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第十一章 如月(二月)
297.二月十六日 午後 大捕り物
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時刻は十六時ちょうどになろうとしている。八早月たち八家の面々は秘密結社バトンとその背後組織の拠点を二カ所同時に襲撃しようとタイミングを見計らっていた。
襲撃と言うと聞こえが悪いが、特にお上の命があるわけでもないため摘発とは言い難い。それに以前取り逃がしたおかげで損害を被っていると言う、言わば逆恨み的な私怨が混じっている事もあって皆は自分たちこそ正義であるなどと考えてはいないのだ。
その襲撃先には異国の神より賜った力を行使する者たちがいるらしく、気配を察知される危険性を考慮すると呼士同士の通信は行えない。そのためどちらかと言えば世間では一般的と言える、携帯電話によって連絡を取り合っていた。
「宿おじさま? すまほを持たずに通話できる方法を知っていますか?
ふふん、これはとても便利ですから皆も導入するといいでしょうね。
うっかり失念していましたので戻ってから教えて差し上げましょう」
『そ、それは確かに便利そうですな、お戻りを楽しみにするとしましょう。
念のためですが、通話が外に漏れ聞こえるようなものではありませんよね?
その…… いささか筆頭の声が大きいように感じまして……』
「心配には及びません、今は連中の拠点からやや離れた場所ですからね。
少し早く着いたので少しおしゃべりをしていたのですよ。
もちろんお役目を忘れてはおりません、公私混同はいけませんからね」
そう聞かされた宿は、すでにこの作戦自体が公私混同私利私欲的であるとはとても言えず、電話口の反対側で苦笑いするのみである。だが言った当人も今回の組織壊滅作戦に今は大義名分がないことくらいはわかっていた。
それはすなわち、一歩間違えれば強盗と変わりない扱いを受ける可能性もあるのだが、バトンを初めとする相手が国益を損ねる集団だと確認済みであり問題は無いと考えている。とは言えそれは作戦成功となった場合のみであるため、絶対に失敗は許されないのだ。
『ちなみにそこから施設入口までどのくらいかかります?
突入の合図は筆頭が出しますよね? それともこちらの待機組にしましょうか?』
「そうですね、待機している中さんと聡明さんにお願いしようかしら。
ここから向かって扉を破って入るまで十、いや五秒程度はかかりますね。
まあでもピタリではなくても問題は無いでしょう?」
『ええ、数分のずれだと困りますが数秒ならどこへも連絡できないでしょう。
では約一分後、残り十秒から数えてもらいます、よろしいか? 聡明殿』
『ええ問題ありません、だが本当に逃げてくる輩がおりますかなあ。
誰も出てこなければ暇を持て余してしまい貧乏くじですわ』
『少なくとも武闘派ではないバトンの連中は逃げようとするでしょうな。
とにかく片っ端からひっ捕らえて下され、選別は後ほどゆっくりと』
『ふむ…… おっと、そろそろ始めますかな。
十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、突入!』
臣人のカウントダウンを合図に、端野町の拠点には宿、臣人、ドロシーの三名が、浪内北郡の拠点には八早月と飛雄が突入した。どちらも大した時間を要せず内部へ侵入したが問題はここからである。
端野町の拠点は住宅街にあるため派手な立ち合いは避けたいところ、しかも相手は銃火器で武装しているのだからたちが悪い。そのことを警戒しつつキーマの手引きによって裏口から堂々と入って行った三人は、目に入った賊を片っ端から斬り捨てていく。
慈悲もためらいも無く、正面だろうが背後だろうが正々堂々も卑怯も無く無差別に、である。さすがに不慣れなドロシーはためらいがちに一人目を斬った。だが痛みでのた打ち回る相手の口を塞ぐためもうひと刺ししたところを宿に見られ、却って残酷だとの指摘を受け気を引き締め直す。
これらの攻撃はもちろん春凪の剣技によるものなので命に別状はない。それならば一撃のもとに意識を刈り取るに越したことはない。現に宿と臣人は心の臓をひと突きにしており相手は瞬時に崩れ落ちていた。フィクションの世界なら首の後ろに手刀を繰り出すだけで済むのに、とドロシーが考えているうちに本丸へとたどり着いたようだ。
やや豪華な装飾品が並んだ部屋には、パッと見普通の日本人に見える男たちが五人で話し込んでいた。しかし異常を察知するとすぐに宿たちへと向き直り叫んだ。
「是誰? 可能是警察 怎麼進來的? 敵人攻!? 敵人襲!」
(貴様ら何者だ! まさか警察か!? どうやって入ってきた! 敵襲! 敵襲!)
「何語でショウね? 亜細亜系らしいデスガどうでもいいですカネ?」
「うむ、どうでもいいな、全て捕らえて終いにするぞ。
ドロシー殿、懐に得物を忍ばせているようだ、決して油断召されぬよう」
ドロシーが宿へ頷き返したとほぼ同時に、正面の異国人が懐へ差し入れた手を抜き出す。握られているのは小型の自動拳銃で、ご丁寧に消音器が取りつけられている。そのままためらいなくドロシーへ向かって発射する。
しかし弾丸がドロシーへ到達することは無かった。賊が引き金を引き、弾丸が銃口から飛び出す直前に、臣人の呼士である縁丸の鉾が弾丸を突いたからである。横槍を入れられた弾丸はすぐさま方向を変え、天井近くの壁へと着弾していた。
「臣人殿カタジケナイ、ではセッシャも参る! 春凪! タノミマス!」
『ドロシー様、かしこまりました。悪党ども! 覚悟なされい!』
真っ先にやる気を見せたドロシーへ、宿の横へ現れていた須佐乃がにやりと笑いながら声をかけてきた。初の先陣で緊張している彼女を鼓舞するつもりなのかからかっているのか真意はわからないが、これは意外な一言だった。
『ほおほお春凪殿もなかなかやる気ですな、ならば我はしばし見学と洒落込もう。
縁丸殿もここはドロシー様たちにお任せし銃弾を落していれば良いだろう』
『ふむ、それもまた一興か、ドロシー様、春凪殿、お二人にお任せいたす』
「わ、わかりモウシタ! 春凪、気をヌカヌように参ろうゾ!」
ドロシーは戸惑いながらも気を引き締め先頭に立つと、宿と聡明が背後を固める三角陣営を組んだ。対する賊五人は全員が拳銃を手にしてにじり寄るが、たった今何をされたのかがわからず次の攻撃にためらいがあるようだ。
「あなた方には見えないデショウが、超常の力の存在は知っているデショウ?
大人しく投稿するナラバ痛い目にはあわさないと約束しまスヨ?
逆らうなら容赦はしまセンガよろしいカ?」
「玩笑? 発砲撃那先頭女人!」(おかしなことを! 先頭の女を撃つぞ!)
「我明白了!」(わかった)
リーダー格の男が叫んだ瞬間、五発の銃弾が発射されたのだが、ドロシーの前には須佐乃が立ち塞がっており銃弾の行く手を阻んでいた。もちろん直撃を受けてはいるのだが、彼の分厚い鎧は非常に強固で有り、拳銃の弾程度では蚊に刺されたほどにも感じない。
物理法則を無視したが如く、不自然に床へぽとりと落ちた拳銃の弾を見た賊たちは、銃撃では敵わないと察したのだろう。背後の扉へ向かいたいのを隠しもせずドロシーから視線を逸らす。しかしそれは本当に視線を逸らせることができたのではなく、白目を剥きながら気を失っていく最後の記憶だったのかもしれない。
春凪の持つ洋風の直剣が数度煌めく間に三人がその場に崩れ落ち、二人は痛がりつつも意識を残していた。それこそは善悪に関わらず心身を鍛錬してきた者の証なのだろうが、この場合は気を失ってしまった方が楽だったに違いない。
「サテ、少し話を聞かせて貰おうカナ? 他の仲間はドコにイル?
ここにいる十五人以外にもいるのダロウ? ワカッテいるのだからネ?」
「まあまあ、そんな聞き方をしては言いたくても言えないでしょう。
ドロシー殿は戦闘でお疲れでしょうから後は僕にお任せあれ。
臣人殿と二人、いやキーマもおるから三人で残りを縛り上げてください」
「そうデスカ? いやはや大した働きでもないデスガ……
お心遣い痛み入りモウス」
「そうですな、ここは宿殿へお任せして我らは楽を致しましょう。
この三人も連れていきますぞ? 二人残せば十分ですかな?」
「ええ、二人と言うのは実に都合が良い、後をお任せします」
臣人が頭を振りながらドロシーを部屋の外へと促し、縁丸と春凪が気絶した賊を引き摺って行く。いまいち釈然としないドロシーだったが、ここは従っておくのが良いだろうと判断し大人しく出ていった。
「さてと、少し話を聞かせてもらうよ、俺はあまり気が長くねえからな?
さっさと口を割ってくれねえとどうなるかわからんぞ。
できれば尋問相手の補充はしたくねえから頼むぜ?」
突然口調の変わった宿は、リーダー格の賊が履いている靴を脱がすと男の口へと無理やりに突っ込んだ。次に両肩を踏んづけると何やら目配せをする。すると音も無く歩み寄った須佐乃が男の両つま先を切り落とした。
「痛! 哦! 上帝! 不要、不要害我! 求了!!」
「悪いが何を言ってるかわからねえ、ちゃんと話してくれねえとなあ。
お前さんもそう思うだろ?」
そう言いながらもう一人の男へ向ってメモ帳とペンを投げる。その意味をすぐに理解した男は急いで走り書きをしていく。むろん日本語ではないが書かせているのは住所を含む近隣の情報だ。後でなんとでもなるだろう。
それでも宿と須佐乃の尋問は続けられている。次は足首、すね、ふくらはぎ、と徐々に上へと進んでいき、腿の一番太い辺りを切り落としたところでリーダーの男は意識を失った。メモ書きを続けていた男はようやく終わったかと安堵しながらもまだペンを走らせる。
だがそれは思い込みにしかすぎず、尋問は終わっていなかった。宿は足元の男の腹あたりへしゃがみこむと、一定のリズムで何度も胸を強く押していく。十数回繰り返したところで目を覚ました男は、自分の足が爪の先ほども削られていないことに気が付いて涙を流していた。
これが三度繰り返された後、宿はようやく部下のメモが全てであると納得し、二人の意識を刈り取るという慈悲を与えたのだった。
襲撃と言うと聞こえが悪いが、特にお上の命があるわけでもないため摘発とは言い難い。それに以前取り逃がしたおかげで損害を被っていると言う、言わば逆恨み的な私怨が混じっている事もあって皆は自分たちこそ正義であるなどと考えてはいないのだ。
その襲撃先には異国の神より賜った力を行使する者たちがいるらしく、気配を察知される危険性を考慮すると呼士同士の通信は行えない。そのためどちらかと言えば世間では一般的と言える、携帯電話によって連絡を取り合っていた。
「宿おじさま? すまほを持たずに通話できる方法を知っていますか?
ふふん、これはとても便利ですから皆も導入するといいでしょうね。
うっかり失念していましたので戻ってから教えて差し上げましょう」
『そ、それは確かに便利そうですな、お戻りを楽しみにするとしましょう。
念のためですが、通話が外に漏れ聞こえるようなものではありませんよね?
その…… いささか筆頭の声が大きいように感じまして……』
「心配には及びません、今は連中の拠点からやや離れた場所ですからね。
少し早く着いたので少しおしゃべりをしていたのですよ。
もちろんお役目を忘れてはおりません、公私混同はいけませんからね」
そう聞かされた宿は、すでにこの作戦自体が公私混同私利私欲的であるとはとても言えず、電話口の反対側で苦笑いするのみである。だが言った当人も今回の組織壊滅作戦に今は大義名分がないことくらいはわかっていた。
それはすなわち、一歩間違えれば強盗と変わりない扱いを受ける可能性もあるのだが、バトンを初めとする相手が国益を損ねる集団だと確認済みであり問題は無いと考えている。とは言えそれは作戦成功となった場合のみであるため、絶対に失敗は許されないのだ。
『ちなみにそこから施設入口までどのくらいかかります?
