35 / 81
第三章 異変 X 罠 + 新種
35.ミツカッタモノ
しおりを挟む
調理台へセットした鍋からとても良い香りが漂ってくる。指定分量の水と調味液を入れてスイッチを入れるだけで、口の中でホロホロととろける絶品の煮物が出来上がった。
「おにいったら今回はホントいい仕事したよねぇ。
久し振りのワニ肉はおいしいし、配信もうまくいったよ。
なんと言っても他のパーティーと一緒になった時に配信に映りこんだのが良かったね」
「帰り一緒だったサイドワインダーのことか?
あの人たちもなかなかの手練れだったなぁ。
やっぱり戦闘向き能力持ちは華があるよな」
「でもその人たちを助けたのはおにいなんだよ?
あれはなかなかのバエ具合だったもん。
全国では上の下ってとこだけど舎人の中では上位だしね」
「でも助けたってほどのことはしてないだろ。
ちょっと足場を作っただけだぜ?
感謝はされたから、俺たちの株がほんのちょっとくらい上がったかもしれないけどな」
だが翌朝に訪れた現実は、ほんのちょっとなんてもんじゃなく、驚くほどに持ち上げられて夢でも見ているような気分だった。
「おにい? 今日もダンジョン行ってほしいんだけどな。
いつまでそうやっているつもり?
ほらほら、配信するんだからさっさと用意してよね」
「でもこれ見たのかよ、紗由の希望通りバズるってやつだろ?
配信がうまくいったってことだし、もう満足じゃないのか?」
「何言ってるのよ!
これってうちのアーカイブじゃなくてサイドワインダーの切抜きじゃないの!
謎の少年なんて扱いじゃ何の意味もないでしょうに。
さ、早く行っていい場面撮って来てちょうだい」
「でも昨日の触手が出たらまた何もできないぞ?
一応今日はバーナー入れたけどこれっぽっちじゃ倒せないよなぁ。
スタンガンの代わりに火を噴くやつとかないのか?」
「じゃあショットガンでも持って行ったら?
今から申請すれば午後には許可降りるでしょ?
それよりも救援隊はなにしてんのかしらね」
昨日はサイドワインダーの救出でうやむやにしてしまったが、救援要請したあとの報告では対象モンスター見つからずとだけ記録されていた。こちらは映像記録を提出しているので嘘だとか大げさだとか思われてはいないが、もしまた遭遇して救援要請でもしようもんなら、分不相応な無謀な探索だとか嫌味を言われそうだ。
「それじゃ研究室に寄ってショットガン借りていくとするか。
直接申請すればその場で許可出してくれるしな。
他にいいものがあったらそっちでもいいや」
「それじゃ溜まってる素材も持って行っちゃってよ。
おにいの部屋、あまりに汚いから寝てる間に掃除しといたんだからね。
虹子が泊まる時以外はきれいにすることできないわけ?」
「そりゃさすがに人を入れる時くらいは気を使うさ。
普段はついつい面倒でなぁ……
紗由が掃除してくれるなんてまさか過ぎてビックリだけど、なにか探し物か?」
「探し物なんて別になにも無いよ!
それよりも虹子を泊めたって話が出た時、少しくらい照れろ!
このニブチン罪作りのバカおにい!」
なぜか大興奮して俺をポコポコと叩いてじゃれついている紗由の手には、この間見つからなかったと言っていた半天球カメラが握られていた。どうやら見つかったみたいで良かったが、もしかして俺の部屋にあったのだろうか。借りた覚えは無かったが、もし持ち込んでしまったのであれば悪いことをしたもんだ。
「おにいったら今回はホントいい仕事したよねぇ。
久し振りのワニ肉はおいしいし、配信もうまくいったよ。
なんと言っても他のパーティーと一緒になった時に配信に映りこんだのが良かったね」
「帰り一緒だったサイドワインダーのことか?
あの人たちもなかなかの手練れだったなぁ。
やっぱり戦闘向き能力持ちは華があるよな」
「でもその人たちを助けたのはおにいなんだよ?
あれはなかなかのバエ具合だったもん。
全国では上の下ってとこだけど舎人の中では上位だしね」
「でも助けたってほどのことはしてないだろ。
ちょっと足場を作っただけだぜ?
感謝はされたから、俺たちの株がほんのちょっとくらい上がったかもしれないけどな」
だが翌朝に訪れた現実は、ほんのちょっとなんてもんじゃなく、驚くほどに持ち上げられて夢でも見ているような気分だった。
「おにい? 今日もダンジョン行ってほしいんだけどな。
いつまでそうやっているつもり?
ほらほら、配信するんだからさっさと用意してよね」
「でもこれ見たのかよ、紗由の希望通りバズるってやつだろ?
配信がうまくいったってことだし、もう満足じゃないのか?」
「何言ってるのよ!
これってうちのアーカイブじゃなくてサイドワインダーの切抜きじゃないの!
謎の少年なんて扱いじゃ何の意味もないでしょうに。
さ、早く行っていい場面撮って来てちょうだい」
「でも昨日の触手が出たらまた何もできないぞ?
一応今日はバーナー入れたけどこれっぽっちじゃ倒せないよなぁ。
スタンガンの代わりに火を噴くやつとかないのか?」
「じゃあショットガンでも持って行ったら?
今から申請すれば午後には許可降りるでしょ?
それよりも救援隊はなにしてんのかしらね」
昨日はサイドワインダーの救出でうやむやにしてしまったが、救援要請したあとの報告では対象モンスター見つからずとだけ記録されていた。こちらは映像記録を提出しているので嘘だとか大げさだとか思われてはいないが、もしまた遭遇して救援要請でもしようもんなら、分不相応な無謀な探索だとか嫌味を言われそうだ。
「それじゃ研究室に寄ってショットガン借りていくとするか。
直接申請すればその場で許可出してくれるしな。
他にいいものがあったらそっちでもいいや」
「それじゃ溜まってる素材も持って行っちゃってよ。
おにいの部屋、あまりに汚いから寝てる間に掃除しといたんだからね。
虹子が泊まる時以外はきれいにすることできないわけ?」
「そりゃさすがに人を入れる時くらいは気を使うさ。
普段はついつい面倒でなぁ……
紗由が掃除してくれるなんてまさか過ぎてビックリだけど、なにか探し物か?」
「探し物なんて別になにも無いよ!
それよりも虹子を泊めたって話が出た時、少しくらい照れろ!
このニブチン罪作りのバカおにい!」
なぜか大興奮して俺をポコポコと叩いてじゃれついている紗由の手には、この間見つからなかったと言っていた半天球カメラが握られていた。どうやら見つかったみたいで良かったが、もしかして俺の部屋にあったのだろうか。借りた覚えは無かったが、もし持ち込んでしまったのであれば悪いことをしたもんだ。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~
テツみン
SF
東京、大手町の地下に突如現れたダンジョン。通称、『ちょいダン』。そこは、仕事帰りに『ちょい』と冒険を楽しむ場所。
大手町周辺の企業で働く若手サラリーマンたちが『ダンジョン』という娯楽を手に入れ、新たなライフスタイルを生み出していく――
これは、そんな日々を綴った物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる