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第2章 フェルミ通商条約機構の一員として
第12話 第659基地攻防戦(前編)
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前線にある第659宇宙基地からの連絡が途絶えた。
ジェミによる攻撃を受けた可能性が高い。
プレアデスは生存者の救助と基地の奪還のため、第659宇宙基地へと急いでいる。
なお、今回の任務から情報士官としてムーハ人女性のウサが同行している。
ウサは最近ムーハ星の学校を卒業したばかりで、学校ではミリタリーインテリジェンスを専攻していた。
◇
「ウサ、基地の破損状況をどう見る?」
ソウコウが尋ねる。
「そうですね……破損の程度は軽微です。その事から生存者がいる可能性は高いと想定されます。ですが、気になるのは敵がこの程度の攻撃で手を止めた理由です」
「サーシャ、生命反応はあるか?」
「……生命反応……あります。何人かわかりませんが生きてるようです」
「艦長、この基地は戦略上重要な拠点です。もしかしたら敵が占領済みかも……」
「わかった。アイラ、調査に行ってくれ。念のためマァルも同行だ」
プレアデスは基地に停泊。
マァル、アイラと数名の回復系魔導士が基地の調査に向かった。
◇
「マァル様、こちらには生存者は見つかりませんでした」
「ウム、我の方も死体ばかりだった」
基地内の第3階層まで探索をしたマァルたちだったが、生存者は見つからなかった。
「もう少し先を探しましょうか」
アイラが基地の奥に進むために第4階層の隔壁を開いたその時、爆発音が聞こえた。
艦との連絡通路の方向だ。
「今の音はっ!?」
急激に基地内の気圧が下がる。
強い風が後方に向かって流れた。
「……ムゥッ、罠か。してやられたな」
アイラは転送の護符を胸元から取り出そうとしたが、それはできなかった。
手首から先が吹き飛んでいたのだ。
うまく取り出せなかった護符が風に舞い、後方に吹き飛ばされて行く。
迸る血液、すぐさま魔導士が回復魔法で治療に取りかかろうとする……が、魔導士たちの頭部はまるで風船のように破裂した。
「くそっ! 物陰からの狙撃かっ!」
アイラは隔壁内部に体を滑り込ませ、扉をロックした。
急ぎ物陰に身を潜める。
「アイラ、貴様はここで休め。敵は我が始末する」
「しかし!」
「邪魔だと言っている。ここは我一人で十分だ」
事実、アイラは出血がひどく回復を急がねばならない状況だった。
アイラはマァルの言う通りにした。
艦との連絡通路は破壊された上、転送魔法は使えない。
そして見えない敵からの狙撃。
状況は悪い。
◇
「今の音は? 何が起こった?」
爆発の衝撃で船体が大きく揺れる。
「基地と艦の連絡通路が爆破されたようじゃな。プレアデスも連絡通路付近の外壁に被害が出ておる」
アルデが被害状況を報告する。
艦内は騒然としている。
連絡通路のあったブロックには大きな穴が開き、周囲のすべてのものを吐き出している。
アルデは手元のスイッチを操作し、耐圧隔壁を下ろして対象ブロックの切り離しにかかった。
サーシャがなにかに気づく。
「ソウコウ様!! 水平2時、垂直10時の方向に敵艦を感知! 敵主砲こちらに向いています!」
「アルデ、望遠モニタ起動だ」
「承知した」
敵影が作戦室の大窓に映し出される。
ウサは携帯端末を操作し敵を分析する。
「あれは重巡洋艦、強力な主砲と艦載機搭載能力を持ったジェミの攻撃艦です。紋章から『カテゴリ3』の軍であると思われます」
ジェミには文明ごとに『カテゴリ』という格付けが存在する。
新参の文明はカテゴリ3、地位は低く主に前線で戦う。ジェミの方針決定には関われず、受けた指示の通りに動く兵だ。
カテゴリ2はカテゴリ3に指示を与え、またジェミの方針決定に関わる。
ジェミ発足当時からの中心メンバーはカテゴリ1と呼ばれ同盟全体の方針策定権をもつ。
今回の敵はカテゴリ3。つまり末端クラスの文明だ。
「ちっ……待ち伏せされていたと言うことか……! サーシャ防御だ! 西野と吉川は敵艦を落とせ!」
「了解しました。光防御魔法展開!」
光の壁が敵艦の方向に向けて張られはじめる。
同時にカタパルトが唸りをあげる。
「6号機アステロペ、吉川行きます!」
「7号機メロペ、西野出ます!」
カタパルトが唸り二機は敵艦めがけ飛び立つとともに、光の壁が展開完了した。
◇
一方、基地内ではマァルが姿の見えない敵と戦っていた。
「物陰から飛び道具で攻撃とは。悪くない」
視界の端が一瞬光り、銃弾が飛んでくる。
マァルはそれを大鎌で受け止めるが、数発が体に命中した。
「マァル様!」
「面白い、ならばこちらも身を隠すまでよ」
マァルは大鎌を振りかぶり投げつけた。
激しく回転する大鎌が照明を破壊し、マァルの手元に戻る。
周囲は暗闇に包まれた。
全身黒ずくめのマァルは闇に溶け込む。
敵は銃を乱射しはじめた。
しかし手応えはなく、マァルに自分の居場所を伝えるだけだった。
敵の首筋に冷たい感触が伝わる。
「悪くはない……だが、あまりにも非力だ」
敵は暗闇のなかで全員首を切り落とされた。
全員を同じ方法で殺害したのはマァルの遊びだろう。
◇
アイラの傷は概ね回復した。
まだ痛みは残るが、元通り手が修復されている。
「マァル様も治療を……」
