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本編
最終話 自由はこれでお預けってこった。
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人類と神魔の戦いの少し後。
草原でソウコウとアルデは向かい合っている。
「アルデ、行くのか」
「うむ。もうこの世界で見たいものも見終わったでな」
「そうか」
アルデがマシンに乗り込むと、マシンの前方空間にヒビが入る。
「ソウコウ」
「ん?」
「妾は嬉しかったぞ、再びお主らと会えて」
「どういうことだ?」
ソウコウの問に、アルデは寂しそうに微笑んだ。
「さらばじゃ、我が同胞よ」
ひび割れた空間の裂け目にマシンは飛び込む。
やがてヒビは塞がった。
◇
神魔戦におけるヌージィガ王戦死を受けて、前王カイマは再びヌージィガ王の座を取り戻した。
レイミもまた后としての座に戻った。
ソウコウは将軍職に任命されたが、それを固辞し、放浪の旅にでた。
紅月隊はキリークが総長となった。
最後の神魔であるスミレは、人類全体の豊穣を願う生き神として、ケマの地で祈りの日々を過ごす。
世界は新しい秩序の元で動き始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一年後。
時刻は午前六時の少し前だ。
男は目を覚ます。
胸の上には猫が眠っていた。
猫に気を使いながら、そっと布団から出る。
廊下の先にあるバスルームからシャワーの音が、キッチンからはコーヒーの匂いがする。
バスルームに向かい、朝のシャワーを浴びるユカと口づけを交わす。
湯に濡れた唇は柔らかく濡れていて温かい。
髭を剃り、無香料の整髪剤で髪をバックにセットする。
ベランダでタバコを一本ふかす。
ベランダから戻ると、コーヒーがマグカップに注がれている。
◇
グローバルシステムズ株式会社のマネージャー、片山サトシは今日も出社する。
「おー、片山お疲れー」
赤ら顔の唐澤がソファから起き上がる。どうやら昨日も徹夜だったようだ。
「で、どうよ?」
男は言葉では答えず、代わりに唇の端を持ち上げるような笑顔で返事をした。
「ユカッペは今週から産休だっけ?」
「あぁ、そうだよ」
「片山ァー、子供はいいぞぉ。面倒くせえけど、いいもんだ。俺はオヤジ界の先輩だから、なんでも聞いてくれよ」
唐澤は胸を張る。
◇
定時後。
男は自宅への道を歩く。
手には赤ん坊用の玩具。
同じ玩具が二つづつ。
自由はしばらくお預けだ。
草原でソウコウとアルデは向かい合っている。
「アルデ、行くのか」
「うむ。もうこの世界で見たいものも見終わったでな」
「そうか」
アルデがマシンに乗り込むと、マシンの前方空間にヒビが入る。
「ソウコウ」
「ん?」
「妾は嬉しかったぞ、再びお主らと会えて」
「どういうことだ?」
ソウコウの問に、アルデは寂しそうに微笑んだ。
「さらばじゃ、我が同胞よ」
ひび割れた空間の裂け目にマシンは飛び込む。
やがてヒビは塞がった。
◇
神魔戦におけるヌージィガ王戦死を受けて、前王カイマは再びヌージィガ王の座を取り戻した。
レイミもまた后としての座に戻った。
ソウコウは将軍職に任命されたが、それを固辞し、放浪の旅にでた。
紅月隊はキリークが総長となった。
最後の神魔であるスミレは、人類全体の豊穣を願う生き神として、ケマの地で祈りの日々を過ごす。
世界は新しい秩序の元で動き始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一年後。
時刻は午前六時の少し前だ。
男は目を覚ます。
胸の上には猫が眠っていた。
猫に気を使いながら、そっと布団から出る。
廊下の先にあるバスルームからシャワーの音が、キッチンからはコーヒーの匂いがする。
バスルームに向かい、朝のシャワーを浴びるユカと口づけを交わす。
湯に濡れた唇は柔らかく濡れていて温かい。
髭を剃り、無香料の整髪剤で髪をバックにセットする。
ベランダでタバコを一本ふかす。
ベランダから戻ると、コーヒーがマグカップに注がれている。
◇
グローバルシステムズ株式会社のマネージャー、片山サトシは今日も出社する。
「おー、片山お疲れー」
赤ら顔の唐澤がソファから起き上がる。どうやら昨日も徹夜だったようだ。
「で、どうよ?」
男は言葉では答えず、代わりに唇の端を持ち上げるような笑顔で返事をした。
「ユカッペは今週から産休だっけ?」
「あぁ、そうだよ」
「片山ァー、子供はいいぞぉ。面倒くせえけど、いいもんだ。俺はオヤジ界の先輩だから、なんでも聞いてくれよ」
唐澤は胸を張る。
◇
定時後。
男は自宅への道を歩く。
手には赤ん坊用の玩具。
同じ玩具が二つづつ。
自由はしばらくお預けだ。
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