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8.愛まみえる二人
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話の流れで納得してしまったが、それでもまだ金子は西高まで行くのを渋っていた。だが高波は引き返されないようにするためか、大内の話を続けている。
「谷前って香織とは違うタイプじゃんか。
だから意外と兄弟でも許容できると思うぜ?
香織みたく一見真面目で清純派だとギャップがきついだろ」
「そうだなぁ、谷前ならライバルも少なそうだしメガッチの春かもしれねえしな。
以前は悪いことしちゃったから気になってたんだよ。
まあ俺が悪いわけじゃねえけどさ」
「またオレのせいかよ。
終わった後にこれで三兄弟だなって言っただけじゃん。
それがトラウマになるなんて思わなかったっての。
金ちゃんとなんて何人と繋がったかもうわからんけど気にしてねえじゃん」
「いやいや、童貞棄てて舞い上がってたし、マジ惚れの勢いだったじゃん。
マジであれは可愛そうだったわ」
「でもメガッチは好きな女と最初にできたんだから良くね?
ヴァージンじゃなけりゃ結局誰かの中古だぜ?
オレや金ちゃんが始めてって女なら、その子はオレら中古を相手にするわけだしよ。
まあそれでも椅子の匂い嗅ぐのはヤヴェエエってなったけどな」
「あれはさすがに引いたわー
まあでも言いふらしたりしないでそのまま合コン連れてったんだからな。
人数も埋まってちょうど良かったってもんだ」
大内と高波たちは中学の同級生だが三年の二学期までは特に接点はなく、一緒に遊ぶどころか話をしたことさえなかった。寡黙で勉強ができる大内と、とにかく女子のことしか考えずナンパや合コンに明け暮れる高波金子コンビに繋がりが出来るはずもない。
そんな真面目優等生の大内が、放課後に全員帰った後に教室へ一人戻り、その時好きだったらしい花崎香織の椅子に抱きついていたところを、合コンで急に一人足りなくなり誰かいないか探していた高波と金子に見つかってしまったのだ。
それを黙っている代わりにと人数合わせで合コンへ連行され、パリピリア充ノリが苦手で大嫌いな大内は、大恥かかされたと言って帰りに本気泣きしてしまった。
結局その穴埋めと言う名目で花崎香織と話をつけたのだが、真面目そうな外見とは裏腹に奔放で軽い性格だった香織と、リアル女性経験がなく純情な大内はその日のうちに結ばれた。
初体験だった大内は、もともと好きだった香織が自分を好きになってくれたのだと思い込み、もう付き合ってるくらいに考えていたのだが、相手はそんなこと全く思っていなかった上、過去に高波とも金子とも関係を持っていたことをばらされてリアル女性不信的なトラウマになってしまった。
大内にはさすがに刺激が強すぎて悪いことをしたと金子に責められ、高波は別の子を紹介すると何度も持ちかけたのだが、結局信用されずにもう二年近くが過ぎた。それが今回はうまくいったのなら喜ばしいことだと金子は考え、高波は谷前の肉食振りを知っていたため絶対うまくヤっていると確信していた。
こうして金子は戻るだ帰るだと言っていたが、話し込んでいるうちに結局西高まで来てしまった。そしてそのまま何のためらいもなく校門から堂々と入っていくと、さすがに教師がやってきて二人を止めようとする。
「こらっ、他校の生徒が勝手に入るんじゃない。
おまえたち東高の生徒だな? まさかケンカでもするんじゃあるまいな?」
「先生ってジャージだけど体育教師っス?
それならテニス部の場所教えてほしいんだけどいいスか?
練習試合申込みに来たんスよね。
中学の同級がいるはずだけど連絡先変わってるみたいで困ってんス」
「どの生徒だ? というかお前らなんだかガラが悪いな?
本当にテニス部なのか?」
「ちょっとそれは失礼じゃないっスかね?
なんならコートでやって見せますから案内してくださいスよ。
まあ話に来ただけなんで部室でもいいっス」
金子はぺらぺらと口からデマカセを言っている。本当にこれで騙しとおせるかはわからないが、ここまでテクテク歩いて来たのに大人しく叩き出されるのもつまらないと考えてのことだ。
結果的にテニスコートの場所と部室はすぐそばにあることを教えてもらった二人は、教師のお墨付きをもらったと言うことで堂々と校舎の向こうにあるテニスコートへ向かっていく。
違う制服の生徒はそれだけで目立つ。だがあまりに視線が注がれる別の理由があるのは明らかで、西高には珍しい着崩した制服と染めた長めの髪、そして明らかな遊び人風な外見がその原因だろう。
「なあ金ちゃん、さっきからメッチャ目が合うんだけど、どの子にするか迷うな。
桃子がダメだったら別の子をお持ち帰りしようぜ?
ちょっと先に声かけておこうかな」
「マジでお前何しに来たんだよ。
運命の子が待ってるんじゃなかったのか?」
「それはそれ、これはこれ、今は今だろ。
そりゃオレだってあっさり見つかったらいいとは思ってるよ?
だけどどういう子なのかもわかんねえし、そもそも根拠ないじゃん」
「言いだしたのはナミタカ! お前だっつーの!
なんかムカついてきた、ホレ、スマッシュ!」
金子が高波の頭を学生鞄で引っぱたいだが、高波は黙って立ちすくんでいる。マジで怒ったのかと慌てる金子に、高波は意外なことを口走った。
「すげえ、一目ぼれってこういうことなのか?
