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第2章 フェルミ通商条約機構の一員として
第23話 紅白戦
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プレアデスは第9エリア宙域を哨戒中にジェミ軍事同盟の重巡洋艦「パール」と遭遇した。
パールは敵のエースパイロット「白炎のコボル」が属する艦だ。戦闘は回避できず、激戦が想像される。
◇
「きたか、『白炎のコボル』」
ソウコウが不適に微笑む。
「敵艦もこちらを察知したようです。敵砲撃を確認、着弾まで6秒。防御魔法を発動」
敵艦の艦砲射撃に対してサーシャは冷静に対処する。
「初弾防御後、全機発艦。俺も出る」
ソウコウから全パイロット発艦の指示が下る。
パイロットは格納庫へ向かった。
艦が小刻みに揺れる。
防衛魔法で初弾を受けたが、その衝撃波が伝わってくる。
パイロットたちは各自ロボに搭乗した。
「1号機マイア、ソウコウ発艦する!」
「2号機エレクトラ、サトシ発艦する!」
カタパルトがまず先頭の二人を射出する。
「ソウコウ、敵はコボルが出てくると予想される。部隊の指揮は俺に任せて、あんたはコボルとの戦いに専念してくれ」
「助かるぜ、サトシ」
プレアデスは艦載ロボを全て射出した。
なお、オーダーは下記の通りだ。
3号機タユゲテ アイラ
4号機アルキュオネ アルデ
5号機ケライノ マァル
6号機アステロペ 吉川
7号機メロペ 西野
「敵艦からも艦載機の射出を確認。その数30」
双方の艦はすれ違うコースを取っている。そのため、射出された艦載機同士は急激にその間合いを詰めている形となる。
ソウコウの目に敵の白い機体が映る。
「来たか! コボル!」
「まずは全機広範囲攻撃で敵機を減らせ!」
サトシがパイロットたちに指示を出す。
5秒後、両軍は接触した。
「今だ! 広範囲攻撃発動!」
サトシたちの機体は一斉に広範囲火炎魔法を撃ち出す。敵機も同時に機銃を掃射してくる。両軍はすれ違う。
飛び交う火花。
初撃で敵機の半数を撃墜。プレアデス側はアイラと吉川が被弾した。
「アルデ、西野、吉川は俺と後退、敵機を追尾。マァル、アイラは敵艦を攻撃だ。 散開!」
◇
激しい戦闘を展開する両軍の直中では、ソウコウの機体マイアとコボル機体ディアマンドのドッグファイトが繰り広げられていた。
互いに敵側後方からの攻撃を狙いつつ小刻みに方向転換し飛行する。
宇宙空間では重力下と異なり、上下が存在しない。機体から見て上方下方も左右と同じく注意を払う必要がある。その感覚においてはコボルに優があった。
ディアマンドは立体的な動作でマイアの足下の方向に回り込もうとする。ソウコウは雷撃魔法で牽制しつつ不利なポジションとならないよう機体方向を調整する。
「こいつ、速くもないくせに嫌な動きをっ」
ソウコウは堪らず全速で前方に移動し距離をとろうとした。その一瞬、敵に背後を見せることになった。
コボルはその隙を逃さない。
ディアマンドのライフルが火を吹く。飛び出した銃弾は吸い込まれるようにマイアの後部スラスターに命中した。スラスターに亀裂が入り、内部の爆発魔法が暴発、マイアは爆風に飲み込まれる。
「しまった! 体勢が!」
爆風に押されて姿勢制御は利かず、マイアは複雑に回転しながら飛ばされる。激しい回転に視界は定まらない。
ディアマンドは飛ばされるマイアに狙いを定めライフルの引き金を引いた。その一瞬の発光をソウコウは見た。脚部スラスターで回避行動をとる。
後部スラスターを失った今、ロケットのように足から吹き出す爆発エネルギーで移動するマイア。思い通りに機体を制御できない。
こうなれば軌道を読むのは容易い。ディアマンドは悠然とライフルを構えマイアに止めの一発を撃ち込む。
ソウコウはそのタイミングを狙っていた。
「反射魔法!」
機体の機能ではない。ソウコウの魔法が発動。銃弾は光の壁で反転し、ディアマンドめがけて飛ぶ。ソウコウはさらに追い討つ。
「全方向速射火炎魔法!」
ライフルの弾と、無数の燃える礫が飛来する。コボルはその軌道を見切った。
しかしディアマンドの性能がその反射神経に追い付かず、ライフルを持った腕に被弾する。
「武器を失った。帰艦する。ボロン、援護を頼むよ」
敵艦パールは機銃でプレアデス艦載ロボと戦闘しながらも、マイアに向けて艦砲射撃をした。
防御魔法で受け止めるものの、すさまじい衝撃。
マイアは押される形で戦場を離脱した。
ディアマンドは艦のそばにいたマァルとアイラの間をすり抜けるようにして着艦。そこを狙ったマァルだったが、重巡洋艦の急速旋回に弾は当たらなかった。
パールは戦線を離脱、パール艦載機がその後に付いていく。
サトシはそれを追撃せず、ソウコウの収容を優先した。
◇
ジェミ軍重巡洋艦パール艦内――。
コボルは作戦室に戻った。
「コボル、今戻った」
「おう、『紅白戦』の決着はつかずだったな」
ボロンはコボルの方を振り返らずに言った。
「何人死んだ?」
コボルが尋ねる。
「23名死亡。お前含めて7名生還だ」
コボルは感情を表に出さず「そうか」とだけ呟いた。
「コボル。俺はお前に期待している。一兵としてではなく、『現場指揮官』としてな。それを忘れるな」
「分かった。すまない……」
◇
プレアデス艦内――。
「また派手にぶち壊しやがって! この野郎!」
バルトの怒号が響く。今回の戦闘では結局全機が被弾。大量の修理タスクが発生した。
「すまん、でもそこを頼むよ」
ソウコウがお茶目にバルトにお願いする。
「よし、今日から寝ずの仕事だ! 野郎ども、仕事に取り掛かるぞ!」
プレアデスの鍛冶場はフル稼働を始めた。
◇
「なぁ、サトシ」
「なんだソウコウ?」
「今回は助かったが、次も助かるかどうかは分からない。敵の人型は今のところ1機だが、今後増えると思う」
「そうだな……で、何が言いたい?」
「もし……」
そこまで言いかけてソウコウは言葉を止めた。
「まぁ、なるようになる……か」
パールは敵のエースパイロット「白炎のコボル」が属する艦だ。戦闘は回避できず、激戦が想像される。
◇
「きたか、『白炎のコボル』」
ソウコウが不適に微笑む。
「敵艦もこちらを察知したようです。敵砲撃を確認、着弾まで6秒。防御魔法を発動」
敵艦の艦砲射撃に対してサーシャは冷静に対処する。
「初弾防御後、全機発艦。俺も出る」
ソウコウから全パイロット発艦の指示が下る。
パイロットは格納庫へ向かった。
艦が小刻みに揺れる。
防衛魔法で初弾を受けたが、その衝撃波が伝わってくる。
パイロットたちは各自ロボに搭乗した。
「1号機マイア、ソウコウ発艦する!」
「2号機エレクトラ、サトシ発艦する!」
カタパルトがまず先頭の二人を射出する。
「ソウコウ、敵はコボルが出てくると予想される。部隊の指揮は俺に任せて、あんたはコボルとの戦いに専念してくれ」
「助かるぜ、サトシ」
プレアデスは艦載ロボを全て射出した。
なお、オーダーは下記の通りだ。
3号機タユゲテ アイラ
4号機アルキュオネ アルデ
5号機ケライノ マァル
6号機アステロペ 吉川
7号機メロペ 西野
「敵艦からも艦載機の射出を確認。その数30」
双方の艦はすれ違うコースを取っている。そのため、射出された艦載機同士は急激にその間合いを詰めている形となる。
ソウコウの目に敵の白い機体が映る。
「来たか! コボル!」
「まずは全機広範囲攻撃で敵機を減らせ!」
サトシがパイロットたちに指示を出す。
5秒後、両軍は接触した。
「今だ! 広範囲攻撃発動!」
サトシたちの機体は一斉に広範囲火炎魔法を撃ち出す。敵機も同時に機銃を掃射してくる。両軍はすれ違う。
飛び交う火花。
初撃で敵機の半数を撃墜。プレアデス側はアイラと吉川が被弾した。
「アルデ、西野、吉川は俺と後退、敵機を追尾。マァル、アイラは敵艦を攻撃だ。 散開!」
◇
激しい戦闘を展開する両軍の直中では、ソウコウの機体マイアとコボル機体ディアマンドのドッグファイトが繰り広げられていた。
互いに敵側後方からの攻撃を狙いつつ小刻みに方向転換し飛行する。
宇宙空間では重力下と異なり、上下が存在しない。機体から見て上方下方も左右と同じく注意を払う必要がある。その感覚においてはコボルに優があった。
ディアマンドは立体的な動作でマイアの足下の方向に回り込もうとする。ソウコウは雷撃魔法で牽制しつつ不利なポジションとならないよう機体方向を調整する。
「こいつ、速くもないくせに嫌な動きをっ」
ソウコウは堪らず全速で前方に移動し距離をとろうとした。その一瞬、敵に背後を見せることになった。
コボルはその隙を逃さない。
ディアマンドのライフルが火を吹く。飛び出した銃弾は吸い込まれるようにマイアの後部スラスターに命中した。スラスターに亀裂が入り、内部の爆発魔法が暴発、マイアは爆風に飲み込まれる。
「しまった! 体勢が!」
爆風に押されて姿勢制御は利かず、マイアは複雑に回転しながら飛ばされる。激しい回転に視界は定まらない。
ディアマンドは飛ばされるマイアに狙いを定めライフルの引き金を引いた。その一瞬の発光をソウコウは見た。脚部スラスターで回避行動をとる。
後部スラスターを失った今、ロケットのように足から吹き出す爆発エネルギーで移動するマイア。思い通りに機体を制御できない。
こうなれば軌道を読むのは容易い。ディアマンドは悠然とライフルを構えマイアに止めの一発を撃ち込む。
ソウコウはそのタイミングを狙っていた。
「反射魔法!」
機体の機能ではない。ソウコウの魔法が発動。銃弾は光の壁で反転し、ディアマンドめがけて飛ぶ。ソウコウはさらに追い討つ。
「全方向速射火炎魔法!」
ライフルの弾と、無数の燃える礫が飛来する。コボルはその軌道を見切った。
しかしディアマンドの性能がその反射神経に追い付かず、ライフルを持った腕に被弾する。
「武器を失った。帰艦する。ボロン、援護を頼むよ」
敵艦パールは機銃でプレアデス艦載ロボと戦闘しながらも、マイアに向けて艦砲射撃をした。
防御魔法で受け止めるものの、すさまじい衝撃。
マイアは押される形で戦場を離脱した。
ディアマンドは艦のそばにいたマァルとアイラの間をすり抜けるようにして着艦。そこを狙ったマァルだったが、重巡洋艦の急速旋回に弾は当たらなかった。
パールは戦線を離脱、パール艦載機がその後に付いていく。
サトシはそれを追撃せず、ソウコウの収容を優先した。
◇
ジェミ軍重巡洋艦パール艦内――。
コボルは作戦室に戻った。
「コボル、今戻った」
「おう、『紅白戦』の決着はつかずだったな」
ボロンはコボルの方を振り返らずに言った。
「何人死んだ?」
コボルが尋ねる。
「23名死亡。お前含めて7名生還だ」
コボルは感情を表に出さず「そうか」とだけ呟いた。
「コボル。俺はお前に期待している。一兵としてではなく、『現場指揮官』としてな。それを忘れるな」
「分かった。すまない……」
◇
プレアデス艦内――。
「また派手にぶち壊しやがって! この野郎!」
バルトの怒号が響く。今回の戦闘では結局全機が被弾。大量の修理タスクが発生した。
「すまん、でもそこを頼むよ」
ソウコウがお茶目にバルトにお願いする。
「よし、今日から寝ずの仕事だ! 野郎ども、仕事に取り掛かるぞ!」
プレアデスの鍛冶場はフル稼働を始めた。
◇
「なぁ、サトシ」
「なんだソウコウ?」
「今回は助かったが、次も助かるかどうかは分からない。敵の人型は今のところ1機だが、今後増えると思う」
「そうだな……で、何が言いたい?」
「もし……」
そこまで言いかけてソウコウは言葉を止めた。
「まぁ、なるようになる……か」
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