樹くんの甘い受難の日々

生梅

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第二章

63.ヤンデレ?魔王雅樹、おこ

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「うぐっ…」

す、鋭い…とはいえ、どうせバレるだろうしなぁ。。

「えぇぇぇーと、そのぉ……まぁ、そういうわけで」
「はぁ?全く答えになってないんですけど」
「ですからっ!志木は、俺のっ!恋人で……」

さゆりちゃんの目がどんどん険しくなって、最後は居たたまれなくなって声が尻すぼみになってしまった。

「ほぉ?雅樹先輩たちだけじゃなく、三条の男も?三股?信じらんなーーーい!」
「うぅぅ」
「はぁ?はぁ?はぁぁぁぁっ?それって、雅樹先輩も……」
「了承の上デス」
「……」

怖いこわいこわい!!!真顔になった!怖いっ!!!!!

「ていうか、マジで、あんた、なんなんですか?どんだけビッチなの?
納得いかない!こんっっっっなに!平凡で!冴えなくて!チビで!何の取り柄もない男がっ!極上の男3人も誑し込んで、それだけでも意味が分からないのに、みんな了承の上とか!はぁぁぁあああああ???」
「なんかもうすみませんっ!すみませんっっ!!!!」
「許すかぁぁああああ!」
「ひぃ!」

あんたよわばりされてるけど、それはもう致し方ない気がして甘んじて受ける。
さゆりちゃんの憤りとか疑問とか諸々、分からんでもないしっ。
俺も!俺自身も意味が分からんしっ!!!

「ぜぇはぁ……しんっじらんない…なんで…なんで…」

ブツブツ言ってたかと思うと、ぴたりと黙った。沈黙が怖い。

「やっぱ、先輩ってエッチうまい?体が淫乱?!それ以外に何とか納得できる理由がないんですけどっ!!」

すっげぇ失礼な事言われているけど、さゆりちゃんが罵倒したくなる気持ちわからんでもないので、これも甘んじて…うぅ…俺、なんか他人から見て無価値?

「いやもうさ…全ての怒りは受け止める。だけど、さゆりちゃんが納得できる答えは分からないから言えない」
「もうマジで雅樹先輩譲ってくださいよ!いいじゃないですか!他に2人もいるんだからっっ!!!」
「それは無理だってば。それに、雅樹は物じゃないんだからホイホイ俺の一存で決められるものでもないし、第一雅樹に失礼だろ。それに、俺は…雅樹が大切だ、し」
「………」

し、視線が怖い!さゆりちゃんが視線で人を殺せるなら俺、とっくに死んでる。

「はぁぁ…まさか、この私がこんな冴えない男に負けるなんて」
「全面的に同意するけどさ、失礼だよなぁ!」
「だってー!先輩の魅力マジで1ミリも分かんないんだもーん!それに腹立つしぃいいいい!!!」
「ごめんて…謝られても腹立つのは分かるけど———ごめん」
「やぁだぁーーー!雅樹先輩ほしぃぃいいい!」
「だから、無理だってば」


「俺がなに?」


その場に、沈黙が落ちた。
ギギギギギ…と首を軋ませながら振り向くと、甘ったるい笑顔の雅樹が立っていた。

「い、いつの間に…」
「んー樹が三股ってところ?」
「わりと最初!!」
「ん~…さゆりちゃん、あのね?俺にとって樹は大事な大事な可愛い恋人なんだよね。そして、樹も俺の事を大切に思ってくれてる。樹以外の誰かとってのは考えられないんだ。だから、気持ちはありがたいけど俺のことは諦めて?」
「へ…?」

さゆりちゃんが何を言われたのか理解不能という顔をして雅樹を見つめている。

「さゆりちゃんから見たら平凡で冴えないおチビちゃんかもしれないけど、俺にとっては可愛くて可愛くて愛おしくてたまらない人なんだよ」
「え、だって、小鳥遊先輩は男で…」
「だから何?愛する人が異性でなければならないなんて決まりはないよ?」
「そう、ですけど…」
「それにね、俺にとって樹の性別は関係ないんだよね。男でも女でもどちらでもいい。樹であればいいんだ。樹という事が大切なんだよ」

そう言いながら雅樹が俺の肩を後ろから抱きしめた。あのののののの!むちゃくちゃ嬉しいけど、とっても居たたまれないのですがっっ!!

「でっ!でも!3股なんて…そんなに愛しいなら、3股する恋人なんてありえなくないですか?!」
「それもさ、俺らがそれでいいって納得していれば別に他人に言われる筋合いないよね?」
「……」
「俺らだけに淫乱であれば、むしろウェルカムだしね」

ふふっと笑って自然な動作で俺の旋毛にキスを落とした。
さゆりちゃんが目を剥いて硬直した。
俺は俺で自然に受け止めるクセ?がついているし、なんの違和感もない。

「……エッチしてるの見たし、分かってたけど、実際に目の当たりにすると…こう、クるもんがありますね。。」
「す、すまん」
「小鳥遊先輩に謝られると惨めな気持ちになるんでやめてください」
「お、おう。す———」

思わず口走ろうとしてギッ!と睨まれ、慌てて口を閉ざした。

「と、取り敢えずは引きますけど、私っ!諦めませんからっ!!!」
「えぇ~…無理だよ~」
「雅樹先輩に言われると刺さるっ!!」
「だって、俺、樹と結婚する気満々だもん♪」
「「は…?」」

いやまて雅樹!暴走しすぎだってばよ!
俺らの恐慌なんぞそっちのけで雅樹がうっとりと笑う。

「樹ってば、こう見えて奥ゆかしいし常識的なんだよね。だから、法で縛っちゃおうかなって。そしたらそう簡単には離れられないし、誰かにちょっかい出されないでしょ?」

え。こわ。雅樹、そんな事考えてたのかよ!こわ。マジこわ。メンヘラ加速してねぇか?

「は…雅樹先輩ってそんなキャラでした…?もしかして女除け…とか?」
「ん~?そんなまどろっこしい事する必要ある?信じる信じないはどうでもいいけどさ、もう樹を困らせないでやってくれない?」
「え?」
「好き勝手ほざいてたけど、俺、樹を馬鹿にしたこと結構怒ってるよ?」
「へ?」
「思うだけならいいけどさ、人の容姿について本人に言わなくても良くない?」
「だ、だって…」

あ。やば。雅樹マジで怒ってる。こいつの怒気は女子にはキツイ。

「ま、雅樹!俺べつに気にしてないしさっ!本当の事ばっかだったし!」
「樹は黙ってて」
「ひょーー……」
「誰だって、好きな人の事を馬鹿にされたら腹立つでしょ?それに、俺と樹が付き合ってるからって容姿を馬鹿にしていい訳じゃない。さゆりちゃんさ、君はすごく可愛くて魅力的な子だけど、だからって人の容姿を馬鹿にしていいわけじゃないよ?」
「……」

あぁぁぁ…さゆりちゃんの顔が歪んで泣き出しそうな顔になった。ど、どうしよう。俺、なんていうかさ、この子嫌いになれないんだよなぁ。
雅樹はちらりと俺をみて困ったように笑った。
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