公爵家次男の巻き込まれ人生

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第二章 変動

38話 心境

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消化できない想いを抱えたまま、シアリィルドは自室へと戻ってきた。
整えられたベッドに座ると、そのまま寝転がる。情報がありすぎて、困惑しているというのが本当のところだ。
王都へ召集されるのはまだいい。ジークランスの護衛から外れることは気になるとはいえ、現段階で任務を全うできていないのだから、護衛から外されても文句は言えない。
それはいいのだが・・・。

「・・・俺に兄上以外の兄弟がいたとは、な」

ここにきて直ぐ、クレーネはシアリィルドに言った言葉。あれは、それまでに二人息子を亡くしていたからだったらしい。
クレーネの体質については勿論知っていた。己の魔力の高さや特異性が、クレーネ譲りだということも。ルトギアスの口振りからすると、それは全てディルケイドの血筋ということらしい。
ディルケイド公国は、歴史は魔王が死した後から始まっている。ヴェルダン王国よりも浅い歴史だが、五百年も続けば、十分に歴史があるといえる。元々、公家は魔法に長けた者が多い。だからシアリィルドが魔法師と同等の力量を持つのは、母方の血筋のためだった。何でもなく受け止めていたが、生まれた子どもが死んでしまうほどの異常性を持っていることまでは知らなかった。生まれてからシアリィルド自身は、特に魔力に苛まれたような覚えはない。過去には暴走するなどもあったが、今では自在に扱うことができる。身に余る魔力だとは考えていなかった。
いずれにしても、過ぎたことだ。シアリィルドが気にすることではないのかもしれない。

「はぁ・・・明日、か」

気持ちを切り替えるように、身体を起こす。荷物は大して増えている訳ではないので、オリヴァーらに任せておけば良い。
ふと、机の上に積み上げられた本が視界に入った。ここにきてから読んだ本の数々だ。暇潰しの一つではあったが、それなりの数を読み込んだ。今、読んでいる途中のものを手に取る。読み終えたのは大体半分程度。本の間に挟まれた栞が示している。

「・・・栞、か」

使用している栞は、ルリアから贈られたもの。押し花の栞など珍しくはないし、シアリィルド自身も別のものを持っているが、この栞を贈られてからはずっとこれを使っていた。荷物の中に紛れさせるよりも、シアリィルド自身が持っていたいと思うほどには愛着ができている。
栞を手に取ると、懐に仕舞った。
王都に戻るということは、ルリアにも会うことが出来るだろう。もし、会えたならばシアリィルドは伝えなければならない。このお礼とともに。




翌日、シアリィルドが王都へ出発する。
予想に反して、クレーネは終始笑顔で見送ってくれた。今回はルトギアスと一緒ではない。王都には行くらしいが、都合をつけてからの出発になるそうだ。
公爵家の馬車に乗り込むのは、前回と違いシアリィルド一人。オリヴァーらは、後方の別の馬車に乗る。

ルトギアス、クレーネ、レスティらに見送られて、シアリィルドは王都には向けて出発した。

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