突入の合図は筆頭が出しますよね? それともこちらの待機組にしましょうか?』
「そうですね、待機している中さんと聡明さんにお願いしようかしら。
ここから向かって扉を破って入るまで十、いや五秒程度はかかりますね。
まあでもピタリではなくても問題は無いでしょう?」
『ええ、数分のずれだと困りますが数秒ならどこへも連絡できないでしょう。
では約一分後、残り十秒から数えてもらいます、よろしいか? 聡明殿』
『ええ問題ありません、だが本当に逃げてくる輩がおりますかなあ。
誰も出てこなければ暇を持て余してしまい貧乏くじですわ』
『少なくとも武闘派ではないバトンの連中は逃げようとするでしょうな。
とにかく片っ端からひっ捕らえて下され、選別は後ほどゆっくりと』
『ふむ…… おっと、そろそろ始めますかな。
十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、突入!』
臣人のカウントダウンを合図に、端野町の拠点には宿、臣人、ドロシーの三名が、浪内北郡の拠点には八早月と飛雄が突入した。どちらも大した時間を要せず内部へ侵入したが問題はここからである。
端野町の拠点は住宅街にあるため派手な立ち合いは避けたいところ、しかも相手は銃火器で武装しているのだからたちが悪い。そのことを警戒しつつキーマの手引きによって裏口から堂々と入って行った三人は、目に入った賊を片っ端から斬り捨てていく。
慈悲もためらいも無く、正面だろうが背後だろうが正々堂々も卑怯も無く無差別に、である。さすがに不慣れなドロシーはためらいがちに一人目を斬った。だが痛みでのた打ち回る相手の口を塞ぐためもうひと刺ししたところを宿に見られ、却って残酷だとの指摘を受け気を引き締め直す。
これらの攻撃はもちろん春凪の剣技によるものなので命に別状はない。それならば一撃のもとに意識を刈り取るに越したことはない。現に宿と臣人は心の臓をひと突きにしており相手は瞬時に崩れ落ちていた。フィクションの世界なら首の後ろに手刀を繰り出すだけで済むのに、とドロシーが考えているうちに本丸へとたどり着いたようだ。
やや豪華な装飾品が並んだ部屋には、パッと見普通の日本人に見える男たちが五人で話し込んでいた。しかし異常を察知するとすぐに宿たちへと向き直り叫んだ。
「是誰? 可能是警察 怎麼進來的? 敵人攻!? 敵人襲!」
(貴様ら何者だ! まさか警察か!? どうやって入ってきた! 敵襲! 敵襲!)
「何語でショウね? 亜細亜系らしいデスガどうでもいいですカネ?」
「うむ、どうでもいいな、全て捕らえて終いにするぞ。
ドロシー殿、懐に得物を忍ばせているようだ、決して油断召されぬよう」
ドロシーが宿へ頷き返したとほぼ同時に、正面の異国人が懐へ差し入れた手を抜き出す。握られているのは小型の自動拳銃で、ご丁寧に消音器が取りつけられている。そのままためらいなくドロシーへ向かって発射する。
しかし弾丸がドロシーへ到達することは無かった。賊が引き金を引き、弾丸が銃口から飛び出す直前に、臣人の呼士である縁丸の鉾が弾丸を突いたからである。横槍を入れられた弾丸はすぐさま方向を変え、天井近くの壁へと着弾していた。
「臣人殿カタジケナイ、ではセッシャも参る! 春凪! タノミマス!」
『ドロシー様、かしこまりました。悪党ども! 覚悟なされい!』
真っ先にやる気を見せたドロシーへ、宿の横へ現れていた須佐乃がにやりと笑いながら声をかけてきた。初の先陣で緊張している彼女を鼓舞するつもりなのかからかっているのか真意はわからないが、これは意外な一言だった。
『ほおほお春凪殿もなかなかやる気ですな、ならば我はしばし見学と洒落込もう。
縁丸殿もここはドロシー様たちにお任せし銃弾を落していれば良いだろう』
『ふむ、それもまた一興か、ドロシー様、春凪殿、お二人にお任せいたす』
「わ、わかりモウシタ! 春凪、気をヌカヌように参ろうゾ!」
ドロシーは戸惑いながらも気を引き締め先頭に立つと、宿と聡明が背後を固める三角陣営を組んだ。対する賊五人は全員が拳銃を手にしてにじり寄るが、たった今何をされたのかがわからず次の攻撃にためらいがあるようだ。
「あなた方には見えないデショウが、超常の力の存在は知っているデショウ?
