SE魔剣士、二つの世界で稼働中!

灰猫ベル

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本編

最終話 自由はこれでお預けってこった。

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 人類と神魔の戦いの少し後。
 草原でソウコウとアルデは向かい合っている。

「アルデ、行くのか」

「うむ。もうで見たいものも見終わったでな」

「そうか」

 アルデがマシンに乗り込むと、マシンの前方空間にヒビが入る。

「ソウコウ」

「ん?」

わらわは嬉しかったぞ、再びお主らと会えて」

「どういうことだ?」

 ソウコウの問に、アルデは寂しそうに微笑んだ。

「さらばじゃ、我が同胞よ」

 ひび割れた空間の裂け目にマシンは飛び込む。
 やがてヒビは塞がった。




 
 神魔戦におけるヌージィガ王戦死を受けて、前王カイマは再びヌージィガ王の座を取り戻した。
 レイミもまた后としての座に戻った。

 ソウコウは将軍職に任命されたが、それを固辞し、放浪の旅にでた。

 紅月隊はキリークが総長となった。

 最後の神魔であるスミレは、人類全体の豊穣を願う生き神として、ケマの地で祈りの日々を過ごす。

 世界は新しい秩序の元で動き始めた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一年後。


 時刻は午前六時の少し前だ。
 男は目を覚ます。
 胸の上には猫が眠っていた。
 猫に気を使いながら、そっと布団から出る。

 廊下の先にあるバスルームからシャワーの音が、キッチンからはコーヒーの匂いがする。
 バスルームに向かい、朝のシャワーを浴びるユカと口づけを交わす。
 湯に濡れた唇は柔らかく濡れていて温かい。

 髭を剃り、無香料の整髪剤で髪をバックにセットする。
 ベランダでタバコを一本ふかす。

 ベランダから戻ると、コーヒーがマグカップに注がれている。





 グローバルシステムズ株式会社のマネージャー、片山サトシは今日も出社する。

「おー、片山お疲れー」

 赤ら顔の唐澤がソファから起き上がる。どうやら昨日も徹夜だったようだ。

「で、どうよ?」

 男は言葉では答えず、代わりに唇の端を持ち上げるような笑顔で返事をした。

「ユカッペは今週から産休だっけ?」

「あぁ、そうだよ」

「片山ァー、子供はいいぞぉ。面倒くせえけど、いいもんだ。俺はオヤジ界の先輩だから、なんでも聞いてくれよ」

 唐澤は胸を張る。





 定時後。
 男は自宅への道を歩く。
 手には赤ん坊用の玩具。
 同じ玩具が二つづつ。

 自由はしばらくお預けだ。
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