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21.孔雀の力

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『時に、孔雀よ。お前の力について忠告をしておこう』
「は!はい!」

やっときた!ドキドキしながらウンディーネの言葉を待つ。

『先ず、お前は魔力の根源と繋がっている。そしてそこからお前に魔力が流れ込んでいる。
だから基本的にはお前の魔力は無限大だ。ここまでは分かるな?』
「はい……ですが、基本的にはというのは?」
『うむ。そこだ。いくら根源から魔力が流れ込んでいようとも、その”筒”であるお前自身の体や魔力の流れが滞っていればそこで淀みが生まれる。
淀みが生まれると流れは滞る。滞るとそこに負荷がかかる。負荷がかかるとそのうち壊れる』
「こわれるぅ?!」
『簡単に言えば破裂する』
「なんだってぇぇえええ?!」
『本来であれば、魔力はその器に見合った量しか生まれないし、体内で循環している。多少過多になる事があっても吸収されて無害化するし、少しは駄々洩れておるからの、器が破裂する事はないのだ。

だが、お前の場合は一方的に流れ込むからな。通りを良く保たねば破裂する。だから、今お前が日々やっている鍛錬は今後も怠らぬようにな』
「………」

隣で母も絶句している。分かる、それしか反応出来ないよね。

『また、体には7つのチャクラがあってな、それらを目覚めさせて活性化させる事でさらに魔力を上手く循環する事が出来る上に上手く操れるようになる。

お前の目指すところはそれだ。生まれてから数年間は何もせずともチャクラはしっかり機能しておるもんなんだがな、人間は成長する過程でチャクラがまた寝てしまうのだ。

難儀なものよなぁ……それに、お前の場合は幼き頃から特殊な環境であったからな、チャクラがすっかり閉じてしまっておる。
まずは、チャクラを目覚めさせなさい』

まさかここにきてチャクラという単語を再び聞く日が来るとは……前世の記憶でチャクラという単語は耳にした事があったけど、イマイチ理解してないんだよな~。
なんかあれだろ? 体の中心にポンポンと配置されているやつ。
ヨガとかの世界では有名なやつだよな、って何で俺そんな事まで知ってんだ?

「ウンディーネ、その、孔雀さんは今は大丈夫なんですか?!すっかり閉じているとおっしゃってたけど」

母が今にも泣きそうな顔で言った。その顔を見て心臓がきゅうっとなって俺も泣きそうになる。母がものすごくショックを受けているのが分かって、俺も悲しくなる。

『あぁ、閉じておるが大人ほどに澱んではおらんからな。それに、鍛錬を始めた事で体内の魔力の流れがスムーズになってきているのも幸いしている。
すぐにどうこう、という訳ではないが、だからといってそのままにしていいわけでもない。

徐々に体に負担がかかって色々と不調が出てくるようになる。そうなるとどんどん滞るからな、今のうちにしっかり鍛錬をし、それを生涯続ければ問題ない』
「しょ、生涯………だけど、まぁ、鍛錬は生涯するもんだと思えば、そんな大変なものでもないかな」
「孔雀さん……!なんって素晴らしい発想の持ち主なの!やはり、うちの子は世界一素晴らしいわっっっ!!!」
「かあさま……」

対処法が分かったからか、さっきまでショックを受けて泣きそうになっていた母が今はもう感激で泣きそうになっている。うちのママンは世界一可愛いなぁ!

正直、全くショックがないといえば嘘になる。ただし、対処法があって、かつ、今の俺がやらなければと思っている事が対処法なのであるのならば、これはもう運命だ。
それに俺には変態(アカネ)という心強い味方がいる。

奴は変態だが紛れもなく天才だ、しかも努力型の。これ以上素晴らしい見本がいるだろうか。さらには、今は俺の父であるセフィロスもいるし、母もいる。

さらには大精霊であり、母の故郷であるルチル領の守護神でもあるウンディーネというチートな輩もいる。
今生の俺ってばむちゃくちゃ運が良くない?
最愛のさぁちゃんを守るためにも俺は強くなりたい。
万が一、さぁちゃんが力を抑えられなくて暴走してもアカネのように止められる盾になりたい。俺の傍で安心して笑って欲しいんだ。
そう考えたらこの暴力的な魔力事情も俺の最強の盾になる。
要は使いようだってことだよな。

『そして、ここからが一番大切な事だ。
お前のその力は極力、秘密にしろ。伝えるなら信頼のおけるものだけにしろ。
お前の力は国家の、ひいては世界の脅威にもなり得るからな。

誰もが欲しい人間でもあり、手に入れられない者にとってはただの”脅威”だ。
分かるな?』
「はい」

手に入らないのであれば、存在を消してしまえば良いってやつだよな。
俺の力は使いようによっては世界の覇権を取るのに都合が良い。

たった1人でも生きている限り無限のエネルギーを供給し続ける事が出来るってのは、でかいよな。俺を言いなりにさえすれば生きる兵器となり得るもんな。
乙女な世界のはずなのに、間違ったらなんだか血生臭い展開になりそうだ。

俺の夢はさぁちゃんと素敵な家庭を築いて、のんびりほのぼのラブラブライフを送る事だからな!そんな血なまぐさい俺TUEEEEはいらんのだよ。

「そういえば、俺の周りにいるウンディーネとあなたは、同一精霊?妖精?なんですか??」
『あれは私が別の場所に行くための媒体だ。あれ自身にも”個”はあるがな。
私はあれを通して世界を見る。ここからも見る事は出来るが、あれを通すと臨場感が違う。
味も伝わる。それに、お前の守護でもあるのだよ』
「え!」
『お前も、私にとっては可愛い愛し子だ。ルチル領は領民も含めて全て私の愛しいものだからな。お前はちぃと規格外だからな、私自身が近くにいる事は出来ないが、あれを通せば間接的に側におれる』
「あり、がとうございます」

鼻の奥がツンとして涙が出そうになった。
俺もルチル領の領民の1人だと言ってもらえてすごく嬉しい。

俺の生まれた場所は王都で、王城だったけど、あそこは俺の居場所じゃないから。
だから、居場所がなくてなんだかいつもソワソワしていた。
ルチル領に来たのは生まれて初めてだけど、ここが俺の故郷だって思ってもいいのかな。

『そうだ、ここはお前の故郷だ。いつでも好きな時に帰ってこい』
「!!!!!!!」

なんで分かったの?!サトリ?!大精霊って人の心が読めちゃうの?!
やだ、怖い!

『お前は顔に出やすいんだ。それにお前の事は生まれた時からずっと側で見守ってきているからな。思考回路は筒抜けだ』
「んげ」
『お前がお前だけでない事も、な』
「!!」
『誤解するな、それもひっくるめてお前自身で、お前の魂そのものを愛している』
「ありがとうございます………」

今度こそ、ぽろりと涙が零れ落ちた。
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