大人しく投稿するナラバ痛い目にはあわさないと約束しまスヨ?
逆らうなら容赦はしまセンガよろしいカ?」
「玩笑? 発砲撃那先頭女人!」(おかしなことを! 先頭の女を撃つぞ!)
「我明白了!」(わかった)
リーダー格の男が叫んだ瞬間、五発の銃弾が発射されたのだが、ドロシーの前には須佐乃が立ち塞がっており銃弾の行く手を阻んでいた。もちろん直撃を受けてはいるのだが、彼の分厚い鎧は非常に強固で有り、拳銃の弾程度では蚊に刺されたほどにも感じない。
物理法則を無視したが如く、不自然に床へぽとりと落ちた拳銃の弾を見た賊たちは、銃撃では敵わないと察したのだろう。背後の扉へ向かいたいのを隠しもせずドロシーから視線を逸らす。しかしそれは本当に視線を逸らせることができたのではなく、白目を剥きながら気を失っていく最後の記憶だったのかもしれない。
春凪の持つ洋風の直剣が数度煌めく間に三人がその場に崩れ落ち、二人は痛がりつつも意識を残していた。それこそは善悪に関わらず心身を鍛錬してきた者の証なのだろうが、この場合は気を失ってしまった方が楽だったに違いない。
「サテ、少し話を聞かせて貰おうカナ? 他の仲間はドコにイル?
ここにいる十五人以外にもいるのダロウ? ワカッテいるのだからネ?」
「まあまあ、そんな聞き方をしては言いたくても言えないでしょう。
ドロシー殿は戦闘でお疲れでしょうから後は僕にお任せあれ。
臣人殿と二人、いやキーマもおるから三人で残りを縛り上げてください」
「そうデスカ? いやはや大した働きでもないデスガ……
お心遣い痛み入りモウス」
「そうですな、ここは宿殿へお任せして我らは楽を致しましょう。
この三人も連れていきますぞ? 二人残せば十分ですかな?」
「ええ、二人と言うのは実に都合が良い、後をお任せします」
臣人が頭を振りながらドロシーを部屋の外へと促し、縁丸と春凪が気絶した賊を引き摺って行く。いまいち釈然としないドロシーだったが、ここは従っておくのが良いだろうと判断し大人しく出ていった。
「さてと、少し話を聞かせてもらうよ、俺はあまり気が長くねえからな?
さっさと口を割ってくれねえとどうなるかわからんぞ。
できれば尋問相手の補充はしたくねえから頼むぜ?」
突然口調の変わった宿は、リーダー格の賊が履いている靴を脱がすと男の口へと無理やりに突っ込んだ。次に両肩を踏んづけると何やら目配せをする。すると音も無く歩み寄った須佐乃が男の両つま先を切り落とした。
「痛! 哦! 上帝! 不要、不要害我! 求了!!」
「悪いが何を言ってるかわからねえ、ちゃんと話してくれねえとなあ。
お前さんもそう思うだろ?」
そう言いながらもう一人の男へ向ってメモ帳とペンを投げる。その意味をすぐに理解した男は急いで走り書きをしていく。むろん日本語ではないが書かせているのは住所を含む近隣の情報だ。後でなんとでもなるだろう。
それでも宿と須佐乃の尋問は続けられている。次は足首、すね、ふくらはぎ、と徐々に上へと進んでいき、腿の一番太い辺りを切り落としたところでリーダーの男は意識を失った。メモ書きを続けていた男はようやく終わったかと安堵しながらもまだペンを走らせる。
だがそれは思い込みにしかすぎず、尋問は終わっていなかった。宿は足元の男の腹あたりへしゃがみこむと、一定のリズムで何度も胸を強く押していく。十数回繰り返したところで目を覚ました男は、自分の足が爪の先ほども削られていないことに気が付いて涙を流していた。
これが三度繰り返された後、宿はようやく部下のメモが全てであると納得し、二人の意識を刈り取るという慈悲を与えたのだった。
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