……?」
「何言ってるの、当たり前じゃない。
関係ないわけないに決まって無くもないじゃないの」
レナージュは酔っぱらっているのかからかっているのかすでにわからないくなっているし、おそらく自分でも何を言っているかわかってなさそうである。かくいうミーヤもさっぱりわからない。
しばらくするとポンポンと良い音がしてきた。今の今まで警戒して耳を塞いでいたチカマだが、いい加減待ちくたびれて手を離したすぐ後に音が鳴り始めたので、また慌てて耳を塞いだ。ポップコーンは食べる前から楽しめてお得な料理の一つだ。
出来上がったポップコーンへ塩を振りかけてよく混ぜてからみんなの真ん中へ置く。そしてミーヤはイライザの正面へ陣取ってしっかりと話を聞く体勢に入った。
「さ、聞きましょうか。
パーティーを抜けて冒険者を辞めるってことについてね」
「もちろんさ。
随分前からバタバ村の件が片付いたら辞めるのは決めていたんだよ。
それに、ミーヤがジスコへ戻ってきたら言うつもりだったしな。
内緒にしてたんじゃなくて言うタイミングが無かっただけさ」
「それはもうわかったわ。
決心は固いんだろうし、私がとやかく言うことでもない。
でもやっぱり理由くらいは知りたいのよ」
「そうせかすなって、こっちにも心の準備が必要なんだからさ。
別に改まるほど難しい話じゃないんだ。
なんていうかさ…… わざわざ言うほどのことでも無かったって言うかさ……」
イライザのテンションがどんどん下がっていく。一体どういうことだろう。その時レナージュが床をバンッと叩いて大きな音を出したのでびっくりしてしまった。
「もうイライラするわねえ。
こういうときだけ乙女なんだからさ」
「し、仕方ないだろ、こういうの慣れてないんだからさ。
いざ誰かに言うのはちょっと…… な……」
「もういいわ! 私が言ってあげる!
イライザはね、マルバスに危ないことはもうやめてずっと側にいて欲しいって言われたのよ!
勿体ぶったわりに大した理由じゃないでしょ?
聞いてるこっちの方が恥ずかしいわよ」
なんだ、そう言うことだったのか。つまりはプロポーズ! うらやましい!
「イライザ! おめでとう!
すごくステキなことじゃないの。
恥ずかしいことなんて何もないわ!」
「怒ってないのか……?
そのせいでパーティー抜けるんだぜ?」
「仲間の幸せを聞かされて怒るほど私は小さい人間じゃないわ。
いや、どちらにせよ人間ではないけど、まあそんなとこよ。
おめでたいことを聞かされて嫌な気分になんてなるわけないじゃないの。
レナージュは素直じゃないからちゃんと口にできないだけで、心の中では喜んでいるわよ」
「私は素直じゃないなんてことはなくもないけどあるはずない!
ちょっとうらやましいだけですよーだ」
まったく素直じゃない。でも顔を見れば祝福しているのが十分伝わってくるのだった。我らが戦乙女四重奏からの脱退は寂しいけれど、せっかくめでたいことなんだから盛大にお祝いしたいものだ。ミーヤは調子に乗って楽器を弾いて、チカマはそれに合わせて踊ってくれる。レナージュも手拍子をしたりと大分にぎやかだった。
しかし大騒ぎしていてもなぜか涙が溢れてくる。笑顔で送り出さなくっちゃと思えば思うほどこらえきれなくなり、とうとう泣き出してしまった。
「まったくミーヤは泣き虫だなあ。
だから何度も言うけどジスコにいるんだからいつでも会えるんだぜ?
マルバスと二人でいつも待ってるよ、酔い醒まし取りに来るのをな!」
「もう、イライザの意地悪!
私はそんな酔っ払いじゃないんだからね。
それに何かわからないことがあったら、すぐに聞きに行っちゃうんだから覚悟しておいて!」
「うんうん、いつでも来てくれよ」
そういうとイライザは珍しくミーヤを引き寄せて、両腕でしっかりと抱きしめてくれた。イライザはべたべたしながらはしゃぐのは好きじゃないと思ってたから意外だったし、めったにないことだからか余計にうれしかった。
そのやさしさに、ミーヤも思い切り甘えたくなってギュッと抱きしめかえす。するとチカマも一緒になってイライザを抱きしめ、しまいにはイライザが苦しがり、みんなで笑いながら楽しい夜を過ごした。
チカマはデザートの水飴をこねはじめていたが、あの棒はいつから使っているものだろうか…… またどこかで手に入れて交換してあげないと、お腹を壊したり病気になったりしたら大変だ。ナウィンも欲しそうにしていたので、綺麗なスプーンを出してあげる。でもやっぱりコネコネしたいらしく物欲しそうにしているのでもう一本スプーンを渡した。
そう言えば、ミーヤも含めみんなフォークやスプーンでなんでも食べるのだが、箸は存在しないのだろうか。たとえ作っても誰も使えないかもしれない。それでもたまには箸を使って食べたくなることもある。この辺りも今後の調査課題としておこう。
「さてと、腹もいっぱいになったことだし、しっかりと飲むとするか。
ミーヤ、なにか摘まむものあるか?」
「そうね、そろそろ出来るかしら」
そう言ってフードドライヤーを取り出した。中にはトウモロコシを入れてある。それを取りだし種子を全部取ってから鍋に入れて油を少量注ぐ。その段階でチカマはすでに耳を塞いで構えている。
「あら、爆発トウモロコシね。
ジュクシンでも結構食べてたわよ」
「そうなの? この間作ったらレシピが降ってきたからすでにあるのはわかってるんだけどね。
まだ売ってたり人が作ったものは見たことはないのよ」
「それでも作れちゃうんだからさすがミーヤよね。
ホント神人様っておいしいもの一杯教えてくれる素敵な存在だわ」
「し、えっと、あの……
神人様!? ミーヤさまは神人様なのですか!?」
「ちょっとあなた今まで気が付いてなかったわけ?
