66 / 337
第四章 文月(七月)
63.七月六日 昼休み さらし者
しおりを挟む
周囲から祝福の声が降り注ぐこと自体は、八早月にとって悪くない体験だった。しかし素直に喜べはしないと言うのも正直なところである。
「スゴイよ! 学年一位だなんてスゴイスゴイ!
そりゃ全教科ってのは無理だろうけど、直前まで頑張った甲斐はあったね!
アタシは一番良くて数学の二十二位だもん、デキが違うって感じ?」
「夢路さんなんて全教科で上位だもの、よほどすごいわよ。
しかも一桁ばかりでしょ? 普段から頭がいいとは思っていたけれどね」
「でも一位を取ったのは八早月ちゃんだけだもん、すごいなぁ。
やっぱり国語は得意なんだね」
「国語と言うか古文漢文は得意かもしれないわね。
古文書の類とかは普段から読む機会が多いんだもの。
旧家の当主として学んできたことが初めて役だった気がしたわ」
本当は妖討伐関連で大いに役立って入るのだが、勉強に活かされたのが初めてなのは本当である。しかし問題はそこではない、そんなことではないのだ。
「でもそんなことで喜んではいられないわ……
まったくもって恥、末代まで続く汚点を残してしまったんだもの……」
「まあいいじゃないの、英語ひとつくらい苦手だって困らないわよ。
確かに下から数えた方が早いのは泣けるけどね……」
廊下に貼りだされた順位表は上位二十名までなのだが、各生徒へ配られた結果には当然すべての結果が記載されており、仲の良い子たちは当たり前のように見せ合ってキャーキャーと騒いでいた。
国語で学年一位を取った八早月はその他もまあまあ悪くはないが、数学は二十四位で中の下、技術家庭と音楽は三十位前後で下の中と言ったところだ。そして大問題なのが当然のように英語なのだが、こちらはなんと三十八位と最下位グループ、しかも欠席が一人いたらしいので実質ビリから二番目である。
小学校と言うか分校でも英語はちんぷんかんぷんだったが、教えている方も適当だったので深く考えたこともなかった。もちろんドロシー以外に外国人を見たこともなかったし、外部との接触は新聞のみと言う閉じた世界だったので外国語の必要性について考えたこともなかった。
それがまさか今ここで響いてくるとは。八早月にとって勉強は絶対にできなければいけないものでもないし、学年トップを目指すとかそういうものでもない。しかしいくらなんでもビリかその前かを争う程度では当主としての威厳に関わる。
「私決めた! 夏休みの間に英語がんばってせめて平均点を目指すわ!
明日にでもドリーへ相談しましょ」
「えー、高校の先生に習うとかズルくなーい?
アタシと一緒に地獄へ堕ちようよ…… ね?」
そう言って美晴は自分の結果票を見せながら英語の部分を指さした。そこに輝いていたのはなんと三十九位と打刻された順位だったのだ。ちなみに夢路の英語順位は十六位である。
「って言うかさぁ、美晴が八点、八早月ちゃんも十二点ってどういうこと!?
単語問題が数個出来ただけってことじゃないの。
誰かに教わるレベルにすら達してないわよ?
まずは単語帳を持ち歩いて暗記するところから始めなさい!」
「「はい、夢路先生……」」
こうして憂鬱な雨の一日は過ぎて行った。
「スゴイよ! 学年一位だなんてスゴイスゴイ!
そりゃ全教科ってのは無理だろうけど、直前まで頑張った甲斐はあったね!
アタシは一番良くて数学の二十二位だもん、デキが違うって感じ?」
「夢路さんなんて全教科で上位だもの、よほどすごいわよ。
しかも一桁ばかりでしょ? 普段から頭がいいとは思っていたけれどね」
「でも一位を取ったのは八早月ちゃんだけだもん、すごいなぁ。
やっぱり国語は得意なんだね」
「国語と言うか古文漢文は得意かもしれないわね。
古文書の類とかは普段から読む機会が多いんだもの。
旧家の当主として学んできたことが初めて役だった気がしたわ」
本当は妖討伐関連で大いに役立って入るのだが、勉強に活かされたのが初めてなのは本当である。しかし問題はそこではない、そんなことではないのだ。
「でもそんなことで喜んではいられないわ……
まったくもって恥、末代まで続く汚点を残してしまったんだもの……」
「まあいいじゃないの、英語ひとつくらい苦手だって困らないわよ。
確かに下から数えた方が早いのは泣けるけどね……」
廊下に貼りだされた順位表は上位二十名までなのだが、各生徒へ配られた結果には当然すべての結果が記載されており、仲の良い子たちは当たり前のように見せ合ってキャーキャーと騒いでいた。
国語で学年一位を取った八早月はその他もまあまあ悪くはないが、数学は二十四位で中の下、技術家庭と音楽は三十位前後で下の中と言ったところだ。そして大問題なのが当然のように英語なのだが、こちらはなんと三十八位と最下位グループ、しかも欠席が一人いたらしいので実質ビリから二番目である。
小学校と言うか分校でも英語はちんぷんかんぷんだったが、教えている方も適当だったので深く考えたこともなかった。もちろんドロシー以外に外国人を見たこともなかったし、外部との接触は新聞のみと言う閉じた世界だったので外国語の必要性について考えたこともなかった。
それがまさか今ここで響いてくるとは。八早月にとって勉強は絶対にできなければいけないものでもないし、学年トップを目指すとかそういうものでもない。しかしいくらなんでもビリかその前かを争う程度では当主としての威厳に関わる。
「私決めた! 夏休みの間に英語がんばってせめて平均点を目指すわ!
明日にでもドリーへ相談しましょ」
「えー、高校の先生に習うとかズルくなーい?
アタシと一緒に地獄へ堕ちようよ…… ね?」
そう言って美晴は自分の結果票を見せながら英語の部分を指さした。そこに輝いていたのはなんと三十九位と打刻された順位だったのだ。ちなみに夢路の英語順位は十六位である。
「って言うかさぁ、美晴が八点、八早月ちゃんも十二点ってどういうこと!?
単語問題が数個出来ただけってことじゃないの。
誰かに教わるレベルにすら達してないわよ?
まずは単語帳を持ち歩いて暗記するところから始めなさい!」
「「はい、夢路先生……」」
こうして憂鬱な雨の一日は過ぎて行った。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる