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37.愛の行き先
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己の目的のため稀有なる少年の元へとやってきていた天使は、室内で行われている行為よりもその外で一人寝転がって自身を慰めている少女に着目した。こちらも女神によって愛の矢を打ちこまれた少女である。
女神の力が絶対なのであれば、この二人が結ばれるだけのはず。それなのに少年が築き上げてきた今までの関係と取り巻く女性たちが、依然そのまま存在しているのはなぜだ。
一度天界へ戻って確認するのも悪くないが、下手に女神の元へ行って、愛のエネルギーをかすめ取っているのがばれるのはまずい。天使にとっては今の関係が続く方が都合がいいとも言えるので、現状維持のまま監視を続けることにする。
今ここに転がっている少女からは、負の感情を伴った愛のエネルギーが溢れ出ていた。つまりエネルギーを集めるために、必ずしも相手がいる必要はないと言うことになる。天使は大急ぎで、昇華できず散らばっていく愛を水差しへと回収した。
これを部屋の中の女へ注ぎ込めば、彼女は満足して少年を解放するはずだと考え実行した。想定通りにコトは済み、愛を受け取った女は満足して横になり少年へもたれかかった。
だが天使には気が付いていなかったことがあった。桜子の満足感は肉体的なものと高波から与えられた快楽によるもの、天使はそれを疑似的に増量させたと思っている。
しかし実際には美知子の感情である嫉妬が含まれていた。このことが桜子の満足感に美知子を蔑む感情を加えていた。それは元から少なからず含まれていたもので、別の女を待たせながら自分が先に愛を受けたことによるものだ。だがそれは、あくまでほんの僅かに含まれるささやかな優越感程度のものだった。
それが今は相手を見下す程度には膨れ上がっており、片や愛を取り上げられた美知子にとっては、自分に注がれるはずだった愛を無理やり引きはがした相手だと感じるほどである。
「ふふ、外も静かになったわね。
あの子ったらそういうかわいいところがあるから憎めないわ。
私が美咲みたいに攻められるなら三人でも楽しめるかもしれないのに少し残念」
「いやあ、それはちょっと勘弁かな。
あの二人で始めちゃうとすげえんだよ、オレは蚊帳の外って言うの?
そりゃもう信じられねえくらいでさ」
「美咲って男だったらキミみたいになっていたかもしれないわね。
それくらいすごいから、ワタシやミチは二倍オイシイ思いしてるってこと。
ちょっとうらやましくなってきた?」
「ウラヤマってかズルいよ。
オレがいくら頑張っても知りえないことを知っちゃってるわけでしょ?
そんなん勝ち目無いに決まってんもん」
「でもキミにはこれがあるからね。
女同士では絶対に味わえないものよ?」
桜子はそう言って高波の鍛え上げられた胸板を愛でる。これはリリ子の趣味で鍛えさせられたものだが、高波本人の自信向上や身の安全を守ることにも役立っている。その自信が、今日のようなトラブルに動じない精神力を備えさせたと言ってもいいだろう。
あれから麗子はどうしたかわからないが、高波から連絡するのは弱り目に祟り目のようなものだと考えて放っておいた。もちろん誰にも言うつもりはないし、公にして事件にするなんてもってのほかだ。
所詮男女のもめごとではあるのだが、高波と彼を取り巻く環境は社会的に見れば犯罪者の集団とも言える。無用なトラブルはみんなに迷惑がかかる、高波はそう考えていた。
「そんじゃシャワー浴びてから夕飯いただこっかな。
桜子ちゃん、ホントに一緒に食わねえの?