「不要だ。この痛みも殺し合いの醍醐味だからな。……しかし、どのように艦に戻ったものか」
マァルとアイラはプレアデス本艦の事を心配した。
ジェミによる攻撃を受けた可能性が高い。
プレアデスは生存者の救助と基地の奪還のため、第659宇宙基地へと急いでいる。
なお、今回の任務から情報士官としてムーハ人女性のウサが同行している。
ウサは最近ムーハ星の学校を卒業したばかりで、学校ではミリタリーインテリジェンスを専攻していた。
◇
「ウサ、基地の破損状況をどう見る?」
ソウコウが尋ねる。
「そうですね……破損の程度は軽微です。その事から生存者がいる可能性は高いと想定されます。ですが、気になるのは敵がこの程度の攻撃で手を止めた理由です」
「サーシャ、生命反応はあるか?」
「……生命反応……あります。何人かわかりませんが生きてるようです」
「艦長、この基地は戦略上重要な拠点です。もしかしたら敵が占領済みかも……」
「わかった。アイラ、調査に行ってくれ。念のためマァルも同行だ」
プレアデスは基地に停泊。
マァル、アイラと数名の回復系魔導士が基地の調査に向かった。
◇
「マァル様、こちらには生存者は見つかりませんでした」
「ウム、我の方も死体ばかりだった」
基地内の第3階層まで探索をしたマァルたちだったが、生存者は見つからなかった。
「もう少し先を探しましょうか」
アイラが基地の奥に進むために第4階層の隔壁を開いたその時、爆発音が聞こえた。
艦との連絡通路の方向だ。
「今の音はっ!?」
急激に基地内の気圧が下がる。
強い風が後方に向かって流れた。
「……ムゥッ、罠か。してやられたな」
アイラは転送の護符を胸元から取り出そうとしたが、それはできなかった。
手首から先が吹き飛んでいたのだ。
うまく取り出せなかった護符が風に舞い、後方に吹き飛ばされて行く。
迸る血液、すぐさま魔導士が回復魔法で治療に取りかかろうとする……が、魔導士たちの頭部はまるで風船のように破裂した。
「くそっ! 物陰からの狙撃かっ!」
アイラは隔壁内部に体を滑り込ませ、扉をロックした。
急ぎ物陰に身を潜める。
「アイラ、貴様はここで休め。敵は我が始末する」
「しかし!」
「邪魔だと言っている。ここは我一人で十分だ」
事実、アイラは出血がひどく回復を急がねばならない状況だった。
アイラはマァルの言う通りにした。
艦との連絡通路は破壊された上、転送魔法は使えない。
そして見えない敵からの狙撃。
状況は悪い。
◇
「今の音は? 何が起こった?」
爆発の衝撃で船体が大きく揺れる。
「基地と艦の連絡通路が爆破されたようじゃな。プレアデスも連絡通路付近の外壁に被害が出ておる」
アルデが被害状況を報告する。
艦内は騒然としている。
連絡通路のあったブロックには大きな穴が開き、周囲のすべてのものを吐き出している。
アルデは手元のスイッチを操作し、耐圧隔壁を下ろして対象ブロックの切り離しにかかった。
サーシャがなにかに気づく。
「ソウコウ様!! 水平2時、垂直10時の方向に敵艦を感知! 敵主砲こちらに向いています!」
「アルデ、望遠モニタ起動だ」
「承知した」
敵影が作戦室の大窓に映し出される。
ウサは携帯端末を操作し敵を分析する。
「あれは重巡洋艦、強力な主砲と艦載機搭載能力を持ったジェミの攻撃艦です。紋章から『カテゴリ3』の軍であると思われます」
ジェミには文明ごとに『カテゴリ』という格付けが存在する。
新参の文明はカテゴリ3、地位は低く主に前線で戦う。ジェミの方針決定には関われず、受けた指示の通りに動く兵だ。
カテゴリ2はカテゴリ3に指示を与え、またジェミの方針決定に関わる。
ジェミ発足当時からの中心メンバーはカテゴリ1と呼ばれ同盟全体の方針策定権をもつ。
今回の敵はカテゴリ3。つまり末端クラスの文明だ。
「ちっ……待ち伏せされていたと言うことか……! サーシャ防御だ! 西野と吉川は敵艦を落とせ!」
「了解しました。光防御魔法展開!」
光の壁が敵艦の方向に向けて張られはじめる。
同時にカタパルトが唸りをあげる。
「6号機アステロペ、吉川行きます!」
「7号機メロペ、西野出ます!」
カタパルトが唸り二機は敵艦めがけ飛び立つとともに、光の壁が展開完了した。
◇
一方、基地内ではマァルが姿の見えない敵と戦っていた。
「物陰から飛び道具で攻撃とは。悪くない」
視界の端が一瞬光り、銃弾が飛んでくる。
マァルはそれを大鎌で受け止めるが、数発が体に命中した。
「マァル様!」
「面白い、ならばこちらも身を隠すまでよ」
マァルは大鎌を振りかぶり投げつけた。
激しく回転する大鎌が照明を破壊し、マァルの手元に戻る。
周囲は暗闇に包まれた。
全身黒ずくめのマァルは闇に溶け込む。
敵は銃を乱射しはじめた。
しかし手応えはなく、マァルに自分の居場所を伝えるだけだった。
敵の首筋に冷たい感触が伝わる。
「悪くはない……だが、あまりにも非力だ」
敵は暗闇のなかで全員首を切り落とされた。
全員を同じ方法で殺害したのはマァルの遊びだろう。
◇
アイラの傷は概ね回復した。
まだ痛みは残るが、元通り手が修復されている。
「マァル様も治療を……」
「不要だ。この痛みも殺し合いの醍醐味だからな。……しかし、どのように艦に戻ったものか」
マァルとアイラはプレアデス本艦の事を心配した。
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