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第一章
57.覚悟を決めた樹、スマホを前にして正座する
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「な、なぁ…なんか言えよ。それともやっぱり嫌?」
あまりにも2人が無言で俺を見るから不安になって聞くと、2人は金縛りが消えたようにハッとなった顔をしたと思ったら、ガバリと抱き着かれた。
「樹ぃぃぃぃいい!!嬉しい!嬉しい!!ありがとう!大切にするっ。
好き!好きだよ!愛してるっ!!」
「はぁぁぁぁ~…良かった。本当に良かった。最近のお前見てると、もしかしたら振られるんじゃねーかと怖かった。樹、愛してる。ずっと側にいてくれ」
「あ、愛してるってやっぱり照れるな。嬉しい。俺の我がままを聞いてくれてありがとう。でも、本当にいいのか?志木も??」
「それは——本当はマジで嫌だけど、樹と恋人同士になれるなら仕方ない。
お前見てるとあいつも樹を支えてるのが分かるし、大切にするだろうしな。
もし、もしもあいつが樹を大切にしないなら即、別れさせるぜ?
それだけは了承してくれっか?」
「はぁー…俺も勝と同じ意見だよ。嫌だけど、悪い奴じゃないしね。
樹と恋人になれるならいいよ。些末な事だし」
「ありがとう!雅樹、勝……す、す、好きだよ。あ、愛して…る」
ぐはぁぁぁ!やっぱり、照れるっ!
「樹、これからもよろしくね」
「俺も、よろしくな」
「うん。不束者ですが、これからもよろしく」
「ふふっ。不束者って。結婚するみたい。まぁ、するけど」
「あぁ。社会人になったらどちらかと養子縁組でも組むか」
「ひぃ」
今からそんな話なんて気が早すぎだろ。嬉しいけど重い…。嬉しいけど。
改めて考えても、なんでこいつらが俺に執着してるのか分からない。
とはいえ、俺自身もなんでこいつらに惚れてるのか分からない。
こいつらなら、多少不自由を感じてもいいかなと思える。
絶対的な信頼があるからだろうか。謎だ。だけど、恋愛なんてそんなもんなのかもしれない。
俺は過去に彼女が何人かいたけど、その時に相手に感じていた感情と、
こいつらへの感情は明らかに違った。
なんていうか、こいつらに対する感情は元カノ達とは違ってもっと生々しくて
ドロドロして、でも安心できてこいつらがいればほとんどの事は大丈夫っていう
根拠のない自信が出てくる。
「恋愛って、よー分からんなぁ」
「え?なに?もう迷子?!」
焦った顔した雅樹が詰め寄ってきた。
「違う。なんでお前らの事がこんなに好きなんだろうなって思ったんだよ」
「「たっ…樹…」」
2人は真っ赤になった顔を手で隠してしゃがみ込んだ。
「樹ってさ、時々恐ろしく小悪魔だよね」
「それな。たまに心臓が破裂しそうになる」
「分かる」
「なんだそりゃ。変な奴らだな」
こいつらは時々、分けわからん事をいう。俺が小悪魔なわけねーだろ。
「無自覚って怖いよねー」
「それな」
まだぶつぶつと話してるけど、もう無視した。
◇◇◇◇◇◇
「後は志木か…」
スマホを前にして正座をする。
覚悟を決めたとはいえ、やっぱり緊張する。
-志木、話したいことがあるから近々時間作ってくれねぇ?
あとは、送信を押すだけなのに、親指が宙に浮いたまま静止した。
スーハー深呼吸して、送信を押せたのは更に10分後だった。
俺のヘタレェ……
即既読がついて、そのあとすぐに電話がかかってきた。
『樹ちゃん?!』
「お、おう。送った件だけどよ、話したい事があるから近々時間欲しくて」
『あ、あぁ。分かった…』
志木の声がものすごく固い。なんか、段々と不安になってきてドキドキしてきた。
「わ、悪かったな、急にさ…」
『いや、いい。樹ちゃんからの要件ならなんでもいいよ』
「ありがとう…志木、えぇと、いつ頃なら空いてる?」
『いつでもいいよ。なんなら今すぐでもいい』
「えっ?!もう8時だし遅いからい——」
『会いたい』
「え…」
『会いたいんだ、樹ちゃん』
不安で鳴っていた心臓が、違う意味を持って更にドキドキし始める。
『急で申し訳ないけど、樹ちゃんさえ良ければ、今日会いたい』
「お、俺も。じゃ、じゃあどこに行けばいい?」
『俺がそっち行く。嫌じゃなければ家か、近くを指定してもらえれば。
ちょうど兄貴が帰ってきてるから送ってもらうわ』
「いいのか?」
『気にするな』
「分かった。ありがとう。待ってる…」
落ち着かなくてソワソワ部屋中を歩いたり、座ったり、スマホみたりして時間を潰した。
志木にすごく会いたい反面、緊張して喉がカラカラだ。
俺の浅ましい願望を聞いても嫌わないだろうか。それだけが気になる。
ぶおぉぉん
どのくらい時間が経ったのだろう。外でマフラーが大きくなってハッとして、
慌てて窓から下を覗くと、志木が車から降りる所だった。
ふと志木が上を向いて俺と目が合って、蕩けるような笑顔をしてくれて心臓が痛いくらいに高鳴る。俺、やっぱり志木がすげぇ好きだ。志木ともっともっと一緒にいたい。
階段を駆け下りて急いで玄関を開けると、まさに呼び鈴を鳴らそうとしていた志木がいて
ビックリした顔で俺を見た。
「志木!来てくれてありがとう」
「俺が樹ちゃんに会いたかったからいいよ。気にするな」
照れて顔が真っ赤になったのが分かった。それを見た志木がまた蕩けるような笑顔をするから益々赤くなる一方だ。イケメンの笑顔の破壊力恐るべし。
「お兄ちゃーん。お客さん?」
「こんばんは。ごめんね、夜分遅くに。先日ちょっと顔を合わせたよね?」
「あ!あの時のっ!!!!こっ!こんばんはっ」
突然のイケメンの訪問にゆりの顔が真っ赤になった。
それにしても、志木ってばめっちゃイイ笑顔じゃん。ちょっと妬ける。
「志木、部屋行こうぜ」
志木の指をくぃっと引っ張って俺に注意を引く。
「お、お兄ちゃんお茶持ってく?」
「いいよ。お構いなくー」
志木が勝手に断ってくれて、少しだけ機嫌が上向くのが自分でも分かって呆れる。
俺ってどんだけ嫉妬深いんだよ。3股してるくせに!脳内で悪魔の俺を張り扇でしばく。
ぐいぐい引っ張って部屋に連れ込んだ。
部屋に入った途端、志木に抱きすくめられる。
「———会いたかった」
「俺も」
志木を思いっきり抱きしめて胸板に頭をぐりぐり押し付けた後に、胸いっぱいに志木の匂いを吸い込む。落ち着くけどドキドキして矛盾する感情を喜びをもって噛みしめる。
息を吸い込んで、勢いをつけて声に出す。
「志木に大事な話があるんだ」
「なに?」
また、志木の声が強張った。
あまりにも2人が無言で俺を見るから不安になって聞くと、2人は金縛りが消えたようにハッとなった顔をしたと思ったら、ガバリと抱き着かれた。
「樹ぃぃぃぃいい!!嬉しい!嬉しい!!ありがとう!大切にするっ。
好き!好きだよ!愛してるっ!!」
「はぁぁぁぁ~…良かった。本当に良かった。最近のお前見てると、もしかしたら振られるんじゃねーかと怖かった。樹、愛してる。ずっと側にいてくれ」
「あ、愛してるってやっぱり照れるな。嬉しい。俺の我がままを聞いてくれてありがとう。でも、本当にいいのか?志木も??」
「それは——本当はマジで嫌だけど、樹と恋人同士になれるなら仕方ない。
お前見てるとあいつも樹を支えてるのが分かるし、大切にするだろうしな。
もし、もしもあいつが樹を大切にしないなら即、別れさせるぜ?
それだけは了承してくれっか?」
「はぁー…俺も勝と同じ意見だよ。嫌だけど、悪い奴じゃないしね。
樹と恋人になれるならいいよ。些末な事だし」
「ありがとう!雅樹、勝……す、す、好きだよ。あ、愛して…る」
ぐはぁぁぁ!やっぱり、照れるっ!
「樹、これからもよろしくね」
「俺も、よろしくな」
「うん。不束者ですが、これからもよろしく」
「ふふっ。不束者って。結婚するみたい。まぁ、するけど」
「あぁ。社会人になったらどちらかと養子縁組でも組むか」
「ひぃ」
今からそんな話なんて気が早すぎだろ。嬉しいけど重い…。嬉しいけど。
改めて考えても、なんでこいつらが俺に執着してるのか分からない。
とはいえ、俺自身もなんでこいつらに惚れてるのか分からない。
こいつらなら、多少不自由を感じてもいいかなと思える。
絶対的な信頼があるからだろうか。謎だ。だけど、恋愛なんてそんなもんなのかもしれない。
俺は過去に彼女が何人かいたけど、その時に相手に感じていた感情と、
こいつらへの感情は明らかに違った。
なんていうか、こいつらに対する感情は元カノ達とは違ってもっと生々しくて
ドロドロして、でも安心できてこいつらがいればほとんどの事は大丈夫っていう
根拠のない自信が出てくる。
「恋愛って、よー分からんなぁ」
「え?なに?もう迷子?!」
焦った顔した雅樹が詰め寄ってきた。
「違う。なんでお前らの事がこんなに好きなんだろうなって思ったんだよ」
「「たっ…樹…」」
2人は真っ赤になった顔を手で隠してしゃがみ込んだ。
「樹ってさ、時々恐ろしく小悪魔だよね」
「それな。たまに心臓が破裂しそうになる」
「分かる」
「なんだそりゃ。変な奴らだな」
こいつらは時々、分けわからん事をいう。俺が小悪魔なわけねーだろ。
「無自覚って怖いよねー」
「それな」
まだぶつぶつと話してるけど、もう無視した。
◇◇◇◇◇◇
「後は志木か…」
スマホを前にして正座をする。
覚悟を決めたとはいえ、やっぱり緊張する。
-志木、話したいことがあるから近々時間作ってくれねぇ?
