26 / 58
三章 甘い恋
4.当主との面会
しおりを挟む「下ろせって言ってるだろ」
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
3
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
第12回ネット小説大賞 小説部門入賞!
書籍化作業進行中
(宝島社様から大幅加筆したものを出版予定です)
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる