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第五章 戦いの日々
65.玉座の間にて
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堀へ落としたダンプカーからみんながぞろぞろと降りてきてそのまま陣を築く。城の中からは矢が放たれて飛んでく来ているが、先ほどまで走っていたとはいえ頑丈な砦そのもののようなものだから攻撃されてもなんてことない。さらにもう一台のダンプカーも無事に堀の前まで運んできた。
「兄殺しの国賊ハマルカイト!
大人しくお縄につきなさい!
この罪に加担しているトーラス公爵もよ!
今出てくれば身の安全は保障するわ!」
私が大声で叫ぶと、後ろで仲間と交戦していた騎士や警備兵の手が止まった。そして互いに見合ってなにやら話し込んでいる様子だ。
「誰でもいいから伺いたい!
兄殺しと言うのはどういうことだろうか!
まさかハマルカイト殿下が兄殿下たちになにかしたと言うのか!?」
「貴公は国王軍の騎士であるな?
我が名はルモンド・パープ・ボルブンと申す者だ。
アローフィールズ閣下の名においてお応えしよう。
残念ながらタマルライト殿下はお亡くなりになった。
ハマルカイト殿下とトーラス卿の手によって殺されたのだ!」
「まさか…… そんなバカな……」
「そう、バカなことだ。
トーラス卿は国王も手に掛けておる。
これを国賊逆賊として討たんで王国の戦士と名乗ることはできまい!」
ルモンドはすごい迫力で周囲へ語りかけた。すると今まで私たちを追っていた警備兵たちが戦意を無くしたようにうなだれている。タマルライト皇子は随分と慕われていたようだ。
「敵を討つために共に戦えとは言わん。
今はまだ疑っていても構わん。
しかし我々の邪魔はしないでもらいたい。
今ここにタマルライト皇子が姿を現すなら城への攻撃は即時中止する!」
「そうねルモンド、いいこと言うわ。
聞きなさいハマルカイト! 今すぐタマルライト皇子を出しなさい!
今すぐ返事をしないならこのまま城壁を壊して侵攻するわ!
国王殺しの容疑でトーラス卿を引き渡しなさい!」
しかし中からは誰も返事を返してこない。帰ってくるのは城壁の上から射られた矢の雨だけだ。こうなったら仕方ない。けが人が出ないことを願いながら力づくで押し入るまで!
「塀の近くにいる兵士たちは逃げておきなさい!
今から城壁を壊すわよ!」
そう言ってから荷台に乗っている丸太めがけて巨大トンカチを振りぬいた。すぐ目の前に撃ちだされた巨大な丸太は城壁の一部を崩してめり込んでいる。私は続けて同じ丸太の後ろをひっぱたいた。
『ドゴーン、ガラガラガラ』
大きな音がして塀の一部が崩壊し丸太が半分ほど中まで突き刺さっている。皿にもう一本を発射すると城壁は皿に大きく崩れ城の中庭が見えるほどとなった。
ここまでしてもハマルカイトどころか指揮を執っているような立場の貴族すら顔を出さない。末端の兵士にばかり押し付けて自分たちは安全なところで見物するようなことは赦せない。私はその無責任さに怒りを抑えきれずさらに丸太を撃ちこんだ。
ダンプカーもどきに積んできた丸太を全て撃ちこみ終わったころに、城壁は十数メートルくらい崩れ落ちていて中へは歩いて入れそうだ。中にはには怯えた兵士たちが戦意喪失してうずくまっている。
「責任者はどこ! 部隊長でもいいわ。
誰かいないの!」
「わ、私がトーラス閣下の第四部隊騎士団長です。
どうか命だけはお助け下さい……」
「あなたの命なんて取るつもりないわ。
それよりもトーラスとハマルカイトはどこにいるの!
