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本編
第二十五話 交渉破談に伴い対応方針を変更致します。
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「サーシャ……なんで?」
刺客は暁の四人の一人、サーシャだった。
何故仲間だったサーシャが自分の命を狙のか、サトシには理解できなかった。
「おぉサーシャ。直々に手を下しに来たか」
ソウコウが楽しそうに声をかける。
炎に照らされていつもの目の笑っていない笑顔が浮かぶ。
「えぇ。我が信徒に王殺しを命令できるほど信用に足る者なんて居りませんので」
「配下が信用できねぇか。お前らしいな」
そういうとソウコウはサーシャに斬りかかった。
同時にサーシャの手前に渦巻いていた炎がムチのようにサトシとソウコウを襲う。
炎のムチは的確に二人の足元を炙ってくる。
足さばきを駆使して避けようと試みるが、炎はベッドやカーテンに燃え移り、動ける範囲が狭められる。
「しゃぁっ!」
ソウコウは中段水平の斬撃を繰り出す。
相手の足が生きている間は、垂直方向の斬撃は避けられる確率が高い。水平方向の斬撃であれば、一撃での致命傷は期待できないが、ダメージを与えられる確率は高い。
ソウコウの剣は実践の剣だ。
サーシャはソウコウの剣を防壁魔法で止めるとともに、足払いを仕掛ける。
恐らく肉体強化魔法で強化されているサーシャの蹴りはソウコウを派手に転倒させた。
「ちィッ!」
倒れたソウコウに追撃を与えようとサーシャが片足を高く上げたが、そのままやられるソウコウではない。
地を這いながらもサーシャの軸足を水平に斬りつけ、脛の辺りで切断した。
足を振りかぶるモーションの途中だったサーシャはその勢いで後ろに回転し後頭部から床に落ちた。
「っつぅ……」
炎のムチが掻き消える。
サトシはその隙を逃さず一気に間合いを詰め、サーシャの眉間めがけ剣を突く。
瞬間、サーシャと目が合う。
躊躇。
サトシはその視線に怯んでしまい、剣先は彼女の眉間を逸れた。
「この馬鹿っ!」
後悔したが間に合わなかった。
サーシャは早口で魔法を具現化させるための言葉を放つ。
「爆発魔法!」
三人の中央で爆発が起き、衝撃波をまともに受けてしまった。
前半身全域の骨が折れ、指や耳が引きちぎれるのが体内音で分かる。
目の前は暗転し何も見えない。眼球も損傷しているのだろうか。
◇
どれくらいの時間が経っただろう。
数時間? それとも数分か?
真っ暗で周囲を知覚できない。しかし確かな痛みがある。これまでの人生で経験したことの無いレベルの痛みだ。
えぐった傷の上を何度もヤスリがけされているような激痛が全身に走る。
ただ……痛みがある事で自分の命がまだ存在しているのだということが分かる。
――タケル、すまない。お前の体、壊してしまったよ。
徐々にだが感覚が戻ってきている。
サトシの全身を「何か」が舐めていて、舐められた箇所の痛みが和らぐ。気持ちいい。
「……ゥ……ァ……」
声を出してみる。喉のあたりに強い痛みを感じる。
自分の発した声が耳ではなく、体内から響くように聞こえるということは鼓膜が破れているんだろう。
サトシの体を舐める「それ」は、胸のあたりを丹念に舐めあげている。
ひどく喉が乾く。
上半身の痛みはある程度引いてきたように思うが、顔や下半身はいまだに感覚がおぼろげだ。
サトシの体を舐めていた「それ」は突然舐めることをやめた。
立ち上がったようだ。
気配で「それ」が人間であることが分かった。
少しの間をおいて、上半身や顔にぬるま湯がかけられる。
ぬるま湯を浴びた箇所から痛みが引いてゆく。
視界が急に戻る。
薄暗い部屋の中、誰かがサトシにまたがっている。薄暗いのと逆光でよく見えない。
背中に感じる柔らかな感触はおそらくベッドの上なのだろう。
――このぬるま湯は……
湯の出元を目で追う。
サトシにまたがるその者の股間から流れ出ている。
――尿だ。
サトシの体に尿がかけられている。
不思議なことに尿のかかった箇所の痛みが消え、傷がまたたく間に癒えてゆく。
喉や内蔵に強い痛みを感じたサトシは、その尿を飲むべく相手の足を引き倒し、股間に口をつけてすすった。
相手は女だった。が、今はそんなことはどうでもいい。体の痛みを取り除きたい。
尿を飲む。喉が、食道が、胃が、癒えてゆく。
「……! ……!」
相手が何か言っているようだが聞こえない。
サトシは夢中になって相手の尿を飲んだ。
尿が止まった。
目鼻口、上半身は回復し、状況がつかめてきた。
サトシの上にまたがっているのはレイミだ。
服は着ていない。
サトシが回復したのは、体液で全ての傷病を治癒するレイミの能力『|全快の液体(キュアリキッド)』のおかげだったようだ。
「レイミ……ありがとう……」
かすれた声しか今は出ないが礼を言う。
そして、起き上がるため上半身を起こそうするが、下半身に感覚がなく起き上がることはできなかった。
「…………」
レイミは何かを言っているが聞き取れない。
表情からレイミはサトシの耳が聞こえていないことを察したようだ。
サトシの耳にレイミが口をつけ、唾液を流し込む。
唾液が耳の中を通り、耳の痛みが引くとともに周囲の環境音が聞こえてくる。
どうやらこの部屋はサトシとレイミの二人きりのようだ。
「レイミ、下半身に力が入らなくて起き上がれないんだ」
「下半身ですか。すぐに治療します」
レイミはサトシの言葉を聞き入れ、すぐに足の指先から舐め始めた。
「ん……ん……」
頑張って舐めてくれいているようだが、どうやら唾液が枯れてきたらしい。
レイミの舌がヤスリのように感じて痛む。
「レイミ、唾液が枯れてきたみたいだ。それじゃぁ傷が癒えない」
普段ならもう少し気が使える自信があるが、今はそんな余裕もない。
レイミに対して少々酷かとも思ったが率直に言った。
「上の口が枯れたなら、他の体液でなんとかしてくれないか」
「他の体液……ですか」
サトシのイメージは血液だった。
しかしレイミは違うことを考えたようだ。
サトシの足にまたがると、腰をこすりつけてきた。
「ん……んん……どう……ですかァ? 濡れてますかァ……?」
レイミの股間から滲み出る潤いがサトシの足を癒やす。
「あぁ、痛みが引いてきた。そのまま頼む」
一生懸命にレイミはサトシの上で腰をくねらせる。
その刺激は彼女自身を興奮させるらしく、滲み出る体液はその量を増す。
「いいぞ、レイミ。心地いい」
「ふゥァ……うれ……しいですゥ……んぁん」
やがてサトシの足は感覚を取り戻した。
残るはサトシ自身の刀のみだが、さすがに「ここ」を彼女に世話させるのは申し訳なく感じた。
「ありがとう、これで動くことができるよ」
「はい……よかった……でもまだ……」
サトシの体の一部にまだ癒えていない部分があることは、サトシの体を舐めていた彼女が一番理解していた。
「ここが残っていますよ……」
そう言うとレイミはサトシの刀を体内に挿し込んだ。
「ん……くゥっ……痛ァ……」
「レイミ、君はもしかして初めてなのか?」
「……はい、でも……サトシさんを助けろとソウコウさんに言われたから……はァンっ」
彼女の体内でサトシの刀が急激に癒される。
癒えるとともに猛烈な快感が下半身を駆け巡る。
彼女の差込口は裂けながらも同時に癒えることを繰り返しているのだろう。
そのため、まるで無数のヒダにしごかれているようだ。
気がつくとサトシも腰を動かしていた。
「レイミ……すごく……すごく癒えるよ」
「あっ……あっ……ああぁン……うれしいですゥ……私の体液で癒やされてくださいィィ……」
絶頂!
