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28.愛分かち合う者たち
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さすがにそうそう校内へ侵入するわけにもいかず、高波は美知子へ連絡し表まで呼び出した。もちろんそこには金子だけでなく久美までいるわけで、常識的に考えるとあまりよろしくない状況である。
「タカシおまたせー、来てくれてありがとねぇ。
あー、やっぱり金ちゃんも一緒だったんだ、飯塚先輩はコートにいたよ?
それで…… この子はだぁれ? タカシの新しいパートナー?」
「違うぞ? こいつは貞子って言ってクラスメートだよ。
まあオレのことを好いてるのは確かだけどな。
優しくていい奴だから仲良くしてやってくれよ。」
そんな紹介のされ方をすると思っていなかったので、久美は慌ててしまい本名を名乗るのを忘れてしまった。それでも目の前で腕を絡める二人を見るのは辛く、胸が締め付けられるように痛いとはこう言うことなのかと感じていた。
「ところでその手の包帯どうしたの? 怪我?
痛い? ダイジョブ?」
「ガッコでちょっとうっかり切っちまってな。
でも貞子がすぐに手当てしてくれたから全然平気だよ」
「そうなんだぁ、貞子センパイもタカシのこと好きなんだね。
ウチと一緒の仲間だねぇ、ふふ、うれしー。
ねえねえ、こっちの腕空いてるから一緒にぶら下がろ?」
そう言われても久美にはとても人前で男子にべたべたするなんてことは出来なかった。それに彼女だと言っている子が他の女子を受け入れるようなことを言うだけじゃなく、同じ男子の腕を取ろうなんて言う状況がこの世にあるとも思えない。なにかの罠なのか、恥でもかかせる算段なのかと疑っていた。
「なあミチ? せっかく甘えてくれてるとこ悪いんだけどさ。
桃子に声かけて来てくれねえかな。
中に入るとまたセンセが来てアレコレ言われそうだかンさぁ」
「ああそだねー、金ちゃんはちょっと待ってて、呼んでくるからさ。
ふふふ、きっとテニスウェアのままだね」
「いやまあそれはいいから、頼むよ美知子ちゃん。
なんて言われても平気なように、ちゃんと心構えはしておくからさ」
金子は大分緊張しているようだ。それもそのはず、前回ここ西高で再開してゲーセンへ遊びに行ったくらいで大して時間をともに出来なかった。それなのに翌日にはデートへ誘ったのがいけなかったのか、返事がもらえないままあれから二週間経っている。
「ねえ金子君? 西高の彼女ってテニス部なんだね。
アタシも中学ではソフテニやってたんだよね。
下手くそなのに硬式は怖いからやめちゃって今は帰宅部だけどさ」
「そういや中学のテニス部ってゴムボール使ってたな。
アレ使って廊下で野球してたの思い出したわ。
椅子の足に自転車のチューブくっつけてパチンコみたいに打ち出すんだけどさ。
すげえスピード出てヤバかったな、思い出しただけでワラエル」
「なんでそんな危ない事するのよ……
あのボールだって当たったら痛いんだからね?」
「知ってるよ、俺も罰ゲームで背中に当てられたりしたからな。
メガッチなんてガチ泣きしちゃってかわいそうだったよ。
仕方ねえから仕返ししていいってナミタカが背中差し出したりしてさ」
「そんなことに付きあわせてたから大内君は西高行かれなくなったんじゃないの?
少しは責任感じるべきだと思うわ」
美知子を送り出して去っていく背中を見続けていた高波が急に振り返り、金子の語る昔話に参加してきた。どうやら上の空に見えてもちゃんと聞いてはいたようだ。
「いやあ、あの時のボールはメッチャ痛かったな。
ボールが変形した細長い跡がついちゃってよ。
今考えるとアレ危なかったな」
「いや、普通にガラス割って始末書書かされたじゃねえか。
居残りでワックス掛けもやった記憶があるぜ?」
「いや、あのワックス掛けは美術の富江ちゃんのスカートめくりだったろ?
しばらくはおばちゃんパンツって呼ばれてかわいそうだったけどな」
「ああ、郡山センセのスカートを安全ピンでシャツへ止めたやつか。
気が付かないで歩き回ってる方もどうかしてるだろ。
行き遅れとかって嫌われてたから誰からも教えて貰えなかったんだろうな」
「アンタたちホント酷いわね……
なんで女性教師にそんなことするのよ」
「なんでだっけな、真面目に描いてたのに下手くそって言われてキレた気がする。
それとも新任の小鳥ちゃんをいじめてたからだっけか?
そういや金ちゃんに色目使ったからキモババアって呼んでから厳しくなったな」
「あいつマジキモかったよ。
かねこく~んって体寄せて来るから、あの頃は貞操の危機を感じてたね」
「オレがいない間にそんな面白いことになってたなんてなぁ。
ろくに中学行かないなんてホントもったいないことしたよ。
今中学生に手を出したら犯罪だもんな」
「そっちかよ!」
「そこなの!?」
金子と久美はほぼ同時に突っ込んだが、加えて久美はカバンで高波の尻を引っぱたいていた。
「タカシおまたせー、来てくれてありがとねぇ。
あー、やっぱり金ちゃんも一緒だったんだ、飯塚先輩はコートにいたよ?
