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第五章 学園入学
25.ちょっとした人気者?
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思いがけぬこの扱いに、俺はどう対処すればいいのか戸惑っていた。横に座っているジョアンナはただただ笑っているばかりで助けてくれそうにない。
「海人君、どうして女子校に入ってきたの?
どうやったら入学できるの?」
「やっぱりなにかコネがあったんでしょ?
女子校に男子一人ってどういう気分なの?」
「趣味とかは? 普段は何して過ごしてるの?
今まで学校行ってなかったらしいけど、もう体調は良くなったの?」
「ね、ね、一緒に写真とろ?
ハイここ見て、変顔しちゃだめだからね」
「ええー海人君ってばプリンが好きなの?
なんかカワイー!」
なぜだかわからんがとにかくもみくちゃにされて落ち着いて飯も食えん。最初に教室へ入った時の視線は場違い間で痛いように感じたのだが、実際には興味を持って迎え入れてもらっていたようだ。
今までちやほやされたことがないわけじゃないが、それは見た目や物珍しさからではなく純粋に強さからだった。しかしこちらの世界では強さなど大した役にはたたないと言うことが分かってきた。それよりも見た目に始まる好感度が重要なのだろう。
まあ不安視していたよりも学校生活に馴染むのは早いかもしれないのでその点ではホッとしている。こんな盛況も毎日続くはずもないし、見慣れてくれば徐々におさまるだろう。
「すごいね、うみんちゅったらメッチャ人気者じゃん。
あーあ、なんだかちょっと嫉妬しちゃうかもしれないなー」
「ひ、ジョアンナ、からかうのは止めてくれ。
俺が望んでいるわけでも無いし、今は昼飯を食うことに集中したいのだが……」
「早く食べちゃわないと午後の授業始まっちゃうもんね。
でも心配していたよりもすぐに受け入れてもらえそうで安心したよ。
学園創設初の男子生徒だって言われてたもんね」
「本当にこれで良かったのか?
飯に釣られて選択を間違えたんじゃないかと思ってるんだが」
「まあなるようになるよ。
それよりも授業についていけないと思うからそこが心配かな。
わからないところあったら家で見てあげるからね。
こう見えてもアタシって結構成績いいんだから」
「大きな声では言えないが、午前中の英語はバッチリわかったぞ。
社会はあまりわからなかったが図書館で覚えたことがいくつかあったので平気そうだ。
問題は数学と言うやつだな。
俺は足し算と引き算と割り算と掛け算しかわからんので難解だった」
「そっか、四則演算ができれば後は応用力だから何とかなるよ。
帰ってから教えてあげるね。
でも英語がパッチリって言うのは意外だなぁ。
もしかして……」
「うむ、異国語だろうがなんでも翻訳されて頭に入ってくるのだ。
おそらく俺は今でも元の世界の言葉を話しているのだろうな」
「自動翻訳ってわけだ、ずっるー。
アタシもそれ付けてもらえば良かったな。
呼び出してお願いしようかしら」
神が言っていたが人間の欲に際限がないと言うのは本当だな。それほど欲深いように感じられないジョアンナでさえこうなのだから、あの輩(やから)たちのような悪人の欲がどれほどのものなのか想像するだけで頭が痛くなる。
昼飯を食った後も騒ぎは収まらず、休み時間には他のクラスからも人が集まってきて大変だった。仕舞には教師が見回りにやってきて追い返したり、緊急の席替えと言うのが行われ通路から一番遠い席へと移動させられたりした。
ようやく授業がすべて終わりホッとしていたのだが、それもつかの間、クラスメイトに寄り道へと誘われてしまった。どうしていいかわからず悩んだ末、ジョアンナへメッセを送り助けを呼んだ。
「なになに? どっか寄り道するんだって?
みんな誘ってくれてありがとなんだけどさ。
まだこの子のお小遣いとか決めてないのよ。
だからまた今度誘ってくれるかな?」
「でも先輩、お金無くても平気ですよ。
私の家、すぐ近くで父が喫茶店やってるんですけど、いつもたまり場にしてるんです。
心配なら先輩も一緒に来ますか?」
「えー、中学生の仲良しに割り込むのは悪いよ。
それに勉強も見てあげないといけないし今日は連れて帰るよ」
「そっか、学校初めて通うって言ってましたもんね。
それも平気です! 母が六文式の教室やってるから教材とかもありますよ!
