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第二章 遠征 X ダンジョン + 人気者

21.テギワヨク

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 俺はとんだ勘違いをしていた。昨日の夕飯時に聞かされて初めて知ったのだが、東京湾ダンジョンの内部に魚型のモンスターなんて存在しない。少し考えれば当たり前のことで、内部に海でもあれば魚もいるだろうが、洞窟内の空中に魚が泳いでるはずがなかった。

シックス綾瀬君はガッカリしてるけど、この東京湾ダンジョン内部に大きな水場はないのよ。
 海らしいモンスターと言えば、カニやグソクムシのような甲殻類がいるくらいね。
 多く生息しているのは他と同じくネズミやトカゲの類かしら」

「確かに舎人と変わり映えしないのは残念だけどさ。
 持って帰る心配をしなくていいのは気が楽だよ。
 とは言っても俺の得意分野じゃないけどな。
 次はこっちだ! セブン虹子頼む!」

 横須賀校への到着翌日、俺たちはさっそく東京湾ダンジョンへと潜っていた。即席に近い俺たちと違って、スノーダイヤモンドはさすがに連携も手際も良く圧倒されそうだ。だがこちらも負けてはいられない。連携の練度を高めるためには、このダンジョンのモンスター量はもってこいかもしれない。

 初心者の虹子も、憧れのトップランカーと同行している高揚感や安心感のせいか良く動けている。いつの間にか、俺がモンスターの足を止めたり気絶させたりしてから虹子がトドメを刺す、そんなスタイルが確立されつつあった。

 こんなに早く連携が取れるとは思っていなかったが、順調であることは素直に喜ばしい。そんな風にご機嫌でダンジョンを進んでいるうちに二十五階層へと到達した。二十階層から入ってこの程度の時間でここまで降りてこられたのは地元であるスノーダイヤモンドの力が大きい。

 俺たちが舎人を案内していたらここまでスムースにいったか怪しいもんだ。さすがトップランカーと行ってしまえば身も蓋もないが、担当講師の松原先生によると、魅せるプレイと言うのは初心者にとって良い見本になるという。そのため後輩指導を任せることも多いとのことだ。

 その点、俺の担当講師である高科先生は、専門がモンスター素材の収集や活用等の研究だからか後輩指導へ駆り出されることはほぼ無い。たまにあるのは収集素材の鑑定を手伝わされるくらいでそれもめったになく、普段は完全フリーで活動することが許されている。

 と言うのも、俺と紗由が白湯スープを組む前、つまり俺は入学前から叔父さんについて探索隊として活動していた。その後俺が能技大へ入学し、叔父さんが脱退するという流れで探索隊をリネイムしたため、白湯スープは能技大の管轄下ではないのだ。

 だからこそパーティーメンバーを自由に追加することもできるし、装備品もオリジナルメイド品の無制限利用が可能で何の制限もない。ただし制限がなくて自由であることの代償として、いかなる理由があっても探索記録未提出にはペナルティがあるし、学内評価の対象からも外されてしまう。

「それにしても見事な連携ですね!
 さすが上位ランカーのスノーダイヤモンドです!
 見習うところ多くて勉強になるなぁ」

「そんなご謙遜を、セブンの磁力制御だって攻防一体で素晴らしいわ。
 うちのパーティーは私の凍結による足止めと雪見酒酒匂さんによる攻撃の二段構えです。
 その実現を容易くしているのは防御の要であるダイヤライト金剛さんの空間硬化なのですが……」

「そっか、卒業で脱退してしまうんですもんね。
 シールド系の能力者ってそれなりに多いイメージだし横須賀校ならすぐ見つかりそう!」

「能力だけなら確かに居ますけどね。
 背中を預けると言うのはそれなりに信頼関係が必要なのですよ。
 現在は後輩指導をしながら人選していますけどなかなか決まらなくて悩んでおります。
 もしセブンが入ってくれるなら言うことなしかもしれませんね」

 おっと、ここで思わぬ高評価を貰えたが、虹子がスノーダイヤモンドへ入りたいなんて言い出したらどうすればいいのだろうか。正直言って俺たちのパーティーメンバーとして必要と言うことはないが、うちではなく有名トップランカーパーティへ行くなんて言われたらかなりへこみそうだ。

 しかし――

「社交辞令でもそう言ってもらえたのは嬉しいし光栄です!
 でもせっかく私の加入で戦力アップできた白湯スープを見捨てられません。
 すいませんけど今回はお断りさせてください」

 心配は杞憂に終わったと言いたいところだが、俺には虹子の発したその理由自信過剰を笑って受け入れることなんてとてもできず苦笑いするしかなかった。
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