それで…… この子はだぁれ? タカシの新しいパートナー?」
「違うぞ? こいつは貞子って言ってクラスメートだよ。
まあオレのことを好いてるのは確かだけどな。
優しくていい奴だから仲良くしてやってくれよ。」
そんな紹介のされ方をすると思っていなかったので、久美は慌ててしまい本名を名乗るのを忘れてしまった。それでも目の前で腕を絡める二人を見るのは辛く、胸が締め付けられるように痛いとはこう言うことなのかと感じていた。
「ところでその手の包帯どうしたの? 怪我?
痛い? ダイジョブ?」
「ガッコでちょっとうっかり切っちまってな。
でも貞子がすぐに手当てしてくれたから全然平気だよ」
「そうなんだぁ、貞子センパイもタカシのこと好きなんだね。
ウチと一緒の仲間だねぇ、ふふ、うれしー。
ねえねえ、こっちの腕空いてるから一緒にぶら下がろ?」
そう言われても久美にはとても人前で男子にべたべたするなんてことは出来なかった。それに彼女だと言っている子が他の女子を受け入れるようなことを言うだけじゃなく、同じ男子の腕を取ろうなんて言う状況がこの世にあるとも思えない。なにかの罠なのか、恥でもかかせる算段なのかと疑っていた。
「なあミチ? せっかく甘えてくれてるとこ悪いんだけどさ。
桃子に声かけて来てくれねえかな。
中に入るとまたセンセが来てアレコレ言われそうだかンさぁ」
「ああそだねー、金ちゃんはちょっと待ってて、呼んでくるからさ。
ふふふ、きっとテニスウェアのままだね」
「いやまあそれはいいから、頼むよ美知子ちゃん。
なんて言われても平気なように、ちゃんと心構えはしておくからさ」
金子は大分緊張しているようだ。それもそのはず、前回ここ西高で再開してゲーセンへ遊びに行ったくらいで大して時間をともに出来なかった。それなのに翌日にはデートへ誘ったのがいけなかったのか、返事がもらえないままあれから二週間経っている。
「ねえ金子君? 西高の彼女ってテニス部なんだね。
アタシも中学ではソフテニやってたんだよね。
下手くそなのに硬式は怖いからやめちゃって今は帰宅部だけどさ」
「そういや中学のテニス部ってゴムボール使ってたな。
アレ使って廊下で野球してたの思い出したわ。
椅子の足に自転車のチューブくっつけてパチンコみたいに打ち出すんだけどさ。
すげえスピード出てヤバかったな、思い出しただけでワラエル」
「なんでそんな危ない事するのよ……
あのボールだって当たったら痛いんだからね?」
「知ってるよ、俺も罰ゲームで背中に当てられたりしたからな。
メガッチなんてガチ泣きしちゃってかわいそうだったよ。
仕方ねえから仕返ししていいってナミタカが背中差し出したりしてさ」
「そんなことに付きあわせてたから大内君は西高行かれなくなったんじゃないの?
少しは責任感じるべきだと思うわ」
美知子を送り出して去っていく背中を見続けていた高波が急に振り返り、金子の語る昔話に参加してきた。どうやら上の空に見えてもちゃんと聞いてはいたようだ。
「いやあ、あの時のボールはメッチャ痛かったな。
ボールが変形した細長い跡がついちゃってよ。
今考えるとアレ危なかったな」
「いや、普通にガラス割って始末書書かされたじゃねえか。
居残りでワックス掛けもやった記憶があるぜ?」
「いや、あのワックス掛けは美術の富江ちゃんのスカートめくりだったろ?
しばらくはおばちゃんパンツって呼ばれてかわいそうだったけどな」
「ああ、郡山センセのスカートを安全ピンでシャツへ止めたやつか。
気が付かないで歩き回ってる方もどうかしてるだろ。
行き遅れとかって嫌われてたから誰からも教えて貰えなかったんだろうな」
「アンタたちホント酷いわね……
なんで女性教師にそんなことするのよ」
「なんでだっけな、真面目に描いてたのに下手くそって言われてキレた気がする。
それとも新任の小鳥ちゃんをいじめてたからだっけか?
そういや金ちゃんに色目使ったからキモババアって呼んでから厳しくなったな」
「あいつマジキモかったよ。
かねこく~んって体寄せて来るから、あの頃は貞操の危機を感じてたね」
「オレがいない間にそんな面白いことになってたなんてなぁ。
ろくに中学行かないなんてホントもったいないことしたよ。
今中学生に手を出したら犯罪だもんな」
「そっちかよ!」
「そこなの!?」
金子と久美はほぼ同時に突っ込んだが、加えて久美はカバンで高波の尻を引っぱたいていた。
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