素直に教えなさい。
知っているならタマルライト皇子のご遺体の場所もね」
「玉座の間にいらっしゃるはずです。
ご遺体の場所は知りません……」
末端と言うわけでも無かったがこの騎士の役職はあまり高くなさそうだ。とりあえず目指すのは玉座の間だとわかったが、そんなの聞くまでもなかったかもしれない。
下級兵たちの処遇に関しては、ルモンドに激を飛ばされ恐る恐るついてきた王国軍に任せ玉座の間へ向かった。途中にも騎士団がいたものの、デコールやボッコたち、こちらの騎士団が引き受けて私たちを先に行かせてくれた。
本当に数千人の兵士を抱えていたのかどうかわからないが、表では戦っている声が聞こえる。どうやら国王軍が城へ戻ってきて外にいたトーラス軍とやりあっているようだ。中庭にいたのはほんの一部と言ったところか。
ようやく玉座の間に到着した私たちは大きくて立派な扉を蹴り破った。正面の玉座にはハマルカイトがすわっており、その脇にはトーラスが立っている。そしてもう一つの玉座にはイリアが座っているが、その表情は怯えているように見える。
「ハマル、悪事はもう終わりよ。
大人しくここで果てなさい!」
「これはこれはアローフィールズ卿、いやルルーと言った方がいいか。
まさか君が僕の邪魔をしに現れるとはね。
しかしここへたどり着けたのは三人だけ、いったい何ができるというんだい?」
「簡単な事よ、あなたの前まで歩いて行ってぶん殴るだけだもの。
もちろんトーラス、あなたもよ。
イリアはかわいそうだから見逃してあげるわ、今すぐ逃げなさい」
しかしイリアは黙って首を横に振るだけだ。
「イリアとはまた懐かしい名だね。
でもここにいるのはモーデル、次期王妃となる女性さ。
もちろん国王は僕だよ」
「あなたは国王になんてなれないわ。
その野望がかなうことはなくここでおしまいなのよ」
私が数歩進むとハマルカイトが指をぱちんと鳴らした。その合図を受けてカーテンの裏から騎士たちがぞろぞろと現れる。うーんなんとベタな展開なのだろうか。
「ポポ、雑魚は俺たちに任せておけ。
お前は本命をやればいいからな」
「ありがとうグラン、愛してるわ。
ルモンドのことももちろん大好きよ」
こんなことをいうといわゆるフラグと言うやつみたいだけど、どうしても今このタイミングで言いたかったのだ。次々に襲いかかってくる騎士たちを二人が引き受けて応戦している。
その争いの中、私はゆっくりとハマルカイトへ向かって進んでいく。するとひときわ体の大きい大男が立ちふさがり行く手を阻んでくる。
「先日の会合で君の馬鹿力は見ているからね。
しかしこのゴリヤテに敵うはずがない。
元婚約者としては残念だけど君にはここで死んでもらうよ」
「残念なのは私のほうだわ。
こんな見かけ倒しに私が止められるわけないじゃないの」
「それはどうかな? これを見給え。
君がそこから一歩でも動いたらこの男を殺すよ?」
その場に連れてこられたのはなんと国王陛下だった。まだ傷も治っていなくて動かせる状態ではないだろうになんとひどいことを。しかもその方は自分の親ではないか。
「まさか自分の親まで手に掛けようと言うの?
お兄様だけでは気が済まないなんて、あなたったら本当に人間のクズだわ」
「まさか君にクズ呼ばわりされるとは思わなかったよ。
子供のころから僕に暴力を振るい、バカにして蔑んで来た君が正論を言うとはね」
これには思わず言葉がつまりすぐに言い返すことが出来なかった。だが過ぎてしまったことを変えることはできない。
「そうね、あの時は悪いことをしていたと思ってる。
でも今はもう子供じゃないもの、駄目なことをしていたことくらいわかるわ。
だからあなたも自分を変えればいいじゃないの、まだ間に合うわよ。
このままでは親兄弟を殺して王の座を奪おうとした残虐非道な人としか見られないわ」
本物のルルリラがしてきたことを謝るのはしゃくだったが、そうは言っても自分がひどいことをしてきたとの記憶もあるのだし仕方がない。
「なんと言われようと王になってしまえば問題はない。
一番偉いのだから何をしても許されるんだよ、わかるかい?」
「わかるわけないでしょ、国王が一番偉いだなんて勘違いも甚だしいわ。
国王になったとしても民がいなかったら食べるものさえ得られないと言うのに。
あなたったら本当に哀れな人ね」
苦しそうに横たわる国王にはトーラスが剣をちらつかせている。その光景は私の怒りを増幅させるに十分だった。
「兄殺しの国賊ハマルカイト!