オレ、あの子に告白してくるわ」
そう、天使の思惑通り、今まさにこの場で高波孝と道川美知子は相見えたのだった。
「谷前って香織とは違うタイプじゃんか。
だから意外と兄弟でも許容できると思うぜ?
香織みたく一見真面目で清純派だとギャップがきついだろ」
「そうだなぁ、谷前ならライバルも少なそうだしメガッチの春かもしれねえしな。
以前は悪いことしちゃったから気になってたんだよ。
まあ俺が悪いわけじゃねえけどさ」
「またオレのせいかよ。
終わった後にこれで三兄弟だなって言っただけじゃん。
それがトラウマになるなんて思わなかったっての。
金ちゃんとなんて何人と繋がったかもうわからんけど気にしてねえじゃん」
「いやいや、童貞棄てて舞い上がってたし、マジ惚れの勢いだったじゃん。
マジであれは可愛そうだったわ」
「でもメガッチは好きな女と最初にできたんだから良くね?
ヴァージンじゃなけりゃ結局誰かの中古だぜ?
オレや金ちゃんが始めてって女なら、その子はオレら中古を相手にするわけだしよ。
まあそれでも椅子の匂い嗅ぐのはヤヴェエエってなったけどな」
「あれはさすがに引いたわー
まあでも言いふらしたりしないでそのまま合コン連れてったんだからな。
人数も埋まってちょうど良かったってもんだ」
大内と高波たちは中学の同級生だが三年の二学期までは特に接点はなく、一緒に遊ぶどころか話をしたことさえなかった。寡黙で勉強ができる大内と、とにかく女子のことしか考えずナンパや合コンに明け暮れる高波金子コンビに繋がりが出来るはずもない。
そんな真面目優等生の大内が、放課後に全員帰った後に教室へ一人戻り、その時好きだったらしい花崎香織の椅子に抱きついていたところを、合コンで急に一人足りなくなり誰かいないか探していた高波と金子に見つかってしまったのだ。
それを黙っている代わりにと人数合わせで合コンへ連行され、パリピリア充ノリが苦手で大嫌いな大内は、大恥かかされたと言って帰りに本気泣きしてしまった。
結局その穴埋めと言う名目で花崎香織と話をつけたのだが、真面目そうな外見とは裏腹に奔放で軽い性格だった香織と、リアル女性経験がなく純情な大内はその日のうちに結ばれた。
初体験だった大内は、もともと好きだった香織が自分を好きになってくれたのだと思い込み、もう付き合ってるくらいに考えていたのだが、相手はそんなこと全く思っていなかった上、過去に高波とも金子とも関係を持っていたことをばらされてリアル女性不信的なトラウマになってしまった。
大内にはさすがに刺激が強すぎて悪いことをしたと金子に責められ、高波は別の子を紹介すると何度も持ちかけたのだが、結局信用されずにもう二年近くが過ぎた。それが今回はうまくいったのなら喜ばしいことだと金子は考え、高波は谷前の肉食振りを知っていたため絶対うまくヤっていると確信していた。
こうして金子は戻るだ帰るだと言っていたが、話し込んでいるうちに結局西高まで来てしまった。そしてそのまま何のためらいもなく校門から堂々と入っていくと、さすがに教師がやってきて二人を止めようとする。
「こらっ、他校の生徒が勝手に入るんじゃない。
おまえたち東高の生徒だな? まさかケンカでもするんじゃあるまいな?」
「先生ってジャージだけど体育教師っス?
それならテニス部の場所教えてほしいんだけどいいスか?
練習試合申込みに来たんスよね。
中学の同級がいるはずだけど連絡先変わってるみたいで困ってんス」
「どの生徒だ? というかお前らなんだかガラが悪いな?
本当にテニス部なのか?」
「ちょっとそれは失礼じゃないっスかね?
なんならコートでやって見せますから案内してくださいスよ。
まあ話に来ただけなんで部室でもいいっス」
金子はぺらぺらと口からデマカセを言っている。本当にこれで騙しとおせるかはわからないが、ここまでテクテク歩いて来たのに大人しく叩き出されるのもつまらないと考えてのことだ。
結果的にテニスコートの場所と部室はすぐそばにあることを教えてもらった二人は、教師のお墨付きをもらったと言うことで堂々と校舎の向こうにあるテニスコートへ向かっていく。
違う制服の生徒はそれだけで目立つ。だがあまりに視線が注がれる別の理由があるのは明らかで、西高には珍しい着崩した制服と染めた長めの髪、そして明らかな遊び人風な外見がその原因だろう。
「なあ金ちゃん、さっきからメッチャ目が合うんだけど、どの子にするか迷うな。
桃子がダメだったら別の子をお持ち帰りしようぜ?
ちょっと先に声かけておこうかな」
「マジでお前何しに来たんだよ。
運命の子が待ってるんじゃなかったのか?」
「それはそれ、これはこれ、今は今だろ。
そりゃオレだってあっさり見つかったらいいとは思ってるよ?
だけどどういう子なのかもわかんねえし、そもそも根拠ないじゃん」
「言いだしたのはナミタカ! お前だっつーの!
なんかムカついてきた、ホレ、スマッシュ!」
金子が高波の頭を学生鞄で引っぱたいだが、高波は黙って立ちすくんでいる。マジで怒ったのかと慌てる金子に、高波は意外なことを口走った。
「すげえ、一目ぼれってこういうことなのか?
オレ、あの子に告白してくるわ」
そう、天使の思惑通り、今まさにこの場で高波孝と道川美知子は相見えたのだった。
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