60 / 81
第五章 疑惑 = 希望 + 変貌
60.カツドウホウシン
しおりを挟む
予定通り十階層まで飛ばしてきたが、ここから先はじっくりと進んでいった。ここから十五階層までは水が染みだしぬかるんでいて足元の悪い場所が続く。モンスターは小型の爬虫類や両生類のようににょろっとしたやつやネズミの仲間ばかり、のはずだったのだが――
「なんかさ、セブンがいるとワニが出る法則でもあるのか?
このへんじゃ滅多に見ないんだけどなぁ」
「そう言う言い方しないでよね。
素材としては高級なんだからもっとありがたがってもいいんじゃない?
で? どうやって仕留めるの?」
「帰り道なら良かったけどなぁ。
でも三人いるから荷物にもならないか。
それじゃ二人で狩って貰おうかな。
表皮には傷をつけないようにしてくれよ?」
俺がそういうと、虹子と美菜実はうなづいて相談を始めた。目標のワニはまだ遠くにいてこちらには気づいていない。できれば裏返しにするような策を思いついてもらいたいが、二人の能力や武器の特性を考えると簡単ではなさそうだ。
しばらくひそひそ話をしていたがようやく意見がまとまったようで、まず最初に虹子が前で美菜実が後ろと言う陣形でワニへと近づいていった。当然相手も気づいて二人へ向きなおり早足で突っ込んできた。
すると虹子まであと三メートルと言ったあたりで、ワニは突然ジャンプ台を上ったかのように空中へと飛び出した。というか本当にジャンプ台が作られていて、それはどうやら磁力で集めた砂鉄を板状にしたもので、ワニがその上を通過するタイミングに合わせて徐々に持ち上げたのだ。
いつの間にか高い場所から飛び降りたように誘導されたワニは、地面へ下降しながら美菜実のトンファーで前足の辺りを殴られて裏返しにされた。さらに背中から着地したところへ手脚に向かって虹子の磁力槍が突き刺さる。拘束され動けなくなったあとは美菜実のトンファーによる腹部への強打が続き、ほどなくしてワニは力尽き動きを止めた。
「二人ともすごいな、いい連携だったよ。
背中の一番いい部分を確保しながら無力化するのはなかなか難しいからね。
それじゃ解体してしまおうか」
「やった! シックスくんに褒められてうれしいです。
でも確かにスタンガンがあればもっと安全に、傷つけるリスクを押さえて無力化できますね」
「そんな、トマトちゃん凄かったよ。
手際が良すぎて、これじゃすぐに差を付けられそうって心配しちゃったもん。
私ももっと頑張らないといけないなぁ」
「いやあ、セブンのジャンプ台みたいな作戦は良かったよ。
一瞬宙に浮いたところをうまく裏返したトマトも見事だったね。
獲物の大きさは中くらいってとこだけど、表皮がきれいだから良い値がつきそうだ」
話をしながらワニを解体した俺は、肉を三等分にしてから袋詰めにし、皮はきれいに巻いてからバックパックへと縛り付けた。解体のために地面が渇いた場所に移動していたため、いったん休憩することにして内臓や細かいくず肉を一緒に燃やして後片付けをする。残った骨や灰をしっかりと深めに埋めて始末完了だ。
「こういったクズはなるべく深く埋めること。
さっき見かけたみたいに小さなモンスターを倒してそのまま放置するやつもいるけどさ。
ああいうのがあると腐臭の原因になるし、集まったモンスターで後から来た探索者が思わぬ被害を受けるからね」
「そうなんですよね、配信でも結構そのままにしていくっぽいパーティーも見かけます。
片っ端から倒していって大して時間を開けずに進んでいくのはおかしいですよね」
「まあ断言はできないけど、配信方向を不自然に切り替えるとあれって思うね。
明確な決まりはないといっても他人の迷惑になることなんてするもんじゃない。
でもトマトさんがそう言う考えを持ってるのは意外だったよ。
別に学校で習うことでもないよね?」
「うちの父親が食品加工工場で働いているんですよ。
だからモンスターと言えど粗末にするのはダメって小さいころから聞かされてて。
シックス君たちのパーティーはそういうのしっかりしてて感銘を受けました!」
「なるほど、それでうちに入りたいって考えたわけか。
それにしても活動方針が固いからって見た目にこだわりも制限もないよ。
俺やセブンが地味なのはもともとだから変に合わせる必要なかったのにさ」
「それはちょっと反省してます。
髪型だけいじるつもりだったんですけど、思いのほかセブンちゃんに似ちゃって。
前髪とか眉までいじったからかなり似ちゃいましたよね」
「私もびっくりしたもん。
世の中にはそっくりな人が三人はいるとか言うでしょ?
