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32.幕間 そのころ紅玉は
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「あぁぁぁぁぁ~!!ちぃ兄様っっ!!!相変わらず素敵だった…」
部屋に戻った紅玉は広いベッドの上で抱き枕(孔雀人形)を抱き締めてゴロゴロと転がった。
ゴロンゴロンと転がり、ベッドの端で落ちそうになってやっと止まり、昼間邂逅したシーンを思い出して「はぁ…」とうっとりとしたため息をこぼす。
ブラコンな紅玉は今や立派な変態ブラコンと化していた。長兄の琥珀も敬愛しているが、孔雀はまた別枠だ。敬愛はしているがそれよりも萌え枠なのだ。推しなのだ。
孔雀となら禁断の愛に突き進んでもいいとか思うほどにとち狂っているのだ。
だからこそ、孔雀に昔のように相対出来ないことが辛かった。泣いちゃうほどに。
「ちい兄さまぁ~…ぐすっ」
この部屋なら、思いっきり思いの丈を素直に発散出来る。王城を出て王妃の目が届きにくい学生寮に入室したのだ。
とはいえ、確実に監視は付いているから学園内では孔雀に甘える事ができない。
「ちい兄さまに抱きつきたい!ぎゅうされたい!匂い嗅ぎたいっっ!!ほっぺにもちゅうしたいっっ!!」
孔雀抱き枕をぎゅうぎゅうに抱きしめて足をバタバタさせてひとしきり暴れたあと、大人しくなって目を閉じ昼間に見た兄を思い出す。
ボロを出さない為にも本当はあまり接触をしないつもりだったのだが、紅玉にとって危険信号が点滅しまくりの、やたらと美形のクラスメイトと楽しそうに話している孔雀を見ていたら我慢出来なくなって思わず話しかけてしまった。
特に目をかけてもいないクラスメイトがぎゃーぎゃーと横で騒がしかったが、久しぶりに見たちょっぴり大人な雰囲気の孔雀を目に焼き付けるのに忙しくて嗜める事ができなかった。
あの日の後遺症で髪の毛の色が抜け、片方の瞳の色も変わってしまっていたが、相変わらず美しくて凛とした兄の姿(紅玉の目にはそう見える)に萌えて震えてしまった。
こちらを見て優しく細めてくれた眼差し。
あの日以来、とても不義理をしているのにも関わらず兄は優しくて、それ以上に己への愛情を感じた。
まだまだ幼いと思っているのか、こちらが王族然とした態度をとってレティシア達と接しているのを、何故か誇らしげにこちらを見ているのだ。
兄の思考は手に取るように分かる。
あの顔は「紅玉素晴らしい!立派に成長したなぁ!」と感慨深くも感動が弾けそうになっている表情だ。
その気持ちがくすぐったくも、自慢に思ってくれているのが誇らしくて嬉しい。
飛び級をしたのだって、孔雀に会いたくて会いたくて会いたくて震えてしまったからだ。
同学年であれば合法的に(別に違法でもないが)見れるのである!言葉を交わせるのである!
あの夜…自分たちが離れるキッカケになった忌まわしき出来事。
兄弟の交流がバレないようにこっそりとしていたつもりだったが、王妃には筒抜けになっていたようだった。
王妃は孔雀が継承権を放棄した今でも蛇蝎のごとく嫌っている。
いや、殺したいほどに憎んでいる。
まだ母が恋しくて仕方がなかった幼き頃、見向きもされないどころか捨て置かれ、瑕疵があればいつでも切り捨てようとしているとつゆとも知らず、いつかは抱きしめてもらえると期待して毎日を過ごしていた。
かすかに記憶に残る抱きしめてもらった思い出を宝物のようにしていた。
抱きしめてもらえたのもまだ己に利用価値があると考えていたからなのだと成長するにあたり知ることとなった。
あの人は自分以外を愛する事ができない。
血の繋がりや自分が産んだ子供にすら愛着を持つ事ができない人間だった。
唯一の味方は長兄だけ。
だが、その兄も王太子になるべく日々忙しくしていた。たまに来てくれると時間の許す限り遊んでくれたが、1日も一緒にいれたことはなかった。
兄が帰ったあとのガランとした宮は本当に寂しくて、従者のスミレを散々困らせたものだった。
そんな時、次兄である孔雀と出会ったのだ。
孔雀は初めから優しかった。
いま思い返すと、最初は困っていたのだと分かるが、そのうち愛情たっぷり注いでくれるようになった。
孔雀の母であるジャネットもそうだ。
2人の愛情をたっぷりもらったおかけで今の自分があると自負している。
実はスミレ以外には誰にも言っていない秘密だが、初恋は孔雀である。幼き頃は分かっていなかったが、今なら分かる。気づけば兄に恋をしていた。
だが、この恋は実ることはないと分かって散々泣いてスミレを困らせた。
兄との恋を成就することが出来ない代わりに、一生付きまとってやると心に決めている。
そして、同じくブラコンである孔雀も困ったなと言いながら絶対に許してくれる自信しかない。
溺愛されている自信しかない。
…だからこそ、あの2人は要注意なのだ。
レティシアは言わずもがな、そのお付騎士に対しても紅玉の本能が「アレ、ダメ絶対!」と警告しまくるのだ。
いや、兄の結婚を邪魔するつもりはちょっとしかない。自分の宝を掻っ攫うのだから、邪魔くらいは許して欲しいし、それで諦めるような人に最愛の兄を渡すつもりもない。
もちろん、長兄も右に倣えである。
部屋に戻った紅玉は広いベッドの上で抱き枕(孔雀人形)を抱き締めてゴロゴロと転がった。
ゴロンゴロンと転がり、ベッドの端で落ちそうになってやっと止まり、昼間邂逅したシーンを思い出して「はぁ…」とうっとりとしたため息をこぼす。
ブラコンな紅玉は今や立派な変態ブラコンと化していた。長兄の琥珀も敬愛しているが、孔雀はまた別枠だ。敬愛はしているがそれよりも萌え枠なのだ。推しなのだ。
孔雀となら禁断の愛に突き進んでもいいとか思うほどにとち狂っているのだ。
だからこそ、孔雀に昔のように相対出来ないことが辛かった。泣いちゃうほどに。
「ちい兄さまぁ~…ぐすっ」
この部屋なら、思いっきり思いの丈を素直に発散出来る。王城を出て王妃の目が届きにくい学生寮に入室したのだ。
とはいえ、確実に監視は付いているから学園内では孔雀に甘える事ができない。
「ちい兄さまに抱きつきたい!ぎゅうされたい!匂い嗅ぎたいっっ!!ほっぺにもちゅうしたいっっ!!」
孔雀抱き枕をぎゅうぎゅうに抱きしめて足をバタバタさせてひとしきり暴れたあと、大人しくなって目を閉じ昼間に見た兄を思い出す。
ボロを出さない為にも本当はあまり接触をしないつもりだったのだが、紅玉にとって危険信号が点滅しまくりの、やたらと美形のクラスメイトと楽しそうに話している孔雀を見ていたら我慢出来なくなって思わず話しかけてしまった。
特に目をかけてもいないクラスメイトがぎゃーぎゃーと横で騒がしかったが、久しぶりに見たちょっぴり大人な雰囲気の孔雀を目に焼き付けるのに忙しくて嗜める事ができなかった。
あの日の後遺症で髪の毛の色が抜け、片方の瞳の色も変わってしまっていたが、相変わらず美しくて凛とした兄の姿(紅玉の目にはそう見える)に萌えて震えてしまった。
こちらを見て優しく細めてくれた眼差し。
あの日以来、とても不義理をしているのにも関わらず兄は優しくて、それ以上に己への愛情を感じた。
まだまだ幼いと思っているのか、こちらが王族然とした態度をとってレティシア達と接しているのを、何故か誇らしげにこちらを見ているのだ。
兄の思考は手に取るように分かる。
あの顔は「紅玉素晴らしい!立派に成長したなぁ!」と感慨深くも感動が弾けそうになっている表情だ。
その気持ちがくすぐったくも、自慢に思ってくれているのが誇らしくて嬉しい。
飛び級をしたのだって、孔雀に会いたくて会いたくて会いたくて震えてしまったからだ。
同学年であれば合法的に(別に違法でもないが)見れるのである!言葉を交わせるのである!
あの夜…自分たちが離れるキッカケになった忌まわしき出来事。
兄弟の交流がバレないようにこっそりとしていたつもりだったが、王妃には筒抜けになっていたようだった。
王妃は孔雀が継承権を放棄した今でも蛇蝎のごとく嫌っている。
いや、殺したいほどに憎んでいる。
まだ母が恋しくて仕方がなかった幼き頃、見向きもされないどころか捨て置かれ、瑕疵があればいつでも切り捨てようとしているとつゆとも知らず、いつかは抱きしめてもらえると期待して毎日を過ごしていた。
かすかに記憶に残る抱きしめてもらった思い出を宝物のようにしていた。
抱きしめてもらえたのもまだ己に利用価値があると考えていたからなのだと成長するにあたり知ることとなった。
あの人は自分以外を愛する事ができない。
血の繋がりや自分が産んだ子供にすら愛着を持つ事ができない人間だった。
唯一の味方は長兄だけ。
だが、その兄も王太子になるべく日々忙しくしていた。たまに来てくれると時間の許す限り遊んでくれたが、1日も一緒にいれたことはなかった。
兄が帰ったあとのガランとした宮は本当に寂しくて、従者のスミレを散々困らせたものだった。
そんな時、次兄である孔雀と出会ったのだ。
孔雀は初めから優しかった。
いま思い返すと、最初は困っていたのだと分かるが、そのうち愛情たっぷり注いでくれるようになった。
孔雀の母であるジャネットもそうだ。
2人の愛情をたっぷりもらったおかけで今の自分があると自負している。
実はスミレ以外には誰にも言っていない秘密だが、初恋は孔雀である。幼き頃は分かっていなかったが、今なら分かる。気づけば兄に恋をしていた。
だが、この恋は実ることはないと分かって散々泣いてスミレを困らせた。
兄との恋を成就することが出来ない代わりに、一生付きまとってやると心に決めている。
そして、同じくブラコンである孔雀も困ったなと言いながら絶対に許してくれる自信しかない。
溺愛されている自信しかない。
…だからこそ、あの2人は要注意なのだ。
レティシアは言わずもがな、そのお付騎士に対しても紅玉の本能が「アレ、ダメ絶対!」と警告しまくるのだ。
いや、兄の結婚を邪魔するつもりはちょっとしかない。自分の宝を掻っ攫うのだから、邪魔くらいは許して欲しいし、それで諦めるような人に最愛の兄を渡すつもりもない。
もちろん、長兄も右に倣えである。
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