34 / 44
34.幕間3 そのころ紅玉は
しおりを挟む
『私は、充分紅玉様に守られ、大切にして頂いております。私の望みは紅玉様の幸せです。だから、私のことは気にしなくとも良いのです』
「僕の幸せのために戦うんだ。スミレもちぃ兄さまも守るんだ。そして、ちぃ兄さまを傷つけた報いも必ず受けてもらう」
『…私はどこまでも紅玉様にお供いたします』
「んふ。ありがと!スミレは僕のものなんだからね!誰も傷つけちゃダメなの!」
『…ありがとうございます』
あの、忌まわしき夜の後にスミレの左腕と声帯は王妃によって奪われてしまった。罪状は″職務怠慢による不敬罪″だそうだ。紅玉へのお仕置きなのだから、罪状なぞなんでもよくこじつけだ。
紅玉と孔雀の交流を許してしまったことによる職務怠慢、王妃の言いつけを破ったのだから不敬罪。不敬罪だと処刑に値するが、それはしなかった。紅玉への罰である。
スミレの腕と失った声を目の当たりにするたび、罪悪感を持つように。
だからこそスミレは側に置くことを許されている。
母に呼ばれ初めて入った部屋にスミレが繋がれていた。数日前から姿が見えなくなっていたスミレを心配し、側使に探させていたのだが、スミレは王妃の手の中にいた。
そこは拷問部屋で、壁に取り付けられた鎖で首と両手足を拘束されたスミレはぐったりとしていた。
泣いて母にスミレの解放を望むと、このまま五体満足で放免にするわけにはいかないから、どこかを選べと。
選ばねば首を落とすと。
泣きながら選んだのは左腕。
せめて利き腕は残さなければと思いそうしたが、母は腕だけではなく、余計なお喋りが出来ないようにと喉を薬剤で潰してしまった。
その時、紅玉の中にほんの少しだけ残っていた母への思慕は跡形もなく消え去り、心に大きな傷を残した。
紅玉は自分を責めた。責めて責めて責め抜いて…一度壊れてしまった。
壊れてしまった紅玉の正気を取り戻してくれたのは長兄とスミレだった。
2人は心の奥底に閉じこもってしまい、人形のようになった紅玉の精神へアクセスして呼び戻してくれたのだ。
長兄が魔力にて道を作り、スミレがダイブした。下手したらスミレは紅玉諸共戻って来れない危ない賭けであったが、無事に戻って来れた。
心の部屋で聞いたスミレの声が、スミレの声を聞いた最後だった。
今は魔道具を使い、擬似声帯にて機械音のような声でスミレは言葉を発している。
あんなにお喋りだったスミレは必要最低限の事しか話さなくなってしまった。
スミレの声を聞くことで紅玉が自身を責めると思っているからだ。
こんな時にですら己よりも紅玉を一番に考えて尽くしてくれるスミレは紅玉にとって宝であり家族である。
紅玉を支えて慈しんでくれるのは長兄とスミレ、そして孔雀とその母である。
スミレの拷問を目の当たりにしたあの日、孔雀を殺されたくなかったら縁を切れと暗に仄めかされた。あの夜のようにまた目の前で毒殺されたくないだろう?と。
だから紅玉は力が欲しい。
守られている末っ子ではダメなのだ。
この残虐非道な行いを父王が知らぬわけがない。
証拠はなくとも、何かしらで報告を受けているはずなのだ。
そもそも己の子供である孔雀すらまともに守れない親である。だから、紅玉は父も憎んでいる。
奴らを玉座から引き摺り下ろして権力を取り上げるためにも兄に王太子になってもらい、なにかしらの瑕疵で2人には表舞台から去ってもらうのだ。
「ま、別に死んじゃってもいいけどね」
そう呟くと、スミレは背中を宥めるように優しく撫でてくれた。
「僕の幸せのために戦うんだ。スミレもちぃ兄さまも守るんだ。そして、ちぃ兄さまを傷つけた報いも必ず受けてもらう」
『…私はどこまでも紅玉様にお供いたします』
「んふ。ありがと!スミレは僕のものなんだからね!誰も傷つけちゃダメなの!」
『…ありがとうございます』
あの、忌まわしき夜の後にスミレの左腕と声帯は王妃によって奪われてしまった。罪状は″職務怠慢による不敬罪″だそうだ。紅玉へのお仕置きなのだから、罪状なぞなんでもよくこじつけだ。
紅玉と孔雀の交流を許してしまったことによる職務怠慢、王妃の言いつけを破ったのだから不敬罪。不敬罪だと処刑に値するが、それはしなかった。紅玉への罰である。
スミレの腕と失った声を目の当たりにするたび、罪悪感を持つように。
だからこそスミレは側に置くことを許されている。
母に呼ばれ初めて入った部屋にスミレが繋がれていた。数日前から姿が見えなくなっていたスミレを心配し、側使に探させていたのだが、スミレは王妃の手の中にいた。
そこは拷問部屋で、壁に取り付けられた鎖で首と両手足を拘束されたスミレはぐったりとしていた。
泣いて母にスミレの解放を望むと、このまま五体満足で放免にするわけにはいかないから、どこかを選べと。
選ばねば首を落とすと。
泣きながら選んだのは左腕。
せめて利き腕は残さなければと思いそうしたが、母は腕だけではなく、余計なお喋りが出来ないようにと喉を薬剤で潰してしまった。
その時、紅玉の中にほんの少しだけ残っていた母への思慕は跡形もなく消え去り、心に大きな傷を残した。
紅玉は自分を責めた。責めて責めて責め抜いて…一度壊れてしまった。
壊れてしまった紅玉の正気を取り戻してくれたのは長兄とスミレだった。
2人は心の奥底に閉じこもってしまい、人形のようになった紅玉の精神へアクセスして呼び戻してくれたのだ。
長兄が魔力にて道を作り、スミレがダイブした。下手したらスミレは紅玉諸共戻って来れない危ない賭けであったが、無事に戻って来れた。
心の部屋で聞いたスミレの声が、スミレの声を聞いた最後だった。
今は魔道具を使い、擬似声帯にて機械音のような声でスミレは言葉を発している。
あんなにお喋りだったスミレは必要最低限の事しか話さなくなってしまった。
スミレの声を聞くことで紅玉が自身を責めると思っているからだ。
こんな時にですら己よりも紅玉を一番に考えて尽くしてくれるスミレは紅玉にとって宝であり家族である。
紅玉を支えて慈しんでくれるのは長兄とスミレ、そして孔雀とその母である。
スミレの拷問を目の当たりにしたあの日、孔雀を殺されたくなかったら縁を切れと暗に仄めかされた。あの夜のようにまた目の前で毒殺されたくないだろう?と。
だから紅玉は力が欲しい。
守られている末っ子ではダメなのだ。
この残虐非道な行いを父王が知らぬわけがない。
証拠はなくとも、何かしらで報告を受けているはずなのだ。
そもそも己の子供である孔雀すらまともに守れない親である。だから、紅玉は父も憎んでいる。
奴らを玉座から引き摺り下ろして権力を取り上げるためにも兄に王太子になってもらい、なにかしらの瑕疵で2人には表舞台から去ってもらうのだ。
「ま、別に死んじゃってもいいけどね」
そう呟くと、スミレは背中を宥めるように優しく撫でてくれた。
35
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる