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5.アカネとの出会い
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うえぇぇなゲロまず良薬を泣きながら毎食後飲んで、やっとその苦行から解放されたのは1週間後だった。
あの人、俺が服用するの見てぜってぇ楽しんでた。
俺が薬飲むときに必ずいて、頬を染めながらうっとりとこっち見てんだもん。
想像してみてよ。180くらい身長があるゴリマッチョなオッサン…
おねぇ?な猫獣人が頬っぺた赤くして目を潤ませて身悶えしながら見てんだぜ?
心なしか息も荒いしさ……単純に引くだろ?俺はドン引いたぞ。
てか、1週間も朝・昼・晩と食後にすっ飛んでくるんだけどさ、仕事どうなってんの?
「うん。よし!もう大丈夫そうね。よーく頑張りました!」
「ありがとごじゃます…」
「ふぐっ!難しい言葉言うとまだ舌足らずなのねぇ…ハァハァ」
いいえ、噛んだだけです。いや、ちょっと舌が回りづらいのは確かだけど。
それよりも、顔が近い!近いよ!!!
ぐいぐいと顔を押しやるけど、それすらも「小さなお手て~♡きゃわーん♡」とか言って喜んでるんだけど。
どうしよ。
え。この人、ショタ…?え、こわ。
「アカネ様、もうその辺で…孔雀様が少々混乱しております」
「あぁ。ごめんね?くぅちゃん可愛い上に、いい匂いがするからつい」
匂い?!え!まじもんショタ?え。こわっ。
俺が青ざめていると、それに気づいた変態ショタ猫オジが「ごめんごめん」と苦笑した。
「あのね、獣人って魔力の匂いに敏感なの。相性もあるけど、くぅちゃんの魔力ってすっごく良い香りがするのよ。なんていうか不思議なのよね。普通は1つなんだけど香りが3つあるというか…3人分っていうか…でも、それが絶妙にブレンドされてなんとも言えない香しい仕上がりになってるのよぉ!」
「へ?」
3人…ぎくりとした。思い当たる節があるからだ。前世・巻き戻し前・巻き戻し後で3人。
正確には巻き戻し前の俺と今の俺は同一人物だからそれをカウントしてよいものか分からないが。
「それに、くぅちゃんって複数属性の持ち主?属性が幾つかあるわね?」
「え?そうなのですか?僕は1つだと…」
「そうなの?もう魔力検査したの?」
「はい。その時に、僕は風ぞくせいだと言われました」
「そうなの?まぁ、稀に後天的に属性が開花する事もあるけれど、それでも検査してすぐに新しい属性が開花するのは珍しいわね…」
この世界には魔力・魔法があって、その魔力は属性で分かれている。
大きく分けて火、風、水、地、雷の5つ。そして稀少な光と闇で全部で7属性ある。
この世界が乙女ゲームを模倣しているからか、ラノベ知識があればなんとなく想像がつく構成になっている。
基本的に、属性が強く出るのが王侯貴族で庶民は生活魔法くらい。
時おり、強い魔力を持って生まれる人もいるが稀だ。
生活魔法は火、風、水、地が主で雷は少ない。
同じ属性であっても王侯貴族と庶民は魔力に大きく差がある。
基本的に、属性は1つだが時おり複数の属性を持つものがいて、
そういったものが庶民に生まれると大体において貴族に囲われる。
そこで成りあがるもよし、貴族御用達になるもよし。立身出世の術になる。
まぁ、そこも簡単にはいかなくて色々あるんだけど…。
この世界のヒロインはベタな稀少性が高い光属性で、それも膨大な魔力を持っていてチートな存在だ。
彼女の光魔法は正直、美しい。
キラキラと輝く光に包まれながら魔法を展開する様は女神と評されたが、それも頷ける。
魔法も広範囲で展開できるし、死んでさえなければほぼほぼ完璧に治す事ができる。まさに御業。
彼女はその光魔法一本で立身出世をする正統派ヒロインなのだ。
闇属性のヒロインがいてもいいと思うんだけどね?やっぱりヒロインといえば光属性だよなぁ。
王族は光属性が生まれやすいとされて、父王と兄上は光属性だ。ちなみに弟と王妃は火属性。
あのヒスはそこからきているのだろうか。火って情熱的なイメージだよね。
王侯貴族であっても複数所持はなかなか生まれないってのが現状だ。
だから、俺が本当に複数持ちとなるとかなり厄介だ。複数持ちは総じて魔力量が多く、能力が高い。
そんでもって魔力が多い事は継承権に深く影響する。
あの人(王妃)がこれまで以上に本気で俺の命を狙ってくるだろう。
スペアスペアが実質スペアに繰り上がり、下手すれば兄上を押しのけて王太子になる可能性も無きにしも非ず。
「こ、こまるぅ!」
「くぅちゃん?」
「ぞ、ぞくせいが沢山あったら、僕、殺(ヤ)られちゃう!!」
「え?犯(ヤ)られちゃう?」
「アカネ様、ヤられ違いです。…孔雀様は非常に危ういお立場の方なので…」
「あぁ。なるほどね」
ふむ、と考え込んだ変態ショタ猫オジが暫くして俺をじっと見た。
「な、なんですか?」
「くぅちゃん。とりあえず属性は確認しようか。その後に対策考えよう?」
「えぇ…みてみぬふりは…」
「ダメ。自分の属性は正しく鍛えておいた方が後々、貴方の力になる」
「そうなのですか?」
「そうよ。くぅちゃんは王様になりたい?」
「なりたくないです!!!!」
「あはは!随分と食い気味で答えたわね。セバスチャン、この子、けっこう賢いわね?」
「ええ。孔雀様はとても素晴らしい方ですよ」
「その年で自分の立場と状況、現状をよく理解した上で継承権を放棄する方向で考えるなんて…うぅっ!」
「ひょえ!」
変態が泣き出したと思ったらぎゅうぎゅうに抱きしめてきてびっくりする。
「こ、こんな年の子が理解できちゃうくらい色んな事があったって事でしょお?
急いで大人にならなくてはいけないなんて、こんな…こんな悲しい事ってあるぅ?」
「えぇ~……」
俺をぎゅうぎゅうに抱きしめながらおんおんと泣かれて、当事者の俺は引き攣り笑いをするしかなかった。
「ごめんなさいね…アタシとした事が…弱いのよ。子供が子供らしくいられない状況に」
「は、はぁ」
なかなか泣き止まなくて、しばらくぎゅうぎゅうに抱きしめられままだった俺はちょいとふらふらする。
「うん。アタシ、決めたわ!くぅちゃんの先生になる!」
「は?」
「えっ?!」
「で、でもへんた…アカネ様はちりょうしではないのですか?」
「ん?なんか別の言葉が聞こえた気がするわね。ふふふ。アタシは元々魔導士よ。
治療のセンスがあったから治療師に転向したの」
「うわぁ!すごいですね!」
魔導士は研究職でもあり、魔法理論に長けているため自分が持っていない属性についても指導が可能で弟子を取る事も可能だ。治療師は治療に特化した指導のみとなる。
「んふふ。ではまずは、確認しましょうか。セバスチャン、用意してくれる?」
「かしこまりました」
あの人、俺が服用するの見てぜってぇ楽しんでた。
俺が薬飲むときに必ずいて、頬を染めながらうっとりとこっち見てんだもん。
想像してみてよ。180くらい身長があるゴリマッチョなオッサン…
おねぇ?な猫獣人が頬っぺた赤くして目を潤ませて身悶えしながら見てんだぜ?
心なしか息も荒いしさ……単純に引くだろ?俺はドン引いたぞ。
てか、1週間も朝・昼・晩と食後にすっ飛んでくるんだけどさ、仕事どうなってんの?
「うん。よし!もう大丈夫そうね。よーく頑張りました!」
「ありがとごじゃます…」
「ふぐっ!難しい言葉言うとまだ舌足らずなのねぇ…ハァハァ」
いいえ、噛んだだけです。いや、ちょっと舌が回りづらいのは確かだけど。
それよりも、顔が近い!近いよ!!!
ぐいぐいと顔を押しやるけど、それすらも「小さなお手て~♡きゃわーん♡」とか言って喜んでるんだけど。
どうしよ。
え。この人、ショタ…?え、こわ。
「アカネ様、もうその辺で…孔雀様が少々混乱しております」
「あぁ。ごめんね?くぅちゃん可愛い上に、いい匂いがするからつい」
匂い?!え!まじもんショタ?え。こわっ。
俺が青ざめていると、それに気づいた変態ショタ猫オジが「ごめんごめん」と苦笑した。
「あのね、獣人って魔力の匂いに敏感なの。相性もあるけど、くぅちゃんの魔力ってすっごく良い香りがするのよ。なんていうか不思議なのよね。普通は1つなんだけど香りが3つあるというか…3人分っていうか…でも、それが絶妙にブレンドされてなんとも言えない香しい仕上がりになってるのよぉ!」
「へ?」
3人…ぎくりとした。思い当たる節があるからだ。前世・巻き戻し前・巻き戻し後で3人。
正確には巻き戻し前の俺と今の俺は同一人物だからそれをカウントしてよいものか分からないが。
「それに、くぅちゃんって複数属性の持ち主?属性が幾つかあるわね?」
「え?そうなのですか?僕は1つだと…」
「そうなの?もう魔力検査したの?」
「はい。その時に、僕は風ぞくせいだと言われました」
「そうなの?まぁ、稀に後天的に属性が開花する事もあるけれど、それでも検査してすぐに新しい属性が開花するのは珍しいわね…」
この世界には魔力・魔法があって、その魔力は属性で分かれている。
大きく分けて火、風、水、地、雷の5つ。そして稀少な光と闇で全部で7属性ある。
この世界が乙女ゲームを模倣しているからか、ラノベ知識があればなんとなく想像がつく構成になっている。
基本的に、属性が強く出るのが王侯貴族で庶民は生活魔法くらい。
時おり、強い魔力を持って生まれる人もいるが稀だ。
生活魔法は火、風、水、地が主で雷は少ない。
同じ属性であっても王侯貴族と庶民は魔力に大きく差がある。
基本的に、属性は1つだが時おり複数の属性を持つものがいて、
そういったものが庶民に生まれると大体において貴族に囲われる。
そこで成りあがるもよし、貴族御用達になるもよし。立身出世の術になる。
まぁ、そこも簡単にはいかなくて色々あるんだけど…。
この世界のヒロインはベタな稀少性が高い光属性で、それも膨大な魔力を持っていてチートな存在だ。
彼女の光魔法は正直、美しい。
キラキラと輝く光に包まれながら魔法を展開する様は女神と評されたが、それも頷ける。
魔法も広範囲で展開できるし、死んでさえなければほぼほぼ完璧に治す事ができる。まさに御業。
彼女はその光魔法一本で立身出世をする正統派ヒロインなのだ。
闇属性のヒロインがいてもいいと思うんだけどね?やっぱりヒロインといえば光属性だよなぁ。
王族は光属性が生まれやすいとされて、父王と兄上は光属性だ。ちなみに弟と王妃は火属性。
あのヒスはそこからきているのだろうか。火って情熱的なイメージだよね。
王侯貴族であっても複数所持はなかなか生まれないってのが現状だ。
だから、俺が本当に複数持ちとなるとかなり厄介だ。複数持ちは総じて魔力量が多く、能力が高い。
そんでもって魔力が多い事は継承権に深く影響する。
あの人(王妃)がこれまで以上に本気で俺の命を狙ってくるだろう。
スペアスペアが実質スペアに繰り上がり、下手すれば兄上を押しのけて王太子になる可能性も無きにしも非ず。
「こ、こまるぅ!」
「くぅちゃん?」
「ぞ、ぞくせいが沢山あったら、僕、殺(ヤ)られちゃう!!」
「え?犯(ヤ)られちゃう?」
「アカネ様、ヤられ違いです。…孔雀様は非常に危ういお立場の方なので…」
「あぁ。なるほどね」
ふむ、と考え込んだ変態ショタ猫オジが暫くして俺をじっと見た。
「な、なんですか?」
「くぅちゃん。とりあえず属性は確認しようか。その後に対策考えよう?」
「えぇ…みてみぬふりは…」
「ダメ。自分の属性は正しく鍛えておいた方が後々、貴方の力になる」
「そうなのですか?」
「そうよ。くぅちゃんは王様になりたい?」
「なりたくないです!!!!」
「あはは!随分と食い気味で答えたわね。セバスチャン、この子、けっこう賢いわね?」
「ええ。孔雀様はとても素晴らしい方ですよ」
「その年で自分の立場と状況、現状をよく理解した上で継承権を放棄する方向で考えるなんて…うぅっ!」
「ひょえ!」
変態が泣き出したと思ったらぎゅうぎゅうに抱きしめてきてびっくりする。
「こ、こんな年の子が理解できちゃうくらい色んな事があったって事でしょお?
急いで大人にならなくてはいけないなんて、こんな…こんな悲しい事ってあるぅ?」
「えぇ~……」
俺をぎゅうぎゅうに抱きしめながらおんおんと泣かれて、当事者の俺は引き攣り笑いをするしかなかった。
「ごめんなさいね…アタシとした事が…弱いのよ。子供が子供らしくいられない状況に」
「は、はぁ」
なかなか泣き止まなくて、しばらくぎゅうぎゅうに抱きしめられままだった俺はちょいとふらふらする。
「うん。アタシ、決めたわ!くぅちゃんの先生になる!」
「は?」
「えっ?!」
「で、でもへんた…アカネ様はちりょうしではないのですか?」
「ん?なんか別の言葉が聞こえた気がするわね。ふふふ。アタシは元々魔導士よ。
治療のセンスがあったから治療師に転向したの」
「うわぁ!すごいですね!」
魔導士は研究職でもあり、魔法理論に長けているため自分が持っていない属性についても指導が可能で弟子を取る事も可能だ。治療師は治療に特化した指導のみとなる。
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