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第二章 遠征 X ダンジョン + 人気者

14.ココロガマエ

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 横須賀まではトウカイドウライナーで四十分程度だ。すぐ着くってほど近くはないしのんびりするには時間が足りない。隣にいる虹子と到着後の予定について話をするくらいしかやることがない。

「向こうについたら滞在許可証だったか忘れたけど書類提出があるんだぜ?
 ま、ダンジョンに入る時と同じで索検のカードをタッチするだけだからなんてことないけどな」

「これが身分証明ってことは、どこ行っても私が三級だってばれちゃうのかぁ。
 はやくリクと同じ一級に上がりたいよ」

「昇級には500時間の実務経験が必要だし、その後テストもあるぜ?
 二級はまだしも一級には程遠いっての。
 一人で潜ったりパーティーリーダーになるには資取管しとりかんも必要だからな」

「私は一人で探索なんて考えてないからいいわよ。
 リクたちと一緒ならそれだけでいいんだもん」

「はあ? 使いもんにならなかったらクビだよ、クビ。
 そしたら他のパーティーに入れてもらえるよう頑張らねえといけねえぞ。
 大抵は能技大で一緒になった先輩や同級と組んだりするもんだ」

「なんでそういう意地悪言うのよ。
 他のパーティーへ入るなんて絶対嫌だからね!」

「ならせいぜい役に立てるよう頑張ってくれよ。
 安全第一で無茶はしない、危なかったらすぐ逃げるのがうちのモットーだからな。
 間違っても俺の前で怪我したり死んだりするんじゃねえぞ!。
 それが俺を見捨てることになったとしてもゼッタイだ!」

 俺が本気で言っていることが伝わったのか、虹子は神妙な面持ちで静かに頷いた。俺のことを好いてくれるのは嬉しくないわけじゃないが、依存されるのだけは絶対に避けなければならない。必要もないのにかばったり、身の危険をかえりみず俺のために足を止めたりすることで虹子の命に係わるかもしれない。

 人のことをとやかく言える立場じゃないが、探索者のほとんどは十代前半からダンジョンに関わっている。ダンジョン世代は特別な能力を持ち早熟だなんて持て囃されてはいるが、しょせん頭の中は十年ちょっとしか生きていないガキなのだ。そんなガキがいつも正しい判断を下せるわけがない。

 そんな未熟なやつらが最優先に考えること、それは『生きて帰る』と言うことだ。現代医学をもってすればとにかく生きて地上へ帰りつけさえすれば命が助かる可能性が高い。腕や足が無くなったって命さえ繋がっていればどうとでもなるのだ。

 探索者にとって一番大切な自分の命を持って帰ることが出来ない未熟者に、一体どれほどの価値があるのか。それがわかってないやつからいなくなっていく。そしてその確率を高くしてしまうのが感情だと言えるだろう。肉親や恋人、友達や級友等々、繋がりが強い者同士で組んだパーティーほど全滅の危険性が高くなる。

 どんなに残酷だと言われようと、結果に後悔しようと、最後は生きて帰ったものが一番優秀なのだ。虹子にもそれをわかって欲しい。とは言っても、もしものときに自分がそれを実践できる自信は無かった。
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