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序章 女神との出会いと異世界転生編

07.数字とにらめっこ

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 ゲームに関しては一般知識程度しかない七海にとって、スキルの説明は難解だった。それでも丁寧に説明を受けていると段々と理解が深まっていく。

「スキルは後からいくらでも変更できるから違うことしたくなっても安心だよ。
 熟練度合計に余裕があれば何種類でも覚えられるの。
 上限は熟練度が100、全スキル合計で700、これに種族ボーナスが上乗せされるよ。
 スキルは覚えたくなくても行動によって勝手に上がっちゃうことがあるから注意してね」

「何となくわかってきました。
 スキル値はどうやったら上がるんですか?
 普通の人が10で神人が40、それがどのくらいの差なんだろうって」

「それは単純な話で、スキルにあった行動をすれば上がって、勝手には下がらない。
 細かいことは計算で決めてるらしいけど、私はそう言うの詳しくないんだよね。
 数字とか計算式とかは無の神が担当してるからさ。
 でもスキルが低ければ上がりやすくて、熟練度が高くなると上がりにくくなるのは間違いないかな」

「じゃあ上げるのが大変だから、最初に覚えておいた方が良さそうなのってありますか?
 今選んでおかないものは0からスタートなんですよね?」

「そうそう、物わかりがいいじゃないの。
 上げにくさナンバースリーは調教と魔導機工に窃盗かな。
 特に魔導機工は強力なスキルだけど、上げるのには鉄とか木材とかの素材が大量に必要になるの。
 ちなみに魔導機工ってのはマナで動くロボット的な? いやロボットとは限らないか。
 たとえば風車とか水車を動かして、その力で石うすを回して穀物を挽くのってイメージできる?
 その機構をマナで動かすための機械を作るスキルってこと」

「全然わかりません…… ちょっと無理っぽいかも……
 機械とかすごく弱いんです、私……」

 説明を受けてはみたものの、頭の中が沸騰するんじゃないかってくらいにさっぱりわからない。とりあえず難しそうで七海には不向きだけど、自動で何か出来るものが存在するのは確かだと言うことだ。

 それよりも現実的なことを考えてみると、調教スキルもあげるのが大変らしいしやっぱり最初に覚えておいた方が良さそうだ。窃盗は文字そのままの意味だろうか……

「窃盗も上げるのが大変なら最初に貰っておいた方がいいんですか?
 私泥棒とかしたことないですけど……」

「盗みを働くことに興味があるならそれも悪くないね。
 あとは鍵を開けるのも窃盗スキルだから、家屋侵入とかにも役立つよ?」

「いや、やっぱりいらないです……
 それよりも、剣と魔法の世界って言うくらいだし、それを選んだ方がいいのかなあ」

「剣になじみがあるならそれでもいいけど、獣人は爪や牙って武器をはじめから持ってるからね。
 戦闘スキルを選ぶなら素手で戦うためのスキル、体術がいいよ。
 あと魔法は四種類あって、変身できるのは妖術ってやつね。
 これも獣人なら種族補正が20もつくから超お得よ~」

「なるほど、体術ですか。
 中学生の頃に護身術教室で合気道習ってたので体術良いかも。
 そうなると結構簡単に決まっていきますね。
 体術、妖術、調教、演奏、生体研究を選んであと二つ、どれにしよう。
 他のおススメってありますか?」

「そうだねえ、あんまりガツガツするんじゃなくてのんびり過ごしたいんだよね?
 それなら生産系から選んで、それを主軸に生活するのも悪くないかも。
 畑仕事とか牧場とか興味ない?」

「すいません、下町とは言え一応都会生まれなのでそういうのまったく想像できないです……
 そういえばこの召喚術ってところに書いてある精霊って言うのはなんですか?」

「精霊って言うのは七海ちゃんが元いた世界で言うところの元素みたいなものね。
 酸素とか水素とかあるでしょ? アレと似たような物と考えたらいいかな。
 召喚術を使うと、手元に水を出したり火を起こしたりできるからあれば便利だよ。
 魔法とはちょっと違う分類になるけど、使う分には大きな差があるわけじゃないかな」

「じゃあ召喚術にしようかな、便利そうだし。
 あと一つはなににしよう」

「すぐに役に立つかは微妙だけど、世界を旅して周りたいなら瞬間移動の呪文がある書術がいいかも。
 世界中にある神柱っていう柱があるんだけど、そこへ一瞬で移動することができるんだから。
 呪文の巻物を作って売ることもできるから、在宅勤務もできちゃう。
 しかも書術を極めてる人はかなり少ないレアスキルだからきっと儲かるよ?」

 在宅勤務がアピールポイントになるのかは疑問だけど、瞬間移動が使えるならきっと便利だろう。それにレアスキルという響きにも魅かれる。これでスキル選択最後の一つは書術が最有力候補になった。

「へー、瞬間移動ですか、それは便利で楽しそうですね。
 世界中を旅すると言うのもロマンがあってステキ。
 大きさは地球と同じくらいですか? 大陸とかも同じですか?」

「大きさは同じだけど地形は全然違うよ。
 人口も、地球には七十億人以上住んでるのに対して、異世界は現在五十万人位かな。
 東京だと中堅の区と同じくらいかしらね。
 だから未開拓地域もかなり多いんだよ」

「それだけ人口密度が低いならのんびり暮らせそう。
 医療とか福祉みたいなのはどうなってるんですか?」

「ダメージを受けてヒットポイントが減ったら、それを回復できる神術って言う魔法があるの。
 神術を使うと軽い毒なら解毒もできるし、そういう呪文を活かして治療院をやってる人もいる。
 あとは治療に使う包帯を作る裁縫衛生ってスキルもあるよ。
 でも治療院で治せないほどの毒とか重い病気とかは、神柱へ触れるだけで治っちゃう、スゴイ!」

「えっ!? それは本当にスゴイ。
 それなら病気で寝込んだり入院したりという心配はないんですね」

「まだ文明が進んでいないからね。
 それくらいの恩恵がないと人ってすぐに死んでしまうでしょ?
 どんどん死んでどんどん増えればいいっていうのも手段の一つではあるんだけどさ。
 それだったら今の地球と変わらないじゃない?
 だから 私たちとしてはもっと一人一人じっくりと長く、そして楽しく生きてもらいたいわけ」

 最初は人体実験とか生命への冒涜だなんて思っていたけど、考えていることは案外と悪くない、少なくとも悪意のある考えではないと今は思える。やはりこの女神に足りないのは威厳と風格と配慮だろう。

「話がそれちゃいましたけどいろいろわかりました。
 最後の一つは書術に決めます。
 世界を旅するなんて夢がありますしね!」

「うんうん、希望が持てる人生になるはずだからいっぱい楽しんでね。
 じゃあスキルを所持スキル欄へセットするよ」

 女神は画面を覗きこんでタブレットのように操作していく。次に初期設定らしい数値を入力してくれたようだ。そしてまた『NEXT>>』を押すと次の画面へ切り替わった。

「これがステータス画面だよ。
 一番上が空欄なのはこれから名前を入力してもらうから。
 ここに現在のレベルとか経験値、細かなステータスとスキル一覧が表示されるからね。
 わからない項目あるかな?」

「スキルの他にレベルもあるんですか?
 なんだか数字ばかり…… 私、見積もり作るのも苦手だったんですよね……」

「スキルは固有の能力、レベルは身体能力に直結してると考えればいいかな。
 ちなみにレベルに上限は無いから、上がれば上がるほど強くなると思っていいよ。
 男女差もないからSTR、つまりストレングスが高い方が力持ちってこと。
 あと、この画面は転生後も見られるから安心してね。
 どうせしょっちゅう見るからそのうち慣れるって。
 注意しないといけないのはHP、つまり体力(ヒットポイント)だよ。
 これが無くなると死んじゃうからね」

「死んだら異世界生活もおしまいってことですね。
 なるべく気をつけます……」

「ううん、死んだら勝手に生き返るからそこは大丈夫。
 でも溜めた経験値は無くなるし、レベルが一つ下がるってペナルティはあるよ。
 神人以外は死んでも生き返らないから、一応それは覚えておいて」

 死なない世界!? それならなんで前の神人はいなくなって、七海に交代することになったんだろう。疑問に感じたので女神へ尋ねてみると意外すぎる回答が返ってきた。
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