そんなに鈍いと冒険者にはなればいわよ?」
「そんな、えっと、あの……
それって関係あるんですか……?」
「何言ってるの、当たり前じゃない。
関係ないわけないに決まって無くもないじゃないの」
レナージュは酔っぱらっているのかからかっているのかすでにわからないくなっているし、おそらく自分でも何を言っているかわかってなさそうである。かくいうミーヤもさっぱりわからない。
しばらくするとポンポンと良い音がしてきた。今の今まで警戒して耳を塞いでいたチカマだが、いい加減待ちくたびれて手を離したすぐ後に音が鳴り始めたので、また慌てて耳を塞いだ。ポップコーンは食べる前から楽しめてお得な料理の一つだ。
出来上がったポップコーンへ塩を振りかけてよく混ぜてからみんなの真ん中へ置く。そしてミーヤはイライザの正面へ陣取ってしっかりと話を聞く体勢に入った。
「さ、聞きましょうか。
パーティーを抜けて冒険者を辞めるってことについてね」
「もちろんさ。
随分前からバタバ村の件が片付いたら辞めるのは決めていたんだよ。
それに、ミーヤがジスコへ戻ってきたら言うつもりだったしな。
内緒にしてたんじゃなくて言うタイミングが無かっただけさ」
「それはもうわかったわ。
決心は固いんだろうし、私がとやかく言うことでもない。
でもやっぱり理由くらいは知りたいのよ」
「そうせかすなって、こっちにも心の準備が必要なんだからさ。
別に改まるほど難しい話じゃないんだ。
なんていうかさ…… わざわざ言うほどのことでも無かったって言うかさ……」
イライザのテンションがどんどん下がっていく。一体どういうことだろう。その時レナージュが床をバンッと叩いて大きな音を出したのでびっくりしてしまった。
「もうイライラするわねえ。
こういうときだけ乙女なんだからさ」
「し、仕方ないだろ、こういうの慣れてないんだからさ。
いざ誰かに言うのはちょっと…… な……」
「もういいわ! 私が言ってあげる!
イライザはね、マルバスに危ないことはもうやめてずっと側にいて欲しいって言われたのよ!
勿体ぶったわりに大した理由じゃないでしょ?
聞いてるこっちの方が恥ずかしいわよ」
なんだ、そう言うことだったのか。つまりはプロポーズ! うらやましい!
「イライザ! おめでとう!
すごくステキなことじゃないの。
恥ずかしいことなんて何もないわ!」
「怒ってないのか……?
そのせいでパーティー抜けるんだぜ?」
「仲間の幸せを聞かされて怒るほど私は小さい人間じゃないわ。
いや、どちらにせよ人間ではないけど、まあそんなとこよ。
おめでたいことを聞かされて嫌な気分になんてなるわけないじゃないの。
レナージュは素直じゃないからちゃんと口にできないだけで、心の中では喜んでいるわよ」
「私は素直じゃないなんてことはなくもないけどあるはずない!
ちょっとうらやましいだけですよーだ」
まったく素直じゃない。でも顔を見れば祝福しているのが十分伝わってくるのだった。我らが戦乙女四重奏からの脱退は寂しいけれど、せっかくめでたいことなんだから盛大にお祝いしたいものだ。ミーヤは調子に乗って楽器を弾いて、チカマはそれに合わせて踊ってくれる。レナージュも手拍子をしたりと大分にぎやかだった。
しかし大騒ぎしていてもなぜか涙が溢れてくる。笑顔で送り出さなくっちゃと思えば思うほどこらえきれなくなり、とうとう泣き出してしまった。
「まったくミーヤは泣き虫だなあ。
だから何度も言うけどジスコにいるんだからいつでも会えるんだぜ?
マルバスと二人でいつも待ってるよ、酔い醒まし取りに来るのをな!」
「もう、イライザの意地悪!
私はそんな酔っ払いじゃないんだからね。
それに何かわからないことがあったら、すぐに聞きに行っちゃうんだから覚悟しておいて!」
「うんうん、いつでも来てくれよ」
そういうとイライザは珍しくミーヤを引き寄せて、両腕でしっかりと抱きしめてくれた。イライザはべたべたしながらはしゃぐのは好きじゃないと思ってたから意外だったし、めったにないことだからか余計にうれしかった。
そのやさしさに、ミーヤも思い切り甘えたくなってギュッと抱きしめかえす。するとチカマも一緒になってイライザを抱きしめ、しまいにはイライザが苦しがり、みんなで笑いながら楽しい夜を過ごした。
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