数学が難しいって言ってたし、私教えてあげますから!」
むう、この柳と言う娘の丹力は侮れん。ジョアンナ相手に一歩も引かないとは驚くべきことだ。だがなぜこんなにも強引に俺を連れて行こうとするのかがわからない。もしかして何か秘密があると嗅ぎつけてのことではないだろうな?
「わかったわ、そこまで言うなら行ってらっしゃい。
学校から近いみたいだから平気だと思うけど、帰りに迷わないようにね」
「うむ…… わかった。
それで喫茶店と言うのは一体なんなんだ?」
「そのまんまの意味よ?
お茶を飲むところ、と言ってもコーヒーだったりケーキがあったりとかだけど」
「それならば家でいくらでも飲めるじゃないか。
わざわざ店で出すなんて変わったことをするもんだな」
「海人君、それは違うよ?
喫茶店で提供するのはコーヒーや紅茶だけじゃないの。
ゆっくりと過ごす時間と雰囲気を提供するものなのよ。
それにパフェやプリンアラモードみたいな甘いスイーツだってあるんだからね。
今日はお近づきの印に好きなものご馳走しちゃう」
これで俺の心は完全に決まったと言えるだろう。柳とは仲良くするに限る。取り巻きが大勢いて面倒そうではあるがまあいつも全員ついてくるわけではないだろう。
「あら良かったわね、ご馳走されてきなさいよ。
きっと家では食べられないすごいご馳走だからね」
「九条先輩? なにかトゲがありませんか?
やっぱり連れて行かれたくない理由があるんでしょうか。
無理やりになってしまうなら私諦めます……」
「違う、違うってば。
う、海人ったらいやしいから食べ物にすぐ釣られちゃうのよ。
だからからかって言ってみただけであなたのことを責めたりはしてないから安心して」
なんだかたじたじになっているジョアンナを見るのは初めてでおかしくなってしまう。そんな考えが顔に出ていたのか、ジョアンナと目が合った際、思いっきり睨まれてしまった。これは後が怖そうである。
だがそれでも甘いスイーツと言うものに惹かれて理性を保っていられなくなった俺は、背中に羽が生えたような気分で柳たちの後について喫茶店とやらへ向かうのだった。
「海人君、どうして女子校に入ってきたの?
どうやったら入学できるの?」
「やっぱりなにかコネがあったんでしょ?
女子校に男子一人ってどういう気分なの?」
「趣味とかは? 普段は何して過ごしてるの?
今まで学校行ってなかったらしいけど、もう体調は良くなったの?」
「ね、ね、一緒に写真とろ?
ハイここ見て、変顔しちゃだめだからね」
「ええー海人君ってばプリンが好きなの?
なんかカワイー!」
なぜだかわからんがとにかくもみくちゃにされて落ち着いて飯も食えん。最初に教室へ入った時の視線は場違い間で痛いように感じたのだが、実際には興味を持って迎え入れてもらっていたようだ。
今までちやほやされたことがないわけじゃないが、それは見た目や物珍しさからではなく純粋に強さからだった。しかしこちらの世界では強さなど大した役にはたたないと言うことが分かってきた。それよりも見た目に始まる好感度が重要なのだろう。
まあ不安視していたよりも学校生活に馴染むのは早いかもしれないのでその点ではホッとしている。こんな盛況も毎日続くはずもないし、見慣れてくれば徐々におさまるだろう。
「すごいね、うみんちゅったらメッチャ人気者じゃん。
あーあ、なんだかちょっと嫉妬しちゃうかもしれないなー」
「ひ、ジョアンナ、からかうのは止めてくれ。
俺が望んでいるわけでも無いし、今は昼飯を食うことに集中したいのだが……」
「早く食べちゃわないと午後の授業始まっちゃうもんね。
でも心配していたよりもすぐに受け入れてもらえそうで安心したよ。
学園創設初の男子生徒だって言われてたもんね」
「本当にこれで良かったのか?
