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第2章 フェルミ通商条約機構の一員として
第26話 技術交換
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高度な技術を持つ文明、ロスワ。
ロスワと赤い月の技術共有のため、プレアデスとロスワ艦の間で技術担当者の交換派遣が行われた。
プレアデスからは、サトシ、アルデ、ユカの三人がロスワ艦に派遣される。
迎え入れるロスワ技術班の対応はアイラ、西野、吉川が任された。
◇
「初めましてロスワの皆さん、私はアイラ……」
「挨拶は結構。早速『魔法』について教えて頂けますか」
能面のような顔をしたロスワの班長はアイラの言葉を遮り、要求を伝えてきた。
「こいつ、アイラさんに失礼だぞ!」
憤慨する西野をアイラが制止した。
「承知しました。こちらへどうぞ」
アイラは極めて冷静に、しかし丁寧に対応する。
「我々は直接的な情報交換を好む。それが君たちの気に触ったなら申し訳ない」
ロスワ班長の意外な謝罪に西野は驚いた。
と、同時にこのやり取りで好感をもった。
◇
ロスワ艦ではサトシたちがロスワの技術について説明を受けている。
「これが携帯用簡易通信機。1対1、あるいは複数対複数の音声通話と相手の位置捕捉を可能とします」
そういうとロスワ人は米粒より小さな機械を取り出した。
この機械は奥歯に取り付け使用するらしい。
「小さいんですね、この中に装置がまとまってるんだ……すごい」
ユカが感心する。
ユカもエンジニアだけあって、小型化の難しさについては理解できる。
ユカは疑問点を質問した。
「通信にはどのような方式を使用しているんですか?」
「暗号化した亜空間シグナルです。艦全体に亜空間シグナルの受発信装置があり、暗号の復号はコミュニケーター側で行います」
「惑星降下時は使用できますか?」
「その場合は設定を相互通信モードとする事で地上班同士で通信可能です。地上から軌道上の艦へは別途通信機を使用し通信しています」
要するにトランシーバーのようにも使用できるらしい。
通信魔法は通信が届くまでに若干のタイムラグがあるが、このコミュニケーターはリアルタイムのやり取りが可能だ。
「動力には何を使用しておるのじゃ?」
アルデも質問をする。自分で実装する事を想定しているのだろう。
「物質と反物質の相互転移によるスピン運動にて発生したエネルギーを使用しています」
「これは……なかなか理解するのに難儀しそうじゃな」
知らないエネルギー体が登場してアルデは苦笑した。
当面入手は難しそうだ。
「しかし、これが使えれば結構便利なものではあるのう」
「資料の通りだな。ストレートで話しやすい人たちだ」
◇
プレアデスでは、ロスワ人の班長が魔法石の説明を受けている。
「なるほど、『魔法』とは無に有を生み出すものだと……論理的ではないな。しかし、実際に事象は発生している」
ロスワ人は魔法の概念については理解できた様子だったが、「なぜそれが実現可能なのか?」というところで理解に苦しんでいた。
吉川が助け舟を出す。
「魔法の発動自体はブラックボックス化して考えりゃいいんだよ。『魔法石』っていう事象発生装置があって、定型の要求を与えると定型の事象が返却されんのよ」
「それでは、この装置……魔法石を自分たちでメンテナンスすることができない」
「魔法石のメンテナンスについては我々『赤い月』にご相談ください」
アイラがメンテナンスについて情報を共有しなかったのは、「赤い月」の主要産業として、魔法石のメンテナンス、動力である魔結晶の輸出が望めるという判断からだ。
「確かに、君たちの説明通りであれば、我々の人種に魔法を生み出すことはできない。魔法石を使用するしかなさそうだな」
ロスワ人はアイラの説明に納得した。
「定型の事象には、攻撃以外にどんなものがあるんだ?」
「その他に簡易組成などがあります。ご覧になりますか?」
「是非お願いしたい」
◇
休憩室――。
プレアデス内部にあるこの部屋は名前こそ「休憩室」となっているが、その実態は酒場だ。
アイラたちとロスワ人の技術班は情報交換後、休憩室にいた。
「今日の派遣は非常に得るものの多いものだった。感謝する」
「とんでもありません。お疲れでしょう。どうぞこの艦名物のヌージィガエールを」
「アルコールは体組織に悪影響を及ぼす。なぜそのような毒物を摂取するのだ?」
ロスワの班長は怪訝な顔をした。
「体に良いってのが心に良いってのとはイコールにはならないんだよね」
そういうと吉川(未成年)は班長の前に大ジョッキを置いた。
「まぁ、これが俺たちの文化だ。ちょっと付き合ってくれよ」
西野も班長に目配せする。
「文化の相互理解は技術開発の背景を知る上で無益ではない。ご一緒しよう」
班長は恐る恐るヌージィガエールに口をつける。
部下たちはその様子を無表情に見ている。
「なるほど、鼻に抜けるような癖はあるが美味だな」
班長がやっと笑った。
それを見てアイラは内心ほっとした。
「だろ? じゃんじゃん飲んじゃって♪」
調子に乗る吉川。アイラにも酒を勧める。
結局、ロスワ人は大ジョッキを3杯ずつ空けた。
「思考が定まらない。このような状態は精神研磨の儀式以来だ。あの時は数日間かかった境地に、この飲み物一杯で辿り着けるとは……」
西野と吉川はすでにダウンしている。
アイラだけが班長の相手をした。
◇
技術共有は成功に終わった。
サトシたちは携帯用簡易通信機を持ち帰ってきた。
