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第五章 疑惑 = 希望 + 変貌
51.ニンキモノ
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土曜は特に何事もなく練習程度に探索を行ったくらいで過ぎて行き、日曜は虹子と一緒に理恵を連れてツーリングに行ってきた。とは言っても荒川の土手沿いを二台で流してから弁当を食べて帰ってくるだけのお手軽なものだ。それでも閉じこもっているだけよりは楽しかったらしく、理恵は終始ご機嫌だった。
そして週の真ん中水曜日、先週あの触手を倒したことでダンジョン探索の制限は解除され、また平常運転へと戻っていた。俺は貢献度を評価され学内表彰されて副賞のポイント、つまり特別賞与を貰った。
『おにい、帰りに大学でお菓子買ってきてよ。
ボーナス貰ったんだから少しくらいいいでしょ?
もうチョコレートもほかの甘いものも無くなっちゃったんだもん』
「わかったわかった、理恵にもなんか買ってってやるから聞いといて。
プリントマテリアルはまだあるのか?
他にもなにか必要なものがあればあらかじめ言ってくれ」
『さすがおにい、気前いいね。
それならHMDRの基本キットが欲しいな。
ちょっと作りたいものがあって設計中なんだー』
「いやいやそれは高すぎてキビシー
使ってないセットがなかったっけ?
って、それは虹子が使ってるんだったな」
『ま、それは急がないからそのうちでいいよ。
お菓子は忘れないでね、理恵はクッキーみたいなのがいいってさ』
今日からは火器携行指示は解除されたので、ダンジョンへは家から直通である。俺が日曜出かけている間に紗由がアップした触手討伐動画は、予想通り大ウケ大バズりしてすでに数万回再生されていた。これは今までアップしてきた数百本の動画再生数の合計よりも多いくらいだ。
当然のように今週の配信からは大勢の視聴者が詰めかけているが、そうなると心無い輩もやってくるのは世の常である。誹謗コメントは大体似たようなもので、この日も相変わらず俺はけなされていた。
<こんな地味なやつが本当にあんな大物倒したのか?>
<固くなるだけの能力とか役立たずだなw>
<もしかしてすごいのはパーティーメンバーだけなんじゃないの?>
<今時無言配信なの? たいくつすぎー>
『今日もおにいは人気者だね。
なんなら逆探知して特定しちゃってもいいんだけどどする?』
「そんなのほっとけって。
俺は全然気にしてないし、むしろなるほどもっともだって思ってるよ。
あといちいち読み上げなくていいからな?」
『ふふ、やっぱり気にしてるんじゃない。
それにしても今日も退屈な配信になっちゃうね。
豚でも出てこないかな、襲撃者でもいいけど』
「あんまり物騒なこと言うなよ。
それなら罠でも試してみるか? 配信ウケするかわからねえけど」
『やる人少ないからいいかもしれないね。
どこまで潜ってからするつもり?』
「えっと、今二十七階層だから切り良く三十階層まで行ってみるか。
あそこなら闇羆や凶猪も出てくるし、二十九階層でトリュフ採れるからな」
『トリュフ食べたーい。
一杯採ってきて売って稼ごうよ』
「さすがに売るほどは採れねえっての。
うちで食べる分くらいは確保するつもりで探してみるさ」
方針が決まったので足早に二十九階層へ進んでいく。ここは二十八階層にある光る岸壁が、吹き抜けのようになっている二十九階層を照らすためダンジョンの中とは思えない明るさだ。そのためか植物も少し生えているし菌類の繁殖も地上並みである。俺は一時間ほど歩き回って大き目のトリュフをいくつか採取し、満を持して三十階層へと向かう。
身を隠せる適当な場所へ陣取ってから、近くの平らな石の上でトリュフを細かく削った物を潰してなすりつけ香りを出す。おまけとして小さなかけらをいくつか置いた。これで準備はオッケー、うまくすれば猪が寄って来てくれると期待して待つことにした。
そして週の真ん中水曜日、先週あの触手を倒したことでダンジョン探索の制限は解除され、また平常運転へと戻っていた。俺は貢献度を評価され学内表彰されて副賞のポイント、つまり特別賞与を貰った。
『おにい、帰りに大学でお菓子買ってきてよ。
ボーナス貰ったんだから少しくらいいいでしょ?
もうチョコレートもほかの甘いものも無くなっちゃったんだもん』
「わかったわかった、理恵にもなんか買ってってやるから聞いといて。
プリントマテリアルはまだあるのか?
他にもなにか必要なものがあればあらかじめ言ってくれ」
『さすがおにい、気前いいね。
それならHMDRの基本キットが欲しいな。
ちょっと作りたいものがあって設計中なんだー』
「いやいやそれは高すぎてキビシー
使ってないセットがなかったっけ?
って、それは虹子が使ってるんだったな」
『ま、それは急がないからそのうちでいいよ。
お菓子は忘れないでね、理恵はクッキーみたいなのがいいってさ』
今日からは火器携行指示は解除されたので、ダンジョンへは家から直通である。俺が日曜出かけている間に紗由がアップした触手討伐動画は、予想通り大ウケ大バズりしてすでに数万回再生されていた。これは今までアップしてきた数百本の動画再生数の合計よりも多いくらいだ。
当然のように今週の配信からは大勢の視聴者が詰めかけているが、そうなると心無い輩もやってくるのは世の常である。誹謗コメントは大体似たようなもので、この日も相変わらず俺はけなされていた。
<こんな地味なやつが本当にあんな大物倒したのか?>
<固くなるだけの能力とか役立たずだなw>
<もしかしてすごいのはパーティーメンバーだけなんじゃないの?>
<今時無言配信なの? たいくつすぎー>
『今日もおにいは人気者だね。
なんなら逆探知して特定しちゃってもいいんだけどどする?』
「そんなのほっとけって。
俺は全然気にしてないし、むしろなるほどもっともだって思ってるよ。
あといちいち読み上げなくていいからな?」
『ふふ、やっぱり気にしてるんじゃない。
それにしても今日も退屈な配信になっちゃうね。
豚でも出てこないかな、襲撃者でもいいけど』
「あんまり物騒なこと言うなよ。
それなら罠でも試してみるか? 配信ウケするかわからねえけど」
『やる人少ないからいいかもしれないね。
どこまで潜ってからするつもり?』
「えっと、今二十七階層だから切り良く三十階層まで行ってみるか。
あそこなら闇羆や凶猪も出てくるし、二十九階層でトリュフ採れるからな」
『トリュフ食べたーい。
一杯採ってきて売って稼ごうよ』
「さすがに売るほどは採れねえっての。
うちで食べる分くらいは確保するつもりで探してみるさ」
方針が決まったので足早に二十九階層へ進んでいく。ここは二十八階層にある光る岸壁が、吹き抜けのようになっている二十九階層を照らすためダンジョンの中とは思えない明るさだ。そのためか植物も少し生えているし菌類の繁殖も地上並みである。俺は一時間ほど歩き回って大き目のトリュフをいくつか採取し、満を持して三十階層へと向かう。
身を隠せる適当な場所へ陣取ってから、近くの平らな石の上でトリュフを細かく削った物を潰してなすりつけ香りを出す。おまけとして小さなかけらをいくつか置いた。これで準備はオッケー、うまくすれば猪が寄って来てくれると期待して待つことにした。
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