あとは、送信を押すだけなのに、親指が宙に浮いたまま静止した。
スーハー深呼吸して、送信を押せたのは更に10分後だった。
俺のヘタレェ……
即既読がついて、そのあとすぐに電話がかかってきた。
『樹ちゃん?!』
「お、おう。送った件だけどよ、話したい事があるから近々時間欲しくて」
『あ、あぁ。分かった…』
志木の声がものすごく固い。なんか、段々と不安になってきてドキドキしてきた。
「わ、悪かったな、急にさ…」
『いや、いい。樹ちゃんからの要件ならなんでもいいよ』
「ありがとう…志木、えぇと、いつ頃なら空いてる?」
『いつでもいいよ。なんなら今すぐでもいい』
「えっ?!もう8時だし遅いからい——」
『会いたい』
「え…」
『会いたいんだ、樹ちゃん』
不安で鳴っていた心臓が、違う意味を持って更にドキドキし始める。
『急で申し訳ないけど、樹ちゃんさえ良ければ、今日会いたい』
「お、俺も。じゃ、じゃあどこに行けばいい?」
『俺がそっち行く。嫌じゃなければ家か、近くを指定してもらえれば。
ちょうど兄貴が帰ってきてるから送ってもらうわ』
「いいのか?」
『気にするな』
「分かった。ありがとう。待ってる…」
落ち着かなくてソワソワ部屋中を歩いたり、座ったり、スマホみたりして時間を潰した。
志木にすごく会いたい反面、緊張して喉がカラカラだ。
俺の浅ましい願望を聞いても嫌わないだろうか。それだけが気になる。
ぶおぉぉん
どのくらい時間が経ったのだろう。外でマフラーが大きくなってハッとして、
慌てて窓から下を覗くと、志木が車から降りる所だった。
ふと志木が上を向いて俺と目が合って、蕩けるような笑顔をしてくれて心臓が痛いくらいに高鳴る。俺、やっぱり志木がすげぇ好きだ。志木ともっともっと一緒にいたい。
階段を駆け下りて急いで玄関を開けると、まさに呼び鈴を鳴らそうとしていた志木がいて
ビックリした顔で俺を見た。
「志木!来てくれてありがとう」
「俺が樹ちゃんに会いたかったからいいよ。気にするな」
照れて顔が真っ赤になったのが分かった。それを見た志木がまた蕩けるような笑顔をするから益々赤くなる一方だ。イケメンの笑顔の破壊力恐るべし。
「お兄ちゃーん。お客さん?」
「こんばんは。ごめんね、夜分遅くに。先日ちょっと顔を合わせたよね?」
「あ!あの時のっ!!!!こっ!こんばんはっ」
突然のイケメンの訪問にゆりの顔が真っ赤になった。
それにしても、志木ってばめっちゃイイ笑顔じゃん。ちょっと妬ける。
「志木、部屋行こうぜ」
志木の指をくぃっと引っ張って俺に注意を引く。
「お、お兄ちゃんお茶持ってく?」
「いいよ。お構いなくー」
志木が勝手に断ってくれて、少しだけ機嫌が上向くのが自分でも分かって呆れる。
俺ってどんだけ嫉妬深いんだよ。3股してるくせに!脳内で悪魔の俺を張り扇でしばく。
ぐいぐい引っ張って部屋に連れ込んだ。
部屋に入った途端、志木に抱きすくめられる。
「———会いたかった」
「俺も」
志木を思いっきり抱きしめて胸板に頭をぐりぐり押し付けた後に、胸いっぱいに志木の匂いを吸い込む。落ち着くけどドキドキして矛盾する感情を喜びをもって噛みしめる。
息を吸い込んで、勢いをつけて声に出す。
「志木に大事な話があるんだ」
「なに?」
また、志木の声が強張った。
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