ネット民、異世界を行く

灰猫ベル

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第二戦 とにかく黒いやつら

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 第二戦はベリアルと大鎌のマァルの戦いだ。


 黒い装束の二人が睨み合う。

「この前の続きといこうか。
 今度は逃げんなよ」

 ベリアルの爪が延び、背中からは真っ黒な翼が生える。
 

「フン、再び戦えるとはな。
 楽しませてもらうとしよう」

 マァルは巨大な二本の鎌を真横に構えた。


「いくぞコラァ!」
 先手を打ったのはベリアルだ。

 がら空きの敵の懐に飛び込み、まるで猛獣が噛みつくように上下に斬りつける。

 マァルはそれをバックステップで避ける。
 と同時に両側からベリアルの首と胴体を狙う。


 両側からの攻撃をベリアルはそれぞれの腕でいなすと、その勢いで敵の懐深くに入り込んだ。

「うらぁぁぁ!」

 ベリアルが蹴りあげる。マァルの鳩尾に膝が直撃する。

「ヌぉッ」

 うずくまる勢いを使いマァルは頭突きをベリアルの顔面に入れる。
 堪らず距離をとる両者。

「面白ぇじゃねぇか手前ぇ」

「我はこれだけが生き甲斐なのでな」

「そうかい......俺もだぜぇっ! 食らえっ闇の矢ダークアロー百連発!」

 マァルを取り囲むように空間から黒い矢が現れ、一斉に突き刺さる。

「やったか......?」

 否、マァルは神速で急所への攻撃を叩き落としていた。

「フン、今のは危なかったわ
 次は我が番だな。行くぞ!」

 そう言うとマァルは大鎌をベリアルに投げつけた。
 ベリアルは飛び道具を避ける。


 が、大鎌はカーブを描き再び魔王を襲う。

「邪魔くせぇ! 闇の盾......」

「よそ見をするな、魔王」

 ベリアルが魔法を発動するより早くマァルがベリアルに喉輪を当てる。
 足の止まったベリアルの背に二本の大鎌が刺さる。
 すかさずマァルは大鎌に手をかけ、魔王を両断した。


 三枚下ろしになりその場に倒れるベリアル。

「魔王を舐めるなよぉっ!」

 体の部品が無数の黒い粒となりマァルに襲いかかる。

 黒い煙のような姿になったベリアルはマァルの肉を削いでゆく。
 全身から血を吹き出すマァル。

 しかし、敵は冷静だ。

「同じ手が何度も通用すると思ったか」

 そう言うとマァルは鎌をプロペラのように構え猛スピードで回転した。

 黒い粒(一つひとつが小さなベリアルだ)が次々に切り落とされ、地面に落ちる。

 地面に溜まった黒い屑が集まり再びベリアルの形をなす。

「んん?この程度か?魔王よ。
 案外つまらんな。フハハハハ」


 ブチン という音がここまで聞こえてくるようだった。
 煽り耐性のない魔王は完全にキレたようだ。


「なんだとァ!見せてやらぁ!
 魔王の力ってヤツをよ!

 後悔すんなよぉ......
 俺も制御しきれねぇからな」


 ベリアルは何やらぶつぶつ呟いている。


「やべ、ベリアルがキレた! サーシャを起こせ!」
 ソウコウが焦っている。俺はサーシャを揺り起こす。

「......いかがなさいましたか?」

「サーシャ!!防壁魔法だ!」

「承知しました、光防壁魔法シャインウォール

 俺達の周囲に光のドームが形成されたのと、ベリアルが魔法を詠唱したのはほほ同時だ。


「......いくぞコラァ!
 地獄の永久凍土極大氷結魔法コキュートス
 そんで更に魔嵐極大暴風魔法ギガトルネード!!
 全部食らって塵となれぃぁァァァ!!!」


 ベリアルの周囲に巨大な吹雪の竜巻が現れる。
 竜巻は瞬く間に勢力を広げ辺り一体を包み込む。
 草も岩も凍りつき、くだけ散る。

 サーシャの防壁魔法にも激しくヒビが入る。



 だが、マァルはその中に立っている。

「これを待っておったわ! 不変魔力吸引ダイソン!」

 マァルは大鎌を回転させつむじ風を生み出し、その中に嵐を吸い込んでゆく。


「くそっ!?マジかよォ!? なめるなぁァァァァっ!!」

 ベリアルはありったけの魔力を振り絞る。
 ベリアルの体にヒビが入りはじめた。

「ベリアルっ!?」

「そろそろ頃合いだな!
 魔王よこれで終わりだ!」

 マァルはつむじ風を大きく曲げ、ベリアルに直撃させた。


「ぬぁぁぁぁぁ!?」


 ベリアルは砂のように崩れ去った。


「フン、我の勝ちだな」





 ベリアルがいた位置に黒い煙のようなものが漂っている。

「これは......?」

「あー、これベリアル」

「は?」

「魔王は永遠の命を持ってるんだよ。で、これがベリアルの本体。このまま放っておくとしばらくしたらまた甦るんだ」

「......まさに化け物だな。あんた、そんなもんよく退治できたな」

「魔王は死なないから、封印するしかないんだよ。まぁ、一旦封印してしまえば、依代ごと破壊することで存在抹消できるけどな。先の戦いでは封印したところで、魔王の命を保証する代わりに休戦協定結んだんだよ。そうしないとあいつら最後の一人まで戦うつもりだったからさ」


 第二戦目は俺達の敗けだ。
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