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6.イルミネーションと買い物かご
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結局明確な約束ができないままに時間は過ぎていき、とうとう前日の二十三日になってしまった。僕はなんであの時二十六日でもいいと言いきれなかったのか。それはきっと、いくら否定されていてもクリスマスに誰かとデートでもしている美咲を想像してしまったからだ。
その後に僕が告白したって遅いじゃないか。だったら別にイルミネーションなんて見に行く必要もない。僕自身はあんなただ光るだけの飾り付け見たってなんとも思わないんだから。
でもまてよ? もし今日ならどうだろう。クリスマスイヴには一日早いけど、そもそもクリスマス一日前のイヴを有難かる風潮がおかしい。つまりもう一日くらい早くたってなにも変わりやしないってことだ。
幸い街中では十二月の初旬からすでにクリスマス一色、それどころかハロウィンが終わって十一月に入ればクリスマス商戦が始まるほどである。神様だって二日早く祝ってもらえるんだからかえって喜ぶに違いない。
こういう時に屁理屈をひねり出すことには長けた僕だ。学校帰りに通る駅裏手の公園にだってイルミネーションは光っている。あそこへ誘って告白しよう!
色々と邪念のある僕にとって授業は長く感じて仕方がない。もちろん隣には美咲がいて、真面目に授業を受けているのだが、どうにも集中できていない僕を見て時々笑っている。僕は照れ隠しもかねてノートの端に帰りに公園へ行かないかと書いてから美咲へ差し出した。
『また引き留めてゴメンだけど、帰りに駅の裏にある公園に行かないか? 大きな木に一カ所だけだけどイルミネーションが灯っているって聞いたんだ』これに対し美咲も返事を書いて見せてくる。
『今日は駅の裏にあるスーパーへ寄ってから帰るからちょうどいいかも。 イルミネーションデートだね(ハートマーク)』何だこの返し! なんて思わせぶりなんだろう。今すぐ授業全てが終わって欲しいと願ってみるが、今はまだ二時限目である。
それにしても帰りにスーパーへ寄っていくだなんて。両親健在なことは学園祭の時に迎えが来たのでわかっている。体が弱いと言う割には家事を手伝っているのだろうか、それとも単に自分の趣味なのか、まさか…… 手作りケーキで誰かとクリスマスを過ごす!?
どうしても気になって授業が手につかなくなり、僕は再びノートに走り書きをしてしまった。こんなこと聞いてどうするのか、美咲がなんて思うだろうか。自問自答してもいい結果は出ないと感じている僕なのに、それでも気になって仕方ない。
『スーパーで買い物? ケーキの材料とか?』なにを馬鹿なことを、でももう聞いてしまったのだから手遅れだ。恐る恐る美咲の顔を覗き見ると、なんだか考え事をしているように見える。
結局その時間内には返事は無く、次の授業中になるのか、それとも返事が返ってこないのかどちらになるかドキドキしながら待つことになった。
だが次の授業中にも返事は無く、そのまま放課後になってしまった。
「小浦君、それじゃ帰ろっか。連れて行ってくれるんでしょ? イルミネーションに。私そう言うの見に行ったことないから楽しみなの。それでもし…… もしね? 気になるんだったら一緒に買い物にも付き合ってくれる?」
「えっ!? それはどういう……? まあ予定はないからもちろん一緒に行くよ。僕が付いて行ってもいいなら荷物持ちくらいは出来ると思うしさ」
「ホントに!? それは助かっちゃうな。ふふ、なんか嬉しい」
嬉しいのは僕のほうだよ、なんて言ってしまうとクサい台詞過ぎて恥ずかしいのでとても言えなかった。なんにせよほぼ予定通りに誘うことができたんだから喜んでいい。後はどのタイミングで告白するか、出来るかどうかが問題だ。
公園のイルミネーションは町内会で設置したものだとは聞いていたが、想像の何倍も簡素だった。言い方を変えれば残念な感じで期待外れってやつである。それでも美咲は喜んでいたし、わずかな電気の粒に照らされている彼女は非日常的な魅力にあふれていた。
せっかくここまでは順調だったはずなのに、どうしても勇気が出ずに告白は出来なかったのだが、それは僕だけのせいじゃない。なんと言っても夕方の公園には大勢の子供たちが走り回っていたし、その母親たちがそこらじゅうで立ち話をしていてムードもへったくれもない。
でもまだ大丈夫、僕は買い物が終わって美咲を送っていきながらチャンスを伺おうと考えていた。
『じゃあここまででいいよ、ありがとうね』
『家まで行かなくて本当に大丈夫? 重くない?』
『本当に大丈夫だってば。ふふ、悠斗君は心配性だね。なんでそんなに私を気にしてくれるの?』
『だって僕は…… 美咲のことがずっと前から好きなんだったんだ!』
『えっ、嬉しい、実は私も悠斗君のことが好きなの!』
よし完璧だ、そう考えているうちに、買い物かごの中はいちご、生クリーム、チョコレート、粉砂糖、などなどでいっぱいになっていた。
その後に僕が告白したって遅いじゃないか。だったら別にイルミネーションなんて見に行く必要もない。僕自身はあんなただ光るだけの飾り付け見たってなんとも思わないんだから。
でもまてよ? もし今日ならどうだろう。クリスマスイヴには一日早いけど、そもそもクリスマス一日前のイヴを有難かる風潮がおかしい。つまりもう一日くらい早くたってなにも変わりやしないってことだ。
幸い街中では十二月の初旬からすでにクリスマス一色、それどころかハロウィンが終わって十一月に入ればクリスマス商戦が始まるほどである。神様だって二日早く祝ってもらえるんだからかえって喜ぶに違いない。
こういう時に屁理屈をひねり出すことには長けた僕だ。学校帰りに通る駅裏手の公園にだってイルミネーションは光っている。あそこへ誘って告白しよう!
色々と邪念のある僕にとって授業は長く感じて仕方がない。もちろん隣には美咲がいて、真面目に授業を受けているのだが、どうにも集中できていない僕を見て時々笑っている。僕は照れ隠しもかねてノートの端に帰りに公園へ行かないかと書いてから美咲へ差し出した。
『また引き留めてゴメンだけど、帰りに駅の裏にある公園に行かないか? 大きな木に一カ所だけだけどイルミネーションが灯っているって聞いたんだ』これに対し美咲も返事を書いて見せてくる。
『今日は駅の裏にあるスーパーへ寄ってから帰るからちょうどいいかも。 イルミネーションデートだね(ハートマーク)』何だこの返し! なんて思わせぶりなんだろう。今すぐ授業全てが終わって欲しいと願ってみるが、今はまだ二時限目である。
それにしても帰りにスーパーへ寄っていくだなんて。両親健在なことは学園祭の時に迎えが来たのでわかっている。体が弱いと言う割には家事を手伝っているのだろうか、それとも単に自分の趣味なのか、まさか…… 手作りケーキで誰かとクリスマスを過ごす!?
どうしても気になって授業が手につかなくなり、僕は再びノートに走り書きをしてしまった。こんなこと聞いてどうするのか、美咲がなんて思うだろうか。自問自答してもいい結果は出ないと感じている僕なのに、それでも気になって仕方ない。
『スーパーで買い物? ケーキの材料とか?』なにを馬鹿なことを、でももう聞いてしまったのだから手遅れだ。恐る恐る美咲の顔を覗き見ると、なんだか考え事をしているように見える。
結局その時間内には返事は無く、次の授業中になるのか、それとも返事が返ってこないのかどちらになるかドキドキしながら待つことになった。
だが次の授業中にも返事は無く、そのまま放課後になってしまった。
「小浦君、それじゃ帰ろっか。連れて行ってくれるんでしょ? イルミネーションに。私そう言うの見に行ったことないから楽しみなの。それでもし…… もしね? 気になるんだったら一緒に買い物にも付き合ってくれる?」
「えっ!? それはどういう……? まあ予定はないからもちろん一緒に行くよ。僕が付いて行ってもいいなら荷物持ちくらいは出来ると思うしさ」
「ホントに!? それは助かっちゃうな。ふふ、なんか嬉しい」
嬉しいのは僕のほうだよ、なんて言ってしまうとクサい台詞過ぎて恥ずかしいのでとても言えなかった。なんにせよほぼ予定通りに誘うことができたんだから喜んでいい。後はどのタイミングで告白するか、出来るかどうかが問題だ。
公園のイルミネーションは町内会で設置したものだとは聞いていたが、想像の何倍も簡素だった。言い方を変えれば残念な感じで期待外れってやつである。それでも美咲は喜んでいたし、わずかな電気の粒に照らされている彼女は非日常的な魅力にあふれていた。
せっかくここまでは順調だったはずなのに、どうしても勇気が出ずに告白は出来なかったのだが、それは僕だけのせいじゃない。なんと言っても夕方の公園には大勢の子供たちが走り回っていたし、その母親たちがそこらじゅうで立ち話をしていてムードもへったくれもない。
でもまだ大丈夫、僕は買い物が終わって美咲を送っていきながらチャンスを伺おうと考えていた。
『じゃあここまででいいよ、ありがとうね』
『家まで行かなくて本当に大丈夫? 重くない?』
『本当に大丈夫だってば。ふふ、悠斗君は心配性だね。なんでそんなに私を気にしてくれるの?』
『だって僕は…… 美咲のことがずっと前から好きなんだったんだ!』
『えっ、嬉しい、実は私も悠斗君のことが好きなの!』
よし完璧だ、そう考えているうちに、買い物かごの中はいちご、生クリーム、チョコレート、粉砂糖、などなどでいっぱいになっていた。
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