サトシは腰を強く突き上げた。
「ひぎィッ!」
彼女も悲鳴を上げるとそのままぐったりとした。
サトシの体はほぼ完全に癒やされた。
「レイミ。ありがとう」
サトシはぐったりとしているレイミの額に口づけをした。
◇
裸のまま部屋から出るわけにもいかないので、シーツを裂いて体に羽織り部屋から出た。
部屋の前にはソウコウとメリルがいた。
「おう、王様。お目覚めか?」
「ソウコウ、あの後どうなった?」
「サーシャは逃げたぜ。んで、アンタは死にかけてたからレイミに回復させた」
「そうか……ありがとう」
「アンタは王様だ。そのアンタが俺に警護を命令したんだ。家臣として当然のことだろ?」
家臣。ソウコウの口から出てくるとは思えない言葉だった。
「ソウコウ。お前がそんなこと言うなんて意外だな。もっと権力とかに縛られないイメージだったが」
「まぁな。アンタ……いやタケルとアンタの頼みじゃなかったら断ってるだろうな」
「そうか。いずれにしてもありがとう」
「俺は……どれくらい寝ていた? あと、俺が寝ている間に何かあったか?」
経過した時間を知りたかった。
そしてその間に何かが動いたかも知りたかった。
「そうだな、七日間寝てたな。その間にエンディア、ロスワ、ギガンの三国が軍事同盟を締結して、ヌージィガへの戦争継続を宣言したぞ」
「軍事同盟……」
エンディア、ロスワ、ギガンの三国はヌージィガの戦力を持っても中々攻略できない強国だ。
その強国三国が軍事同盟を締結するとは。
つまりは大国であるヌージィガと、三国同盟の戦争が実質的にこの世界における人間同士の戦争の最終決戦になるということだ。
「敵が一つにまとまったのは良かったと考えるべきか」
「そうだな。あれこれ考えずに全部潰しゃ良いだけだからな」
「メリル」
「はィィ。な……なんでしょうか?」
「全軍に伝えろ。国内の兵は治安維持に努めよ。現在戦闘を保留している前線部隊は戦闘保留を解除、敵国に侵攻せよ。とな」
「は……はい! 了解でありますゥ!」
メリルはサトシの命令を受けてすぐに飛んでいった。
「ソウコウ」
「何だ?」
サトシは一瞬迷ったが、自分の考えを言うことにした。
彼のことはなんだか信用できる気がしたからだ。
「場合によっては俺も前線に立つ」
王であるサトシが前線に立つなんて酔狂なことだと言うことはわかっている。
でも、このまま王城にいてもいつかは殺されるだろう。
どうせ殺されるなら、どんな風に生きたいか。それを考えた時、サトシは自分の命令の現場に立会いたいと思った。
――どこまでいってもプレイングマネージャー(※指示だけでなく、現場で実務を行う管理職のこと)なのだな俺は。
その時が来れば内政は内務大臣あたりに任せておけば良いだろう。
謀反の可能性もあるが、その時はその時だ。
国くらいくれてやる。どうせ自分の世界じゃない。
「そうか。じゃぁその時はアンタが死なないように俺もついていくぜ」
「あぁ。頼む」
サトシは拳をソウコウに向けた。
ソウコウも拳を握り、サトシの拳にぶつけた。
さぁ戦争が始まる。
刺客は暁の四人の一人、サーシャだった。
何故仲間だったサーシャが自分の命を狙のか、サトシには理解できなかった。
「おぉサーシャ。直々に手を下しに来たか」
ソウコウが楽しそうに声をかける。
炎に照らされていつもの目の笑っていない笑顔が浮かぶ。
「えぇ。我が信徒に王殺しを命令できるほど信用に足る者なんて居りませんので」
「配下が信用できねぇか。お前らしいな」
そういうとソウコウはサーシャに斬りかかった。
同時にサーシャの手前に渦巻いていた炎がムチのようにサトシとソウコウを襲う。
炎のムチは的確に二人の足元を炙ってくる。
足さばきを駆使して避けようと試みるが、炎はベッドやカーテンに燃え移り、動ける範囲が狭められる。
「しゃぁっ!」
ソウコウは中段水平の斬撃を繰り出す。
相手の足が生きている間は、垂直方向の斬撃は避けられる確率が高い。水平方向の斬撃であれば、一撃での致命傷は期待できないが、ダメージを与えられる確率は高い。
ソウコウの剣は実践の剣だ。
サーシャはソウコウの剣を防壁魔法で止めるとともに、足払いを仕掛ける。
恐らく肉体強化魔法で強化されているサーシャの蹴りはソウコウを派手に転倒させた。
「ちィッ!」
倒れたソウコウに追撃を与えようとサーシャが片足を高く上げたが、そのままやられるソウコウではない。
地を這いながらもサーシャの軸足を水平に斬りつけ、脛の辺りで切断した。
足を振りかぶるモーションの途中だったサーシャはその勢いで後ろに回転し後頭部から床に落ちた。
「っつぅ……」
炎のムチが掻き消える。
サトシはその隙を逃さず一気に間合いを詰め、サーシャの眉間めがけ剣を突く。
瞬間、サーシャと目が合う。
躊躇。
サトシはその視線に怯んでしまい、剣先は彼女の眉間を逸れた。
「この馬鹿っ!」
後悔したが間に合わなかった。
サーシャは早口で魔法を具現化させるための言葉を放つ。
「爆発魔法!」
三人の中央で爆発が起き、衝撃波をまともに受けてしまった。
前半身全域の骨が折れ、指や耳が引きちぎれるのが体内音で分かる。
目の前は暗転し何も見えない。眼球も損傷しているのだろうか。
◇
どれくらいの時間が経っただろう。
数時間? それとも数分か?