オレらの分だけ用意してもらってなんか悪いよ」
「大丈夫よ、ワタシは美咲のところへ持っていって食べる約束してるのよ。
後は二人で好きに使っていいわ、ベッドも使ったままでいいから。
でも学校はちゃんと行くこと、いいわね?」
桜子はそう言いながら、今終わったばかりである二人の痕跡をはがし、新しいシーツへと交換して全てを整え直した。それから夕飯の用意をしようと寝室を出る。
その瞬間――
「タカシー!! ウチのタカシ!」
美知子が部屋へ押し戻すくらいの勢いで二人に襲いかかってきた。
女神の力が絶対なのであれば、この二人が結ばれるだけのはず。それなのに少年が築き上げてきた今までの関係と取り巻く女性たちが、依然そのまま存在しているのはなぜだ。
一度天界へ戻って確認するのも悪くないが、下手に女神の元へ行って、愛のエネルギーをかすめ取っているのがばれるのはまずい。天使にとっては今の関係が続く方が都合がいいとも言えるので、現状維持のまま監視を続けることにする。
今ここに転がっている少女からは、負の感情を伴った愛のエネルギーが溢れ出ていた。つまりエネルギーを集めるために、必ずしも相手がいる必要はないと言うことになる。天使は大急ぎで、昇華できず散らばっていく愛を水差しへと回収した。
これを部屋の中の女へ注ぎ込めば、彼女は満足して少年を解放するはずだと考え実行した。想定通りにコトは済み、愛を受け取った女は満足して横になり少年へもたれかかった。
だが天使には気が付いていなかったことがあった。桜子の満足感は肉体的なものと高波から与えられた快楽によるもの、天使はそれを疑似的に増量させたと思っている。
しかし実際には美知子の感情である嫉妬が含まれていた。このことが桜子の満足感に美知子を蔑む感情を加えていた。それは元から少なからず含まれていたもので、別の女を待たせながら自分が先に愛を受けたことによるものだ。だがそれは、あくまでほんの僅かに含まれるささやかな優越感程度のものだった。
それが今は相手を見下す程度には膨れ上がっており、片や愛を取り上げられた美知子にとっては、自分に注がれるはずだった愛を無理やり引きはがした相手だと感じるほどである。
「ふふ、外も静かになったわね。
あの子ったらそういうかわいいところがあるから憎めないわ。
私が美咲みたいに攻められるなら三人でも楽しめるかもしれないのに少し残念」
「いやあ、それはちょっと勘弁かな。
あの二人で始めちゃうとすげえんだよ、オレは蚊帳の外って言うの?
そりゃもう信じられねえくらいでさ」
「美咲って男だったらキミみたいになっていたかもしれないわね。
それくらいすごいから、ワタシやミチは二倍オイシイ思いしてるってこと。
ちょっとうらやましくなってきた?」
「ウラヤマってかズルいよ。
オレがいくら頑張っても知りえないことを知っちゃってるわけでしょ?
そんなん勝ち目無いに決まってんもん」
「でもキミにはこれがあるからね。
女同士では絶対に味わえないものよ?」
桜子はそう言って高波の鍛え上げられた胸板を愛でる。これはリリ子の趣味で鍛えさせられたものだが、高波本人の自信向上や身の安全を守ることにも役立っている。その自信が、今日のようなトラブルに動じない精神力を備えさせたと言ってもいいだろう。
あれから麗子はどうしたかわからないが、高波から連絡するのは弱り目に祟り目のようなものだと考えて放っておいた。もちろん誰にも言うつもりはないし、公にして事件にするなんてもってのほかだ。
所詮男女のもめごとではあるのだが、高波と彼を取り巻く環境は社会的に見れば犯罪者の集団とも言える。無用なトラブルはみんなに迷惑がかかる、高波はそう考えていた。
「そんじゃシャワー浴びてから夕飯いただこっかな。
桜子ちゃん、ホントに一緒に食わねえの?
オレらの分だけ用意してもらってなんか悪いよ」
「大丈夫よ、ワタシは美咲のところへ持っていって食べる約束してるのよ。
後は二人で好きに使っていいわ、ベッドも使ったままでいいから。
でも学校はちゃんと行くこと、いいわね?」
桜子はそう言いながら、今終わったばかりである二人の痕跡をはがし、新しいシーツへと交換して全てを整え直した。それから夕飯の用意をしようと寝室を出る。
その瞬間――
「タカシー!! ウチのタカシ!」
美知子が部屋へ押し戻すくらいの勢いで二人に襲いかかってきた。
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