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第二章 遠征 X ダンジョン + 人気者

17.スノーダイヤモンド

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 横須賀高の寮には所属探索隊ごとに専用のオペレーションルームがあった。さすが規模の大きい横須賀校ならではといったところか。ちなみに舎人校には専用の部屋は無く、その時々で割り当てられる部屋を使うことになっている。

「さあ入って、ここが私たちのオペルームです。
 メンバーを紹介をするから中でくつろいでちょうだい。
 あ、美雪さん、この方たちが『白湯スープ』の綾瀬君と友利さんよ」

「ああ、あの時の……
 私は酒匂美雪さかわ みゆき、ハンドルは『雪見酒』よ。
 リーダーの同級生で同い年なの。
 この間はホント恥ずかしいところを見られちゃったわね」

「こちらのメンバーのもう一人が金剛光則こんごう みつのりさん。
 先輩は確か十八歳でしたっけ?
 それとオペの結城氷見子ゆうき ひみこさん、とても優秀な方です。
 そちらのオペレーターは同行していないのですか?」

「ええ、妹の紗由がオペやってるんですけど、自宅がオペ室なんですよ。
 色々特殊な装置を使ってるらしいので他で代用は無理だと。
 通信は能技大の専用回線を使うので問題ないらしいです」

「お兄さんにも秘密にしているの?
 なんだか変わった妹さんがオペやっているのね。
 特殊な装置と言うのがとっても気になっちやう」

 同じオペレーターと言うことでスノーダイヤモンドのオペである結城氷見子が食いついてきた。とは言っても俺には細かい説明が出来ないし、紗由もわざわざ説明してはくれないだろう。まあたとえ説明したとしても多列処理脳前提で作ったシステムなのだから誰かが真似できるはずもない。

 そんなことより驚くべきことがあったのだ。スノーダイヤモンドは女の子三人の探索隊だと聞いていたのだが、今紹介された最年長メンバーはどこからどう見ても男だった。ここは突っ込むべきなのかスルーすべきなのか悩ましいところだ。しかし――

「あれ? スノーダイヤモンド様ってガールズパーティーじゃなかったんですね。
 確かに配信では説明とかなかったような気もしますけど、金剛さんって男性ですよね?」

「やだなぁ、私はれっきとした乙女ですわよ?
 あまりプロポーションが良くないから恥ずかしいわぁ」

 金剛から帰ってきた返答はある意味想定内ではあったが、その声は野太く明らかに成人男性のソレである。オペ室に入ってお互いの自己紹介をしながら和やかな雰囲気だったのに、虹子がいきなりぶっこんだせいで室内の空気がピンと張りつめているように感じてきた。

「お、乙女というより、えっと、なんか大人の…… じょ、女性って感じですよね……
 おい虹子、な? そう思うだろ?」

「え? あ、はい、そうですね……」

 俺は虹子を突っつきながら精いっぱいフォローをしたつもりだったが、その直後に三船雪南が発した言葉で、気遣いは全くの無駄だったことを思い知ることになった。

「あらまあ、金剛さんったらまたそういう戯れをなさって。
 初対面の方たちに失礼ですよ?
 お二人ともごめんなさいね、彼は見た目通り普通の男性ですわ。
 私たちのパーティーが女性のみと勘違いされると、すぐにこうやってふざけるんです」

「ああすまない、俺は金剛、四年生だ。
 間もなく卒業なんだが、パーティーは脱退して救命隊への就職が決まっているんだ。
 それなのにこの間は救命隊に救出されてしまって情けない限りだよ」

 トップランカーだから気難しい人たちなのかと思い込んでいたが、なんだかフレンドリーな雰囲気で良かった。虹子も同じように感じたらしく、隣で肩をなでおろしていた。
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