ロスワの技術班は魔法石。
それから一樽のヌージィガエールを持って帰っていったのだった。
ロスワと赤い月の技術共有のため、プレアデスとロスワ艦の間で技術担当者の交換派遣が行われた。
プレアデスからは、サトシ、アルデ、ユカの三人がロスワ艦に派遣される。
迎え入れるロスワ技術班の対応はアイラ、西野、吉川が任された。
◇
「初めましてロスワの皆さん、私はアイラ……」
「挨拶は結構。早速『魔法』について教えて頂けますか」
能面のような顔をしたロスワの班長はアイラの言葉を遮り、要求を伝えてきた。
「こいつ、アイラさんに失礼だぞ!」
憤慨する西野をアイラが制止した。
「承知しました。こちらへどうぞ」
アイラは極めて冷静に、しかし丁寧に対応する。
「我々は直接的な情報交換を好む。それが君たちの気に触ったなら申し訳ない」
ロスワ班長の意外な謝罪に西野は驚いた。
と、同時にこのやり取りで好感をもった。
◇
ロスワ艦ではサトシたちがロスワの技術について説明を受けている。
「これが携帯用簡易通信機。1対1、あるいは複数対複数の音声通話と相手の位置捕捉を可能とします」
そういうとロスワ人は米粒より小さな機械を取り出した。
この機械は奥歯に取り付け使用するらしい。
「小さいんですね、この中に装置がまとまってるんだ……すごい」
ユカが感心する。
ユカもエンジニアだけあって、小型化の難しさについては理解できる。
ユカは疑問点を質問した。
「通信にはどのような方式を使用しているんですか?」
「暗号化した亜空間シグナルです。艦全体に亜空間シグナルの受発信装置があり、暗号の復号はコミュニケーター側で行います」
「惑星降下時は使用できますか?」
「その場合は設定を相互通信モードとする事で地上班同士で通信可能です。地上から軌道上の艦へは別途通信機を使用し通信しています」
要するにトランシーバーのようにも使用できるらしい。
通信魔法は通信が届くまでに若干のタイムラグがあるが、このコミュニケーターはリアルタイムのやり取りが可能だ。
「動力には何を使用しておるのじゃ?」
アルデも質問をする。自分で実装する事を想定しているのだろう。
「物質と反物質の相互転移によるスピン運動にて発生したエネルギーを使用しています」
「これは……なかなか理解するのに難儀しそうじゃな」
知らないエネルギー体が登場してアルデは苦笑した。
当面入手は難しそうだ。
「しかし、これが使えれば結構便利なものではあるのう」
「資料の通りだな。ストレートで話しやすい人たちだ」
◇
プレアデスでは、ロスワ人の班長が魔法石の説明を受けている。
「なるほど、『魔法』とは無に有を生み出すものだと……論理的ではないな。しかし、実際に事象は発生している」
ロスワ人は魔法の概念については理解できた様子だったが、「なぜそれが実現可能なのか?」というところで理解に苦しんでいた。
吉川が助け舟を出す。
「魔法の発動自体はブラックボックス化して考えりゃいいんだよ。『魔法石』っていう事象発生装置があって、定型の要求を与えると定型の事象が返却されんのよ」
「それでは、この装置……魔法石を自分たちでメンテナンスすることができない」
「魔法石のメンテナンスについては我々『赤い月』にご相談ください」
アイラがメンテナンスについて情報を共有しなかったのは、「赤い月」の主要産業として、魔法石のメンテナンス、動力である魔結晶の輸出が望めるという判断からだ。
「確かに、君たちの説明通りであれば、我々の人種に魔法を生み出すことはできない。魔法石を使用するしかなさそうだな」
ロスワ人はアイラの説明に納得した。
「定型の事象には、攻撃以外にどんなものがあるんだ?」
「その他に簡易組成などがあります。ご覧になりますか?」
「是非お願いしたい」
◇
休憩室――。
プレアデス内部にあるこの部屋は名前こそ「休憩室」となっているが、その実態は酒場だ。
アイラたちとロスワ人の技術班は情報交換後、休憩室にいた。
「今日の派遣は非常に得るものの多いものだった。感謝する」
「とんでもありません。お疲れでしょう。どうぞこの艦名物のヌージィガエールを」
「アルコールは体組織に悪影響を及ぼす。なぜそのような毒物を摂取するのだ?」
ロスワの班長は怪訝な顔をした。
「体に良いってのが心に良いってのとはイコールにはならないんだよね」
そういうと吉川(未成年)は班長の前に大ジョッキを置いた。
「まぁ、これが俺たちの文化だ。ちょっと付き合ってくれよ」
西野も班長に目配せする。
「文化の相互理解は技術開発の背景を知る上で無益ではない。ご一緒しよう」
班長は恐る恐るヌージィガエールに口をつける。
部下たちはその様子を無表情に見ている。
「なるほど、鼻に抜けるような癖はあるが美味だな」
班長がやっと笑った。
それを見てアイラは内心ほっとした。
「だろ? じゃんじゃん飲んじゃって♪」
調子に乗る吉川。アイラにも酒を勧める。
結局、ロスワ人は大ジョッキを3杯ずつ空けた。
「思考が定まらない。このような状態は精神研磨の儀式以来だ。あの時は数日間かかった境地に、この飲み物一杯で辿り着けるとは……」
西野と吉川はすでにダウンしている。
アイラだけが班長の相手をした。
◇
技術共有は成功に終わった。
サトシたちは携帯用簡易通信機を持ち帰ってきた。
ロスワの技術班は魔法石。
それから一樽のヌージィガエールを持って帰っていったのだった。
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