28 / 44
28.再会
しおりを挟む
「母さま、今日から学園に入学です。
ちょっとドキドキするけど、頑張ってきますね!帰ってきたたーっくさん報告しますからね!セフィは昨日からお仕事で帰ってきてないんですよ。
1人息子の門出だってのに!仕事人間は相変わらずです。まったく、もう若くないんだから無理しちゃダメだっていっつも言ってるのに…だから、早く目を覚まして怒ってあげて下さいね。きっと、母さまの言うことなら聞くから」
「ホントよ~。いっつも加齢臭を漂わせてるのよ?ルチルさま、早く目を覚まして臭い!って怒ってあげて?」
アカネがすげぇ酷いことを言っている。
「……あら?」
「え?」
母さまが「ふっ」と笑った!相変わらず目は閉じたままだけど、確かに笑った!
「アカネ兄さま!」
「くぅちゃん!!」
俺らは手を握り合ってぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
「じゃあ、行ってまいります!」
母の近くの窓に摘んできた花を差した花瓶を置いて、声をかけて部屋を出た
妖精の加護付きの花なのだ。症状が良くなるに決まってる!
妖精と触手も含めた使用人達とセバスチャンのお辞儀に見送られて俺とアカネは出発した。
アカネはセフィロスに代わって保護者として。
俺は2回目だし(もちろん内緒だが)別にいらないって言ったんだけど、鼻息荒くついていくって煩いから来てもらった。
「混んできたわねぇ」
「ホントだ」
もうすぐ学園に着くという段階になって混み始めて、馬車が完全に止まってしまった。
「ちょうど重なったとはいえここまで混雑するのは珍しいわ」
「そうなの?」
「えぇ。もしかしたら…要人がいるのかもしれないわね」
アカネのその言葉になぜか背筋に寒いものが走った。
無事に学園に着いて下車をした。
人波と同じ方向に進むんだが…ジロジロと視線がうるさい。
「やっぱり、認識阻害のペンダント付けてくるべきだったかなぁ」
「気になるわよねぇ」
「うん。ここまで注目を浴びると思わなかった」
「珍しいからね…もし嫌なら今からでも魔法かけてあげましょうか?今日一日中くらいなら持つわよ?」
「うぅん、いいや。もうすでに目立っちゃったし、これから何年も通うわけだし」
「そう…」
アカネが少しだけ切なそうに目を細めて微笑んでくれた。
「孔雀!!!!!」
腹に響く胴間声が聞こえてキョロりと周りを見渡すと、非常に悪目立ちするでっかい大男が人垣をかき分けて歩いてきた。
「セフィ!!!きてくれたの?」
「あぁ。すまんな、昨日の夜には戻る予定だったんだが…ちょっと予想外の事が起きてな。
早馬を出して知らせようと思ったんだが、夜も遅かったし直接学園に来て俺から話そうと思ってな」
「な、なに…?なんか悪い知らせ?」
「いや…うーーん、そうだな。今のお前にはあまり良くないかもしれない…第二殿下が飛び級で入学なさるそうだ」
「え゛…」
冷や汗が背中をたらりと垂れた。
なにそのシナリオ。俺しらねぇーーーーよ!!!!