こんな身近に現れるものなんだなーって思ったよ」
こんなやり取りを聞いている限りやはり美菜実に悪意は無さそうで、俺はカフェ・オ・レを淹れながら一安心していた。
「なんかさ、セブンがいるとワニが出る法則でもあるのか?
このへんじゃ滅多に見ないんだけどなぁ」
「そう言う言い方しないでよね。
素材としては高級なんだからもっとありがたがってもいいんじゃない?
で? どうやって仕留めるの?」
「帰り道なら良かったけどなぁ。
でも三人いるから荷物にもならないか。
それじゃ二人で狩って貰おうかな。
表皮には傷をつけないようにしてくれよ?」
俺がそういうと、虹子と美菜実はうなづいて相談を始めた。目標のワニはまだ遠くにいてこちらには気づいていない。できれば裏返しにするような策を思いついてもらいたいが、二人の能力や武器の特性を考えると簡単ではなさそうだ。
しばらくひそひそ話をしていたがようやく意見がまとまったようで、まず最初に虹子が前で美菜実が後ろと言う陣形でワニへと近づいていった。当然相手も気づいて二人へ向きなおり早足で突っ込んできた。
すると虹子まであと三メートルと言ったあたりで、ワニは突然ジャンプ台を上ったかのように空中へと飛び出した。というか本当にジャンプ台が作られていて、それはどうやら磁力で集めた砂鉄を板状にしたもので、ワニがその上を通過するタイミングに合わせて徐々に持ち上げたのだ。
いつの間にか高い場所から飛び降りたように誘導されたワニは、地面へ下降しながら美菜実のトンファーで前足の辺りを殴られて裏返しにされた。さらに背中から着地したところへ手脚に向かって虹子の磁力槍が突き刺さる。拘束され動けなくなったあとは美菜実のトンファーによる腹部への強打が続き、ほどなくしてワニは力尽き動きを止めた。
「二人ともすごいな、いい連携だったよ。
背中の一番いい部分を確保しながら無力化するのはなかなか難しいからね。
それじゃ解体してしまおうか」
「やった! シックスくんに褒められてうれしいです。
でも確かにスタンガンがあればもっと安全に、傷つけるリスクを押さえて無力化できますね」
「そんな、トマトちゃん凄かったよ。
手際が良すぎて、これじゃすぐに差を付けられそうって心配しちゃったもん。
私ももっと頑張らないといけないなぁ」
「いやあ、セブンのジャンプ台みたいな作戦は良かったよ。
一瞬宙に浮いたところをうまく裏返したトマトも見事だったね。
獲物の大きさは中くらいってとこだけど、表皮がきれいだから良い値がつきそうだ」
話をしながらワニを解体した俺は、肉を三等分にしてから袋詰めにし、皮はきれいに巻いてからバックパックへと縛り付けた。解体のために地面が渇いた場所に移動していたため、いったん休憩することにして内臓や細かいくず肉を一緒に燃やして後片付けをする。残った骨や灰をしっかりと深めに埋めて始末完了だ。
「こういったクズはなるべく深く埋めること。
さっき見かけたみたいに小さなモンスターを倒してそのまま放置するやつもいるけどさ。
ああいうのがあると腐臭の原因になるし、集まったモンスターで後から来た探索者が思わぬ被害を受けるからね」
「そうなんですよね、配信でも結構そのままにしていくっぽいパーティーも見かけます。
片っ端から倒していって大して時間を開けずに進んでいくのはおかしいですよね」
「まあ断言はできないけど、配信方向を不自然に切り替えるとあれって思うね。
明確な決まりはないといっても他人の迷惑になることなんてするもんじゃない。
でもトマトさんがそう言う考えを持ってるのは意外だったよ。
別に学校で習うことでもないよね?」
「うちの父親が食品加工工場で働いているんですよ。
だからモンスターと言えど粗末にするのはダメって小さいころから聞かされてて。
シックス君たちのパーティーはそういうのしっかりしてて感銘を受けました!」
「なるほど、それでうちに入りたいって考えたわけか。
それにしても活動方針が固いからって見た目にこだわりも制限もないよ。
俺やセブンが地味なのはもともとだから変に合わせる必要なかったのにさ」
「それはちょっと反省してます。
髪型だけいじるつもりだったんですけど、思いのほかセブンちゃんに似ちゃって。
前髪とか眉までいじったからかなり似ちゃいましたよね」
「私もびっくりしたもん。
世の中にはそっくりな人が三人はいるとか言うでしょ?
こんな身近に現れるものなんだなーって思ったよ」
こんなやり取りを聞いている限りやはり美菜実に悪意は無さそうで、俺はカフェ・オ・レを淹れながら一安心していた。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる