乙女ゲームの攻略対象者から悪役令息堕ちポジの俺は、魂の番と幸せになります

琉海

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24.なかなかにスパルタだと思うの…

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『きゃーー!くじゃ、楽しみねぇ』
『くじゃの、まほう、キラキラ!ふわふわ!きもちーのー』
『早く喰わせろ』
『僕もくじゃの魔力、たべたぁーい!』

妖精たちが好き勝手にキャーキャー騒いでいる。
早く喰わせろとせっついているのは、大食漢の土の精霊、ノームだ。
最近気づいたんだが周りにいる妖精の中に時々、精霊が混じっている。
妖精の上位互換が精霊で、彼らは妖精を従えているという事をアカネに教えてもらった。
最後の天真爛漫にきゃっきゃと騒いでいるのは母の領に加護を与えてくれているウンディーネだが、こいつは油断ならぬと警戒している。
今はニパーッと無邪気に笑っているが、前回、突然いつもと様子が違ったのを俺は忘れていないぞ。

どうやら妖精や精霊は俺の魔力が好物らしい。
俺が授業で大量に魔力を使う事で周りに飛び散った魔力の残骸を食べる事を楽しみにしているのだ。

俺は、魔力が膨大にある代わりに、身体能力が低く体がちょっと弱い。
未だヒスばぁや、その取り巻き達から狙われるているため、魔力を磨いてそれを盾にも剣にもする必要がある。

前世の知識から「身体強化」ってやつはないの?ってアカネに聞いたら「なんでそんな秘儀を知ってるの?!」と驚かれた。どうやら、この世界では魔力を使った身体強化は秘儀に当たるらしい……体に魔力を流し、体を強化するには思った以上に魔力が必要になる事と、その調整がすごく大変らしいのだ。

アカネは、子供の頃に必要に駆られて実地にて独学で会得したらしい。やはりこいつは変態中の変態である。
俺の場合は魔力は十分にあるのだが、十分すぎてコントロールを間違えたら、弱い器の体が魔力量に耐えられずに爆発しちゃうらしい。なにそのスプラッタ。

人それぞれ体に見合った魔力が流れており、普通は問題ないんだが、稀に膨大な魔力量を持った子が生まれるとか。だが、その魔力に耐えられずに命を落とす子が大半だそうだ。
規定量を超えた魔力を一気に体に流さない限り爆発は起きないらしいので、うまく循環している俺の体は普段何もしなくても大丈夫との事。

いつか聞いた伝説の先人曰く、無限の魔力量を持つものはどこか源泉に繋がっているかららしいが。だもんで、身体強化は魔力を自在にコントロール出来るようになるまではお預けってわけだ。仕方がない。命がかかっているからな。



「よし、じゃあ今日もコントロールの練習からしましょう。体内の魔力循環の練習はしているわね?」
「はい」
「昨日やったとおりにやってみて。まずは、水から」
「はい!」

修練場に的が縦一直線、100mおきに設置されていて、最長はなんと700mだ。
なんなら2km先にも設定できるらしい(公爵邸のバカでかさが分かるよな)それに指示された属性魔法で攻撃を当てていく。
初歩の初歩でシンプルだが飛距離が伸びるほどに魔力とコントロールが試される。
今は静止の的だが、そのうち動いている的も用意すると言われた。

水、火、雷、風———次々に出される属性指示を受けて的に当てていく。粉砕する事も可能だが、中程度の攻撃を当てたり、縁を狙ったりと、力加減も試される。
これがかなり難しい。強弱を連続でやったり、強だけを出したり…集中力がどんどん削がれて、狙いが外れたりまたは力加減を間違ったりと精度が落ちていく。

「はい、それじゃ10分休憩ね」
「は、い……」

もう、立つ気力もない。だが10分しか休めない。魔力は別のところから無限に入ってくるが、俺自身の魔力はそこそこ多いくらいでしかない。
だからなのか、変な体力の削られ方をする。魔力枯渇にはならないが、枯渇に近いダルさが出るんだよな。
この辺りの仕組みがいまいちよー分からん。
ちなみに、この世界は現代日本ゲームに倣っているからか時間の単位などは同じだ。
非常に助かる。さすがに金の単位は「円」ではないが。

「そうだわ。くぅちゃんが好きそうな事を教えてあげましょうか」

アカネが地面にひっくり返ってる俺を見下ろしてニンマリと笑った。

「今はまだ、身体強化は無理だけど、武器に通す事は許してあげる」
「!!!!!!」

ガバッと体を起こしてアカネを見上げると、「やっぱり男の子ねぇ」と苦笑されたが、いいじゃんいいじゃん!それ、やってみたいやつじゃん!中二病っぽいけど、それが可能な世界ならやりたいじゃん!!!!

「そうねぇ……これなんかいいかも」

武器庫から出してきた小ぶりな剣を俺に渡してきた。

「いつもやってる体に魔力を循環させる方法の応用よ。この、剣にも同じようにしてごらんなさい。まずは属性とかはおいといて、純粋な魔力でいいわ」
「んん……ん————?」

イメージ的には簡単そうだけど、実際にやると難しい。握っている剣に魔力を通そうとするが、柄で弾かれたり指先からふわっと散らばってしまう。
特に、散らばってしまうのが糠に釘みたいな感じで手ごたえがなくてイライラしてくる。

「ほーらー、乱れてるわよ~。イライラするのは分かるけど、自分以外の物に魔力を通す感覚を覚えなさい」
「んぎぎぎぎぎぎぎ」
「ほほほ。美しい顔が歪んでるのがたまらないわぁ」

それっも!イライラするんだよ!!!人の性癖にとやかくは言いたくないが、口に出すな!!

「自分の魔力を通して、属性を纏わせるから、魔力が通せるようにならないと厳しいわよ~」

頑張れ頑張れーーって応援されているが、煽ってるようにしか取れない俺は心が汚れているのだろうか……。
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