真っ暗で周囲を知覚できない。しかし確かな痛みがある。これまでの人生で経験したことの無いレベルの痛みだ。
えぐった傷の上を何度もヤスリがけされているような激痛が全身に走る。
ただ……痛みがある事で自分の命がまだ存在しているのだということが分かる。
――タケル、すまない。お前の体、壊してしまったよ。
徐々にだが感覚が戻ってきている。
サトシの全身を「何か」が舐めていて、舐められた箇所の痛みが和らぐ。気持ちいい。
「……ゥ……ァ……」
声を出してみる。喉のあたりに強い痛みを感じる。
自分の発した声が耳ではなく、体内から響くように聞こえるということは鼓膜が破れているんだろう。
サトシの体を舐める「それ」は、胸のあたりを丹念に舐めあげている。
ひどく喉が乾く。
上半身の痛みはある程度引いてきたように思うが、顔や下半身はいまだに感覚がおぼろげだ。
サトシの体を舐めていた「それ」は突然舐めることをやめた。
立ち上がったようだ。
気配で「それ」が人間であることが分かった。
少しの間をおいて、上半身や顔にぬるま湯がかけられる。
ぬるま湯を浴びた箇所から痛みが引いてゆく。
視界が急に戻る。
薄暗い部屋の中、誰かがサトシにまたがっている。薄暗いのと逆光でよく見えない。
背中に感じる柔らかな感触はおそらくベッドの上なのだろう。
――このぬるま湯は……
湯の出元を目で追う。
サトシにまたがるその者の股間から流れ出ている。
――尿だ。
サトシの体に尿がかけられている。
不思議なことに尿のかかった箇所の痛みが消え、傷がまたたく間に癒えてゆく。
喉や内蔵に強い痛みを感じたサトシは、その尿を飲むべく相手の足を引き倒し、股間に口をつけてすすった。
相手は女だった。が、今はそんなことはどうでもいい。体の痛みを取り除きたい。
尿を飲む。喉が、食道が、胃が、癒えてゆく。
「……! ……!」
相手が何か言っているようだが聞こえない。
サトシは夢中になって相手の尿を飲んだ。
尿が止まった。
目鼻口、上半身は回復し、状況がつかめてきた。
サトシの上にまたがっているのはレイミだ。
服は着ていない。
サトシが回復したのは、体液で全ての傷病を治癒するレイミの能力『|全快の液体(キュアリキッド)』のおかげだったようだ。
「レイミ……ありがとう……」
かすれた声しか今は出ないが礼を言う。
そして、起き上がるため上半身を起こそうするが、下半身に感覚がなく起き上がることはできなかった。
「…………」
レイミは何かを言っているが聞き取れない。
表情からレイミはサトシの耳が聞こえていないことを察したようだ。
サトシの耳にレイミが口をつけ、唾液を流し込む。
唾液が耳の中を通り、耳の痛みが引くとともに周囲の環境音が聞こえてくる。
どうやらこの部屋はサトシとレイミの二人きりのようだ。
「レイミ、下半身に力が入らなくて起き上がれないんだ」
「下半身ですか。すぐに治療します」
レイミはサトシの言葉を聞き入れ、すぐに足の指先から舐め始めた。
「ん……ん……」
頑張って舐めてくれいているようだが、どうやら唾液が枯れてきたらしい。
レイミの舌がヤスリのように感じて痛む。
「レイミ、唾液が枯れてきたみたいだ。それじゃぁ傷が癒えない」
普段ならもう少し気が使える自信があるが、今はそんな余裕もない。
レイミに対して少々酷かとも思ったが率直に言った。
「上の口が枯れたなら、他の体液でなんとかしてくれないか」
「他の体液……ですか」
サトシのイメージは血液だった。
しかしレイミは違うことを考えたようだ。
サトシの足にまたがると、腰をこすりつけてきた。
「ん……んん……どう……ですかァ? 濡れてますかァ……?」
レイミの股間から滲み出る潤いがサトシの足を癒やす。
「あぁ、痛みが引いてきた。そのまま頼む」
一生懸命にレイミはサトシの上で腰をくねらせる。
その刺激は彼女自身を興奮させるらしく、滲み出る体液はその量を増す。
「いいぞ、レイミ。心地いい」
「ふゥァ……うれ……しいですゥ……んぁん」
やがてサトシの足は感覚を取り戻した。
残るはサトシ自身の刀のみだが、さすがに「ここ」を彼女に世話させるのは申し訳なく感じた。
「ありがとう、これで動くことができるよ」
「はい……よかった……でもまだ……」
サトシの体の一部にまだ癒えていない部分があることは、サトシの体を舐めていた彼女が一番理解していた。
「ここが残っていますよ……」
そう言うとレイミはサトシの刀を体内に挿し込んだ。
「ん……くゥっ……痛ァ……」
「レイミ、君はもしかして初めてなのか?」
「……はい、でも……サトシさんを助けろとソウコウさんに言われたから……はァンっ」
彼女の体内でサトシの刀が急激に癒される。
癒えるとともに猛烈な快感が下半身を駆け巡る。
彼女の差込口は裂けながらも同時に癒えることを繰り返しているのだろう。
そのため、まるで無数のヒダにしごかれているようだ。
気がつくとサトシも腰を動かしていた。
「レイミ……すごく……すごく癒えるよ」
「あっ……あっ……ああぁン……うれしいですゥ……私の体液で癒やされてくださいィィ……」
絶頂!
