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第三章 異変 X 罠 + 新種

35.ミツカッタモノ

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 調理台へセットした鍋からとても良い香りが漂ってくる。指定分量の水と調味液を入れてスイッチを入れるだけで、口の中でホロホロととろける絶品の煮物が出来上がった。

「おにいったら今回はホントいい仕事したよねぇ。
 久し振りのワニ肉はおいしいし、配信もうまくいったよ。
 なんと言っても他のパーティーと一緒になった時に配信に映りこんだのが良かったね」

「帰り一緒だったサイドワインダーのことか?
 あの人たちもなかなかの手練れだったなぁ。
 やっぱり戦闘向き能力持ちは華があるよな」

「でもその人たちを助けたのはおにいなんだよ?
 あれはなかなかのバエ具合だったもん。
 全国では上の下ってとこだけど舎人の中では上位だしね」

「でも助けたってほどのことはしてないだろ。
 ちょっと足場を作っただけだぜ?
 感謝はされたから、俺たちの株がほんのちょっとくらい上がったかもしれないけどな」

 だが翌朝に訪れた現実は、ほんのちょっとなんてもんじゃなく、驚くほどに持ち上げられて夢でも見ているような気分だった。

「おにい? 今日もダンジョン行ってほしいんだけどな。
 いつまでそうやっているつもり?
 ほらほら、配信するんだからさっさと用意してよね」

「でもこれ見たのかよ、紗由の希望通りバズるってやつだろ?
 配信がうまくいったってことだし、もう満足じゃないのか?」

「何言ってるのよ!
 これってうちのアーカイブじゃなくてサイドワインダーの切抜きじゃないの!
 謎の少年なんて扱いじゃ何の意味もないでしょうに。
 さ、早く行っていい場面撮って来てちょうだい」

「でも昨日の触手が出たらまた何もできないぞ?
 一応今日はバーナー入れたけどこれっぽっちじゃ倒せないよなぁ。
 スタンガンの代わりに火を噴くやつとかないのか?」

「じゃあショットガンでも持って行ったら?
 今から申請すれば午後には許可降りるでしょ?
 それよりも救援隊はなにしてんのかしらね」

 昨日はサイドワインダーの救出でうやむやにしてしまったが、救援要請したあとの報告では対象モンスター見つからずとだけ記録されていた。こちらは映像記録を提出しているので嘘だとか大げさだとか思われてはいないが、もしまた遭遇して救援要請でもしようもんなら、分不相応な無謀な探索だとか嫌味を言われそうだ。

「それじゃ研究室に寄ってショットガン借りていくとするか。
 直接申請すればその場で許可出してくれるしな。
 他にいいものがあったらそっちでもいいや」

「それじゃ溜まってる素材も持って行っちゃってよ。
 おにいの部屋、あまりに汚いから寝てる間に掃除しといたんだからね。
 虹子が泊まる時以外はきれいにすることできないわけ?」

「そりゃさすがに人を入れる時くらいは気を使うさ。
 普段はついつい面倒でなぁ……
 紗由が掃除してくれるなんてまさか過ぎてビックリだけど、なにか探し物か?」

「探し物なんて別になにも無いよ!
 それよりも虹子を泊めたって話が出た時、少しくらい照れろ!
 このニブチン罪作りのバカおにい!」

 なぜか大興奮して俺をポコポコと叩いてじゃれついている紗由の手には、この間見つからなかったと言っていた半天球カメラが握られていた。どうやら見つかったみたいで良かったが、もしかして俺の部屋にあったのだろうか。借りた覚えは無かったが、もし持ち込んでしまったのであれば悪いことをしたもんだ。
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