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第六章 欲望 X 策謀 = 絶望 + 希望
69.イワカン
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今日の指導探索も順調に進み十九階層までやって来た。最近はとにかくモンスターが少なくて探索自体は楽になっている。未到達である四十八階層以上を目指すなら今がチャンスかもしれない。
『シックス、セブン? こないだの崩落でビーコン欠落があったでしょ?
他の階層でも同じように地形変化があるみたいだからよく見るようにね』
「そんなのが見つかってたのか?
出発までに教えてくれたらよかったのになぁ」
『仕方ないじゃん、たった今周知が流れてきたんだからさ。
昨日の探索で二十五から三十にかけて調査したらしいよ。
報告者は飛鳥山二番隊と三番隊だってさ』
「このタイミングで飛鳥山隊、それも古株なのか……
なんか嫌な感じだけどたまたまかな。
それじゃ今日は二十から二十五階層を確認してみるよ」
「私もそれで依存無しだよ。
ビーコン探知なら少しは役立てそうだから嬉しいよ」
虹子の磁力制御はビーコンの検知がしやすいので、おおむね等間隔に打ちこまれているはずのビーコンが欠落している場所があるか探ってもらう事にした。
紗由のスキャンによると大きな地形変化はないとのこと。つまり崩落等は起きていないし、理恵の父親が地形コピーをしている形跡もなさそうである。そうやって、警戒はしつつも順調に進めて二十三階層までやって来た。
『注意して、この階層はなんかおかしいよ。
何だろうこの違和感、地形はマップ通りのはずだし識別信号も出てないけど……』
「違和感って地形データを見てってことか?
それとも他に何か見えたり検知したものがあったりするのか?
もうちょっと具体的に言ってくれないと確かめようがないぜ」
「シックス、左手の壁のビーコンがいくつか無くなってるみたい。
やけに間隔が広い場所がいくつかあるもの」
「それで位置データがうまく取得できなくなってるのかな。
だからそっちで受信した時に違和感があるんじゃねえの?」
『そう言うんじゃないんだよねぇ。
ちょっとビーコンがしっかり残ってるとこでしゃがんだりジャンプしてみて』
紗由の要求は意味不明ではあるが、きっとなにか考えがあるのだろう。ビーコンが欠落している場所を避けてから、俺は言われるがままに飛んだり跳ねたりしゃがんだりしてみた。
『わかったわかった、なんでだかわからないけど深度が正常に取れてないや。
上下移動距離は正確に取得できてるからセンサ不良とかじゃない。
でも現在深度に数十センチメートルの誤差が出てるね』
「ビーコンが欠落しすぎて取得値が狂ってるのかね?
とりあえず打ち直して修復しておくよ」
俺と虹子は分担して欠落したビーコンの補填作業を始めた。これは結構時間と手間がかかり、まずは現存ビーコン間の距離を測ってから補填ポイントを算出する。もちろん高さも合わせる必要があるのでなるべく正確にあたりを付けることが大切だ。
打ち込み位置をマーキングしたらビーコンを打ちこんでいくのだが、従来はドリルとハンマーを使った手作業的なものだった。しかし現在は動力式の打ち込み工具が開発されたので楽が出来る。
「セブンはビーコン打ち込み初めてだな。
今は簡単だからまずはやってみてくれ。
このマーキングポイントにビーコンツールを押し当ててだな。
トリガーを引くだけで穴あけから打ち込み、固定までできちまう」
「こう、かな? ホントだ、簡単に出来ちゃった!
以前は大変だったってシックスの叔父さんがよく言ってたのにね」
「ま、流石イモウトってところだな。
今じゃこれがないとやってられないぜ」
『お礼は贅沢言わないよ、いつものお菓子でいいからね。
あとはスタンガントンファーを作った材料費分稼いでくれたら文句なし!』
「ちぇ、痛いとこつくなぁ。
それじゃ帰りに大学でお菓子買っていくよ。
最近出費がかさんで仕方ないや」
「ふふ、お兄ちゃんって大変そうだね。
妹が二人に増えちゃったしさ。
まあ予行練習だと思ってがんばってね」
なんの予行練習だよ、と突っ込んだら負けな気がして、俺はビーコン打ちこみに集中するのだった。
『シックス、セブン? こないだの崩落でビーコン欠落があったでしょ?