非常に優秀かつ聡明な第二殿下こと、紅玉が俺の同学年として入学されるそうだ。
以前は仲が良かった俺らだがあの夜以来、断絶している。
そう、まるで前世のシナリオと同じように…。
いや、接点がないおかげで直接的な嫌がらせはないからそこは大きく違っているが。
目が覚めて落ち着いてから一度だけ紅玉に手紙を送ったが、手紙はそっくりそのまま突っ返された。
スミレではない侍従が「紅玉さまがもう二度と送ってこないようにと仰せです」と伝言と共に持ってきたのだ。
なぜだと聞いたが慇懃無礼に申し訳ないがと謝るばかりで話してくれない。
ただ、一言「関係を続けるのは非常に迷惑なのです」と。
俺はその日、病み上がりで心が弱っていたようでかなり凹んで泣いてしまった。
流石に家族に拒否されるのは辛い。
ちい兄さまと可愛く甘い声で呼んでくれた紅玉の声が脳裏によぎって切なくなってしまったんだよ。仕方ないじゃん、今生では仲良かったんだ。
すでに立派なブラコンになってしまった俺には堪えたんだ。
ざわりと空気が大きく動いた。
発生源の所へと目をやると、人垣が割れたところから紅玉が馬車から降りてくるのが見えて心臓がドクンと大きく揺れた。
あぁ…大きくなったな。きりりと勇ましく前を見据えて降り立つ紅玉を見て胸がいっぱいになる。
飛び級だから俺らよりも少しだけ幼い顔つきだが、それでも最後に見た紅玉より大人っぽくなっている。
さらに喧騒が大きくなり、あちこちから「琥珀さまだ!」という囁きが聞こえる。
「紅玉、入学おめでとう」
「兄上ありがとうございます」
「期待しているぞ。王族という責務を忘れず、よくよく勉学に励むように」
「はい!!」
激励を受けて目がキラキラと輝いているのがこちらからでも分かる。
あーーほっぺた真っ赤にしちゃって!可愛いなぁ!もう!
紅玉は兄上が大好きだからな。
大人っぽくなったけど、やっぱり可愛い紅玉を親のような心持ちでちょっと感慨深く見ていると「くぅちゃん…」と呆れ気味のアカネに肘で突かれた。
気がつくと泣いていて、鼻水まで垂らしていた。
いかんいかん。今日は俺の入学式でもあるんだったわ。
ふと、紅玉がこちらを見た。
「……!」
刺すような蔑んだ冷たい眼差し。
俺はあの眼差しを知っている。
前回の生で俺は紅玉からあの眼差しで見られていた。
頭が真っ白になる。こちらを見たのはほんの数秒で、すぐに興味を無くしたように立ち去った。
「くぅちゃん…」
「ハハ…分かっていても結構、辛いね」
気がつけば指先は細かく震えていて冷たくなっていた。
俺は…こんなところで立ち止まってはいけない。もう、二度と死ぬつもりはない。
だから、紅玉達とは関わらない。向こうだって関わるつもりもないだろうし。
式へ参加すべく重くなった足を引き摺るように講堂へ向かった。
ちょっとドキドキするけど、頑張ってきますね!帰ってきたたーっくさん報告しますからね!セフィは昨日からお仕事で帰ってきてないんですよ。
1人息子の門出だってのに!仕事人間は相変わらずです。まったく、もう若くないんだから無理しちゃダメだっていっつも言ってるのに…だから、早く目を覚まして怒ってあげて下さいね。きっと、母さまの言うことなら聞くから」
「ホントよ~。いっつも加齢臭を漂わせてるのよ?ルチルさま、早く目を覚まして臭い!って怒ってあげて?」
アカネがすげぇ酷いことを言っている。
「……あら?」
「え?」
母さまが「ふっ」と笑った!相変わらず目は閉じたままだけど、確かに笑った!
「アカネ兄さま!」
「くぅちゃん!!」
俺らは手を握り合ってぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
「じゃあ、行ってまいります!」
母の近くの窓に摘んできた花を差した花瓶を置いて、声をかけて部屋を出た
妖精の加護付きの花なのだ。症状が良くなるに決まってる!
