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第1章 始まりのお話

第4話 異星人との初めての交流

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 「赤い月」の宇宙船プレアデスは生命反応を検知した場所に到着した。

「サーシャ、ここから生命反応を感じたんだな?
 アルデ、望遠モニタを起動してくれ」

 ソウコウが指示を出す。

「承知した」

 作戦室の大窓に人工物と思われる構造物が写し出される。
 コマのような形をしたそれは宇宙空間を漂っていた。

「あれの大きさは?」

「見たところ長さ1,000メートルといったところじゃな。これといった武装はないように見えるが、注意するに越したことはないのう」

 アルデが観測結果を述べる。

「了解だ、俺が乗り込む。アイラと吉川、一緒に来てくれ。その間の艦の指揮は副長であるサトシに頼む。この接触は俺たちの初めての異星間交流となる。どうなるか予想もつかない。もし俺たちからの連絡が一時間以上ない場合は対象を攻撃してくれ」

「え!? 俺っすか?」
 吉川にとっては予想もしない展開だった。
 この艦の目的は知っていたが、まさか自分が作戦に関わるとは思っていなかった。

「なにか問題があるか?」

「いや、そういう訳じゃ……ただ驚いただけです」
 異世界、宇宙、そして宇宙人。驚かないわけがない。
 しかし、好奇心旺盛な吉川はその状況を楽しむことにした。

「是非連れてってください!」



 今回の接触には艦載の汎用ロボットが使用されることになった。


 プレアデスには7体の汎用ロボットと2体の戦闘用ロボが搭載されている。
 ロボの動力は魔法石だ。


 魔法石は最新の魔法蓄積媒体である。
 大きさは腕輪程度の物から、一抱えもあるものまで様々だ。

 魔法石が現れるまでは護符が携帯型魔法アイテムの主流だったが、護符に代わって近年携帯型魔法アイテムの主流となった。

 護符は携帯性に長けるが、一度使用すると使いきるまで魔法を発動し続けるため使いきりになってしまう。
 また、紙という媒体自体が蓄積できる魔力に限りがあるため、強力な魔法を護符にできない。
 誤って封印を解除してしまうことによる暴発事故が多発していたという問題があった。

 それらの問題を解決したのが魔法石だ。
 なお、開発にはサトシ(前回の異世界訪問時)とアルデが関わっている。

 特定の魔法によらない純粋な魔力を結晶化したものを魔結晶という。

 魔結晶の精製は魔力を操るものなら誰でもできるが、その活用は宝飾品あるいは観賞用にとどまっていた。

 サトシたちは充電池に発想を得て魔結晶の活用を研究、専用の装置で結晶から魔力を引き出す事に成功した。

 魔結晶から流れる魔力を装置の側で魔法の種類や強さを制御して発動する。魔結晶は魔力を充填することで再利用も可能な上、調達も簡単だ。そしてなにより安全であることが評価された。

 この方式で護符の抱えていたデメリットが解消され、魔法石は瞬く間に流行したのだ。

 もっとも、転送魔法のようにインスタントな術については護符の方が利便性は良いし、極大魔法などは装置が耐えられないため使用できない。

 そういった意味では魔法石と護符と高位魔導士は住み分けがされている。



 プレアデスの発艦用カタパルトのハッチが開く。
 カタパルトはプレアデス両翼に一基ずつ設置されているが、今回は一番カタパルトのみが使用される。

「1号機マイア、乗員ソウコウ、発艦する」
 カタパルトがマイアを亜音速まで加速して射出する。巨大なスリングショット(パチンコ)の要領だ。

「5号機ケライノ、乗員アイラ、発艦します」

「6号機アス……アステロペ? 吉川、行きます!」

 3体は暗闇のなかに吸い込まれていった。




「ソウコウ様、対象との接触までおよそ30秒です」

「了解。吉川、緊張してると死ぬぞ。リラックスな」

「はいっ!」

 ソウコウたちはコマのような構造物の円周部分に着地、すぐに内部に繋がっていると見られるハッチが見つかったので、構造物内部に侵入した。
 機械的な外見とは異なり、内部は曲線を主体とした有機的なデザインだ。
 色彩は寒色で統一されている。
 侵入ポイントは廊下と思われる場所だった。

 ビーーーービーーーービーーーー

 けたたましい音が鳴る。

「うるさいところだな!」
 ソウコウはマイアから降りながら叫んだ。
 アイラと吉川も自機から降りる。

「サイレンじゃないっすかね?」
 吉川も大声で話した。

「………………」
 アイラが何か言っているが、サイレンに遮られて聞き取れない。
 アイラが指差す方向、ソウコウは自分のうしろを振り返った。

 そこには十名ほどの筒を携えた集団がいた。
 筒を槍のように構えている。

 吉川にはその筒が銃であることがすぐに理解できた。
「艦長、あれは多分銃……飛び道具の武器だと思います」

「なるほど、じゃぁこいつらは兵士ってところか」

 対峙している集団は、人間と外見的にはあまり差異はない。
 特徴をあげるならば目が三つありその眼には白目がないことくらいだ。
 悪魔や巨神族に比べればよほど人間に近い。


 相手の文化レベル、能力、意図の判別がつかないうちは攻撃することは得策ではない。
 ソウコウはまず相手の出方を見ることとした。

「何者だ、ジェミでは無いようだが……」
 集団の中の一人が話しかける。
 一人だけ鎧にオレンジのラインが入っており、寒色の空間の中で鮮やかに見える。
 恐らくこの隊の長だろう。
 

「俺はソウコウ、赤い月の特務を受け宇宙を旅する者だ」

「赤い月? まだ星間移動をする前の文明であると聞いていたが……驚きだな。どのようにしてここまで?」

「俺たちは赤い月初めての宇宙部隊だ。プレアデスという艦に乗ってここまで来た」

 ソウコウは情報を明らかにすべきか一瞬迷ったが、本当のことを話した。

「そうか……私はこの基地を担当しているサガンヌキという者だ。君たちの処遇は本国に問い合わせて決定する」

 そう言うとサガンヌキはその場を後にした。

 ソウコウは装備を取り上げられ、兵士たちに案内されるまま何もない部屋に入れられた。

 兵士の装備は先ほど見た銃の他に短い剣が一振り。
 その気になれば素手でも殲滅は容易く思えるものだが、ソウコウは大人しく指示に従った。

 アイラは無言だ。吉川は明らかに怯えている。

 しばらく経ってサガンヌキが部屋に入ってきた。

「フェルミは君たちを歓迎する。これが我々のファースト・コンタクトとなるな」

 そういうとサガンヌキは微笑んだ。
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