乙女ゲームの攻略対象者から悪役令息堕ちポジの俺は、魂の番と幸せになります

琉海

文字の大きさ
上 下
4 / 44

4.ご乱心じゃないよ

しおりを挟む
この国、宝玉王国は成り立ちが建国の神より賜った貴石である金剛石(ダイヤモンド)にちなんで王家とそれに連なる人間は宝石から取った漢字名と決まっている。

だから、俺は「孔雀(マラカイト)」という名が付く。
正妃の息子である第1王子は琥珀(アンバー)、第3王子は紅玉(カーネリアン)。
俺の記憶では琥珀はなんか、めっちゃねちっこいタイプで、紅玉はドSだった。
2人して母親と同じようにネチネチ、ネチネチと俺らを虐めてきて、
それに同調した正妃派も同じように俺らを冷遇した。

1周目で9歳の頃に母は死に、心の中で勝手に父と慕っていたセフィロスが死に、
名実ともに天涯孤独となった俺はめちゃくちゃ拗らせた。
ただでさえ拗らせボーイだった俺は正妃や父王を、兄を、弟を憎み、世を憎んだ。
兄は正妃の洗脳教育で俺ら親子を侮蔑し、憎んだ。
弟も同じように俺らを憎み、ドSで性悪な彼は徹底的に俺を虐めた。

俺の心の拠り所だった母の形見を難癖つけられて奪われ、
セフィロスへの家であるブライト家への降下内定を彼の死後に聞かされて、
俺は絶望した。
だが、腐っても俺は第2王子だったから衣食住は保証され続けたし、
お飾りの継承権も持ち続けていた。

継承権とかマジでどうでも良かったし王座に興味もなかったが、
一応、国民の税金で食わせてもらってる身として最低限の恩返しとして
日々学園で学び、そして公務をこなしていた。

そんな時、隣国のグロリア国の公爵令嬢であるレティシアとの婚約が決まった。
レティシアはとても公正で気高い女性だった。そして慈悲深かった。
俺はそんな気高さ、慈悲深さが煩わしく、彼女に塩対応した。
ただの八つ当たりだし、あの時の俺の態度は今思い出しても穴を掘って埋まりたいほど恥ずかしい。スライディング土下座をしたい。

そんな子供っぽい俺に辛抱強く付き合ってくれていた。淑女の鑑だ。
そして、そんな彼女の後ろには護衛騎士であり、前世の俺の最推しである蒼玉がいつも
ひっそりと寄り添っていた。
俺がレティシアに冷たくあたる度に、ポーカーフェイスの顔が厳しくなる事に気づいて
蒼玉の彼女への想いに気づいた。

横恋慕なんぞ一ミリも考えておらず、ただひたすらに彼女の幸せと安寧だけを願う
純粋な愛情に羨ましさを覚えていた。
それでもヒロインであるヒナに会うまではまだましだったと思う。
ヒナと出会い、さっくりと簡単に堕ちた俺はレティシアへの最低限の礼儀すら捨てた。

マジで最低最悪なクズだったなーと思う。
やっぱり、心からスライディング土下座をしたい。
ある時から、蒼玉は俺へ凍えるような眼差しを送るようになった。
だけれども拗らせ八つ当たりボーイは反省をするどころか益々、助長した。
そう、ひたすらに拗ねたのだ。恥ずかしすぎる。
もう、本当にごめんなさい。
1周目の俺よ、本気で土下座しろください。

ヒロインに「今までずっと1人で頑張ってきたんだね。人は孤独では生きられないよ。
私はあなたのその心を一番近くで支えたいよ」と言われてチョロリンと堕ちた。
美少女にうるうると潤んだ瞳で上目遣いで言われちゃってさー、ハートを撃ち抜かれちゃったんだよねー。
1周目の俺を庇うわけじゃないけど、やっぱさ、人は孤独じゃダメだよ。
血は繋がっていても道具や邪魔者としか見ない家族に見捨てられ、
義母には命を狙われ続け、最愛の人を間接的とはいえ殺されてしまったらさ、
心はぽっきりと折れるよ。

レティシアはいい子だったけど、その孤独に寄り添うには厳しすぎた。
でも、俺もダメだった。婚約者だったのだから心のうちを吐露しても良かったと思う。
俺の境遇を知ってなお、俺を人として扱ってくれていた子だったのだから、
正直に話せば不器用ながらも寄り添ってくれてたと思う。
今さら仕方がないけど………。

それにしても、俺ってば最推しの蒼玉にとどめ刺されちゃったんかー。
まぁ、最後を看取ってくれたのが蒼玉で良かったかもしれん。
向こうは看取ったというよりも死を確認しただけだろうけどさ。

格好良かったなぁ。
でも次はあんな目で見られたくないな。出来れば友人になりたい……。
近くであのポーカーフェイスを愛でたい。声を聴きたい。キュンキュンしたい。。

その為には、これからの俺の生き方が大切になってくる。
継承権を放棄してまずはあの監獄(後宮)から親子で合法的に出る事!
そして、来るべき未来———学園で7年間を恙なく過ごす事!
卒業後の身の振り方はその間にしっかりと構築しておかねばならぬ。

その場合レティシアとの婚約はそもそもないだろうから、今度こそよき友人になれたら嬉しい。ヒロインには近づかないつもりだけど、世界の強制力とかあんのかな。
あったとしてももう俺は彼女に惹かれないだろうし、その場合のルートがどうなるのか未知数だ。
もし、2週目のルートでレティシアへ何かしら影響があるようなら可能な限り役に立ちたいと思う。
今の彼女には関係はなくとも、自己満足だけど1周目の贖罪をさせて欲しいから。

そんな決意を新たに鼻息も荒く、こぶしを振り上げブンブン振り回して己を鼓舞していたら、セバスチャンと目が合ってお互い固まってしまったが、さすがはセバスチャン。秒で立ち直った。
どうやら、何度ノックをしても俺が返事をしないから生存確認で入ってきたらしい。
大変申し訳ない。ご乱心ではないのでご安心くだされ。
めっちゃ心配そうな顔をしていて居たたまれない。


追記
※孔雀たちの名前の後ろにある()名は、
洋名なので、漢字は和名で読んでくだされ~。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

処理中です...