サトシは腰を強く突き上げた。
「ひぎィッ!」
彼女も悲鳴を上げるとそのままぐったりとした。
サトシの体はほぼ完全に癒やされた。
「レイミ。ありがとう」
サトシはぐったりとしているレイミの額に口づけをした。
◇
裸のまま部屋から出るわけにもいかないので、シーツを裂いて体に羽織り部屋から出た。
部屋の前にはソウコウとメリルがいた。
「おう、王様。お目覚めか?」
「ソウコウ、あの後どうなった?」
「サーシャは逃げたぜ。んで、アンタは死にかけてたからレイミに回復させた」
「そうか……ありがとう」
「アンタは王様だ。そのアンタが俺に警護を命令したんだ。家臣として当然のことだろ?」
家臣。ソウコウの口から出てくるとは思えない言葉だった。
「ソウコウ。お前がそんなこと言うなんて意外だな。もっと権力とかに縛られないイメージだったが」
「まぁな。アンタ……いやタケルとアンタの頼みじゃなかったら断ってるだろうな」
「そうか。いずれにしてもありがとう」
「俺は……どれくらい寝ていた? あと、俺が寝ている間に何かあったか?」
経過した時間を知りたかった。
そしてその間に何かが動いたかも知りたかった。
「そうだな、七日間寝てたな。その間にエンディア、ロスワ、ギガンの三国が軍事同盟を締結して、ヌージィガへの戦争継続を宣言したぞ」
「軍事同盟……」
エンディア、ロスワ、ギガンの三国はヌージィガの戦力を持っても中々攻略できない強国だ。
その強国三国が軍事同盟を締結するとは。
つまりは大国であるヌージィガと、三国同盟の戦争が実質的にこの世界における人間同士の戦争の最終決戦になるということだ。
「敵が一つにまとまったのは良かったと考えるべきか」
「そうだな。あれこれ考えずに全部潰しゃ良いだけだからな」
「メリル」
「はィィ。な……なんでしょうか?」
「全軍に伝えろ。国内の兵は治安維持に努めよ。現在戦闘を保留している前線部隊は戦闘保留を解除、敵国に侵攻せよ。とな」
「は……はい! 了解でありますゥ!」
メリルはサトシの命令を受けてすぐに飛んでいった。
「ソウコウ」
「何だ?」
サトシは一瞬迷ったが、自分の考えを言うことにした。
彼のことはなんだか信用できる気がしたからだ。
「場合によっては俺も前線に立つ」
王であるサトシが前線に立つなんて酔狂なことだと言うことはわかっている。
でも、このまま王城にいてもいつかは殺されるだろう。
どうせ殺されるなら、どんな風に生きたいか。それを考えた時、サトシは自分の命令の現場に立会いたいと思った。
――どこまでいってもプレイングマネージャー(※指示だけでなく、現場で実務を行う管理職のこと)なのだな俺は。
その時が来れば内政は内務大臣あたりに任せておけば良いだろう。
謀反の可能性もあるが、その時はその時だ。
国くらいくれてやる。どうせ自分の世界じゃない。
「そうか。じゃぁその時はアンタが死なないように俺もついていくぜ」
「あぁ。頼む」
サトシは拳をソウコウに向けた。
ソウコウも拳を握り、サトシの拳にぶつけた。
さぁ戦争が始まる。
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