大人しくお縄につきなさい!
この罪に加担しているトーラス公爵もよ!
今出てくれば身の安全は保障するわ!」
私が大声で叫ぶと、後ろで仲間と交戦していた騎士や警備兵の手が止まった。そして互いに見合ってなにやら話し込んでいる様子だ。
「誰でもいいから伺いたい!
兄殺しと言うのはどういうことだろうか!
まさかハマルカイト殿下が兄殿下たちになにかしたと言うのか!?」
「貴公は国王軍の騎士であるな?
我が名はルモンド・パープ・ボルブンと申す者だ。
アローフィールズ閣下の名においてお応えしよう。
残念ながらタマルライト殿下はお亡くなりになった。
ハマルカイト殿下とトーラス卿の手によって殺されたのだ!」
「まさか…… そんなバカな……」
「そう、バカなことだ。
トーラス卿は国王も手に掛けておる。
これを国賊逆賊として討たんで王国の戦士と名乗ることはできまい!」
ルモンドはすごい迫力で周囲へ語りかけた。すると今まで私たちを追っていた警備兵たちが戦意を無くしたようにうなだれている。タマルライト皇子は随分と慕われていたようだ。
「敵を討つために共に戦えとは言わん。
今はまだ疑っていても構わん。
しかし我々の邪魔はしないでもらいたい。
今ここにタマルライト皇子が姿を現すなら城への攻撃は即時中止する!」
「そうねルモンド、いいこと言うわ。
聞きなさいハマルカイト! 今すぐタマルライト皇子を出しなさい!
今すぐ返事をしないならこのまま城壁を壊して侵攻するわ!
国王殺しの容疑でトーラス卿を引き渡しなさい!」
しかし中からは誰も返事を返してこない。帰ってくるのは城壁の上から射られた矢の雨だけだ。こうなったら仕方ない。けが人が出ないことを願いながら力づくで押し入るまで!
「塀の近くにいる兵士たちは逃げておきなさい!
今から城壁を壊すわよ!」
そう言ってから荷台に乗っている丸太めがけて巨大トンカチを振りぬいた。すぐ目の前に撃ちだされた巨大な丸太は城壁の一部を崩してめり込んでいる。私は続けて同じ丸太の後ろをひっぱたいた。
『ドゴーン、ガラガラガラ』
大きな音がして塀の一部が崩壊し丸太が半分ほど中まで突き刺さっている。皿にもう一本を発射すると城壁は皿に大きく崩れ城の中庭が見えるほどとなった。
ここまでしてもハマルカイトどころか指揮を執っているような立場の貴族すら顔を出さない。末端の兵士にばかり押し付けて自分たちは安全なところで見物するようなことは赦せない。私はその無責任さに怒りを抑えきれずさらに丸太を撃ちこんだ。
ダンプカーもどきに積んできた丸太を全て撃ちこみ終わったころに、城壁は十数メートルくらい崩れ落ちていて中へは歩いて入れそうだ。中にはには怯えた兵士たちが戦意喪失してうずくまっている。
「責任者はどこ! 部隊長でもいいわ。
誰かいないの!」
「わ、私がトーラス閣下の第四部隊騎士団長です。
どうか命だけはお助け下さい……」
「あなたの命なんて取るつもりないわ。
それよりもトーラスとハマルカイトはどこにいるの!
素直に教えなさい。
知っているならタマルライト皇子のご遺体の場所もね」
「玉座の間にいらっしゃるはずです。
ご遺体の場所は知りません……」
末端と言うわけでも無かったがこの騎士の役職はあまり高くなさそうだ。とりあえず目指すのは玉座の間だとわかったが、そんなの聞くまでもなかったかもしれない。
下級兵たちの処遇に関しては、ルモンドに激を飛ばされ恐る恐るついてきた王国軍に任せ玉座の間へ向かった。途中にも騎士団がいたものの、デコールやボッコたち、こちらの騎士団が引き受けて私たちを先に行かせてくれた。
本当に数千人の兵士を抱えていたのかどうかわからないが、表では戦っている声が聞こえる。どうやら国王軍が城へ戻ってきて外にいたトーラス軍とやりあっているようだ。中庭にいたのはほんの一部と言ったところか。
ようやく玉座の間に到着した私たちは大きくて立派な扉を蹴り破った。正面の玉座にはハマルカイトがすわっており、その脇にはトーラスが立っている。そしてもう一つの玉座にはイリアが座っているが、その表情は怯えているように見える。
「ハマル、悪事はもう終わりよ。
大人しくここで果てなさい!」
「これはこれはアローフィールズ卿、いやルルーと言った方がいいか。
まさか君が僕の邪魔をしに現れるとはね。
しかしここへたどり着けたのは三人だけ、いったい何ができるというんだい?」
「簡単な事よ、あなたの前まで歩いて行ってぶん殴るだけだもの。
もちろんトーラス、あなたもよ。
イリアはかわいそうだから見逃してあげるわ、今すぐ逃げなさい」
しかしイリアは黙って首を横に振るだけだ。
「イリアとはまた懐かしい名だね。
でもここにいるのはモーデル、次期王妃となる女性さ。
もちろん国王は僕だよ」
「あなたは国王になんてなれないわ。
その野望がかなうことはなくここでおしまいなのよ」
私が数歩進むとハマルカイトが指をぱちんと鳴らした。その合図を受けてカーテンの裏から騎士たちがぞろぞろと現れる。うーんなんとベタな展開なのだろうか。
「ポポ、雑魚は俺たちに任せておけ。
お前は本命をやればいいからな」
「ありがとうグラン、愛してるわ。
ルモンドのことももちろん大好きよ」
こんなことをいうといわゆるフラグと言うやつみたいだけど、どうしても今このタイミングで言いたかったのだ。次々に襲いかかってくる騎士たちを二人が引き受けて応戦している。
その争いの中、私はゆっくりとハマルカイトへ向かって進んでいく。するとひときわ体の大きい大男が立ちふさがり行く手を阻んでくる。
「先日の会合で君の馬鹿力は見ているからね。
しかしこのゴリヤテに敵うはずがない。
元婚約者としては残念だけど君にはここで死んでもらうよ」
「残念なのは私のほうだわ。
こんな見かけ倒しに私が止められるわけないじゃないの」
「それはどうかな? これを見給え。
君がそこから一歩でも動いたらこの男を殺すよ?」
その場に連れてこられたのはなんと国王陛下だった。まだ傷も治っていなくて動かせる状態ではないだろうになんとひどいことを。しかもその方は自分の親ではないか。
「まさか自分の親まで手に掛けようと言うの?
お兄様だけでは気が済まないなんて、あなたったら本当に人間のクズだわ」
「まさか君にクズ呼ばわりされるとは思わなかったよ。
子供のころから僕に暴力を振るい、バカにして蔑んで来た君が正論を言うとはね」
これには思わず言葉がつまりすぐに言い返すことが出来なかった。だが過ぎてしまったことを変えることはできない。
「そうね、あの時は悪いことをしていたと思ってる。
でも今はもう子供じゃないもの、駄目なことをしていたことくらいわかるわ。
だからあなたも自分を変えればいいじゃないの、まだ間に合うわよ。
このままでは親兄弟を殺して王の座を奪おうとした残虐非道な人としか見られないわ」
本物のルルリラがしてきたことを謝るのはしゃくだったが、そうは言っても自分がひどいことをしてきたとの記憶もあるのだし仕方がない。
「なんと言われようと王になってしまえば問題はない。
一番偉いのだから何をしても許されるんだよ、わかるかい?」
「わかるわけないでしょ、国王が一番偉いだなんて勘違いも甚だしいわ。
国王になったとしても民がいなかったら食べるものさえ得られないと言うのに。
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