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ノロイの人形
中編(3)
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今夜もクローゼットを開けて人形を取り出す。
あいつからもらった革紐のブレスレットを人形の首に巻き付けた。
ゆっくり、ゆっくり締め上げていく。
百日やり続けたらどうなるんだろう?
お百度参りになぞらえて、やってみたらなにか面白いことでも起きるかな。
ギリギリと人形の首に紐が食い込んでいく。
自分が薄っすらと笑っている事に気づいた。
どこか、おかしくなってしまったんだろうか。
こんな事しながら笑うなんて。
あぁでも、こんな事する時点でおかしいのか。
ギリギリと締め上げていた紐が突然ぷつりと切れた。
「さぁ!来るよぉ!」
まやちゃんが嬉しそうに声を上げた。
「まーやー、あんまり張り切らないよぉ」
悠理君がのんびりとまやちゃんに声をかけた。
今、僕らはあゆみちゃんの家の近くにある空地に来ている。
あの後、考える事が面倒になったまやちゃんが
効率は悪いけど現状をストップさせるために、
確実に仕留める方法を取ると言って、呪いの対象をあゆみちゃんに向けて
呪い返しを迎え撃つことにしたんだ。
僕にはラノベ展開すぎて半笑いしかできない。
オカルトってこんなに明るい雰囲気だっけ…?
「きたっ!!」
まやちゃんが短く言ったと思ったら、錫杖を構えた。
僕らはまやちゃんの後ろにいる。
ギィン!
錫杖と何かがぶつかって、重い音がして光が弾けた。
「うっわ。これはえげつないさぁ!」
僕らの目にも視えた。
まやちゃんにぶつかってきたのは、巨大な顔だった。
「こっわ…」
「あぃえーなー(あらまぁ)これはこれは…」
あゆみちゃんは声も出せずに固まっている。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
まやちゃんが声を出してその顔に切り込んだ。
「ね、ねぇ大丈夫なの?」
隣に立っている悠理君に聞くと
「大丈夫。あれ、たぶん本丸じゃないから。
そしてまーやーのあれは、パフォーマンスだから」
「「は?」」
僕とあゆみちゃんの声が重なった。
悠理君はやれやれと首を振って、
「まーやーは厨二病を拗らせてるんだよ。
錫杖も、オカルト漫画とか読んで影響受けてカッコいいからって
媒体に選んだだけだから。あと、派手に動いて対処するってのも
香港映画とか見て影響受けただけだから」
はぁ…。
分かってたけど、まやちゃんて脳筋なんだな。
分かってたけど。
目の前では、ギィンギィンとやり合っているまやちゃん。
あ。本当だ。楽しそうに笑ってる。
そういう目で見ると、無駄にジャンプとかしているように見えてくる。
「ゆぅり~!」
まやちゃんが悠理君を呼んだ。
「はいはーい」
悠理君が大きな鞄からごそごそと鍋を取り出した。
「え?お釜…?」
僕とあゆみちゃんが呆気にとられている目の前で
悠理君がお釜の蓋を開けてお釜をまやちゃんに向けた。
「えいっ!」
まやちゃんは顔に錫杖を引っ掛けると、お釜に向かって吹っ飛ばした。
どんな法則が働いているのかは分からないけど、
その巨大な顔がお釜の中にすこーんと入った。
「縛」
悠理君が静かに言って、蓋を閉じた。
暗闇が戻って、静かになった。
「はー!久しぶりに動いたさぁ。やり切ったって感じ!」
満面の笑みでまやちゃんが戻ってきた。
悠理君が蓋とお釜を赤い紐でぐるぐる巻きにしている。
「えぇーっと…どうなったの?」
「飛ばした呪いが戻ってきたから、閉じ込めた」
「でも、本丸じゃないって悠理君が…」
「うん。話聞いててなんか変だなと思ってたんだけどさ、
こいつ視て分かった。これ、何名かが関わってる。
あゆみちゃんさー、このやり方誰から聞いたの?」
あゆみちゃんが教えてくれた名前は、僕がノートを貸した女の子だった。
「ねぇ、あゆみちゃん。昨日言ってた、何か変ってなに?」
「人形を作る過程、使い方は完璧なのに、その後が雑だったから」
「雑?」
「終わった人形をどうするか、注意事項とかもろもろが雑。
まるで、人形を使わせることが目的みたいに感じたわけ」
「なるほど」
思った以上に筋が通っていた。脳筋だなんて思ってごめんね。
「自分は何か変だな~って思って、ゆぅり~に話したら、
そう言ってたからなんだけどね!」
「まーやーは感覚を言葉にするのが苦手だからねぇ~」
宣言撤回。
まやちゃんは脳筋です。
「ところでさ。あのお釜に入ってるやつどうするの?
幽霊ってわけじゃないんでしょ?」
「あれはあれで、使い道ってのがあるわけさ~」
手をヒラヒラとさせてまやちゃんが言う。
「ま、企業秘密ってことで」
悠理君が言った。
昨日はあの後に解散したんだけど、
まやちゃんは例のお釜を見てちょっと嬉しそうだった。
「あゆみちゃんはもう大丈夫なの?」
「今回かけた分はね」
「あとは、これをきっかけに安易にそういった事に手を出さないこと。
新しい幸せな恋をすること。恋が一番早いかもねぇ。
そして、前回の恋愛から自分の反省点を学べば完璧じゃないかねぇ」
元彼さんの課題は元彼さんのもの。
あゆみちゃんは彼女自身の課題をこなせばいいんだよと悠理君が言った。
人間関係ってのは、恋愛とか友達とか家族とか根っこは一緒だから、
どういう人間関係を築くかは自分次第なんだって。
「じゃあ、元彼さんも同じ事が言えるんだね」
「そういうこと。あゆみちゃん以外の人も関わってたみたいだし、
彼自身が改めないとまた誰かに呪われるかもしれないよねぇ」
なにそれ怖い。
「それ、誰かが教えてあげないと分からないよね?」
「それは、彼の今後のご縁次第なんじゃないかねぇ?」
あ。悠理君意外とドライ。
「それすらも、彼自身の課題だからさ~」
あ。なるほど。
「あ。そうだ。本丸じゃないって言ってたよね?どういう意味?」
「他にも関わった形跡があるって言ったさーね?
返したのはあくまで“今回の分のみ”だわけ。
他の人がまた再度する分はどーにも出来んわけ。
あと、まーやーが言ってた“呪いをやらせる事が目的”ってやつ。
あれよ。そもそも論、それが本丸だはず」
「え。この一連の出来事に黒幕がいるってこと?」
「と、思うんだよねぇ。違和感を感じるわけよ~」
なにその壮大な話…。
黒幕がいたとして、何が目的なんだろう。
あいつからもらった革紐のブレスレットを人形の首に巻き付けた。
ゆっくり、ゆっくり締め上げていく。
百日やり続けたらどうなるんだろう?
お百度参りになぞらえて、やってみたらなにか面白いことでも起きるかな。
ギリギリと人形の首に紐が食い込んでいく。
自分が薄っすらと笑っている事に気づいた。
どこか、おかしくなってしまったんだろうか。
こんな事しながら笑うなんて。
あぁでも、こんな事する時点でおかしいのか。
ギリギリと締め上げていた紐が突然ぷつりと切れた。
「さぁ!来るよぉ!」
まやちゃんが嬉しそうに声を上げた。
「まーやー、あんまり張り切らないよぉ」
悠理君がのんびりとまやちゃんに声をかけた。
今、僕らはあゆみちゃんの家の近くにある空地に来ている。
あの後、考える事が面倒になったまやちゃんが
効率は悪いけど現状をストップさせるために、
確実に仕留める方法を取ると言って、呪いの対象をあゆみちゃんに向けて
呪い返しを迎え撃つことにしたんだ。
僕にはラノベ展開すぎて半笑いしかできない。
オカルトってこんなに明るい雰囲気だっけ…?
「きたっ!!」
まやちゃんが短く言ったと思ったら、錫杖を構えた。
僕らはまやちゃんの後ろにいる。
ギィン!
錫杖と何かがぶつかって、重い音がして光が弾けた。
「うっわ。これはえげつないさぁ!」
僕らの目にも視えた。
まやちゃんにぶつかってきたのは、巨大な顔だった。
「こっわ…」
「あぃえーなー(あらまぁ)これはこれは…」
あゆみちゃんは声も出せずに固まっている。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
まやちゃんが声を出してその顔に切り込んだ。
「ね、ねぇ大丈夫なの?」
隣に立っている悠理君に聞くと
「大丈夫。あれ、たぶん本丸じゃないから。
そしてまーやーのあれは、パフォーマンスだから」
「「は?」」
僕とあゆみちゃんの声が重なった。
悠理君はやれやれと首を振って、
「まーやーは厨二病を拗らせてるんだよ。
錫杖も、オカルト漫画とか読んで影響受けてカッコいいからって
媒体に選んだだけだから。あと、派手に動いて対処するってのも
香港映画とか見て影響受けただけだから」
はぁ…。
分かってたけど、まやちゃんて脳筋なんだな。
分かってたけど。
目の前では、ギィンギィンとやり合っているまやちゃん。
あ。本当だ。楽しそうに笑ってる。
そういう目で見ると、無駄にジャンプとかしているように見えてくる。
「ゆぅり~!」
まやちゃんが悠理君を呼んだ。
「はいはーい」
悠理君が大きな鞄からごそごそと鍋を取り出した。
「え?お釜…?」
僕とあゆみちゃんが呆気にとられている目の前で
悠理君がお釜の蓋を開けてお釜をまやちゃんに向けた。
「えいっ!」
まやちゃんは顔に錫杖を引っ掛けると、お釜に向かって吹っ飛ばした。
どんな法則が働いているのかは分からないけど、
その巨大な顔がお釜の中にすこーんと入った。
「縛」
悠理君が静かに言って、蓋を閉じた。
暗闇が戻って、静かになった。
「はー!久しぶりに動いたさぁ。やり切ったって感じ!」
満面の笑みでまやちゃんが戻ってきた。
悠理君が蓋とお釜を赤い紐でぐるぐる巻きにしている。
「えぇーっと…どうなったの?」
「飛ばした呪いが戻ってきたから、閉じ込めた」
「でも、本丸じゃないって悠理君が…」
「うん。話聞いててなんか変だなと思ってたんだけどさ、
こいつ視て分かった。これ、何名かが関わってる。
あゆみちゃんさー、このやり方誰から聞いたの?」
あゆみちゃんが教えてくれた名前は、僕がノートを貸した女の子だった。
「ねぇ、あゆみちゃん。昨日言ってた、何か変ってなに?」
「人形を作る過程、使い方は完璧なのに、その後が雑だったから」
「雑?」
「終わった人形をどうするか、注意事項とかもろもろが雑。
まるで、人形を使わせることが目的みたいに感じたわけ」
「なるほど」
思った以上に筋が通っていた。脳筋だなんて思ってごめんね。
「自分は何か変だな~って思って、ゆぅり~に話したら、
そう言ってたからなんだけどね!」
「まーやーは感覚を言葉にするのが苦手だからねぇ~」
宣言撤回。
まやちゃんは脳筋です。
「ところでさ。あのお釜に入ってるやつどうするの?
幽霊ってわけじゃないんでしょ?」
「あれはあれで、使い道ってのがあるわけさ~」
手をヒラヒラとさせてまやちゃんが言う。
「ま、企業秘密ってことで」
悠理君が言った。
昨日はあの後に解散したんだけど、
まやちゃんは例のお釜を見てちょっと嬉しそうだった。
「あゆみちゃんはもう大丈夫なの?」
「今回かけた分はね」
「あとは、これをきっかけに安易にそういった事に手を出さないこと。
新しい幸せな恋をすること。恋が一番早いかもねぇ。
そして、前回の恋愛から自分の反省点を学べば完璧じゃないかねぇ」
元彼さんの課題は元彼さんのもの。
あゆみちゃんは彼女自身の課題をこなせばいいんだよと悠理君が言った。
人間関係ってのは、恋愛とか友達とか家族とか根っこは一緒だから、
どういう人間関係を築くかは自分次第なんだって。
「じゃあ、元彼さんも同じ事が言えるんだね」
「そういうこと。あゆみちゃん以外の人も関わってたみたいだし、
彼自身が改めないとまた誰かに呪われるかもしれないよねぇ」
なにそれ怖い。
「それ、誰かが教えてあげないと分からないよね?」
「それは、彼の今後のご縁次第なんじゃないかねぇ?」
あ。悠理君意外とドライ。
「それすらも、彼自身の課題だからさ~」
あ。なるほど。
「あ。そうだ。本丸じゃないって言ってたよね?どういう意味?」
「他にも関わった形跡があるって言ったさーね?
返したのはあくまで“今回の分のみ”だわけ。
他の人がまた再度する分はどーにも出来んわけ。
あと、まーやーが言ってた“呪いをやらせる事が目的”ってやつ。
あれよ。そもそも論、それが本丸だはず」
「え。この一連の出来事に黒幕がいるってこと?」
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