樹くんの甘い受難の日々

生梅

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第二章

95.IFオメガバース編(番外編④)

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待ち合わせ場所に少し早く着いたら既に3人が揃っててびっくりした。
なんか、待ち合わせ場所あたりに人が滞留してんなぁと思って近づいていったら、
その中心にいるのは親友3人組だった。
ぐぬぬぬぬ……みすたーとっぷふぁいぶめぇえ!!

きぃぃ!と思いながら羨ましくてジト目で見ていると、
一斉に俺に気づいた3人がぱっと笑顔になるもんだから、周りから悲鳴が上がっていた。
きぃいい!羨ましいったら!

「樹!!」

小走りに駆け寄ってきた雅樹にいつも通りにハグされて、
あちこちを嗅がれた(やめれ)最近特に項や耳裏を嗅がれるんだが
……俺、臭いかな?変な汗出るわ。

「樹……身体は平気?」
「うん。こないだは来てくれてありがとな」
「「「当然でしょ(だろうが)」」」
「あ、ありがとう……」
「樹ちゃーん!あぁ……数日ぶりの樹ちゃんの匂い…」
「ちょ、お前も!ぅおい!勝もかよ!!」
「す~~~~は~~~…あぁ、いいわ…樹の匂い…」
「最近お前ら俺の匂いめっちゃ嗅ぐけど、臭いか?」
「「「臭いわけがない!!!」」」
「なんなんだよ……臭くないならいいけど、あんま嗅がないで。恥ずかしい」
「やだ!樹の匂いを嗅がないなんてつらすぎる!」
「お、おう……」

ふと志木と目が合うと甘く微笑まれた。う、ってなって顔がぶわわと赤くなるのが分かる。
あの日、志木に俺のファーストチッスを奪われた後、他の2人が叫んで
「俺も俺も」と代わる代わるキスをされた。なぜ?!

「さ、行こうか」
「ひゃわ!」

志木に手を取られて、こ、こ、恋人繋ぎっていうの?するりと指を絡めて握られてあわあわとしていると
「ずるい!」と騒いだ二人がもう片方の俺の手の争奪戦を始めた。
マジでなんなのお前ら?

「「志木………」」
「こういうのに順番なんて関係ないだろ。それに、俺は譲る気は一歩もないし」
「「俺だって」」
「な、なぁ、お前ら何の話してんの?」
「樹、こないだクレープ食べたいって言ってたでしょ?この近くに美味しいお店があるから買いにいこっか」
「え!クレープ?!おう!食べる食べる!!!」
「「チョロ…」」

テイクアウト専門のそのクレープ屋さんは長蛇の列だったけど、
4人でわちゃわちゃしているうちに俺らの番が来た。

「う~~~悩む。このイチゴデラックスも食べたいけど、
しょっぱい系のシーチキンが巻かれているサラダクレープも捨てがたい……」
「樹、俺がどちらか買ってやるから半分こしようぜ」
「マジ?!あ、でも勝は生クリームそんなに好きじゃないだろ?」
「たまには食べるさ。すいません、このイチゴのやつとサラダクレープください」
「は、はい」

店員の女の子がポッと頬っぺたを赤く染めて慌ててレジを打ち込み始めた。
俺は見たぞ。勝たちに見とれている可愛らしい顔を!!!!

「ちくしょう………みすたーとっぷふぁいぶめぇぇえ」
「え?なにそれ」
「うるせぇ!イケメソめ!」
「えぇ……樹が冷たい」
「樹ちゃん、小鼻が膨らんでるよ。可愛いなぁ、もう」
「はぁ?志木、お前目が悪いんじゃねぇの?!」
「あはは。ぷりぷりしてても可愛いわ」
「ふぐぅぅう」

クソイケメンの3人は俺を微笑ましく見ているのが分かって、なんだかイラッとする。
なんていうか同じ土俵として見てないのが丸わかりだ。
よしよしと3人に頭や背中を撫でられて益々、腹が立つがクレープを渡されたら腹が立ってた事をすっかり忘れてしまった。

「樹ちゃんて、ほんと……」
「そこが可愛いんだよねぇ」
「色々残念で愚かだよな。だがそれがいい」

3人が俺を小さい子を見るような目で見ながら何か話してたが、
今はクレープとの大切な時間なのでまるっと無視した。

本当は今日、3人にオメガに変異した事を打ち明ける予定だったんだけど、
こないだうちにお見舞いに来てくれた時に思い切って伝えて受け入れてもらった事で今日は心から楽しめる。
俺って、マジで友達運最高にいい。

「樹、クリームがついてる」
「ん?」

雅樹が俺の口の端を親指で拭って、指についた生クリームをそのままぺろりと舐めた。

「はぅ……」
「どうしたの?」

な、なんていうか。。
こういうのいつも通りの行動なんだけど、こないだキスされたせいか、
こんな触れ合いに動揺してしまった。あれ?俺らの距離感ってもしかして変??
あれ?そういやなんで俺、勝の膝の上に座らされてるの?
考えてみたら学校とかでもこの3人の膝の上によく座らされて抱っこされてる。あれ??

「な、なぁ」
「ん?」
「あのよ、なんで勝の膝の上に座らされてるの?」
「「「は??」」」
「でさ、よく考えてみたらさ、勝だけじゃなくてお前らの膝の上で抱っこされんじゃん。あれってさ、おかしいよな?」
「「「イヤ、オカシクナイヨ???」」」
「そ、そうか?だってよ、他に学校でそういうやついないよな??」
「よそは、よそ!うちはうち!」
「えぇ………」
「樹は俺らに抱っこされるの嫌なの?」

しょんぼりとした雅樹に聞かれてつまる。

「樹ちゃん、俺らに抱っこされたくない?」
「うっ」
「樹ぃ、俺はお前抱っこするの好きなんだけど。ダメか?」
「うぅ…」
「「「ダメ??」」」
「うぅぅ…」

捨てられた子犬のような目でじぃっと見られて、なんだか俺が悪いような気分になってくるから不思議だ。

「だ、だめでは、ない」
「「「良かったぁぁ~~~!!!」」」
「いや、抱っこはいいけど!なんでキスしてくんだよ!!!」
「したいから?」

良かった良かったと頭や頬っぺたにキスされて顔が熱くなる。
いつも通りの事なのに、なんで今日は心臓が煩いんだ!
無駄に顔が良いからなのか?

その後も3人は誰が俺と手を繋ぐかとくだらない争奪戦を繰り広げ、
俺はもうどうでもよくなって好きなようにさせた。
―――ていうか、なんで男4人で観覧車乗ってんの?
しかもイイ感じの夜景が眼下に広がっててちょっと虚しくなるわ。

「ふふふ。今日は樹と同じ家に帰れるね」
「だな。お泊りだなんて久しぶりだな。今日はお世話になります」

雅樹にぺこりと頭を下げると「うん。今日は親もデートでお泊りだからどれだけ声を上げても大丈夫だよ」と言われた。


うん?声を上げても?普通騒いでもって言わないか?まぁ、いいか。



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はい、フラグですね。
樹なんも分かってません(笑)
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