妖精と触手も含めた使用人達とセバスチャンのお辞儀に見送られて俺とアカネは出発した。
アカネはセフィロスに代わって保護者として。
俺は2回目だし(もちろん内緒だが)別にいらないって言ったんだけど、鼻息荒くついていくって煩いから来てもらった。
「混んできたわねぇ」
「ホントだ」
もうすぐ学園に着くという段階になって混み始めて、馬車が完全に止まってしまった。
「ちょうど重なったとはいえここまで混雑するのは珍しいわ」
「そうなの?」
「えぇ。もしかしたら…要人がいるのかもしれないわね」
アカネのその言葉になぜか背筋に寒いものが走った。
無事に学園に着いて下車をした。
人波と同じ方向に進むんだが…ジロジロと視線がうるさい。
「やっぱり、認識阻害のペンダント付けてくるべきだったかなぁ」
「気になるわよねぇ」
「うん。ここまで注目を浴びると思わなかった」
「珍しいからね…もし嫌なら今からでも魔法かけてあげましょうか?今日一日中くらいなら持つわよ?」
「うぅん、いいや。もうすでに目立っちゃったし、これから何年も通うわけだし」
「そう…」
アカネが少しだけ切なそうに目を細めて微笑んでくれた。
「孔雀!!!!!」
腹に響く胴間声が聞こえてキョロりと周りを見渡すと、非常に悪目立ちするでっかい大男が人垣をかき分けて歩いてきた。
「セフィ!!!きてくれたの?」
「あぁ。すまんな、昨日の夜には戻る予定だったんだが…ちょっと予想外の事が起きてな。
早馬を出して知らせようと思ったんだが、夜も遅かったし直接学園に来て俺から話そうと思ってな」
「な、なに…?なんか悪い知らせ?」
「いや…うーーん、そうだな。今のお前にはあまり良くないかもしれない…第二殿下が飛び級で入学なさるそうだ」
「え゛…」
冷や汗が背中をたらりと垂れた。
なにそのシナリオ。俺しらねぇーーーーよ!!!!
非常に優秀かつ聡明な第二殿下こと、紅玉が俺の同学年として入学されるそうだ。
以前は仲が良かった俺らだがあの夜以来、断絶している。
そう、まるで前世のシナリオと同じように…。
いや、接点がないおかげで直接的な嫌がらせはないからそこは大きく違っているが。
目が覚めて落ち着いてから一度だけ紅玉に手紙を送ったが、手紙はそっくりそのまま突っ返された。
スミレではない侍従が「紅玉さまがもう二度と送ってこないようにと仰せです」と伝言と共に持ってきたのだ。
なぜだと聞いたが慇懃無礼に申し訳ないがと謝るばかりで話してくれない。
ただ、一言「関係を続けるのは非常に迷惑なのです」と。
俺はその日、病み上がりで心が弱っていたようでかなり凹んで泣いてしまった。
流石に家族に拒否されるのは辛い。
ちい兄さまと可愛く甘い声で呼んでくれた紅玉の声が脳裏によぎって切なくなってしまったんだよ。仕方ないじゃん、今生では仲良かったんだ。
すでに立派なブラコンになってしまった俺には堪えたんだ。
ざわりと空気が大きく動いた。
発生源の所へと目をやると、人垣が割れたところから紅玉が馬車から降りてくるのが見えて心臓がドクンと大きく揺れた。
あぁ…大きくなったな。きりりと勇ましく前を見据えて降り立つ紅玉を見て胸がいっぱいになる。
飛び級だから俺らよりも少しだけ幼い顔つきだが、それでも最後に見た紅玉より大人っぽくなっている。
さらに喧騒が大きくなり、あちこちから「琥珀さまだ!」という囁きが聞こえる。
「紅玉、入学おめでとう」
「兄上ありがとうございます」
「期待しているぞ。王族という責務を忘れず、よくよく勉学に励むように」
「はい!!」
激励を受けて目がキラキラと輝いているのがこちらからでも分かる。
あーーほっぺた真っ赤にしちゃって!可愛いなぁ!もう!
紅玉は兄上が大好きだからな。
大人っぽくなったけど、やっぱり可愛い紅玉を親のような心持ちでちょっと感慨深く見ていると「くぅちゃん…」と呆れ気味のアカネに肘で突かれた。
気がつくと泣いていて、鼻水まで垂らしていた。
いかんいかん。今日は俺の入学式でもあるんだったわ。
ふと、紅玉がこちらを見た。
「……!」
刺すような蔑んだ冷たい眼差し。
俺はあの眼差しを知っている。
前回の生で俺は紅玉からあの眼差しで見られていた。
頭が真っ白になる。こちらを見たのはほんの数秒で、すぐに興味を無くしたように立ち去った。
「くぅちゃん…」
「ハハ…分かっていても結構、辛いね」
気がつけば指先は細かく震えていて冷たくなっていた。
俺は…こんなところで立ち止まってはいけない。もう、二度と死ぬつもりはない。
だから、紅玉達とは関わらない。向こうだって関わるつもりもないだろうし。
式へ参加すべく重くなった足を引き摺るように講堂へ向かった。
40
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる