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6.妖精が見えるようになる
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属性判定は基本的に教会で行う。それは判定石を使うからだ。それと庶民から稀有な属性が出た場合は、教会から王侯貴族へ報告を入れやすいため、査定などを取りまとめている。貴族の場合は自分らで判定石を入手できるため、子供の魔力が安定次第すぐに家で確認をする。
それにしても———変態は何者なんだろう。いちフリー治療師にしてはブライト家に入り込み過ぎているような…いくら優秀とはいえ、主人(セフィロス)の許可なしにセバスチャンを動かすなんてあり得ない。
「ふふ。不思議だなぁって顔ね?アタシが何者なのかって考えてるでしょ」
「う…はい」
「そうねぇー…くぅちゃんになら話してもいいかしら。アタシとセイって義兄弟なの。アタシは貧民街出身なのよ。家族もいない捨て猫を拾ってくれたのが、セイのお父様。アタシが稀少な属性持ちって事が分かって、身の安全を確保するためにも養子として迎え入れてくれたのが、ブライト公爵家よ」
「そうだったのですか!」
「公にはアタシが養子だって事は伏せられてるわ。それは、アタシが頼んだからなんだけど…捨て猫で弱っちいアタシを拾ってくれて、衣食住を満たしてくれて教育も施してくださった前当主様には本当に感謝してるわ。セイちゃんも本当の兄弟のように一緒にいてくれたの」
「そうだったのですね…」
「だから、もしかしたらアタシとくぅちゃんも義兄弟になるかもしれないわね?」
「!!!!」
こ、こいつ怖い~~~!なんでもお見通しかよ?ハッ!まさかサトリ…?な、なんでも筒抜けとか嫌だぞ!!
「くぅちゃん、アタシ、心なんて読んでないわよ?」
「~~~~~!!!!」
俺が更に慌ててるとおかしそうに笑われた。
「くぅちゃんはね、顔に全部出てるのよ。読みやすいの」
「………」
王侯貴族らしく、ポーカーフェイスは得意のはずなのに…まだまだおこちゃまだから?いやでも巻き戻し前のスキルは無くなってないはずだ…だよな?
判定石が設置されている部屋に通された。
書庫も兼ねているようで、初めて見る本がたくさん保管されていた。館には図書室も別途あって膨大な図書が保管されていたが、ここにもまだあったとは…公爵家、恐るべし。
城なら分かるんだよ。沢山の人や官僚が利用するしさ。
しかし、いち個人?の自宅にこんなのがあるとか前世の庶民な俺からすると考えられない量なのだ。
「さて。では孔雀様、判定石に触れて魔力を流し込んでください」
「はい」
セバスチャンに促されて判定石にぺたりと触れる。石は前世の記憶に照らし合わせると、怪しげな占い師が使うような丸い水晶玉のような見た目で、立派なかぎ爪がついた豪華な台に乗せられていた。石に反転して写り込む自分が見える。
魔力を流すという事が分からない幼子は、微量に垂れ流される魔力を判定する(幼いうちは制御の仕方が分からないため、少々駄々洩れ)
魔力を流し始めると、ぐいぐいと吸い込まれる感覚に驚いて手を離しそうになった。
以前、判定をした時はこんなに吸い込まれるような感覚はなかった。
思わず石を凝視していると、石に小さな人影らしきものが幾つか写り込んでいるのに気づいた。
「え?」
「どうしたの?」
バッと後ろを振り返ると、何もいない。
見間違えかと改めて石を見ると、やはり写り込んでいる。位置的には俺らの後ろにいる。
(おいおいおい。これじゃ怪談話みたいじゃないかよ。鏡を見たら後ろに何か写り込んでいるからと振り返ってもおらず、もう一度見るとやはりいて———みたいな)
思わず何度も後ろと石を確認していると、不審に思った2人が声をかけてくる。
「くぅちゃん、どうしたの?それにしても長いわね…」
「ここまで長いのは滅多にありませんね…整備はきちんとしているので壊れているという事は考えられませんが…」
石が魔力を吸い込む力がおさまらない。おさまらないからどんどん吸い込まれる。しかもさっきからその速度が増している気がする…。え、これってマズイんじゃ…。
指先がすぅと冷えて血の気が引く。貧血みたいな症状———これは魔力切れになるパターンだ。
「やだ!くぅちゃん?!」
「孔雀様!」
2人が慌てたように呼んでいて、マズいんでそろそろ切り上げたいです、と答えようとして俺の視界は暗転した。
———目が覚めたら異世界にいました。
「いました、じゃねぇえええ!!!なんじゃこりゃぁぁあ!!!」
うざい1人ノリツッコミは許してほしい。そうしないと更にパニックになりそうだったんだ。目が覚めたら、空間のありとあらゆるところになんか、いた。
ぴかぴか淡く光る小さな人外共と、小動物?と、なんかよく分からんスライムみたいな奴ら。そやつらがそこここにふわふわ飛んでたり床を走り回ったり、じっ…としてたり。
そらアンタ、異世界やろって思うやん?
(どうしよ俺、ついに頭おかしくなった?)
『ねーねー、あそぼー?』
『ニンゲン!あそぼーよー!』
『もきゅもきゅ、もきゅ』
無邪気に遊ぼうとかニンゲンとか言うとるで。最後にいたっては何いってるか全然わからん。
「ちょっと待て…お前ら、なに?」
そう、問いかけると、小さな人外共は顔を見合わせて首をコテンとし合った。や、こんな状況じゃなかったら可愛いなと思うような仕草だけど、今は心臓がバクンバクンしてるんで。それに俺、ビビりなんで。
『なに?僕らなに?なに?』
『えっとね、僕はウンディーネ!』
ウンディーネ…ウンディーネ…なんか、聞いた事あるな。なんだっけ?あと、言葉すら話してねぇ奴。うさぎみたいな見た目だけど、こいつ喋れんの?
俺の言葉は通じてるんかな。
『僕!僕はねー、風の妖精だよ!』
『僕も!』
『わたしもー!』
『あたちも!』
一斉に喋り出して耳が痛くなる。
「だぁぁぁぁーーー!!うるさーい!」
『きゃーーーーーー!!!!!』
思わず怒鳴ると、きゃーと言いながら俺の周りからパッと散った。きゃーと言う割にはすっげぇ楽しそうなんだけど。
それにしても———変態は何者なんだろう。いちフリー治療師にしてはブライト家に入り込み過ぎているような…いくら優秀とはいえ、主人(セフィロス)の許可なしにセバスチャンを動かすなんてあり得ない。
「ふふ。不思議だなぁって顔ね?アタシが何者なのかって考えてるでしょ」
「う…はい」
「そうねぇー…くぅちゃんになら話してもいいかしら。アタシとセイって義兄弟なの。アタシは貧民街出身なのよ。家族もいない捨て猫を拾ってくれたのが、セイのお父様。アタシが稀少な属性持ちって事が分かって、身の安全を確保するためにも養子として迎え入れてくれたのが、ブライト公爵家よ」
「そうだったのですか!」
「公にはアタシが養子だって事は伏せられてるわ。それは、アタシが頼んだからなんだけど…捨て猫で弱っちいアタシを拾ってくれて、衣食住を満たしてくれて教育も施してくださった前当主様には本当に感謝してるわ。セイちゃんも本当の兄弟のように一緒にいてくれたの」
「そうだったのですね…」
「だから、もしかしたらアタシとくぅちゃんも義兄弟になるかもしれないわね?」
「!!!!」
こ、こいつ怖い~~~!なんでもお見通しかよ?ハッ!まさかサトリ…?な、なんでも筒抜けとか嫌だぞ!!
「くぅちゃん、アタシ、心なんて読んでないわよ?」
「~~~~~!!!!」
俺が更に慌ててるとおかしそうに笑われた。
「くぅちゃんはね、顔に全部出てるのよ。読みやすいの」
「………」
王侯貴族らしく、ポーカーフェイスは得意のはずなのに…まだまだおこちゃまだから?いやでも巻き戻し前のスキルは無くなってないはずだ…だよな?
判定石が設置されている部屋に通された。
書庫も兼ねているようで、初めて見る本がたくさん保管されていた。館には図書室も別途あって膨大な図書が保管されていたが、ここにもまだあったとは…公爵家、恐るべし。
城なら分かるんだよ。沢山の人や官僚が利用するしさ。
しかし、いち個人?の自宅にこんなのがあるとか前世の庶民な俺からすると考えられない量なのだ。
「さて。では孔雀様、判定石に触れて魔力を流し込んでください」
「はい」
セバスチャンに促されて判定石にぺたりと触れる。石は前世の記憶に照らし合わせると、怪しげな占い師が使うような丸い水晶玉のような見た目で、立派なかぎ爪がついた豪華な台に乗せられていた。石に反転して写り込む自分が見える。
魔力を流すという事が分からない幼子は、微量に垂れ流される魔力を判定する(幼いうちは制御の仕方が分からないため、少々駄々洩れ)
魔力を流し始めると、ぐいぐいと吸い込まれる感覚に驚いて手を離しそうになった。
以前、判定をした時はこんなに吸い込まれるような感覚はなかった。
思わず石を凝視していると、石に小さな人影らしきものが幾つか写り込んでいるのに気づいた。
「え?」
「どうしたの?」
バッと後ろを振り返ると、何もいない。
見間違えかと改めて石を見ると、やはり写り込んでいる。位置的には俺らの後ろにいる。
(おいおいおい。これじゃ怪談話みたいじゃないかよ。鏡を見たら後ろに何か写り込んでいるからと振り返ってもおらず、もう一度見るとやはりいて———みたいな)
思わず何度も後ろと石を確認していると、不審に思った2人が声をかけてくる。
「くぅちゃん、どうしたの?それにしても長いわね…」
「ここまで長いのは滅多にありませんね…整備はきちんとしているので壊れているという事は考えられませんが…」
石が魔力を吸い込む力がおさまらない。おさまらないからどんどん吸い込まれる。しかもさっきからその速度が増している気がする…。え、これってマズイんじゃ…。
指先がすぅと冷えて血の気が引く。貧血みたいな症状———これは魔力切れになるパターンだ。
「やだ!くぅちゃん?!」
「孔雀様!」
2人が慌てたように呼んでいて、マズいんでそろそろ切り上げたいです、と答えようとして俺の視界は暗転した。
———目が覚めたら異世界にいました。
「いました、じゃねぇえええ!!!なんじゃこりゃぁぁあ!!!」
うざい1人ノリツッコミは許してほしい。そうしないと更にパニックになりそうだったんだ。目が覚めたら、空間のありとあらゆるところになんか、いた。
ぴかぴか淡く光る小さな人外共と、小動物?と、なんかよく分からんスライムみたいな奴ら。そやつらがそこここにふわふわ飛んでたり床を走り回ったり、じっ…としてたり。
そらアンタ、異世界やろって思うやん?
(どうしよ俺、ついに頭おかしくなった?)
『ねーねー、あそぼー?』
『ニンゲン!あそぼーよー!』
『もきゅもきゅ、もきゅ』
無邪気に遊ぼうとかニンゲンとか言うとるで。最後にいたっては何いってるか全然わからん。
「ちょっと待て…お前ら、なに?」
そう、問いかけると、小さな人外共は顔を見合わせて首をコテンとし合った。や、こんな状況じゃなかったら可愛いなと思うような仕草だけど、今は心臓がバクンバクンしてるんで。それに俺、ビビりなんで。
『なに?僕らなに?なに?』
『えっとね、僕はウンディーネ!』
ウンディーネ…ウンディーネ…なんか、聞いた事あるな。なんだっけ?あと、言葉すら話してねぇ奴。うさぎみたいな見た目だけど、こいつ喋れんの?
俺の言葉は通じてるんかな。
『僕!僕はねー、風の妖精だよ!』
『僕も!』
『わたしもー!』
『あたちも!』
一斉に喋り出して耳が痛くなる。
「だぁぁぁぁーーー!!うるさーい!」
『きゃーーーーーー!!!!!』
思わず怒鳴ると、きゃーと言いながら俺の周りからパッと散った。きゃーと言う割にはすっげぇ楽しそうなんだけど。
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