飯に釣られて選択を間違えたんじゃないかと思ってるんだが」
「まあなるようになるよ。
それよりも授業についていけないと思うからそこが心配かな。
わからないところあったら家で見てあげるからね。
こう見えてもアタシって結構成績いいんだから」
「大きな声では言えないが、午前中の英語はバッチリわかったぞ。
社会はあまりわからなかったが図書館で覚えたことがいくつかあったので平気そうだ。
問題は数学と言うやつだな。
俺は足し算と引き算と割り算と掛け算しかわからんので難解だった」
「そっか、四則演算ができれば後は応用力だから何とかなるよ。
帰ってから教えてあげるね。
でも英語がパッチリって言うのは意外だなぁ。
もしかして……」
「うむ、異国語だろうがなんでも翻訳されて頭に入ってくるのだ。
おそらく俺は今でも元の世界の言葉を話しているのだろうな」
「自動翻訳ってわけだ、ずっるー。
アタシもそれ付けてもらえば良かったな。
呼び出してお願いしようかしら」
神が言っていたが人間の欲に際限がないと言うのは本当だな。それほど欲深いように感じられないジョアンナでさえこうなのだから、あの輩(やから)たちのような悪人の欲がどれほどのものなのか想像するだけで頭が痛くなる。
昼飯を食った後も騒ぎは収まらず、休み時間には他のクラスからも人が集まってきて大変だった。仕舞には教師が見回りにやってきて追い返したり、緊急の席替えと言うのが行われ通路から一番遠い席へと移動させられたりした。
ようやく授業がすべて終わりホッとしていたのだが、それもつかの間、クラスメイトに寄り道へと誘われてしまった。どうしていいかわからず悩んだ末、ジョアンナへメッセを送り助けを呼んだ。
「なになに? どっか寄り道するんだって?
みんな誘ってくれてありがとなんだけどさ。
まだこの子のお小遣いとか決めてないのよ。
だからまた今度誘ってくれるかな?」
「でも先輩、お金無くても平気ですよ。
私の家、すぐ近くで父が喫茶店やってるんですけど、いつもたまり場にしてるんです。
心配なら先輩も一緒に来ますか?」
「えー、中学生の仲良しに割り込むのは悪いよ。
それに勉強も見てあげないといけないし今日は連れて帰るよ」
「そっか、学校初めて通うって言ってましたもんね。
それも平気です! 母が六文式の教室やってるから教材とかもありますよ!
数学が難しいって言ってたし、私教えてあげますから!」
むう、この柳と言う娘の丹力は侮れん。ジョアンナ相手に一歩も引かないとは驚くべきことだ。だがなぜこんなにも強引に俺を連れて行こうとするのかがわからない。もしかして何か秘密があると嗅ぎつけてのことではないだろうな?
「わかったわ、そこまで言うなら行ってらっしゃい。
学校から近いみたいだから平気だと思うけど、帰りに迷わないようにね」
「うむ…… わかった。
それで喫茶店と言うのは一体なんなんだ?」
「そのまんまの意味よ?
お茶を飲むところ、と言ってもコーヒーだったりケーキがあったりとかだけど」
「それならば家でいくらでも飲めるじゃないか。
わざわざ店で出すなんて変わったことをするもんだな」
「海人君、それは違うよ?
喫茶店で提供するのはコーヒーや紅茶だけじゃないの。
ゆっくりと過ごす時間と雰囲気を提供するものなのよ。
それにパフェやプリンアラモードみたいな甘いスイーツだってあるんだからね。
今日はお近づきの印に好きなものご馳走しちゃう」
これで俺の心は完全に決まったと言えるだろう。柳とは仲良くするに限る。取り巻きが大勢いて面倒そうではあるがまあいつも全員ついてくるわけではないだろう。
「あら良かったわね、ご馳走されてきなさいよ。
きっと家では食べられないすごいご馳走だからね」
「九条先輩? なにかトゲがありませんか?
やっぱり連れて行かれたくない理由があるんでしょうか。
無理やりになってしまうなら私諦めます……」
「違う、違うってば。
う、海人ったらいやしいから食べ物にすぐ釣られちゃうのよ。
だからからかって言ってみただけであなたのことを責めたりはしてないから安心して」
なんだかたじたじになっているジョアンナを見るのは初めてでおかしくなってしまう。そんな考えが顔に出ていたのか、ジョアンナと目が合った際、思いっきり睨まれてしまった。これは後が怖そうである。
だがそれでも甘いスイーツと言うものに惹かれて理性を保っていられなくなった俺は、背中に羽が生えたような気分で柳たちの後について喫茶店とやらへ向かうのだった。
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