他の階層でも同じように地形変化があるみたいだからよく見るようにね』
「そんなのが見つかってたのか?
出発までに教えてくれたらよかったのになぁ」
『仕方ないじゃん、たった今周知が流れてきたんだからさ。
昨日の探索で二十五から三十にかけて調査したらしいよ。
報告者は飛鳥山二番隊と三番隊だってさ』
「このタイミングで飛鳥山隊、それも古株なのか……
なんか嫌な感じだけどたまたまかな。
それじゃ今日は二十から二十五階層を確認してみるよ」
「私もそれで依存無しだよ。
ビーコン探知なら少しは役立てそうだから嬉しいよ」
虹子の磁力制御はビーコンの検知がしやすいので、おおむね等間隔に打ちこまれているはずのビーコンが欠落している場所があるか探ってもらう事にした。
紗由のスキャンによると大きな地形変化はないとのこと。つまり崩落等は起きていないし、理恵の父親が地形コピーをしている形跡もなさそうである。そうやって、警戒はしつつも順調に進めて二十三階層までやって来た。
『注意して、この階層はなんかおかしいよ。
何だろうこの違和感、地形はマップ通りのはずだし識別信号も出てないけど……』
「違和感って地形データを見てってことか?
それとも他に何か見えたり検知したものがあったりするのか?
もうちょっと具体的に言ってくれないと確かめようがないぜ」
「シックス、左手の壁のビーコンがいくつか無くなってるみたい。
やけに間隔が広い場所がいくつかあるもの」
「それで位置データがうまく取得できなくなってるのかな。
だからそっちで受信した時に違和感があるんじゃねえの?」
『そう言うんじゃないんだよねぇ。
ちょっとビーコンがしっかり残ってるとこでしゃがんだりジャンプしてみて』
紗由の要求は意味不明ではあるが、きっとなにか考えがあるのだろう。ビーコンが欠落している場所を避けてから、俺は言われるがままに飛んだり跳ねたりしゃがんだりしてみた。
『わかったわかった、なんでだかわからないけど深度が正常に取れてないや。
上下移動距離は正確に取得できてるからセンサ不良とかじゃない。
でも現在深度に数十センチメートルの誤差が出てるね』
「ビーコンが欠落しすぎて取得値が狂ってるのかね?
とりあえず打ち直して修復しておくよ」
俺と虹子は分担して欠落したビーコンの補填作業を始めた。これは結構時間と手間がかかり、まずは現存ビーコン間の距離を測ってから補填ポイントを算出する。もちろん高さも合わせる必要があるのでなるべく正確にあたりを付けることが大切だ。
打ち込み位置をマーキングしたらビーコンを打ちこんでいくのだが、従来はドリルとハンマーを使った手作業的なものだった。しかし現在は動力式の打ち込み工具が開発されたので楽が出来る。
「セブンはビーコン打ち込み初めてだな。
今は簡単だからまずはやってみてくれ。
このマーキングポイントにビーコンツールを押し当ててだな。
トリガーを引くだけで穴あけから打ち込み、固定までできちまう」
「こう、かな? ホントだ、簡単に出来ちゃった!
以前は大変だったってシックスの叔父さんがよく言ってたのにね」
「ま、流石イモウトってところだな。
今じゃこれがないとやってられないぜ」
『お礼は贅沢言わないよ、いつものお菓子でいいからね。
あとはスタンガントンファーを作った材料費分稼いでくれたら文句なし!』
「ちぇ、痛いとこつくなぁ。
それじゃ帰りに大学でお菓子買っていくよ。
最近出費がかさんで仕方ないや」
「ふふ、お兄ちゃんって大変そうだね。
妹が二人に増えちゃったしさ。
まあ予行練習だと思ってがんばってね」
なんの予行練習だよ、と突っ込んだら負けな気がして、俺はビーコン打ちこみに集中するのだった。
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