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7.エコバッグと帰り道
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今の僕は落胆していることを悟られないようにするだけで精いっぱいだった。エコバッグを下げながら隣を歩いていても嬉しいだけではいられない。これが美咲なりに考えた僕に対するメッセージなのかもしれない、いやきっとそうだ。
つまり僕の気持ちや告白しようとしている事には気が付いていて、それを遠回しに断ろうとしているのは彼女の気遣いなのかもしれない。全てを察して引き下がる方が、告白して振られるよりもまだ傷は浅くすむとも言える。
「ねえ小浦君、驚いちゃった? 本当にケーキの材料買うとは思って無かったんじゃない? 私さ、何の前触れもなく言い当てられちゃってスゴイビックリしたんだよね。なんでばれちゃったんだろってさ」
そう言われてもなんと答えればいいんだろう。まさか、美咲が誰かのためにケーキを作ると思いたくなくて探りを入れてみた、だなんて言えやしない。それにしたって、この状況でケーキの材料を買ったことを話題にしなくなっていいじゃないか。
「それでね、私だって一応女子高生なわけだし、色々と多感な年ごろじゃない? もちろん同い年の小浦君もだよ?」美咲は一体何を言い出しているんだろう。話に脈絡がなさ過ぎてさっぱりわからない。
「だからケーキを作るのだって、クリスマスに予定があるのだっておかしくないんじゃないかって思うよね? あとイルミネーションを見に誘ってくれることだって同じことだよ?」話がまったく繋がらない。僕の理解力が足りないのか、思考能力が鈍くなっているのか、合わせ技で一本と言うことも考えられる。
「ええっと、聞いてる? ねえ小浦君、もしかして怒ってる?」
「怒ってなんかないし、怒る理由はないよ。でも僕には小野さんが何の話をしているのかがわからなくて返事できないでいるんだ。どうも頭が悪すぎてゴメンね」
そう返してしまったせいで美咲は黙り込んでしまった。気分を害してしまったのか、もっとわかりやすく言い直してくれるのかどちらだろう。だが、できればこれで今日はお開き、また月曜日にとはしたくない。
よし、タイミングもムードも何もないけど今ここで言ってしまおう。どうせ振られることは目に見えているんだから、あとは言わないで終わるか言って終わるかだけの違い。引っ越してしまったら永遠に想いを伝えることは叶わない。
「あ、迎えが来た!」
「あのさ、小野さん! 迎え?」
「うん、前から向かってきてるでしょ? だからここまでで大丈夫だよ。重いのにありがとうございましたっ。それで小浦君は私に話があるんでしょ?」すぐに返事をしようと思ったが、美咲の話はそこで終わらなかった。
「さっきはそのことについて言いたかったんだけど、なんか上手く伝えられなくてごめんなさい。つまり小浦君が言いたいことは何となく察してるつもりなんだけど、ケーキのこととかが気になってるのかなって」
「そ、そう、なのかも……」言え、言ってしまえ、告白する勇気を出せ僕!
だがそこへ美咲の迎えが来てしまった。背の高い大人びた男子、いや二十代中ごろの男性だろうか。大学生よりは上に見える。まさかこれが美咲の彼氏なのか!?
「なんだ、クラスメート君と一緒だったのか。荷物が重いだろうと思って走って来たんだけどそんな必要なかったかもしれないね。えっと何君? 重かっただろうにありがとう」
「い、いえ、なんてことないです。鍛えてますから」もちろん帰宅部である。
「あはは、何君じゃなくて小浦君って言うの。隣の席ですごく優しいんだからね。たかちゃんにも少しは見習ってほしいよ。早く荷物受け取って、ほら。
小浦君もありがとうね、今日はここまでで大丈夫、鍛えてる男子が手伝ってくれてホント助かったー」その笑顔が僕にはとても辛かった。
「それじゃこれで、小野さん、また学校で、失礼します!」いたたまれなくなった僕は、荷物を手渡してすぐに走った。まるで現実から逃げるように。
そして僕は風呂上りに信じられないものを目にすることになった。
『ポコン』
<メッセージを受信しました>
『今日はありがとう、話の続きが出来たらいいなと思うので良かったら明日の十三時にまた公園で待ってるね』
つまり僕の気持ちや告白しようとしている事には気が付いていて、それを遠回しに断ろうとしているのは彼女の気遣いなのかもしれない。全てを察して引き下がる方が、告白して振られるよりもまだ傷は浅くすむとも言える。
「ねえ小浦君、驚いちゃった? 本当にケーキの材料買うとは思って無かったんじゃない? 私さ、何の前触れもなく言い当てられちゃってスゴイビックリしたんだよね。なんでばれちゃったんだろってさ」
そう言われてもなんと答えればいいんだろう。まさか、美咲が誰かのためにケーキを作ると思いたくなくて探りを入れてみた、だなんて言えやしない。それにしたって、この状況でケーキの材料を買ったことを話題にしなくなっていいじゃないか。
「それでね、私だって一応女子高生なわけだし、色々と多感な年ごろじゃない? もちろん同い年の小浦君もだよ?」美咲は一体何を言い出しているんだろう。話に脈絡がなさ過ぎてさっぱりわからない。
「だからケーキを作るのだって、クリスマスに予定があるのだっておかしくないんじゃないかって思うよね? あとイルミネーションを見に誘ってくれることだって同じことだよ?」話がまったく繋がらない。僕の理解力が足りないのか、思考能力が鈍くなっているのか、合わせ技で一本と言うことも考えられる。
「ええっと、聞いてる? ねえ小浦君、もしかして怒ってる?」
「怒ってなんかないし、怒る理由はないよ。でも僕には小野さんが何の話をしているのかがわからなくて返事できないでいるんだ。どうも頭が悪すぎてゴメンね」
そう返してしまったせいで美咲は黙り込んでしまった。気分を害してしまったのか、もっとわかりやすく言い直してくれるのかどちらだろう。だが、できればこれで今日はお開き、また月曜日にとはしたくない。
よし、タイミングもムードも何もないけど今ここで言ってしまおう。どうせ振られることは目に見えているんだから、あとは言わないで終わるか言って終わるかだけの違い。引っ越してしまったら永遠に想いを伝えることは叶わない。
「あ、迎えが来た!」
「あのさ、小野さん! 迎え?」
「うん、前から向かってきてるでしょ? だからここまでで大丈夫だよ。重いのにありがとうございましたっ。それで小浦君は私に話があるんでしょ?」すぐに返事をしようと思ったが、美咲の話はそこで終わらなかった。
「さっきはそのことについて言いたかったんだけど、なんか上手く伝えられなくてごめんなさい。つまり小浦君が言いたいことは何となく察してるつもりなんだけど、ケーキのこととかが気になってるのかなって」
「そ、そう、なのかも……」言え、言ってしまえ、告白する勇気を出せ僕!
だがそこへ美咲の迎えが来てしまった。背の高い大人びた男子、いや二十代中ごろの男性だろうか。大学生よりは上に見える。まさかこれが美咲の彼氏なのか!?
「なんだ、クラスメート君と一緒だったのか。荷物が重いだろうと思って走って来たんだけどそんな必要なかったかもしれないね。えっと何君? 重かっただろうにありがとう」
「い、いえ、なんてことないです。鍛えてますから」もちろん帰宅部である。
「あはは、何君じゃなくて小浦君って言うの。隣の席ですごく優しいんだからね。たかちゃんにも少しは見習ってほしいよ。早く荷物受け取って、ほら。
小浦君もありがとうね、今日はここまでで大丈夫、鍛えてる男子が手伝ってくれてホント助かったー」その笑顔が僕にはとても辛かった。
「それじゃこれで、小野さん、また学校で、失礼します!」いたたまれなくなった僕は、荷物を手渡してすぐに走った。まるで現実から逃げるように。
そして僕は風呂上りに信じられないものを目にすることになった。
『ポコン』
<メッセージを受信しました>
『今日はありがとう、話の続きが出来たらいいなと思うので良かったら明日の十三時にまた公園で待ってるね』
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