『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

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第二章 戸惑いの異世界

15.大樹の手記 三章(閑話)

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 三.スマメについて

 スマメとは『ステータス、マネー、メッセージ』の略らしくネーミングセンスが非常に日本的なことが不思議である。英語圏であれば『S.M.M』などとしそうなものだ。魔神曰く、世界構築キットのような物が有りそれを自分たちでカスタマイズ、その後環境設定や生物を配置したりしながら世界を作り出すらしい。

 その目的は、大規模な世界を産み出す前に機能のテストをしたり、観察したり、はたまた新たな人類を産み出して見たりと様々だ。しかし総じて言えることは安定環境を目指している世界とそうでない世界があることで、トラスはどちらかと言えば前者に当たる幸せな世界である。話が逸れたが、色々な世界ではスマメが標準的に使われているらしい。


 まずはステータスだが、ここには自分の能力が数字で表され表示されている。力、知力、敏捷性等はわかりやすい項目だが、運や魅力などと言う数値化しにくそうなものまで存在していることに興味を覚える。つまりは人間の運不運と言うものは、数値のように客観視できる能力の一つであり肉体同様に何らかの方法で伸ばすことが出来るのかもしれない。

 同様に魅力と言う数値があるが、こちらはおおむね他のステータスに比例して上がって行くようだ。だがまれに初めから飛びぬけて高い子がおり、周囲から愛されやすい人に育つ率が高いと言える。

 全ての数値は概ね年齢と同程度なら平均値と言えそうだが、身長や体型によっても変わってくる。私がこの世界で転生したときには赤ん坊だったのだが、初めて自分で確認したステータスは全て1000を超えていた。そのため0歳児であるにも関わらずすぐに話し出すことができ祭り上げられてしまった。

 そう言うこともあるので、むやみにステータスを他人へ見せることはお勧めできない。だがマネー欄を使用するためにはスマメを開くこともあるだろう。そのための隠蔽手段が裏ワザ的に隠されていたので紹介しておく。

 まずスマメを開いてステータス画面を表示したら、タブを下へとフリックしながら数秒間保持することだ。すると偽装画面と入れ替わり、以降は最初に偽装ステータスが表示される。ただこちららは完全に年齢と全ての数値が一致している没個性のため、却って怪しく見える気がしないでもない。

 ステータスに関しては自分の得意、苦手分野を知ることと、成長傾向を知ることが出来ていれば良い。魔術向けなのか肉体派なのかとか、想像力や直観、描画力が優れていれば魔道具作成に適性があると言える。

 魔力の量については年齢に比例せず完全に個性の一つである。100あれば大抵の場合は困ることもないだろう。それでは足りないと感じるならば、それは行動が間違っていると言えるかもしれないので、先ずは自分のしていることを見直して見ることを勧める。

 体力も重要な項目である。熊の一撃が20程度なので、大人になれば森で熊に遭遇してもそうそう死ぬことはない。しかし子供であれば簡単に死を迎えることになる。当然、成長に従って増加していくが力や俊敏性、集中力が高いものは武道に適性があるといえ、年相応よりも体力が高くなる傾向がある。


 次にマネー機能について記載する。買い物や他人との受け渡しに使用することになるのだが、魔人や魔族の村や街では硬貨や紙幣のような現物は一切なく、全て電子マネーで流通していることが特徴だ。これはとても合理的で困ることが何一つない。

 しかし他の種族まで統一されているかと言えばそうでもなく、精霊は金自体に興味がなく、取引には宝石や貴金属の現物でしか受け付けてもらえない。エルフたちは物々交換を好むし、人間族は過去に国王が発行した独自の硬貨を使用した独自の経済圏を持っている。

 ごくまれにそう言った経済圏へ取引に出向く場合は、向こうで価値のある品物を持って行った方がいい。逆に売却時にはこちらの通貨で支払われることがないので、貨幣ではなくこちらで価値のあるものを持って帰ってくるべきだ。

 ちなみに人間たちの街であるトラストへ行くと卵を投げつけられたり、袋に入れた家畜のピーを投げられたりすることがある。まあそれほど嫌われているのでわざわざ行きたくはないが、トラストでしか流通していない食材等もあるのでたまには行かねばならない。だが防護対策は簡単で、反射の結界を自分に貼って行くだけである。そうすれば受けた攻撃は全て相手へと跳ね返るので、人間のバカはピーまみれだ。

 トラストで暮らす人間たちは欲深いわりに脆弱で、生意気なくせに臆病だ。しかし農作物を作ると言う能力には秀でており、スパイスの類はここでしか手に入らない。なんせ魔人を含めた魔族は刺激物が好きではない。私自身も魔人ではあるが、転生者のせいなのかラーメンには胡椒を駆けたくなるし、カレーを食べたくなることもある。あの時必死で人類衰亡派を止めておいてよかった。


 さて、メッセージについてだが、これは何か説明をしなくてはいけないようなものではない。見ればわかるように、名前をタップしてそのまま文字なり絵なりを記載し送信するだけだ。むやみに登録者を増やすとうっとおしいほどにメッセージが送られてくるので、よほど親しい相手でないと教えることがはばかられる。

 
 最後にアイテムボックスについてだ。これは自由に使用することが出来るようなものではなく、一定の条件下で勝手に使用されるものだと認識しておく程度でいい。過去数回程度だが、強大な魔物や聖獣を討伐した時に特殊な素材がアイテムボックスへ入ることが有るのだが、取り出すと二度と仕舞うことは出来ない。そのため初めて試した時には、持って帰ることが出来ず大ごとになってしまった。

 ちなみに大きさがそれほどでもない希少な素材やアイテムは、屋敷の地下にある封印されし部屋へと入れてある。封印を解くことができる程度に成長すればその価値もわかるだろう。
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